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審決分類 審判 無効  意9条先願 無効とする L5
管理番号 1045252 
審判番号 審判1999-35405
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2001-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-08-04 
確定日 2001-07-16 
意匠に係る物品 建具用戸車レ―ル 
事件の表示 上記当事者間の登録第0954499号「建具用戸車レ―ル」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第0954499号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.手続きの経緯及び本件登録意匠
本件登録意匠は、平成6年(1994)1月21日に出願(意願平6-1172号)され、平成8年(1996)3月12日に設定の登録がなされ、平成8年5月27日に意匠公報が発行された意匠登録第954499号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「建具用戸車レール」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。
2.請求人の主張
これに対し、請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由として、本件登録意匠は、その出願前に発行された意匠公報所載の登録第914591号意匠[意匠に係る物品「建具用レール材」、出願平成1年(1989)10月20日、公報発行平成6年(1994)12月8日]に類似するので、意匠法第3条第1項第1号に該当する旨主張し、証拠方法として、甲第1〜3号証を提出している。
(1)甲第1号証:意匠公報(意匠登録第914591号、以下、甲第1号証意匠という、別紙2参照)
(2)甲第1号証の二:本件登録意匠と甲第1号証意匠の比較図
(4)甲第2号証:意匠公報(意匠登録第952110号)
(5)甲第3号証:意匠公報(意匠登録第952110の類似1号)
3.被請求人の主張
一方、被請求人は、平成11年10月19日付で答弁書を提出し、甲第1号証意匠と本件登録意匠は、類似しない旨主張し、証拠方法として、乙第1〜7号証を提出している。
(1)乙第1号証:意匠公報(意匠登録第952152号)
(2)乙第2号証:意匠公報(意匠登録第988294号)
(3)乙第3号証:意匠公報(意匠登録第989632号)
(4)乙第4号証:意匠公報(意匠登録第954637号)
(5)乙第5号証:意匠公報(意匠登録第954353号)
(6)乙第6号証:意匠公報(意匠登録第954357号)
(7)乙第7号証:意匠公報(意匠登録第954358号)
4.当審の判断
そこで、本件登録意匠と甲第1号証意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、形態については、次に示す共通点と相違点が認められる。
[共通点]
(1)長手方向に連続し、表面板が断面視左右対称形の双翼状に屈曲する面付け型の扁平な戸車レールであって、表面板の中央に戸車転動溝を配置し、転動溝の開口部両縁に一定幅の水平部を設け、水平部の外縁からレール側端に至る部分を緩やかに傾斜させて袴部を形成し、水平部の裏面に長手方向に続く小幅な薄板状の脚片を垂直に設け、さらに転動溝裏面、脚片下端及び袴部下端の各接地個所を面一に揃えて成る全体の基本構成。
(2)転動溝の態様について、溝の側壁を断面視尻窄みの略V字形に傾斜させていること。
(3)脚片の態様について、転動溝を挟んで片側2条ずつ、合計4条の脚片を略均等に分散配置していること。
[相違点]
(1)水平部の態様について、本件登録意匠においては、水平部中央に長手方向に続く細溝を切り込み、該細溝に沿ってネジ穴を等間隔に形成しているのに対し、甲第1号証意匠においては、水平部を一様な平坦面としていること。
(2)袴部の態様について、本件登録意匠においては、接地端から水平部に至る袴部全体を緩やかな丸面としているのに対し、甲第1号証意匠においては、袴部の大部分を平面状として水平部に接する角部を鈍角に角張らせ、接地縁部に細幅の垂直面を形成していること。
(3)転動溝底部の態様について、本件登録意匠においては、溝底部中央を断面視略円弧状に窪ませているのに対し、甲第1号証意匠においては、溝底部を水平面として底部両隅を鈍角に形成していること。
(4)袴部裏面と外側の脚片が接する入隅部及び、
転動溝裏面と内側の脚片が接する入隅部の態様について、本件登録意匠においては、各入隅部が鋭角的であるのに対し、甲第1号証意匠においては、各入隅部を円弧状の曲面としていること。
上記の共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)の全体の基本構成は、意匠の骨格を成すものであり、これに共通点(2)の転動溝の態様及び共通点(3)の脚片の態様が加わることによって意匠の基調が形成されるとともに、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。しかも、これらの共通点が相俟って表出する態様は、甲第1号証意匠の出願前には例を見ないものである。
これに対し、相違点(1)に係る本件登録意匠の水平部における細溝は、ドリル等の位置決め用として、被切削材表面に前もって形成されるありふれた案内溝の域を出ない微細なものであり、細溝に沿って等間隔に形成されたネジ穴の態様もありふれたものであって、いずれも本件登録意匠を特徴付けるものではなく、その有無の差異も両意匠の類否を左右するものとは成し得ない。
つぎに、相違点(2)に係る本件登録意匠の袴部の態様については、それが建具や各種金物等の出隅に多用される典型的な丸面であって、本件登録意匠を特徴付けるものではなく、一方、甲第1号証意匠の該部の態様もありふれた面取り手法である猿頬面であるため、共通点(1)に係る緩やかに傾斜する該部の共通性に希釈されることを考慮すれば、その差異は微弱であり、各共通点からもたらされる類似性を凌ぐものではない。
つぎに、相違点(3)に係る溝底部の差異については、それが溝内奥の小幅な領域における僅かなものであるとともに、共通点(2)の側壁をV字形とした転動溝全体の共通性に希釈されることを考慮すれば、その差異は微弱であり、両意匠の類否を左右するものではない。
また、相違点(4)に係る裏面側の各入り隅部の態様については、本件登録意匠に特筆すべきものは無く、物品の使用時には当該部位が裏側に隠れてしまうことを考慮すれば、その差異は両意匠の類否を左右するものとは成し得ない。
さらに、これらの相違点が相俟って表出する効果を勘案しても、前記各共通点からもたらされる両意匠の類似性を凌ぐ視覚的効果を認めることはできない。
すなわち、本件登録意匠は、甲第1号意匠に類似するものと認められる。
以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第9条第1項に規定する意匠に該当せず、同条同項の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから、同法第48条第1項第1号に該当する。 なお、請求人は、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号に該当するとするが、本件登録意匠の出願時点では甲第1号証意匠の意匠公報は未だ発行されていないので誤りである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2000-08-23 
結審通知日 2000-09-05 
審決日 2000-09-20 
出願番号 意願平6-1172 
審決分類 D 1 11・ 4- Z (L5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須田 紳 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 岩井 芳紀
伊藤 栄子
登録日 1996-03-12 
登録番号 意匠登録第954499号(D954499) 
代理人 辻本 一義 

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