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審決分類 審判 無効  1項1号公知(類似も含む) 無効としない B3
管理番号 1048743 
審判番号 無効2000-35002
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2001-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-28 
確定日 2001-09-25 
意匠に係る物品 耳飾り用留め金具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1016112号「耳飾り用留め金具」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1. 請求人の請求の趣旨及び理由
請求人は、登録第1016112号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として以下に要点として摘記するように主張し、証拠方法として甲第1号証を提出した。
また、請求人は、本件登録意匠と甲号意匠(後記)の比較図を甲第2号証として提出した。
(請求理由の要点)
(A) 本件登録意匠は、その出願前公知の甲第1号証のもの(以下、「甲号意匠」という。)と類似するものであり、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法48条1項1号により無効とすべきものである。
(B) 本件登録意匠と甲号意匠の意匠に係る物品について、本件登録意匠は「耳飾り用留め金具」であり、甲号意匠はピアス留め金具であることから、両意匠は共に耳飾りであり、類似物品である。
(C) 両意匠は、基本的構成態様において、a.全体を線状一体で形成し、b.側面視において、上端を開口し上部に向かって内向する略U字形とし、c.略U字形の縦の中心線を基準としてほぼ左右対称に形成し、d.正面及び背面視において、略U字形が直線状に表れ、e.略U字形両先端がそれぞれ外側に向かって伸びた形状としている点で共通し、
また、具体的構成態様において、f.略U字形両先端の形状について、略円形の輪状としている点で共通する。
(D) 一方、両意匠は、具体的構成態様において、本件登録意匠は略U字形先端の他方を半円弧状に外側に折り曲げた形状としているのに対し、甲号意匠は他方を弧状に外側に折り曲げた形状としている点で相違する。
(E) そこで、両意匠の共通点及び相違点について比較検討すると、両意匠は、意匠に係る物品が類似し、形態についても基本的構成態様の全ての点で共通し、具体的構成態様についても共通する。
唯一の相違点である略U字形他方の先端形状については、両意匠とも先端を弧状に外側に折り曲げた形状としている中での折り曲げ度合いの僅かな差に過ぎない。
したがって、意匠全体として総合的に判断すると、相違点は微差の範囲であり、両意匠の共通点を凌駕して、両意匠に別異感をもたらすほどのものとは到底言えず、両意匠が類似する意匠であることは明白である。
(弁駁理由の要点)
(F) 両意匠に係る物品は、耳を飾るためのものであり、耳を挟みつけるのか、耳たぶに開けたピアス孔に通して引っ掛けるのかという機能的な差異があるものの用途は共通することから類似物品と認められる。
(G) 両意匠は上下が逆の状態で使用されるものであるが、意匠の類否判断において、意匠全体の上下の向きの相違はそれをもって意匠が類似しないと判断される程意匠の類否判断を左右する観点として評価されるべきものではなく、形態そのものの共通性をもって判断されるべきである。
(H) 甲号意匠は全体を線状一体で形成されているものではない旨の被請求人の主張については、意匠の類否判断において、製造方法は類否判断上の観点とはならない。
第2. 被請求人の答弁の趣旨及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由として以下に要点として摘記するように主張し、証拠方法として乙第1号証(両意匠の比較図:訂正版)及び乙第2号証を提出した。
(答弁の理由の要点)
(あ) 本件登録意匠と甲号意匠とは非類似であり、意匠法3条1項3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるとして同法48条1項1号により無効とされるべきものでない。
(い) 請求人は本件登録意匠に係る物品が「耳飾り用留め金具」であるのに対し、甲号意匠も「ピアス用留め金具」であるとして、本件登録意匠が耳たぶを挟み付けるタイプの耳飾り金具についての意匠であり、甲号意匠は耳たぶに開けたピアス孔に通して引っ掛けるタイプのピアス耳飾りの意匠であるという明確な相違がありながら、「耳飾り用留め金具」として両者を混同させようとしている。
(う) 本件登録意匠は耳たぶを下方から挟み付けるための金具であることから、上端が開口している意匠であるのに対し、甲号意匠は耳たぶに開けたピアス孔に通して引っ掛ける、いわゆるフック形状の金具であるので、開口しているのは上端ではなく下端である。したがって両者は、本来の形態が上向きか下向きかという決定的な相違がある。
甲第2号証の両意匠の比較図における、甲号意匠を表した図面は、本来あるべき姿の天地を逆にしたものであるから、正しくは乙第1号証に示す通りでなければならない。(別紙第三参照)
(え) 請求人は、両意匠は全体を線状一体で形成している点で共通する旨主張するが、甲号意匠は、明らかに線の先端に丸環を固定した形状であるから、全体を線状一体で形成されているものでないことは明らかである。
第3. 当審の判断
1. 本件登録意匠
本件登録意匠は、遡及出願日を前実用新案登録出願日の平成5年8月27日とする意匠登録出願に係り、平成10年5月22日に設定の登録がなされた意匠登録第1016112号の意匠であって、願書及び添付図面の記載によれば、意匠に係る物品を「耳飾り用留め金具」とし、装飾本体に取り付けて耳たぶに挟み付けて使用する金具であって、その形態を別紙第一に示す、次のとおりとするものと認める。
すなわち、本件登録意匠は、丸針金を、上方に向けてややすぼめた左右対称のU字形に折り曲げ、その上端部の一方を小円環状に、他方を小半円弧状に、それぞれ外方に折り曲げたものとした構成態様の形態である。
2. 甲号意匠
甲号意匠は、甲第1号証に示されるものであって、本件登録意匠に係る出願前の1992年(平成4年)10月1日頃に頒布されたと推認される、株式会社千趣会発行のカタログ「BELLE MAISON アクセサリータイム’92 WINTER」の第72頁の左下部所載の写真版に現された「21」と番号を付されたピアスに使用されている金具の意匠であって、装飾本体を吊り下げて耳たぶに開けたピアス孔に通して使用するものと認められ、その形態を別紙第二に示す、次のとおりとするものと認める。
すなわち、甲号意匠は、丸針金を、下方に向けてややすぼめた左右対称の逆U字形に折り曲げ、その下端部の一方を小円環状に、他方を小弧状に、それぞれ外方に折り曲げた態様のものとした構成態様の形態である。
3. 本件登録意匠と甲号意匠の類否判断
(1) 両意匠の対比
まず、両意匠の意匠に係る物品については、両意匠に係る物品共、「耳飾りの部品として使用される金具」と広義に捉えれば、共通する物品ということができ、また、本件登録意匠に係る物品を「耳飾りの装飾本体を取り付けて、耳たぶを挟み付けるための金具」と、他方、甲号意匠に係る物品を「耳飾りの装飾本体を吊り下げて、耳たぶのピアス孔に通すための金具」とそれぞれ狭義に捉えれば、両者は具体的な使用目的・機能が相違する物品であるということができる。
次に、形態については、両意匠は、丸針金を、一方に向けてややすぼめた左右対称形に折り曲げ、その端部の一方を小円環状に外方に折り曲げた態様のものとした点が、甲号意匠の天地関係を考慮せずにみれば、一見、共通するといえるようでもある。
しかしながら、甲号意匠の天地関係を考慮してみれば、両意匠は、丸針金を丸く折り曲げて構成した点においてのみ共通するのであって、両意匠は、本件登録意匠が上方に向けてややすぼめたU字形であり、その上端部の一方を小円環状に、他方を小半円弧状に、それぞれ外方に折り曲げたものとしているのに対して、甲号意匠は下方に向けてややすぼめた逆U字形であり、その下端部の一方を小円環状に、他方を小弧状に、それぞれ折り曲げた態様のものとした各点の構成態様に差異がある。
(2) 両意匠の類否
以上の共通点、相違点及び差異点を総合して、両意匠の類否を意匠全体として考察する。
まず、意匠に係る物品については、前記のとおり、両者を広く捉えれば共通し、狭く捉えれば相違するものであるが、本件において広・狭いずれの捉え方が妥当かを両者の形態から離れて、物品そのものの抽象的類否論として論ずることはこの場合あまり意味の無いことと考えられるので、これはひとまず置いて、形態について検討する。
両意匠に係る形態について、請求人が、甲号意匠の天地関係を、それを耳に通した使用状態の逆さまの状態において両形態を対比し、その結果、両意匠の基本的構成態様等が共通する旨主張する点に対して、被請求人は、請求人のその主張は不当であって、両者は本来の形態が上向きか下向きかの決定的相違がある旨主張し、この点を争うので、検討する。
本件登録意匠は、添付図面において、上方向きのU字形の状態に記載されており、それが耳たぶに挟み付けた使用状態の天地関係に等しく、請求人も本件登録意匠をこの方向で認定しており、これは自然で妥当なみ方であると認められる。
ところが、それにもかかわらず請求人は、甲号意匠においてはそれを敢えて使用状態の天地を逆さまにした状態で認定しており、甲号意匠のみを逆さまにしてみることの合理的理由は不明であり、かつ、そのみ方は極めて不自然である(仮に、甲号意匠が逆さまにしても使用するものであればともかく)から、当審においてそのみ方を、到底、是認することはできない。
請求人のこの認定・判断方法は、いわば、「上」の字に対する「下」の字、あるいは、「M」の字に対する「W」の字の関係において、それらの天地関係を無視して、「上」の字と「下」の字の形は類似する等と言うに等しいものであり、また、古来の寓話にあるように、粗忽者が壺を逆さまに手に取って、「この壺は口が塞がっていて使えない、おまけに底まで抜けている。」と言うのと変わりないのであって、これは牽強付会の主張との誹りを免れないものといわざるを得ない。
そうすると、両意匠に係る形態は、詳細に検討するまでもなく、基本的な構成態様が「U字形」と「逆U字形」であること等において全く異なるものであることが明らかであるから、両意匠は、両意匠に係る物品の関係そのままにおいて、類似しないものというのが相当である。
4. 結 び
以上のとおりであって、本件登録意匠は、請求人が提出した、その出願前に頒布されたと推認される刊行物に掲載された意匠に類似しないものであるから、意匠法3条1項3号に該当せず、その登録を無効にすべきものとすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2000-08-23 
結審通知日 2000-09-05 
審決日 2000-09-20 
出願番号 意願平8-12610 
審決分類 D 1 11・ 111- Y (B3)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 久美井上 茂夫 
特許庁審判長 前川 幸彦
特許庁審判官 藤 正明
伊藤 晴子
登録日 1998-05-22 
登録番号 意匠登録第1016112号(D1016112) 
代理人 久保田 伸 
代理人 日高 一樹 
代理人 渡邉 知子 
代理人 土橋 博司 
代理人 飯田 秀郷 
代理人 重信 和男 

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