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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L2
管理番号 1039583 
審判番号 無効2000-35049
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2001-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-01-18 
確定日 2001-03-28 
意匠に係る物品 側溝用蓋 
事件の表示 上記当事者間の登録第1048996号「側溝用蓋」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1048996号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.請求人の申立及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として要旨以下のように主張し、立証として甲第1号証乃至甲第15号証を提出した。
登録第1048996号の意匠(意匠に係る物品「側溝用蓋」・以下、「本件登録意匠」という)は、その意匠登録出願前に発行された意匠公報に掲載の登録第831293号の意匠(意匠に係る物品「みぞぶた」・以下、「引用の意匠」という)に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、意匠登録を受けることができないものであるから、同法第48条第1項第1号に該当し、その登録を無効とすべきである。
2.被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由について要旨以下のように主張した。
1).本件登録意匠の構成について
a.長方形の蓋本体を構成する平板部の両側に脚部を形成し、該脚部の下面には底板をそれぞれ貼着し、平板部の上面外周縁及び下面前後端縁は面取りを形成している。
b.平板部の前後端面中央には、細長い長方形の手がけ凹部を形成している。
c.平板部には縦二列で、各列に7個づつの計14個の長方形の排水孔が規則正しく配置されており、各排水孔の隅部は角張っており、それぞれの排水孔は独立して形成されている。
d.隣り合っている各列二個の長方形の各排水孔の中央は間隔部が形成されている。
e.各排水孔の上縁部には面取り部を形成し、その面取り部に対応する肉厚分だけ各排水孔の間隔部の上面を下げて形成してある。
2)引用の意匠の構成について
a.略正方形の蓋本体を構成する平板部の両側に脚部を形成し、該脚部の下面には底板をそれぞれ貼着している。
b.平板部には横幅に近い長さを有する7個の直列する排水孔が配置されており、各排水孔の隅部は半円弧状に形成されている。
c.排水孔の中央に蓋本体の厚みの略3分の1の厚みを有する仕切り体が形成されている。
d.各排水孔の周縁内側に垂直に段々部を設け、中央の仕切り体の上端面を、右段々部の下段面と平面一体となるように形成している。
3)両意匠の対比
a.引用の意匠は、7列の排水孔が穿設されているが、本件登録意匠は、左右各7列の排水孔が計14個穿設されており、しかも引用の意匠の7個の排水孔の形状は、両端部(隅部)が半円弧状に形成されているのに対して、本件登録意匠は、排水孔の両端部(隅部)の形状は角張って形成されており、シャープな印象・美観を与えており、引用の意匠とは別異の意匠として看取することができる非類似の意匠である。
b.本件登録意匠の排水孔は、周縁内側に単なる面取りを形成し、面取りの肉厚部分だけ左右の排水孔の間の間隔部の高さを低くしたにすぎず、引用の意匠のように垂直な段々部を形成しておらず、また、引用の意匠の段々面の幅は、少なくとも排水孔の縦幅の4分の1にわたって、存在するのであり、1個の排水孔の前後両端に形成されている以上、看者の注意を引くことは当然であり、また、面取り部がなだらかな面を一面形成するのに対し、段々面は、垂直な二面を形成する段々部の下段面であり当然その美観も異にし、かかる段々面があるものとないものとでは、その印象も全く異なることは容易に想像できる。
そして、かかる段々面は、引用の意匠における仕切り体の面と相まって、全体として特殊な眼鏡形状の平面を形成するに至っているのであり、この段々面は、特殊な眼鏡形状の平面の一部として,一層際立っていると言えるのである。
4)結論
以上の通り、本件登録意匠と引用の意匠の差異点は、両意匠の形態全体に及んでおり、それらの差異点がそれぞれの意匠の全体形状に与える影響は大きく、両意匠の全体観察をしたときに、本件登録意匠と引用の意匠とは明らかに相違しており、本件登録意匠は引用の意匠に類似するものではなく、その登録は無効とされるべきではない。
3.当審の判断
1)本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9年6月19日の意匠登録願であって、平成11年6月4日に設定の登録がなされたものであって、当該意匠登録原簿及び出願書面の記載によれば、意匠に係る物品を「側溝用蓋」とし、その形態については、別紙第一に示すとおりである。
2)引用の意匠
引用の意匠は、平成4年3月9日に発行された登録第831293号の意匠公報であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「みぞぶた」とし、その形態については、別紙第二に示すとおりである。
3)両意匠の対比
本件登録意匠と引用の意匠とを比較し、両意匠を全体として検討すると、両意匠は、ともに側溝用の溝蓋として使用されるものであって、意匠に係る物品は一致し、形態については以下に示す共通点及び差異点が認められる。
すなわち、両意匠は、やや肉厚の方形状の板状体を蓋本体とし、この蓋本体の左右両側の裏面に、蓋本体の左右両側面と面一に断面形状を略逆台形状とする角柱状の脚部を設け、正面形状を扁平な略逆U字状に形成し、蓋本体には略横長々方形状を呈する複数の排水孔を、中央に僅かな間隔部分を設け左右に並列して穿設した全体の基本的構成態様において共通する。また、脚部の裏面に細幅帯状の底板を貼着し、排水孔を左右に7個ずつ計14個を並列し、該排水孔の表面周縁を極く細幅で僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成して、中央の間隔部分の表面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分が蓋本体の表面から極く僅かに凹陥したことにより、左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続するような態様に表した各部の具体的な構成態様においても共通する。
他方、両意匠は、a.蓋本体の形状について、本件登録意匠は、縦長矩形状であるのに対し、引用の意匠は、略正方形である点、また、b.本件登録意匠は、蓋本体の表面周縁と裏面の前後縁に、極く細い面取りを現しているのに対し、引用の意匠は、現していない点、c.排水孔の左右側面寄りの端部形状について、本件登録意匠は、隅丸の略コ字状に形成したいるのに対し、引用の意匠は、円弧状に形成している点、また、d.排水孔の縁取り部分について、本件登録意匠は、斜状に形成しているのに対し、引用の意匠は、略L字状に形成している点、e.左右の排水孔間の間隔部分の厚みについて、本件登録意匠は、蓋本体の厚みより排水孔の縁取りの深さの分低くした厚みに形成しているのに対し、引用の意匠は、蓋本体の厚みの1/3程度の厚みに形成している点、f.蓋本体の前後面について、本件登録意匠は、中央に略横長々方形状に凹陥する手掛け部分を設けているのに対し、引用の意匠は、左右両端寄りの部位に略方形状の小突起を設けている点の各部の具体的な構成態様において差異が認められる。
4)両意匠の類否判断
そこで、前記の共通点及び差異点を総合して両意匠の類否について考察すると、前記に共通するとした両意匠の全体の基本的構成態様は、この種の態様をなす側溝用溝蓋の意匠にあっては、引用の意匠の出願前より普通に見受けられる態様であって、引用の意匠のみに限られた形態上の特徴を現しているところとは言い難い。してみると、両意匠の特徴は、前記に共通するとした各部の具体的な構成態様のうち、略横長々方形状を呈する排水孔を中央に僅かな間隔部分を設け左右に7個ずつ計14個を並列して穿設し、該排水孔の表面周縁を極く細幅で僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成し、中央の間隔部分の表面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分が蓋本体の表面から極く僅かに凹陥していることにより、左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続するような態様に表したところにあるといえる。そうして、この各部の具体的な構成態様の共通点は、引用の意匠の出願前には見受けられない新規な態様であり、かつ、両意匠の全体の基本的構成態様にみられる共通点と相俟って醸し出す印象は、両意匠の類否判断を決定づける支配的要素をなすところと言わざるを得ない。これに反し、前記の差異点については、いずれも類否判断に与える影響は微弱なものと言わざるを得ない。
すなわち、aの蓋本体の形状についての差異は、この種の態様をなす側溝用蓋の意匠にあっては、本件登録意匠ように縦長矩形状のものも、引用の意匠のように略正方形のものも、両意匠の出願前よりその例を示すまでもなく数多く見受けられ、ともに周知の態様の中で見られる変更の範囲内のものであり、この点がそれぞれの意匠の特徴を現しているところとはいえないから、類否判断に大きな影響を与えるところとはならない。また、bの蓋本体の表面周縁と裏面の前後縁に、極く細い面取りを現しているか否かの差異は、当該部位に現された面取りの態様も、この種の側溝用蓋の意匠のみならず、当該物品分野における各種のコンクリート製品等に見受けられる、ごく普通の態様のものであり、かつ、形態全体から見れば細部における部分的な差異にすぎない。次に、cの排水孔の左右側面寄りの端部形状についての差異も、aの差異と同様に、両意匠の出願前より、この種の排水孔を有する側溝用蓋の意匠にあっては、排水孔の端部の形状を、本件登録意匠ように隅丸の略コ字状に形成したものも、引用の意匠のように円弧状に形成したものも、その例を示すまでもなく普通に知られていることを考慮すると、当該部位を隅丸の略コ字状に形成したことが、本願の意匠の特徴として格別の評価をすることはできず、類否判断に及ぼす影響は微弱なものと言える。また、dの排水孔の縁取り部分の差異については、当該縁取りも極く細幅のもので、指摘され当該部位を注視して視認できる程度の微細な差異でもあり、また、両意匠に現されているいずれの態様についても、縁取りの表現手段としては、当該物品分野に限らず各種の物品分野において、極めて普通に知られた態様であって、ともに、周知の態様の中でなされた変更の範囲内のものとも言えるので、この点を捉えて両意匠を別異のものとする程の特徴を現しているところとは言えない。つぎに、eの左右の排水孔間の間隔部分の高さの差異については、その差異もdと同様に指摘され、当該物品を反転してみて視認できるものであって、その作用効果についてはともあれ、この種物品の使用態様等を考慮し、意匠として観察した場合に当業者をも含む大多数の看者の注意は、主として表面の態様に向けられるものと言えるので、形態全体から見れば、さほど軽量物とは言えないコンクリート製溝蓋の裏面という限られた部位に見られる、部分的で軽微な差異と言わねばならない。次に、fの蓋本体の前後面の差異についても、本件登録意匠に設けている手掛け部分の態様も、この種の側溝用蓋の意匠のみならず、当該物品分野における各種のコンクリート製品等に見受けられる、ごく普通のありふれた態様のものであり、この手掛け部を有するからと言って格別の特徴を現しているものとは言えず、この点の差異についても形態全体から見れば細部における部分的な差異にすぎない。そうして、これらの差異点を総合しても、前記したごとく両意匠の特徴と認められる、略横長々方形状を呈する排水孔を中央に僅かな間隔部分を設け左右に7個ずつ計14個を並列して穿設し、該排水孔の表面周縁を極く細幅で僅かに内方に凹陥する縁取り部分を形成し、中央の間隔部分の表面を排水孔の縁取り部分の深さと同じ深さの部位に形成し、該間隔部分が蓋本体の表面から極く僅かに凹陥していることにより、左右の排水孔どうしの縁取り部分が連続するような態様に表した各部の具体的な構成態様の共通点と、全体の基本的構成態様の共通点とが相俟って醸し出す、類似する印象を凌駕し本件登録意匠のみが有する格別の特徴を表出しているものとは到底言えない。
したがって、本件登録意匠は、引用の意匠と意匠に係る物品が一致し、形態においても、類否判断を決定づける支配的要素と言える両意匠の意匠の要部において共通するものであるから、両意匠は類似するものと言わざるを得ない。
5)むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し、同法同条同項の規定に違背して登録されたものであり、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2000-06-20 
結審通知日 2000-06-30 
審決日 2000-07-11 
出願番号 意願平9-58299 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (L2)
最終処分 成立  
特許庁審判長 瀬尾 和子
特許庁審判官 伊勢 孝俊
松原 至
登録日 1999-06-04 
登録番号 意匠登録第1048996号(D1048996) 
代理人 松尾 憲一郎 
代理人 佐々木 功 
代理人 内野 美洋 
代理人 三原 研自 
代理人 中村 智廣 
代理人 川村 恭子 

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