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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする D2
管理番号 1020912 
審判番号 審判1999-35464
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-08-30 
確定日 2000-08-04 
意匠に係る物品 ふろばの腰掛け 
事件の表示 上記当事者間の登録第0972829号「ふろばの腰掛け」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第0972829号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証乃至甲第7号証の書証を提出した。
1.意匠登録無効の理由の要点
(1)無効理由1
本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物(甲第4号証及び甲第7号証)に記載された意匠と同一であるから、意匠法第3条1項第2号の規定に該当し、意匠登録を受けることができないものであり、意匠法第48条第1項1号により、無効とすべきものである。
(2)無効理由2
本件登録意匠は、その登録意匠が意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を有しないものの意匠登録出願に対してされたものであるから、意匠法第48条第1項第3号により、無効とすべきものである。
2.本件意匠登録を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「ふろばの腰掛け」として、平成6年8月23日出願、平成8年10月15日設定の登録がされたものである(甲第1号証及び甲第2号証)。本件登録意匠は、台座と座部と柱体から構成されており、台座は、略円錐台形状に形成されるとともに、斜面部の略中央を境として下部全周が外側へ曲面的にリング状に膨出し且つ上部全周が内側へ曲面的にリング状に窪み、座部は、中央に開口部が設けられた円盤形状に形成されるとともに、その外周面と上面の間には丸みをもつ面取り部が形成され、且つ該上面には前記開口部の周りを囲むようにリング状の色彩模様部が形成されている。柱体は、その外周部に雄ねじが形成されている。
(2)無効理由1
甲第4号証の意匠は、株式会社佐藤工業デザイン事務所に対して付与されたデザイン表彰書類に記載されたものである。この表彰書類は、平成6年(1994年)6月27日に公表されたものであり、この表彰書類には、該意匠の斜視図と、創作者の所属する事務所名と、該意匠の公表日、該意匠に係る物品の製造者等が記載されている。
甲第4号証に係る意匠「風呂イス」は、台座と座部と柱体とから構成される。台座は、略円錐台形状に形成されるとともに、斜面部の略中央を境として下部全周が外側へ曲面的にリング状に膨出し且つ上部全周が内側へ曲面的にリング状に窪み、座部は、中央に開口部が設けられた円盤形状に形成されるとともに、その外周面と上面の間には丸みをもつ面取り部が形成され、且つ該上面には前記開口部の周りを囲むようにリング状の色彩模様部が形成されている。柱体は、その外周部に雄ねじが形成されている。
甲第7号証の意匠は、平成6年(1994年)8月18日に、産業経済新聞の広告面に掲載されたものである。この広告には該意匠の斜視図と、使用状説明態図と、使用方法が記載されている。甲第7号証に係る意匠「風呂イス」は、台座と座部と柱体とから構成される。台座は、略円錐台形状に形成されるとともに、斜面部の略中央を境として下部全周が外側へ曲面的にリング状に膨出し且つ上部全周が内側へ曲面的にリング状に窪み、座部は、中央に開口部が設けられた円盤形状に形成されるとともに、その外周面と上面の間には丸みをもつ面取り部が形成され、且つ該上面には前記開口部の周りを囲むようにリング状の色彩模様部が形成されている。柱体は、その外周部に雄ねじが形成されている。
そこで、本件登録意匠と甲第4号証及び甲第7号証の意匠との対比すると、本件登録意匠に係る物品は、「ふろばの腰掛け」であり、甲第4号証及び甲第7号証の意匠に係る物品はともに「風呂イス」であって、これらは相互に物品が同一である。また、甲第4号証及び甲第7号証の意匠はともに、本件登録意匠の構成を全て具備しており、同一である。したがって、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第4号証及び甲第7号証に記載された意匠と同一であるから、意匠法第3条1項第2号の規定に該当し、意匠登録を受けることができないものであり、意匠法第48条第1項第1号により、無効とすべきものである。
(3)無効理由2
前記甲第4号証に係る意匠の創作をした者である株式会社佐藤工業デザイン事務所の登記簿謄本(甲第5号証)から、事務所の代表取締役は佐藤紀雄氏であることがわかるが、この佐藤紀雄氏が本件登録意匠の正当な創作者であることは、実開平5-91671号公報(甲第6号証)から明らかである。
したがって、被請求人を本件登録意匠の創作者とするのは不当であり、本件登録意匠出願はいわゆる冒認出願に相当するものである。本件登録意匠は、その登録意匠が意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を有しないものの意匠登録出願に対してされたものであるから、意匠法第48条第1項第3号により、無効とすべきものである。
第2.被請求人の答弁及びその理由の要点
これに対し、被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、乙第1号証及び乙第2号証の書証を提出した。1.答弁の理由の要点
請求人の提出した証拠及び理由を検討する限り、請求人の主張には理由がなく、本件意匠はその実体的登録要件を具備した有効なものであるので、以下にその理由を詳述する。
(1)利害関係の有無について
請求人は、審判請求書において、被請求人が、甲第3号証に示す訴状の通り、平成10年12月18日付で、請求人に対して、高松地方裁判所丸亀支部に不当利得金返還請求の訴え(平成10年(ワ)第190号(以下「本件訴訟」という。))を提起しているので、本件審判の請求について利害関係を有する者である旨を主張している。被請求人が請求人に対して本件訴訟を提起していることは事実であるが、その主たる請求の原因はそもそも原告たる被請求人が着想し完成させたふろばの腰掛けの構想の開示を受けて、被請求人よりの委託により商品化した製品を被告たる請求人が、無断で違法に製造・販売を続けると共に、被請求人の創作物を自己の創作物として権利化して不当な利得を受けていることにある。
両者の権利関係を具体的に説明すると、被請求人は本件登録意匠のほかに下記2件の実用新案権を取得した経緯がある。即ち、実用新案登録第2507154号(平成5年6月28日出願、平成8年5月30日登録)、実用新案登録第3006728号(平成6年4月5日出願、平成6年11月9日登録)。これに対して、請求人は、考案者又は発明者「佐藤紀雄」氏並びに権利者「佐藤紀雄」氏及び「川崎清志」氏名義で以下の3件の実用新案権及び特許権を取得した経緯がある。実用新案登録第3016005号(平成4年5月21日出願、平成5年12月14日出願公開、平成6年10月25日改正実用新案登録出願に変更、平成7年7月12日登録)、また、特許第2706757号(平成6年6月9日出願、平成7年12月19日出願公開、平成9年10月17日登録)、さらに、実用新案登録第3028519号(平成8年2月28日出願、平成8年6月19日登録)、そこで、上記権利の相関関係を踏まえて、以下に請求人の主張について答弁し、併せて本件訴訟が提起された背景について説明する。
(2)無効理由1について
本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された甲第4号証及び甲第7号証に記載された意匠であるから、意匠法第3条第1項第2号の規定に該するという無効理由1について、請求人は、審判請求書において、甲第4号証に係る意匠について、「この意匠は、株式会社佐藤工業デザイン事務所に対して付与されたデザイン表彰書類に記載されたものである。この表彰書類は、平成6年(1994年)6月27日に公表されたものであり、この表彰書類には、該意匠の斜視図と、創作者の所属する事務所名と、該意匠の公表日と、該意匠に係る物品の製造者等が記載されている。」と述べており、甲第4号証に係る意匠が意匠法第3条第1項第2号に該当するに至った日は、平成6年6月27日であることが分かる。また、甲第7号証に係る意匠について、「この意匠は、平成6年(1994年)8月18日に、産業経済新聞の広告面に掲載されたものである。この広告面には、該意匠の斜視図と、使用状態説明図と、使用方法が記載されている。」と述べており、甲第7号証に係る意匠が意匠法第3条第1項第2号に該当するに至った日は、平成6年8月18日であることが分かる。従って、請求人の提出した甲第4号証及び甲第7号証は、いずれも本件登録意匠の出願日である平成6年8月23日前6月以降に意匠法第3条第1項第2号に該当するに至ったことが明らかであり、これらは意匠登録を受ける権利を有する被請求人の意に反して同号に該当するに至ったものであることから、本件登録意匠の新規性阻却事由とはならないものである。請求人は、本件意匠の真実の創作者が被請求人ではないかの如く主張する第2の無効理由を併せて述べているが、この点に対する反論は後述するとして、本件登録意匠の真実の創作者は被請求人であって、意匠登録を受ける権利を正当に有する者であることは間違いのない事実である。
よって、本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された甲第4号証及び甲第7号証に記載された意匠であるとしても、意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して意匠法第3条第1項第2号に該当するに至ったものであり、同法第4条第1項の規定により、同号には該当するに至らなかったものとみなされるので、請求人の主張する無効理由1は失当である。
(3)無効理由2について
本件意匠は、その意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を継承しないものの意匠登録出願に対してされたものであるという無効理由2について、請求人は、「本件登録意匠が、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物(甲第4号証)に記載された意匠であることは既に述べた。甲第5号証として添付した株式会社佐藤工業デザイン事務所(甲第4号証に係る意匠の創作事務所)の登記簿謄本から、同事務所の代表取締役は佐藤紀雄氏であることが判るが、この佐藤紀雄氏が本件登録意匠の正当な創作者であることは、実開平5-91671号公報(甲第6号証)で明らかである。」と主張し、本件意匠の創作者は被請求人ではなく、本件はいわゆる冒認者による出願に相当すると結論づけているが、請求人の主張に根拠がないことは一目瞭然である。
すなわち、請求人の提出した甲第4号証及び同第5号証は創作者の所属する事務所名が「株式会社佐藤工業デザイン事務所」であること及び同事務所の代表取締役が「佐藤紀雄」氏であることを証明しているに過ぎず、「佐藤紀雄」氏が本件意匠の真実の創作者であることを立証するものではない。また、請求人は実開平5-91671号公報(甲第6号証)に係る考案(以下、「請求人考案」という。)の考案者が「佐藤紀雄」氏であるから本件意匠の創作者も同一であるかの如き主張をしているが、考案と意匠では創作された客体が異なり、「佐藤紀雄」氏が本件意匠の真実の創作者であることを立証するものでないことに変わりはない。請求人の主張に従うと、台座と座部と柱体とから構成されるフロ用イスの意匠はすべて「佐藤紀雄」氏が創作者であることにもなりかねないが、現実にそのような主張が成り立つわけではないことは明らかであると共に、本件意匠は請求人考案に係る意匠とは非類似の新たな意匠であることも明らかである。
さらに、請求人は、「本件意匠の構成を、本件登録意匠『ふろばの腰掛け』は台座と、座部と、柱体とから構成されている。台座は、甲第2号証の正面図、平面図、底面図に示す如く、略円錐台形状に形成されるとともに、斜面部の略中央を境として下部全周が外側へ曲面的にリング状に膨出し且つ上部全周が内側へ曲面的にリング状に窪み、座部は、甲第2号証の正面図、平面図に示す如く、中央に開口部が設けられた円盤形状に形成されるとともに、その外周面と上面の間には丸みをもつ面取り部が形成され、且つ該上面には前記開口部の周りを囲むようにリング状の色彩模様部が形成されている。柱体は、甲第2号証の正面図に示すが如く、その外周部に雄ねじが形成されている。」と解している。しかしながら、甲第6号証の図1には請求人考案の実施例を示す断面図、図2〜図5には請求人考案の構造を示す部分拡大図、図6には従来の実施例を示す図が記載されているにすぎず、請求人が解しているような本件意匠の構成が開示されているとは到底考えられないものである。
よって、甲第6号証に記載のものは本件意匠とは非類似の意匠であると共に、本件意匠の真実の創作者は被請求人であり、被請求人は本件意匠について正当なる意匠登録を受ける権利を有する者であるので、請求人の主張する無効理由2も失当である。
(4)前述の通り、本件意匠の真実の創作者は被請求人であるにもかかわらず、請求人が甲第6号証の存在を理由に「佐藤紀雄」氏が本件意匠の正当な創作者であるかの如く主張している背景には次のような事情がある。
ふろばの腰掛けの構想を持っていたのは請求人会社代表者「川崎清志」氏でも工業デザイナー「佐藤紀雄」氏でもなく、被請求人なのである。「佐藤紀雄」氏は「川崎清志」氏より依頼により被請求人のための設計図を作成したに過ぎないのである。「佐藤紀雄」氏は被請求人の創作を「川崎清志」を介して開示を受けて設計したふろばの腰掛けを自らの創作と勘違いして、共同で実用実用新案登録出願をして自己の権利としたのである。
(5)結論
上記の通り、請求人は本件審判と平成11年審判第35463号と本件訴訟において種々の主張を使い分けているため、請求人の主張及びその根拠には客観的な信憑性があるとは到底考えられないものであると共に、本件意匠の真実の創作者は被請求人であること、及び請求人の提出した甲第4号証及び同第7号証は、いずれも意匠登録を受ける権利を有する被請求人の意に反して意匠法第3条第1項第2号に該当するに至ったものであることから、請求人の主張には理由がないものと確信する。
第3.無効の理由の通知
これに対し、当審は、「本件登録意匠は、その出願前、平成5年12月14日に国内において頒布された刊行物、特許庁発行の公開実用新案公報所載、平成5年実用新案出願公開第91671号(甲第6号証)に記載された「フロ用イス」の意匠に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同条同項柱書きの規定に違反して登録されたものであるから、同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきでものある。」旨の無効の理由を通知した。
当審の無効理由に対し、被請求人は、「両意匠を全体的に観察すると、両意匠の差異は意匠の要部に係る顕著なものであることから、本件意匠と甲第6号証に記載された『フロ用イス』の意匠とはその支配的態様が異なる非類似の意匠であるというべきものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同条同項柱書きの規定に違反して登録されたものであるので、同法第48条第1項第1号に該当するという無効理由はないものであると確信する。」旨主張し、以下の通りその理由を述べた。
すなわち、本件意匠に係る「ふろばの腰掛け」は、請求人の提出した審判請求書に記載されているように、以下の形状等を有する台座(1)と、座部(2)と、柱体(3)とから構成されている。
台座(1)は、略円錐台形状に形成されるとともに、斜面部の略中央を境として下部全周が外側へ曲面的にリング状に膨出し且つ上部全周が内側へ曲面的にリング状に窪み、座部(2)は、中央に開ロ部が設けられた円盤形状に形成されるとともに、その外周面と上面の間には丸みをもつ面取り部が形成され、且つ該上面には前記開口部の周りを囲むようにリング状の色彩模様部が形成されている。柱体(3)は、その外周部に雄ねじが形成されている。
これに対して、甲第6号証に記載された「フロ用イス」は、意匠に係る物品が本件意匠と共通するものの、その意匠は本件意匠とは明らかに異なるものである。すなわち、甲第6号証に記載された「フロ用イス」は、その実用新案登録請求の範囲に記載されているように、「ねじ山が内周面に形成された開口部を中央に有する合成プラスチック等の略円錐台形状の台座部と、前記開口部に螺嵌されるねじ山が外周面に成形された合成プラスチック等の円筒状の軸と、この円筒状の軸と一体に成形され、且つ上面外周部全周にころがり軸受が設けられた円形状の座受部と、この座受部の上面に設けられ、且つ裏面外周部全周にころがり軸受が設けられた円形状の座部と、この座部を係止する抜け止め部材とからなり、前記円筒状の軸と前記座受部の境部分の内周部全周には突部が設けられるとともに、この突部の下面にはつめが全周に設けられ、該つめと噛合するように前記抜け止め部材の上面外周部全周につめが設けられてなる。」ことを特徴とするものである。
本件登録意匠と甲第6号証に記載された意匠の具体的な相違について検討すると、本件登録意匠は甲第6号証に記載された「フロ用イス」の意匠に類似するものであると認定された理由は、本件意匠の正面図中央縦拡大断面図と甲第6号証の図1とが類似していることによるものと推測される。しかしながら、本件登録意匠の要旨は、ふろばの腰掛けにおける断面図に示される部分にあるというわけではなく、むしろ上記の構成要素中、特に台座(1)及び座部(2)の形状等に顕著に現われているものである。
すなわち、上記の通り本件登録意匠の台座(1)は、斜面部の略中央を境として下部全周が外側へ曲面的にリング状に膨出し且つ上部全周が内側へ曲面的にリング状に窪むというようにきわめて斬新な美しいボディフォルムを形成する曲線を描いているのに対し、甲第6号証に記載された「フロ用イス」の台座部(2)は上部から下部にかけて次第に拡径されてなるというようにありふれた略円錐台形状に形成されており、両者はその構成要素中台座(1)の形状が顕著に相違する。
さらに、本件登録意匠の座部(2)には、中央に開口部が設けられた円盤形状、その外周面と上面の間の丸みをもつ面取り部、及び上面の開口部の周りを囲むように形成されたリング状の色彩模様部というような特徴点が存在しており、甲第6号証に記載された「フロ用イス」の意匠には「円形状の座部(8)」との記載があるに過ぎず、上記の特徴点については全く記載されていない。
第4.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、願書の記載及び願書添付の図面代用写真によれば、平成6年8月23日に意匠登録出願をし、平成8年10月15日に意匠権の設定の登録がなされたものであり、意匠に係る物品を「ふろばの腰掛け」とし、その形態は、願書添付の図面代用写真に現わされたとおりのものである。(別紙第一参照)
すなわち、(1)全体が、台座部、座部及び座部を台座部に取着する柱体部とからなるものであって、台座部を略円錐台状に形成し、座部を略円盤状に形成し、柱体部を座部の下面中央から垂下する円筒状として一体的に形成して、台座部の頂面の垂直円筒状孔に貫挿させて螺合した基本的構成態様とし、また、その具体的態様において、(2)全体の構成比率につき、縦横比、即ち、台座部底面から座部上面までの高さい対する台座部底面の直径(最大径)の比を略4:3とし、座部の径を台座部の底面の径よりやや小さいものとし、(3)台座部について、全体を、外形線が緩やかなS字状を呈するやや扁平なベル状の中空の略円錐台形状とし、底面全体が開口し、頂面が外周に細幅を残して円孔状に開口し、周側面につき、下から略1/5の高さの位置に段差を設けて下方を若干拡径し、台部下端の底面周縁に滑り止め用の縁材を嵌着し、頂面外周を角丸状に形成し、(4)座部について、座部を、上縁外周を円弧状に丸めたフライングディスク(フリスビー)様の中空の円盤状とし、その中央に同心状に略1/5の径の円孔を設け、連続させて円筒状に円盤の厚みの2倍強垂下させ、その円孔と外周の間に頂面の外周の円弧状の垂下部分を除く水平面の半径の略1/4の帯幅のリング状の滑り止め部材を暗調子に表し、また、(5)座部の下方中央に柱体部を垂下させ、頭部が円盤状のキノコ様に一体に形成したものである。
2.無効の理由として引用した意匠
本件登録意匠の出願前、平成5年12月14日に公開された公開実用新案公報所載、平成5年実用新案出願公開第91671号、図1乃至図5に記載の「フロ用イス」の意匠(以下「引用意匠」という。)(別紙第二参照)
3.本件登録意匠と引用意匠の対比
そこで、本件登録意匠と引用意匠について比較検討すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通しており、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。
[共通点]
(1)全体が、台座部、座部及び座部を台座部に取着する柱体部とからなるものであって、台座部を略円錐台状に形成し、座部を略円盤状に形成し、柱体部を座部の下面中央から垂下する円筒状として一体的に形成して、台座部の頂面の垂直円筒状孔に貫挿させて螺合した基本的構成態様の点、また、その具体的態様において、
(2)全体の構成比率につき、縦横比、即ち、台座部底面から座部上面までの高さに対する台座部底面の径(最大径)の比を略4:3とし、座部の径を台座部の底面の径よりやや小さいものとしている点
(3)台座部について、全体を、正面視の外形線が緩やかなS字状を呈するやや扁平なベル状の中空の略円錐台状としている点
(4)座部について、その上縁外周を円弧状に丸めたフライングディスク(フリスビー)様の中空の円盤状とし、その中央に同心状に円孔を設け、そこから連続させて円筒状を垂下させている点
(5)座部の下方中央から円筒状を垂下させて柱体部とし、正面視において、頭部が円盤状のキノコ様に一体に形成したものである点
[差異点]
(イ)台座部の周側面について、本件登録意匠は、周側斜面部の略中央上方寄りが、大きな凹湾状に絞られて、下部全周が外側に伏腕状に膨出し、下から略1/5の高さの部位に環状に段差が設けられているのに対して、引用意匠は、上方から下部にかけて緩やかな凹円弧状に形成されている点
(ロ)台座部底面について、本件登録意匠は、底面全体が開口し、台座部下端の底面周縁に滑り止め用の縁材を嵌着しているのに対して、引用意匠は、底面が閉じられている点
(ハ)座部について、本件登録意匠は、その中央に同心状に略1/5の径の円孔を設け、その円孔と外周の間に、蛇の目様に暗調子のリング状の帯状の目地材を表しているのに対し、引用意匠は、平面図の記載がなくこの点が明確でない点、に主たる差異がある。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、まず、共通点について、(1)の全体が、台座部、座部及び座部を台座部に取着する柱体部とからなるものであって、台座部を略円錐台状に形成し、座部を略円盤状に形成し、柱体部を座部の下面中央から垂下する円筒状として一体的に形成して、台座部の頂面の垂直円筒状孔に貫挿させて螺合した基本的構成態様の点は、両意匠の形態に関する骨格を構成し、全体の基調をなす特徴といえ、類否判断を左右する支配的要素というべきである。また、両意匠に共通する具体的態様、特に、(2)の全体の構成比率につき、縦横比を略4:3とし、座部の径を台座部の底面の径よりやや小さいものとしている点、また、(3)の台座部について、全体を、正面視の外形線が緩やかなS字状を呈するやや扁平なベル状の中空の略円錐台状としている点、さらに、(4)の座部について、その上縁外周を円弧状に丸めたフライングディスク(フリスビー)様の中空の円盤状とし、その中央に同心状に円孔を設けている点は、基本的構成態様の共通点と相俟って、両意匠の共通感をより一層際だたせるものとなっており、看者の注意を惹くところであって、その類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。
他方、両意匠の差異点について、(イ)の台座部の周側面について、本件登録意匠は、周側斜面部の略中央上方寄りが、大きな凹湾状に絞られて、下部全周が外側に伏腕状に膨出し、下から略1/5の高さの部位に環状に段差が設けられている点の差異であるが、両意匠は、周側面全体を、正面視の外形線が緩やかなS字状を呈するやや扁平なベル状の中空の略円錐台状とし、フライングディスク様の座部と相俟って、正面視において、頭部が円盤状のキノコ様を呈している点が顕著に共通しており、その共通点の中にあっては、本件登録意匠の周側斜面部を大きな凹湾状に形成した差異が目立たず、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。また、(ロ)の台座部底面について、本件登録意匠は、底面全体が開口し、台座部下端の底面周縁に滑り止め用の縁材を嵌着している点であるが、この種の物品において、さほど重要視されない部位についてのもので、また、本件登録意匠のものは、従来から普通に見られるもので一般的なもので格別の特異性がなく、その類否判断に及ぼす影響は微弱なものというほかなく、さらに、(ハ)座部について、引用意匠は、平面図の記載がなくこの点が明確ではないが、図1、及び図3乃至図5を参酌すると、引用意匠にも、暗調子のものではないものの本件登録意匠と同部位にリング状の帯状の目地材が設けられているものと推察され、その差異を、大きな差異と評価することができず、その類否判断に及ぼす影響は、未だ、微弱なものというべきである。
そうして、上記の差異点が相互に相俟って、相乗効果を生じることを考慮しても、本件登録意匠は、意匠全体として引用意匠にない格別の特異性を発揮するまでには至っておらず、前記の各差異点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。
なお、本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内において頒布された刊行物の甲第4号証及び甲第7号証に記載された意匠とは、台座部の形状、座部の形状において差異があり同一のものとは認められないから、意匠法第3条1項第2号に該当せず、その規定によっては、無効とすることはできない。
また、したがって、被請求人の「本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された甲第4号証及び甲第7号証に記載された意匠であるとしても、意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して意匠法第3条第1項第2号に該当するに至ったものであり、同法第4条第1項の規定により、同号には該当するに至らなかったものとみなされる。」旨の主張も、理由がない。
以上の通りであって、本件登録意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が共通しており、その形態について、両意匠の共通点は、類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められるのに対し、差異点は、いずれも類否判断に及ぼす影響が微弱なものであり、共通点を凌駕することができず、両意匠は類似するものといわざるを得ない。
従って、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同項柱書きの規定に違反して意匠登録を受けたものであるから、その登録は、無効とすべきものである。
よって結論の通り審決する。
別掲
審理終結日 2000-05-23 
結審通知日 2000-06-02 
審決日 2000-06-13 
出願番号 意願平6-25388 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (D2)
最終処分 成立 
前審関与審査官 遠藤 行久 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 市村 節子
本多 誠一
登録日 1996-10-15 
登録番号 意匠登録第972829号(D972829) 
代理人 清原 義博 
代理人 川崎 隆夫 
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