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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E2
管理番号 1377855 
審判番号 不服2021-5698
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-05 
確定日 2021-08-28 
意匠に係る物品 ゲーム機用打撃具 
事件の表示 意願2019- 6112「ゲーム機用打撃具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯

本願は、意匠法4条2項の規定の適用を受けようとする、平成31年(2019年)3月22日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

平成31年(2019年) 3月26日付け 新規性の喪失の例外証明書提出書の提出
令和 2年(2020年) 1月17日付け 拒絶理由の通知
同年 3月 4日 意見書の提出
令和 3年(2021年) 1月28日付け 拒絶査定
同年 5月 5日 審判請求書の提出

2 本願の意匠の願書及び添付図面の記載

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「ゲーム機用打撃具 」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
著者の氏名: Amazon.co.jp|雑貨の福福堂
表題: Amazon|太鼓の達人 マイバチ テーパー 透明クリアマイバチ 強化樹脂(強化アクリル)超硬材 透き通る透明マイバチとスーパー超反発力が自慢!18ミリ-350mm 心地よい打音 (赤)|ドラム・打楽器|おもちゃ
掲載箇所: 商品紹介各写真
媒体のタイプ: [online]
掲載年月日: 2019年1月17日
検索日: [2020年1月15日検索]
情報の情報源: インターネット
情報のアドレスURL:
https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%AA%E9%BC%93%E3%81%AE%E9%81%94%E4%BA%BA-%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%81-%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC-%E9%80%8F%E6%98%8E%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%81-%E5%BC%B7%E5%8C%96%E6%A8%B9%E8%84%82%EF%BC%88%E5%BC%B7%E5%8C%96%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%AB%EF%BC%89%E8%B6%85%E7%A1%AC%E6%9D%90-%E9%80%8F%E3%81%8D%E9%80%9A%E3%82%8B%E9%80%8F%E6%98%8E%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%81%E3%81%A8%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E8%B6%85%E5%8F%8D%E7%99%BA%E5%8A%9B%E3%81%8C%E8%87%AA%E6%85%A2%EF%BC%8118%E3%83%9F%E3%83%AA-350%EF%BD%8D%EF%BD%8D-%E5%BF%83%E5%9C%B0%E3%82%88%E3%81%84%E6%89%93%E9%9F%B3-%E8%B5%A4/dp/B07MXRH3Y9/ref=pd_aw_sbs_21_2/355-3108580-7122117?_encoding=UTF8&pd_rd_i=B07MXRH3Y9&pd_rd_r=85ea0943-bc80-487b-87fd-21faab342ff7&pd_rd_w=Dp0Gx&pd_rd_wg=dBKe4&pf_rd_p=aeee4cf9-9af8-43b4-b05c-0ae7c82d9d5e&pf_rd_r=HYS3SPWMA18Y6X3DB8HX&psc=1&refRID=HYS3SPWMA18Y6X3DB8HX
に「太鼓の達人 マイバチ テーパー 透明クリアマイバチ 強化樹脂(強化アクリル)超硬材 透き通る透明マイバチとスーパー超反発力が自慢!18ミリ-350mm 心地よい打音 (赤)」として掲載されたゲーム機用打撃具の意匠

第2 当審の判断

1 意匠の認定

(1)本願意匠

ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、願書の意匠に係る物品の説明によれば、太鼓状被打撃物を打撃して遊ぶために用いるばち状の「ゲーム機用打撃具」である。

イ 本願意匠の形態
本願意匠は、本体を、先端をとがらせた略円形棒状とし、その後端から真ん中近くまで略帯状のグリップテープをらせん状に巻き付けて握り手とし、本体と握り手の境界に太幅のグリップテープ止め用のバンドを取り付けている。
本願意匠の模様及び色彩について、本体は、正面視中央のバンド近傍に文字状模様を施し、全体が透明で、握り手は、全体に細線模様と斜めストライプ状の太線模様を交互にらせん状に施し、これら線模様の間に細かい点模様を多数形成したものであって、線模様及び点模様は濃い灰色でそれ以外は薄い灰色に塗り分け、バンドは、無模様で、黒色に着色している。

(2)引用意匠

ア 意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、太鼓状被打撃物を打撃して遊ぶために用いるばち状の「ゲーム機用打撃具」である。

イ 引用意匠の形態
引用意匠は、本体を、先端をとがらせた略円形棒状とし、その後端から真ん中近くまで略帯状のグリップテープをらせん状に巻き付けて握り手とし、本体と握り手の境界に太幅のグリップテープ止め用のバンドを取り付けている。
引用意匠の模様及び色彩について、本体は、バンド近傍に文字状模様を施し、全体が透明で、握り手は、全体に細線模様と斜めストライプ状の太線模様を交互にらせん状に施し、これら線模様の間に細かい点模様を多数形成したものであって、全体を赤色に着色し、バンドは、無模様で、黒色に着色している。

(3)両意匠の対比

ア 意匠に係る物品の対比
両意匠は、いずれも太鼓状被打撃物を打撃して遊ぶために用いるばち状の「ゲーム機用打撃具」であるから、同一である。

イ 形態の対比
(ア)共通点
両意匠は、形状及び模様において、共通し、色彩のうち、本体を透明とした点とバンドを黒色に着色した点において、共通する。
(イ)差異点
本願意匠は、握り手の色彩において、本願意匠は、全体が無彩色(灰色)で、表面の模様を濃淡により現しているのに対し、引用意匠は、全体を赤色に着色している点において相違する。

ウ 両意匠の類否判断
(ア)共通点の評価
共通点は、両意匠の全体に関わるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
(イ)差異点の評価
本願意匠は、握り手を灰色に着色しているのに対し、引用意匠は握り手を赤色に着色している点において相違するが、色彩については、その差異のみによって、両意匠を別異のものとする程の大きな相違であるとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(ウ)形態の類否判断
両意匠の形態における共通点及び差異点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいのに対して、差異点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さいから、両意匠の形態は類似する。

(4)小括
以上のとおり、意匠に係る物品が同一で、その形態において類似するから、両意匠は類似する。

2 引用意匠が意匠法3条1項2号に該当するに至らなかったとみなすことができるか否かについて
前記、第1の1に示すとおり、本願は、意匠法(以下「法」ともいう。)4条2項の適用を受けようとする出願であるところ、引用意匠が、法3条1項2号に該当するに至らなかったとみなすことができるか否かについて検討する。

(1)法4条2項及び3項の規定について
4条2項の規定は、創作した意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して、法3条1項1号又は2号に該当するに至った意匠(以下「公開意匠」という。)となったときには、その公開意匠が最初に公開された日から1年以内に当該公開意匠について意匠登録を受ける権利を有する者が意匠登録出願した場合、その出願に限り、新規性(法3条1項各号)及び創作性(法3条2項)の要件の判断において、当該公開意匠は法3条1項1号又は2号に該当するに至らなかったとみなすものである。
また、法4条3項の規定は、法4条2項の規定の適用を受けるための具体的な手続を定めたものであり、法4条2項の規定を受けようとする旨を記載した書面を意匠登録出願と同時に特許庁長官に提出しなければならないこと及び公開意匠が法4条2項の規定の適用を受けることができる意匠であることを証明する書面(以下「証明書」という。)を意匠登録出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならないことが規定されているものである。また、この証明書は、創作された意匠が、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して、法3条1項1号又は2号に該当するに至った意匠であることを証明するものであるから、当該証明書には、創作された意匠が法3条1項1号又は2号に該当するに至ったこと(以下「公開の事実」という。)及びその公開の事実が、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因するものであることを、具体的に記載することが必要となる。
なお、法4条2項の規定は、新規性及び創作性の要件の判断において、公開意匠を法3条1項1号又は2号に該当するに至らなかったとみなす例外規定であることから、下記のアないしウについては、創作者の救済措置として必要な限度に留め、制限的に運用すべきものであり、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して同一の意匠が複数回公開された場合(公開の事実が複数存在する場合)において、法4条2項の規定の適用を受けるためには、原則として、それぞれの公開の事実が、上記証明書に記載されていなければならないと解される。

ア 引用意匠が法3条1項2号に該当するに至ったことが意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因するものであるか否か
イ 引用意匠が法3条1項2号に該当するに至ったことが証明書に記載されているか否か
ウ 引用意匠が法3条1項2号に該当するに至った意匠であるか否か

これらを踏まえ、以下、検討する。

(2)引用意匠が法3条1項2号に該当するに至ったことが意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因するものであるか否か
審判請求人は、平成31年3月26日付けで提出した「新規性の喪失の例外証明書提出書」と共に提出した「意匠の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(1)」中の「1.公開の事実」において、公開者をアマゾンジャパン合同会社とし、「3.行為時の権利者と公開者との関係等について」において、審判請求人が、アマゾンジャパン合同会社に資料を提供し、アマゾンジャパン合同会社は提供された資料に基づいて公開の事実に記載のとおり公開を行った旨の記載があり、これらの記載に疑わしい点は見当たらないから、真正のものとして差し支えないものである。
したがって、引用意匠が法3条1項2号に該当するに至ったことは、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因するものと認められる。

(3)引用意匠が法3条1項2号に該当するに至ったことが証明書に記載されているか否か
審判請求人が提出した「意匠の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(1)」は、公開意匠がインターネット通販サイト「Amazon.co.jp」(以下「アマゾン」という。)に掲載されたことを通じて公衆に利用可能となったことを証明するものである。
そして、「1.公開の事実」中、公開された意匠の内容として掲載された意匠は、意匠に係る物品を「ゲーム機用打撃具(透明クリアマイバチ)」とし、その形態は、引用意匠と同様、本体を、先端をとがらせた略円形棒状とし、その後端から真ん中近くまで略帯状のグリップテープをらせん状に巻き付けて握り手とし、本体と握り手の境界に太幅のグリップテープ止め用のバンドを取り付けたものとし、本体全体が透明で、握り手及びバンドを黒色に着色していることから、当該証明書に記載の意匠と引用意匠とは、意匠に係る物品が、同一で、形状及び模様についても、おおよそ共通しているものといえる。しかしながら、両者は、握り手の色彩において相違していることから、引用意匠は、当該証明書に記載の意匠と同一のものとはいえない。
したがって、証明書において、引用意匠が法3条1項2号に該当するに至ったことが記載されているとは認められない。

(4)引用意匠が法3条1項2号に該当するに至った意匠であるか否か
引用意匠は、アマゾンにおいて掲載されたものであるところ、拒絶理由通知に添付された当該サイトにおける引用意匠の登録情報(第2頁所載)によれば、アマゾンでの取り扱い開始日として記載されている日付は、2019年1月17日(2019年1月19日の誤記。)であるが、引用意匠が、アマゾンにおける取り扱い開始日に、現実に当該サイトに掲載されたことを裏付けるための補足的証拠(例えば、本願の出願前の日付で投稿され、かつ引用意匠の全体の形態が現されたカスタマーレビューが掲載されている等。)がない限り、引用意匠の掲載年月日は、直ちに信用することができず、証拠性を欠くものといわざるを得ない。
したがって、引用意匠が法3条1項2号に該当するに至った意匠であるとすることはできない。

(5)小括
以上のとおり、引用意匠は、(2)法3条1項2号に該当するに至ったことが意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因したものであり、(3)法3条1項2号に該当するに至ったことは証明書に記載されているとはいえないが、(4)法3条1項2号に該当するに至った意匠であるとすることはできないから、本願意匠の新規性の要件の判断において、引用意匠を根拠に本願意匠が法3条1項3号に該当するということはできない。

第3 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-08-13 
出願番号 意願2019-6112(D2019-6112) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (E2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 加藤 真珠
内藤 弘樹
登録日 2021-09-14 
登録番号 意匠登録第1696164号(D1696164) 
代理人 松原 等 

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