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審決分類 審判 無効  創作者、出願人 無効とする M2
管理番号 1004151 
審判番号 審判1996-3004
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2000-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-02-27 
確定日 1998-05-27 
意匠に係る物品 バルブ 
事件の表示 上記当事者間の登録第 579916号意匠「バルブ」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第 579916号意匠の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び請求の理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として要旨次のように主張し、立証として、甲第1号証の1乃至3、甲第2号証の1乃至4、甲第3号証の1乃至3、甲第4号証の1乃至2、甲第5号証を提出し、証人尋問を申請した。
意匠登録第579916号(以下、「本件登録意匠」と言う)は、本件登録意匠の出願前に、日本国内において公然知られた意匠であるから、意匠法第3条第1項第1号の規定に違反し(無効事由1)、また、本件登録意匠の出願は、共同出願されていないものであるから、同法第15条第1項において準用する、特許法第37条の規定に違反してなされたものである(無効事由2)ので、意匠法第48条第1項に該当し、さらに、本件登録意匠の出願は、その意匠登録を受ける権利を、承継していないものの意匠登録出願に対してなされたものであるから、意匠法第48条第1項第3号の規定に該当し(無効事由3)、無効とすべきである。
第2.被請求人の答弁及び答弁の理由
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判請求の費用は、請求人の負担とするとの審決を求める答弁し、その理由として要旨次のように主張し、立証として、乙第1号証、乙第2号証を提出した。
(1)無効事由1について
▲1▼請求人は、本件登録意匠に関し、平成2年3月23日付で、意匠登録無効審判を請求している(平成2年審判第4680号)。
その請求理由は、本件登録意匠と同一又は類似の意匠が、本件登録意匠の出願前に日本国内で公知であるから、意匠法第3条第1項第1号の規定に該当するというものである。そして、それを立証する証拠方法として、甲第1〜3号証を提出している。
これに対して、特許庁は、前記審判請求に対し、平成7年8月31日付で、本件審判の請求は成り立たないとの審決を下し、審決は確定している。
▲2▼本件審判請求中、本項に関する部分は、意匠法第52条第1項で準用する特許法第167条(一事不再理)の規定により違法であるから、審理の対象にすべきではない。
すなわち、請求人は、甲第1〜5号証を提出して本件登録意匠が、その出願前に公然知られた意匠であることを立証しようとしている。
しかし、この証拠で立証しようとするものは、前回の無効審判で審理した事実と実質的に同一である。
また、本件審判請求で提出した証拠自体は、前回の審判請求の際に提出したものと形式的に相違しているが、本件審判請求における甲第2号証の2と甲第3号証の1及び2が、前回の無効審判請求の甲第2号証及び甲第3号証と同じであるように、立証しようとする内容が実質上同一であるから、同一証拠に該当する。
(2)無効事由2及び無効事由3について
請求人は、本件登録意匠は市丸常一単独の創作ではなく、共同創作であると主張している。
しかしながら、本件登録意匠は、市丸常一が単独で創作したものであって、共同創作したものではない。
したがって、本件登録意匠は、特許法第37条又は意匠法第48条第1項第3号違反ではない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、昭和54年1月11日の意匠登録出願であり、昭和57年4月16日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第579916号であって、その意匠登録原簿及び出願書面の記載によれば、創作者を「市丸常一」、意匠権者を「株式会社市丸技研」、意匠に係る物品を「バルブ」とし、その形態は別紙第1に示すとおりである。
すなわち、上方のシリンダー部を載持するヨークスタンド部と、ヨークスタンド部の下方中央のグランド部、および、そのグランド部を貫通するように垂下するステム部と、バルブ本体部から成る「バルブ」であって、その全体の基本的構成態様は、シリンダー部を載持するヨークスタンド部の下面中央から、グランド部を貫通するステム部を、下方に向けて垂下してバルブ本体部と直交しその本体部の流体管部の両端に、フランジ部を左右対称に設けたものとし、各部の具体的構成態様を、シリンダー部は、大径の略短円筒体の上面を伏せた略皿状に形成して中央に小孔を設け、ヨークスタンド部は、上端部を下方に向けて絞り込んだ中径の略短円筒体の上部と、対称の略枠体とした下部から成り、バルブ本体部は、前後に厚い略「十」の字状体に形成して、左右を流体管部とし、フランジ部を薄い円盤状に形成したものである。
2.各甲号証について
被請求人は、本審判事件の甲第2号証の2、甲第3号証の1乃至2を、本件登録意匠に関して審判請求され、既に不成立の審決が確定している、平成2年審判第4680号事件において、本件登録意匠はその出願前に公然知られた意匠であり、意匠法第3条第1項第1号の規定に該当するとして提出された、甲第2号証乃至甲第3号証と同一であるから、本審判事件の無効事由1の立証に採用することは、意匠法第52条第1項で準用する特許法第167条(審決の効力)の規定により違法であり、審理の対象にすべきではない旨主張し、その余の各甲号証については、反論していない。
そこで、被請求人の主張について審案すると、確かに、被請求人が主張するように、前記のような無効事由が同じであって、同一の事実及び同一の証拠に基ずく場合には、意匠法第52条第1項で準用する特許法第167条に違背すると言えるとしても、同法第167条は、同一の事実及び同一の証拠に基ずくかに拘わらず、無効事由が異なる場合にまでも、審決の効力を規定している訳ではない。
そうすると、本審判事件の無効事由2は、前記の平成2年審判第4680号事件と無効事由が異なるから、被請求人の主張は採用できない。
(1)甲第1号証の1については、三菱重工業株式会社長崎造船所産業機械部が、昭和51年10月5日付けで作成したものと推定される、「オーツタイヤ株式会社宮崎工場殿向、AFV405/300型オートフォーム加硫機、使用部品資料」と表記されたものであって、その資料の4枚目にはバルブの図面が添付されており、同図面中央及び左側に表されたバルブ図の間の「BODY-MARKING 20K-15 FUJITA FCD」の記載、および、同図面右下隅の「PISTON-VALVE」、「FUJITA VALVE INDUSTRIES」、「y.ikeda」の記載及びその左側の署名から、前記のバルブの図面及び同図面に表されたバルブ図は、藤田バルブ工業株式会社が、昭和51年10月5日以前に作成し、いけだ某或いは左側の署名者がチェックしたものと認められる。
(2)甲第1号証の2については、藤田バルブ工業株式会社営業課が作成したものと推定される、昭和53年7月24日付けの、技術課長宛の大洋トレイディングを客先とする苦情連絡表と、同表に呼応した昭和53年8月19日付けのメモ書きであって、その苦情連絡表に記載された、仕様の項目の「20K-25A-SCS13・3WAY-20KRF-ピストン弁」の記載、苦情内容の項目の「不良品の通り、Uナットが外れている」の記載、解の項目の「前回Uナットに交換した時に(中略)止まっていたものと思われる」の記載、同解の項目の右下隅に記載された7月24日付けの「市丸」の署名、および、前記のメモ書き用紙の「藤田バルブ工業株式会社」の記載から、前記の署名者の市丸が藤田バルブ工業株式会社の従業者として、昭和53年7月24日頃、ピストン弁の技術上の苦情処理業務に携わっていたことが認められる。
(3)甲第1号証の3については、藤田バルブ工業株式会社の前身の藤田製延機株式会社に入社して以来、昭和61年3月10日まで、藤田バルブ工業株式会社に42年間勤務していたと言う「蔵重政人」の、平成7年10月31日付けの「陳述書」であって、同陳述書の、「(前略)市丸常一氏は昭和53年迄、藤田バルブの技術部の部長として、我々と一緒に仕事をして参りました。(後略)」の記載から、市丸常一は、昭和53年まで、藤田バルブ工業株式会社の技術部の部長であったことが認められる。
(4)甲第2号証の2については、株式会社神戸製鋼所が作成したものと推定される、「ネジ込3方ピストン弁(フジタ製」と記載されたバルブの図面であって、その図面の中央及び左側に表されたバルブ図中央の「FUJITA 28 15A SCS13」の記載、同図右下方の「PISTON-VALVE」と[FUJITA VALVE INDUSTRIES」の記載及び「T.Ichimaru(推定)の署名から、前記のバルブ図は、藤田パルブ工業株式会社が作成し、市丸某がチェックしたものと認められ、同図面略中央下方に「77.11.18」の記載が認められる。
(5)甲第2号証の3については、株式会社神戸製鋼所設計部が作成したと推定される、「操作系統」と記載された操作系統の図面であって、その図面の右上隅に「4.」以下の記載、および、同図面の右下隅に「73.1.7」の記載が認められる。
(6)甲第2号証の4については、株式会社ブリヂストンに入社して以来、タイヤ加硫機設備一筋に30有余年になり、同社甘木工場に現在まで25年間勤務していると言う 「升永等」の、1995年10月30日付けの「陳述書」であって、その陳述書の、「(前略)4.三方ピストン弁ハ藤田パルブ製フランジ付、又、図面右下の欄には製図された日付けが記載されています。73.1.7(1973年1月7日)」の記載、および、「添付書類,2)1973年1月7日製図の加硫機操作系統図面」の記載から、昭和48年1月7日以前に藤田バルブ工業株式会社の三方ピストン弁に、フランジ付きのものが有ったことが認められる。
(7)甲第3号証の1については、株式会社神戸製鋼所が、昭和49年1月23日付けで作成したものと推定される、「外注図」と記載されたパルブの図面であって、その図面左側に表されたパルブ図右下方の、「藤田バルブ工業K.K、図番P3W2030S1-Fニヨリ作成スル」の記載、および、同図面右下隅の、「F付3方ピストン弁」の記載から、前記のバルブ図面は、藤田バルブ工業株式会社のバルブの図面に基づいて作成されたものと認められる。
(8)甲第3号証の2については、藤田バルブ工業株式会社が作成したものと推定される、「PISTON-VALVE」と記載されたバルブの図面であって、その図面中央及び左側にはフランジ付きのバルブ図が表され、同図面右下隅には「P3W2030S1-F」の記載が認められる。
(9)甲第5号証については、有森工業株式会社に昭和49年4月に入社し、平成7年7月31日に退職するまでの21年間、三方ピストン弁を販売していたと言う、平成7年10月31日付けの笠嶋建彦の「陳述書」であって、その陳述書の「(前略)昭和49年5月頃(株)神戸製鋼所本社資材課益田氏より(株)ブリヂストン向けで三方ピストン弁の注文を貰い藤田バルブ工業(株)に発注をしましたが、(中略)其の時藤田バルブ工業(株)内でピストン弁の責任者市丸常一氏と工程打ち合わせを致しました。(後略)」の記載から、市丸常一が、昭和49年頃、藤田バルブ工業株式会社のピストン弁の責任者であったことが認められる。
そうして、請求人の主張及び各甲号証の記載から、さらに、前記の(1)乃至(9)について精査すると、(1)における左側の署名は、(4)の「T.Ichimaru」の署名と同一と推定されるものであり、市丸常一の署名と認められるから、(1)のバルブの図面は、市丸常一がチェックして署名したものと認められ、(2)における署名は、市丸常一の署名と認められるから、(2)の苦情連絡表の解は、市丸常一が記載したものと認められ、(4)のバルブ図は、昭和53年11月18日以前に作成されて、市丸常一がチェックして署名した(請求人は請求の理由で「I.Ichimaru」と記載しているが「T.Ichimaru」の誤記と推定する)ものと認められ、(5)の操作系統の図面は、タイヤ加硫機の操作系統の図面と認められ、その「4.」以下の記載は、「4.三方ピストン弁ハ藤田パルブ製フランジ付」と記載されて、昭和48年1月7日に作成されたものと認められ、(8)のバルブの図面は、(7)のバルブの図面の基になったものと認められる。
3.各甲号意匠
(1)甲第2号証の2に表された意匠(以下、「甲第2号意匠」と言う)は、昭和53年11月18日以前に、藤田バルブ工業株式会社が作成した、図面により表された「バルブ」の意匠であって、その形態は別紙第2に示すとおりである。
そこで、甲第2号意匠について検討すると、同意匠は、本件登録意匠で示された図面表示に倣うと、右側面図及び中央縦断面図によって表されたものであって、全体形状を正確に把握することができるとは言えないが、その形態を前記の図面から推察すると、上方のシリンダー部を載持するヨークスタンド部と、ヨークスタンド部の下方中央のグランド部、および、そのグランド部を貫通するように垂下するステム部と、バルブ本体部から成るバルブであって、その全体の基本的構成態様は、シリンダー部を載持するヨークスタンド部の下面中央から、グランド部を貫通するステム部を,下方に向けて垂下してバルブ本体部と直交したものとし、各部の具体的構成態様を、シリンダー部は、大径の略短円筒体の上面を伏せた略皿状に形成して中央に小孔を設け、ヨークスタンド部は、上端部を下方に向けて絞り込んだ中径の略短円筒体の上部と、対称の略枠体とした下部から成り、バルブ本体部は、前後に厚い略「十」の字状体に形成して、左右を流体管部としたものである。
(2)甲第3号証の2に表された意匠(以下、「甲第3号意匠」と言う)は、昭和49年1月23日以前に、藤田バルブ工業株式会社が作成した、図面によって表された「バルブ」の意匠であって、その形態は別紙第3に示すとおりである。
そこで、甲第3号意匠について検討すると、同意匠は、本件登録意匠で示された図面表示に倣うと、右側面図及び中央縦断面図によって表されたものであって、全体形状を正確に把握することができるとは言えないが、その形態を前記の図面から推察すると、上方のシリンダー部を載持するヨークスタンド部と、ヨークスタンド部の下方中央のグランド部、および、そのグランド部を貫通するように垂下するステム部と、バルブ本体部から成るバルブであって、その全体の基本的構成態様は、シリンダー部を載持するヨークスタンド部の下面中央から、グランド部を貫通するステム部を、下方に向けて垂下してバルブ本体部と直交し、その本体部の流体管部の両端に、フランジ部を左右対称に設けたものとし、各部の具体的構成態様を、シリンダー部は、大径の略短円筒体の上面を伏せた略皿状に形成して中央に小孔を設け、ヨークスタンド部は、上端部を下方に向けて絞り込んだ中径の略短円筒体の上部と、対称の略枠体とした下部から成り、バルブ本体部は、前後に厚い略「十」の字状体に形成して、左右を流体管部とし、フランジ部を薄い円盤状に形成したものである。
4.無効事由2について
本件登録意匠の出願は、共同出願されていないものであるから、意匠法第15条第1項において準用する、特許法第37条の規定に違反してなされたものであり、意匠法第48条第1項に該当する旨の請求人の主張について審案する。
(1)被請求人について
被請求人は、本件登録意匠の意匠権者であり、その代表者の市丸常一は創作者である。
ところで、前記の各甲号証の記載及び請求人の請求の理由を総合すると、市丸常一は、少なくとも昭和49年から同53年まで、藤田バルブ工業株式会社の従業者であって、その間バルブの責任者として、バルブの図面の監督業務、バルブの工程の打ち合わせ業務、バルブの技術上の苦情処理業務に携わっていたことは明らかであるから、本件登録意匠の出願前に、藤田バルブ工業株式会社のバルブの意匠の創作に深く関与していた者と認められる。
(2)本件登録意匠と甲第2号意匠について
両意匠を比較すると、両意匠は、タイヤ加硫機等に使用するピストンバルブと称されるバルブであって、意匠に係る物品が一致し、形態については、以下に示す共通点及び差異点がある。
すなわち、両意匠は、上方のシリンダー部を載持するヨークスタンド部と、ヨークスタンド部の下方中央のグランド部、および、そのグランド部を貫通するように垂下するステム部と、バルブ本体部から成るバルブであって、シリンダー部を載持するヨークスタンド部の下面中央から、グランド部を貫通するステム部を、下方に向けて垂下してバルブ本体部と直交した、全体の基本的構成態様が共通し、シリンダー部は、大径の略短円筒体の上面を伏せた略皿状に形成して中央に小孔を設け、ヨークスタンド部は、上端部を下方に向けて絞り込んだ中径の略短円筒体の上部と、対称の略枠体とした下部から成り、バルブ本体部は、前後に厚い略「十」の字状体に形成して、左右を流体管部とした、各部の具体的構成態様が共通する。
一方、本件登録意匠は、流体管部の両端に、薄い円盤状に形成したフランジ部を左右対称に設けているのに対し、甲第2号意匠は、それを設けていない点に差異がある。
そこで、両意匠の共通点及び差異点を総合して両意匠を全体として検討すると、両意匠に共通する基本的構成態様及び各部の具体的構成態様は、形態上の特徴を強く表象すると共に、形態全体の基調を形成するところであり、意匠の類否を左右する要部をなすものと認められる。
一方、差異点は、フランジ部の有無についてであるが、前記の請求人の主張及び各甲号証の記載からすると、本件登録意匠の出願前に、バルブにフランジ部を設けることがあることは明らかであり、さらに、フランジ部は、どちらかというと、バルブの付属品としての要素が強く、バルブの創作という点から観ると二義的なものであり、創作の主要部でないから、意匠全体から観れば、部分的で微弱な差異にすぎない。
そうすると、その差異点は、両意匠の醸し出す形態全体の雰囲気を、異にする程著しい特徴を表出するものでなく、前記の共通点の奏する基調を超えて、類否判断を左右するものとは言えない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態においてもその基調が共通するものであり、差異点は、その基調を凌駕する程のものではないから、意匠全体として観察すると類似するものと言うほかない。
(3)本件登録意匠と甲第3号意匠について
両意匠を比較すると、両意匠は、タイヤ加硫機等に使用するピストンバルブと称されるバルブであって、意匠に係る物品が一致し、形態については、バルブ本体部の流体管部の両端に、薄い円盤状に形成したフランジ部を、左右対称に設けた点で共通するものであって、そのフランジ部は、略同様の態様と認められる。
(4)共同出願について
法は、意匠法第15条第1項で準用する特許法第37条において、意匠登録を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、意匠登録出願をすることができないと規定している。
すなわち、意匠登録を受ける権利は、意匠の創作者に有って、複数の者が共同で意匠の創作をした場合には、その複数の創作者の共有となり、その複数の創作者は共同創作者として、意匠登録出願も共同ですることが定められており、その共同創作者とは、意匠の形態の創作の過程に、意思を直接的に反映し、実質上その形態の形成に関与した者を言う。
これを、本件登録意匠について考察すると、被請求人の株式会社市丸技研を意匠権者とし、その代表者の市丸常一を創作者とする本件登録意匠は、市丸常一が藤田バルブ工業株式会社の従業者として、創作に深く関わっていたところの、本件登録意匠と類似する甲第2号意匠、および、本件登録意匠と同様のフランジ部を有する甲第3号意匠、さらに、甲第1号証の1のバルブの意匠から観て、少なくとも市丸常一の単独の創作とは言い難いものであって、市丸常一を含む藤田バルブ工業株式会社の複数の従業者の共同の創作に係るものと認められるから、その複数の者は、意匠登録を受ける権利を共有する関係にあったと認められる。
したがって、本件登録意匠に関して、意匠登録を受ける権利が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、意匠登録出願をすることができない。
5.むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第15条第1項において準用する、特許法第37条の規定に違反して出願されたものであり、意匠法第48条第1項に該当するから、その余の無効事由について審理するまでもなく、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論の通り審決する。
別掲 別紙第1

別紙第2

別紙第3

審理終結日 1998-02-27 
結審通知日 1998-03-17 
審決日 1998-04-14 
出願番号 意願昭54-710 
審決分類 D 1 11・ 15- Z (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久米 瑞子 
特許庁審判長 瀬尾 和子
特許庁審判官 伊勢 孝俊
松原 至
登録日 1982-04-16 
登録番号 意匠登録第579916号(D579916) 
代理人 堤 隆人 
代理人 平田 義則 
代理人 小堀 益 

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