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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) D2
管理番号 1043428 
判定請求番号 判定2001-60029
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-09-28 
種別 判定 
判定請求日 2001-03-09 
確定日 2001-07-30 
意匠に係る物品 載置台 
事件の表示 上記当事者間の登録第1081236号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真並びにその説明書に示す「ノートパソコン用卓上スタンド」の意匠は、登録第1081236号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号写真並びにその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第1081236号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証、甲第2号証の1ないし3、甲第3号証ないし甲第9号証、甲第10号証の1ないし3、及び甲第11号証ないし甲第14号証を提出した。
本件登録意匠とイ号意匠は、台本体がそのサイドフレームを僅かな間隔を有する一対の囲繞形状の枠状フレームで形成し、該サイドフレーム間には天板、中間棚及び底板を3段に取り付けた全体として箱型形状からなる基本的構成態様を共通とし、具体的構成態様においても、一対の囲繞形状の枠状フレーム間に挟持した態様で3本の連結パイプを枠状フレームの上端近傍、中程やや下方、下端近傍に平行になるよう3段に取り付け、天板、中間棚を連結パイプに載置し、スライド機構として枠状フレームと底板にレールを取り付け、底板を前後方向にスライド自在とし、台本体後方側において2本の補強パイプを中央でX字状に交叉するようサイドフレームの上下端部に取り付け、底板を天板の横幅よりも若干小幅とし、天板の前方より底板の前方端部を露出させてなる点で共通する。両意匠の共通する基本的構成態様は両意匠の形態全体の骨格をなし、看者に一見して箱型という印象を与えるものであり、さらに、全体形状を各板、3段構成とした箱型とすることで、ノートパソコン等をコンパクトにまとめることが可能な箱型形状として、従来品にない新たな印象をも与え、看者の注意をより一層強く喚起することになり、この共通点が意匠の類否判断に大きな影響を与えることは明らかである。しかも、本件登録意匠のようにサイドフレームを囲繞形状の枠状フレームにより形成したものは全く見当たらず、この種物品の分野では極めて斬新なものであり、全体形状が箱型の比較的単純な構成態様からなるため、看者はサイドフレームの形態に注意を向けると考えるのが自然であり、該サイドフレームの構成態様が意匠の要部であることは明らかであり、基本的構成態様において両意匠はその要部を共通にし、該サイドフレームの形態は、意匠の類否を左右する重要な要素である。一方、差異点として、具体的構成態様において、(1)枠状フレームの形状、(2)3本の連結パイプ相互の長さの比率、(3)天板及び中間棚の奥行幅の連結パイプ長さに対する比率、(4)底板における天板からの露出の程度、(5)底板のスライド機構の形態、(6)本体裏面側の接地座の有無、に差異が認められるが、(1)のイ号意匠の枠状フレームの傾斜部は、全体形状としての略正方形状に埋没しており、また、該傾斜部は、本棚等のありふれた形状をそのまま転用したものであり、イ号意匠独自の創作性はなく、(2)、(3)及び(4)は、何れも箱型としての全体形状に何ら影響を与えるものではなく、(5)及び(6)は、何れも看者にとって見えにくい目立たない部分における差異であり、これらの差異点は、何れも意匠の類否判断に与える影響は微弱なものであり、共通点を凌駕せず、差異点が纏まっても両意匠を類似するとの結論を左右するまでには至らず、以上により、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
また、被請求人提出の公知意匠は、本件登録意匠の「載置台」と機能及び用途を異にする非類似の物品で、全く異なる物品に係る意匠であり、被請求人がこのような意匠により本件登録意匠のサイドフレームの形状が公知であると結論付けようとしたこと自体、何ら根拠のない失当なものである。そして、請求人は、この種ノートパソコン等の載置台において、両意匠のように天板、中間棚、底板の3段から成る箱型形状のものは従来品にはない新規なものであり、極めて重要な類否判断要素として主張しているが、被請求人自身が係る箱型形状の新規性を否定する証書を一切提出できなかったことは、まさに請求人の上記主張が正当であることを裏付けるものと言える。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
2本のパイプを囲繞形状にしたフレームは、公知のものであり、したがって、サイドフレームを囲繞形状の枠状フレームにより形成した形状はこの種物品の分野では極めて斬新なものであるとの請求人の主張は、事実に反して誤りであり、看者は台本体の全体形状が箱形状の構成態様から成る前記サイドフレームの形態のみに注意を向け、その点が本件登録意匠の要部であると認識することはあり得ない。イ号意匠の複合線材から成る枠状フレームの左右側前方上側部を傾斜面に形成した形状は特異であり、看者の美感を強く惹き起こすことになり、この点に創作性が認められるのに対して、本件登録意匠は、ごくありふれた四角形状に成る複合フレームを左右両側端部に配設したものに過ぎず、請求人の、イ号意匠の傾斜形状部は全体形状としての略正方形状に埋没しているとの主張は、誤りである。また、イ号意匠の枠状フレームは複合線材によって構成されているものであるから、当該部分が木材製の本棚のありふれた形状の転用と考えることはできない。そして、イ号意匠の天板と中間棚の奥行長さを底板よりも短くした違いは、枠状フレームの傾斜形状部と関係して構成したものであり、本件登録意匠の創作性の弱さに比較すれば、大きくかつ目立つものといえる。以上によれば、両意匠には共通する部分は存在しても、そのような部分はすでに周知ないし公知の構成態様といわれるものであり、差異点は共通点を凌駕して、イ号意匠は別異の創作性を発揮している意匠といえるから、イ号意匠は本件登録意匠に類似しないというべきである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年5月25日に意匠登録出願をし、平成12年5月26日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1081236号意匠であり、願書及び願書に添付の図面の記載によれば、意匠に係る物品を「載置台」とし、その形態を、別紙第1に示すとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書にイ号写真(別紙第2)並びにその説明書(別紙第3)により示されたものであり、当該写真並びに当該説明書によれば、意匠に係る物品が「ノートパソコン用卓上スタンド」と認められ、その形態を、別紙第2に示すとおりとするものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品については、何れも、前後方向にスライド自在な底板をノートパソコン等を置いて使用するテーブルとする机上用の載置台に係るものであるから共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
先ず、共通点として、(1)台本体全体が、サイドフレームを、丸棒材を囲繞形状としたフレーム同形同大のもの一対(2体)を僅かな間隔で並列組み合わせてなるものとし、該サイドフレームを左右一対垂直に対向して配し、その間に、天板、中間棚及び前後方向にスライド自在なテーブルとして使用する底板、何れも四角形板状のものを、互いに平行となるよう水平3段状に架設した構成態様のものである点、(2)台本体の横幅をサイドフレームの最大高さよりもやや長くし、サイドフレームの最大奥行は、その最大高さと略同程度の長さとしている点、(3)サイドフレームにおいて、丸棒状の連結杆3本を、サイドフレームの上端近傍、中程からやや下方寄り及び下端近傍でサイドフレームの前端と後端との間に、一対の囲繞形状フレーム間で挟持して、互いに平行となるよう水平3段状に架設している点、(4)天板及び中間棚は、サイドフレームの連結杆に載置して取り付けたものとし、底板は、サイドフレームの内側下端に取り付けたガイドレールに底板左右端に取り付けたスライドレールを係合することで前後方向にスライド自在とし、そうして、底板と中間棚との間隔は、ノートパソコンが収納可能な程度に空けたものとし、中間棚と天板との間隔は、ノートパソコンよりもかなりの高さがあるものを収納可能な程度に、底板と中間棚との間隔よりもかなり大きく空けたものとしている点、(5)底板は、天板の横幅よりも若干小幅とし、平面視で天板の前端前方に底板の前部が突出するものとしている点、(6)台本体後部において、2本の補強丸棒をX字状に中央で交叉させて、その先端をサイドフレームの後上下端に取り付けている点、がある。
一方、差異点として、(イ)サイドフレームの形状につき、本件登録意匠は、囲繞フレームを四角形状としたものであり、それにより、連結杆の長さが何れも同寸であるのに対して、イ号意匠は、囲繞フレームを、四角形状の前上部に傾斜部を形成したもの、すなわち、囲繞フレームの奥行の略1/4程度、かつ、高さの略1/3程度に当たる四角形状の前上角部分を、斜状に切り欠いた形状としたものであり、それにより、囲繞フレームの傾斜部に位置する上段の連結杆の長さが他の連結杆よりも短いものとなっている点、(ロ)天板及び中間棚につき、本件登録意匠は、サイドフレームの奥行と略同程度の奥行のものとし、連結杆の全長に亘って載置しているのに対して、イ号意匠は、サイドフレームの奥行よりも短い奥行のものとし、傾斜部より後方位置で、連結杆の前部を除いて前寄りから後端にかけて載置し、それにより、平面視での天板前端からの底板の突出の程度が本件登録意匠よりも大きなものとなり、サイドフレームの奥行の略1/4に当たる台本体前部に開放部分を形成している点、があり、その他に、(ハ)底板につき、本件登録意匠は、サイドフレーム前端位置から僅かに突出しているのに対して、イ号意匠は、サイドフレームの前端位置に収まっている点、(ニ)底板のスライド機構におけるスライドレール及びガイドレールの形状につき、本件登録意匠は、何れも断面コの字状としたものであるのに対して、イ号意匠は、何れも断面L字状としたものである点、(ホ)イ号意匠は、底板下面及びサイドフレーム下端に接地座を取り付けているのに対して、本件登録意匠は、接地座を取り付けていない点、がある。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、共通点のうち、(1)の点につき、サイドフレームを囲繞形状としたもの自体は、載置台あるいはその関連物品(収納棚等)の分野において従来より普通に見られるありふれた態様であるところ(登録第148961号意匠、登録第628137号意匠等参照)、サイドフレームを、丸棒材を囲繞形状としたフレーム同形同大のもの一対を僅かな間隔で並列組み合わせてなる点も、本件登録意匠の出願前に普通に見られる態様であって(乙第二号証、乙第五号証、登録第845393号意匠、別紙第4(1990年1月19日発行のデンマーク意匠公報2号20巻第120頁記載の収納棚の意匠)等参照)、格別特徴的なものではなく、そして、サイドフレーム間に、天板、中間棚及び前後方向にスライド自在なテーブルとして使用する底板、何れも四角形板状のものを、互いに平行になるよう水平3段状に架設した点も、サイドフレーム間にスライド自在な底板等四角形板状のものを架設してなる机上用の載置台が本件登録意匠の出願前に既に見られ(甲第10号証の2参照)、また、載置台において、スライド自在なテーブルから上を、上方に天板を配し、その中間に棚を配して、テーブルを含み水平3段状とした態様が本件登録意匠の出願前に既に見られるところであるから(甲第10号証の2(頁下に記載の机上ラック)、登録第929759号意匠、別紙第5(1995年12月31日にプラス株式会社発行のカタログ「PLUSオフィス家具/文具・OAサプライズ総合カタログ」第128頁記載の載置台の意匠)等参照)、特徴としてさほど高く評価できず、以上によれば、(1)の点は、格別特徴的なものではないサイドフレームに特徴としてさほど高く評価できない態様で天板等を架設したに止まるものであって、全体の骨格に係るところであることを考慮してもなお、両意匠の類否を決するまでの特徴とはなり得ず、この点を類否判断上大きく評価することができない。なお、請求人は、被請求人提出の公知意匠は、本件登録意匠に係る物品「載置台」と機能及び用途を異にする非類似の物品で、全く異なる物品に係る意匠であり、このような意匠により本件登録意匠のサイドフレームの形状が公知であると結論付けることは失当である旨主張する。しかしながら、本件登録意匠に係る物品「載置台」は、ノートパソコン等を載置するものである点で、被請求人提出の公知意匠に関する物品である「水切り棚」等とは物品が異なるとしても、これらの物品は、いずれも収納棚部を有し、室内の収納整理に供するものである点で共通するものであり、したがって、ノートパソコン等を載置する「載置台」に限ることなく、このような共通あるいは関連する物品分野をも含んで公知意匠を参酌し、本件登録意匠のサイドフレームの形状について考察することは、相当といえる。(2)の点は、台本体の具体的な構成比率に係るものであるが、台本体につき、横長のものとすること、あるいは奥行のやや深いものとすることは、普通のことであり、また、載置物に応じて台本体の横幅、奥行、高さは適宜改変されるところでもあって、机上用の載置台において格別特異なものといえるほどの構成比率ではなく、類否判断に及ぼす影響は小さい。(3)の点は、サイドフレームの具体的な態様に係るものであるが、連結杆をサイドフレームの前端と後端との間に一対のフレーム間で挟持して、互いに平行となるよう水平に数段状に架設したものとした従来態様に照らし特徴がなく(甲第10号証の2、別紙第4等参照)、類否判断に及ぼす影響は小さい。(4)の点は、天板、中間棚及び底板の具体的な取り付け方に係るものであるが、従来より普通に見られる態様であって特徴とはいえず、また、各板相互の間隔の具体的な空け方についても、従来態様に照らし特徴といえるほどのものではなく(登録第929759号意匠、別紙第5等参照)、類否判断に及ぼす影響は小さい。(5)及び(6)の点も、従来より普通に見られる態様であって、類否判断に然したる影響を及ぼすものではない。そして、意匠全体として、これら共通点が相俟ったとしても、その相俟った点が両意匠の類否を決するまでの特徴とはなり得ないというべきであり、その類否判断に及ぼす影響は、さほど大きいものとはいえない。
一方、差異点につき、(イ)の点は、サイドフレームの態様を具体的にあらわすところであり、(ロ)の点は、天板等の大きさ及び架設の態様を具体的にあらわすところであるが、これらの点は、両意匠の通常の観察位置である前方から俯瞰した際に看者に看取される台本体前部分に係るものであって、形態上の主要な部分に係るところであり、前記のとおり、共通する態様、さらには、これらの相俟った態様に格別の特徴の認められない両意匠にあっては、これら差異点の(イ)及び(ロ)の、形態上の主要な部分に係る各部を具体的にあらわすところについても、他と相関連して全体のまとまりを形成し、両意匠の基調をなすところに強く係わるとせざるを得ず、本件登録意匠は、四角形状のサイドフレームの奥行一杯に天板等を架設したことにより直方体状で前部非開放状との印象を看者に与えるものといえ、一方、イ号意匠は、四角形状の前上部に傾斜部を形成したサイドフレームに、台本体前部に開放部分を形成するよう当該傾斜部より後方位置に天板等を架設したことにより前部開放状との印象を看者に与えるものといえ、その印象は大きく異なり、以上によれば、(イ)及び(ロ)の点は、両意匠を別異の基調のものと看者に印象付けるに十分なものであって、の基調をなすところに強く係わるものであって、両意匠の類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものというほかない。
従って、両意匠の形態についての共通点は、前記のとおり、両意匠の類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとはいえないのに対して、差異点については、とりわけ、(イ)及び(ロ)の点は、両意匠の類否判断に決定的ともいえる大きな影響を及ぼすものであり、他にも、(ハ)、(ニ)及び(ホ)の点の差異が認められるところでもあって、差異点が共通点を凌駕するものであることは明らかであり、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとはいえない。
第4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-07-13 
出願番号 意願平11-13513 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (D2)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 藤 正明
橘 崇生
登録日 2000-05-26 
登録番号 意匠登録第1081236号(D1081236) 
代理人 牛木 理一 
代理人 大中 実 
代理人 薬丸 誠一 
代理人 鈴木 活人 
代理人 中谷 寛昭 
代理人 藤本 昇 

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