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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L5 |
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管理番号 | 1036800 |
審判番号 | 審判1998-35651 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2001-06-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-12-18 |
確定日 | 2001-02-15 |
意匠に係る物品 | 戸車用レール |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1015087号「戸車用レール」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1015087号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成7年8月10日に出願(意願平7-23602号)され、平成10年5月1日に設定の登録がなされ、平成10年7月13日に意匠公報が発行された意匠登録第1015087号であって、意匠に係る物品が「戸車用レール」、その形態が願書及び添付図面に記載されたとおりのものである(別紙1参照)。 2.当審の通知した登録無効理由に引用した意匠 当審では、被請求人に対して平成11年7月13日付で本件登録意匠の無効理由を通知したが、そこにおいて引用した意匠は、本件登録意匠の出願日前、平成7年7月27日に特許庁が発行した意匠公報所載の登録第930663号意匠であって、意匠に係る物品が「戸車用レール」、その形態が該公報に記載されたとおりのものである(別紙2参照)。 3.当事者の意見 これに対し、被請求人は、平成11年9月6日付で意見書を提出し、両意匠が戸車溝の形状、全体の寸法比率及び側壁外面の形状等に差異を有する非類似の意匠である旨主張した。 一方、請求人からは、指定期間内に意見書の提出がなかったものである。 4.当審の判断 本件登録意匠と引用意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、形態については、次に示す共通点と差異点が認められる。 [共通点] (1)長手方向に連続する溝型鋼状レールの開口部両縁に外側に向かって水平に張り出すウイング状鍔を形成し、溝の両縁部に側壁の肉厚幅程度の傾斜面から成る戸車転動面を断面視左右対称的に形成し、鍔を除いた外側壁面の大部分に上方に向けて広がる断面視鋸歯状の突条を下端部を起点として左右対称的に数本等間隔に形成して成る全体の基本的構成態様。 (2)鍔の態様について、鍔の基本形を平板状とし、外側端部上隅を丸面に形成していること。 (3)溝の態様について、溝両縁部の傾斜面(戸車転動面)に続く内側壁面に垂直面を設け、さらに溝底部両隅を水平方向に抉り取って内側壁面下部に凹部を形成することにより、断面視略リベット頭状の溝空間を形成していること。 (4)レールの全幅を全高の2倍前後としていること。 [差異点] (1)鍔を除いたレール本体部の幅に対する高さの比率について、本件登録意匠においては、約1:0.7であるのに対し、引用意匠においては、約1:1であること。 (2)溝の最小幅に対する深さ比率について、本件登録意匠においては、約1:1.2であるのに対し、引用意匠においては、約1:2.5であること。 (3)溝底部両隅における内側壁面の凹部の態様について、本件登録意匠においては、該部の高さを溝の深さの約1/2とし、該部の下隅部を断面視1/4円弧状の曲面に、天井部を傾斜面にしているのに対し、引用意匠においては、該部の高さを溝の深さの約1/7とし、該部を断面視1/2円弧状の曲面としていること。 (4)戸車転動面の傾斜角について、本件登録意匠の傾斜角は引用意匠に比べてやや緩やかであること。 (5)鍔を除く外側壁面の態様について、本件登録意匠においては、該部位全体に鋸歯状の突条をやや広いピッチで3本形成しているのに対し、引用意匠においては、該部位の下方寄りに鋸歯状の突条をやや狭いピッチで4本形成し、上端部に細幅の垂直面を設け、その中央に水平方向に切れ込む楔状の条溝を1本形成していること。 上記の共通点及び差異点について検討すると、共通点(1)は、意匠全体の骨格を成すものであり、そこに共通点(2)〜(4)が加味されることによって、意匠の基調が形成されるとともに、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。 これに対し、差異点(1)のレール本体部の幅に対する高さの比率及び、差異点(2)の溝の最小幅に対する深さの比率については、両意匠ともそれがこの種の物品において普遍化した範囲内の寸法比率であるとともに、共通点(4)の全体的な寸法比率における共通性に希釈されることを考慮すれば、それぞれの差異は両意匠の類否を左右するものとは成し得ない。 つぎに、差異点(3)の内側壁面の凹部の態様における差異については、それが溝の内奥に位置する部位に係るものであるため、外観上は凹部の形態的な違いがさほど目立たず、寸法比率における違いを加味したとしても、その差異は共通点(3)の溝の態様における共通性を凌ぐものではない。 つぎに、差異点(4)の戸車転動面の傾斜角における差異については、その違いが僅かであって、視覚的効果における差異は微弱である。 また、差異点(5)の鍔を除く外側壁面の態様については、本件登録意匠の該部位の形状が典型的な抜け止めの形状であるため、本件登録意匠を特徴付けるものとは成し得ず、引用意匠の該部位の態様も広く知られたものであるため、技術的効果についてはさておき、視覚的効果における差異は微弱であって、共通点1における該部位の共通性を凌ぐものではない。 さらに、これらの差異点が相俟って表出する視覚的効果を勘案しても、各共通点から惹起される両意匠の類似性を凌ぐ視覚的効果を認めることはできない。 すなわち、本件登録意匠は、引用意匠に類似するものであって、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同条の規定により意匠登録を受けることができないものであると認められる。 したがって、本件意匠登録は、意匠法第3条の規定に違反してされたものであり、同法第48条第1項の規定によって無効にすべきものとする。 なお、被請求人は、上申書を提出し、引用意匠の意匠登録について無効審判を請求したので本件に関する審決をしばらく猶予してほしい旨述べられたが、たとえ該意匠登録が無効になったとしても、引用意匠の意匠公報が前記のとおり本件登録意匠の出願前に発行された事実に変わりはなく、そのことが本件登録意匠の無効理由に何ら影響を与えるものではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2000-02-14 |
結審通知日 | 2000-03-21 |
審決日 | 2000-05-30 |
出願番号 | 意願平7-23602 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(L5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 須田 紳 |
特許庁審判長 |
吉田 親司 |
特許庁審判官 |
岩井 芳紀 伊藤 栄子 |
登録日 | 1998-05-01 |
登録番号 | 意匠登録第1015087号(D1015087) |
代理人 | 稲岡 耕作 |
代理人 | 亀井 弘勝 |