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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属する(申立成立) L2 |
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管理番号 | 1053570 |
判定請求番号 | 判定2001-60084 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2002-03-29 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2001-07-26 |
確定日 | 2001-12-28 |
意匠に係る物品 | 車止めブロツク |
事件の表示 | 上記当事者の登録第0885975号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面に示す「車止めブロツク」の意匠は、登録第0885975号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。 |
理由 |
理 由 第1.請求人の申立て及び理由 1.請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証(本件登録意匠第885975号の意匠公報)、甲第2号証(イ号意匠)、甲第3号証(本件登録意匠の類似第1号意匠の意匠公報)を提出した。 2.本件登録意匠の要部 先行周辺意匠をもとに、本件登録意匠の創作の要点について述べれば、この種物品における意匠上の創作の主たる対象は、基本的な構成態様、すなわち、全体が横長に形成され、平面幅の略中央部から正面高さの上部から略3分の2、あるいは略2分の1地点まで傾斜面が形成され、背面が垂直に形成された断面が変形五角形のブロック形状及び両端部の底辺を除く各辺にそぎ落とし面が形成されてなる点にあることが明らかである。それらの事実は、本件登録意匠と、その類似1との類否において明白である。 3.本件登録意匠とイ号意匠の類否 そこで本件登録意匠とイ号意匠との類否を考察すると、両意匠の共通点は、基本的な構成態様、すなわち、本件登録意匠の要部である平面幅の略中央部から正面高さの上部から略3分の2、あるいは略3分の1地点まで傾斜面が形成され、背面が垂直に形成された断面が変形五角形のブロック形状及び両端部の底辺を除く各辺のそぎ落とし面の態様を共通にしており、両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。 それに対して、両意匠の差異点、すなわち、(1)傾斜面に、本件登録意匠は、その中央部に横全長の略2分の1弱の横長凹所が形成されているのに対して、イ号意匠には、そのような横長凹所が形成されていない点。(2)横凹溝が、本件登録意匠は、傾斜面の中央部に形成された横長凹所の両側にそれぞれ四段に形成されているのに対し、イ号意匠は、傾斜面の中央部に小間隔をあけ、その両側方向にそれぞれ三段に形成されている点。(3)本件登録意匠は、平面の両端近くに底面に至る四角孔が形成されているが、イ号意匠にはそのような四角孔が形成されていない点。(4)イ号意匠は、外側端が短く形成された最上段の横凹溝のそれぞれ外側部に横長小四角形の凹部がそれぞれ形成されているが、本件登録意匠には、そのような横長小四角形の凹部が形成されていない(該凹部には反射鏡が取り付けられている。)点。(5)イ号意匠は、両側面部の略中央部に横長小四角形の凹部が形成されているが、本件登録意匠には、そのような横長小四角形の凹部が形成されていない点は、本件登録意匠と、その類似1との間の相違に比べれば、類否の判断に与える影響は微弱である。また、イ号意匠における傾斜面に形成された三段の横凹溝及び横長小四角形の凹所等は、本件登録意匠と、その類似1に形成された四段の横凹溝及び横長凹所と比較して特段顕著な相違といえず、また、創作性を有するものとはいえず、類否の判断に与える影響は微弱である。 そして、両意匠を全体的に考察すると、両意匠の前記差異点は、類否の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって、共通点を凌駕しているものとはいえず、それらが纏まっても両意匠の類否の判断に及ぼす影響は、その結論を左右するするまでに至らないものである。 したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものである。 第2.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、意匠公報、意匠登録原簿、出願書類によれば、平成3年2月15日の出願に係り、平成5年9月10日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「車止めブロック」とし、その形態は、次のとおりとしたものである。(別紙第1参照) すなわち、その基本的構成態様は、全体形状を横長直方体の正面側上方を大きく斜状に切り欠いて一定幅の傾斜面を形成したものとし、その具体的な態様は、全体の構成比について、高さ、横幅、奥行きの比を約1:5:1.5 とし、傾斜面の態様について、その大きさは、上面の略中央から、正面の高さの約3分の1の位置まで形成し、その表面の態様は、中央部に上下に幅狭の余地部を残して全幅の約2分の1以下の横幅を有する横長長方形の浅い凹部を設け、その左右部に、それぞれ端部に余地部を残して、同じ長さの水平状の細溝を上下に4本ずつ等間隔に設け、上面の水平面の左右端部寄りには、それぞれ長方形の貫通孔を左右対称の位置に設け、左右の底辺を除く各稜線部及び上面後端部の稜線部を小さく面取りしている。 2.イ号意匠 イ号意匠は、請求人が提出した甲第2号証(イ号意匠)によれば、意匠に係る物品を「車止めブロック」とし、その形態については、次のとおりとするものと認められる。(別紙第2参照) すなわち、その基本的構成態様は、全体形状を横長直方体の正面側上方を大きく斜状に切り欠いて一定幅の傾斜面を形成したものとし、その具体的な態様は、全体の構成比について、高さ、横幅、奥行きの比を約1:5:1.2 とし、傾斜面の態様について、その大きさは、上面の略中央から、正面の高さの約2分の1弱の位置まで形成し、その表面の態様は、中央部にやや広幅の余地部を残して、その左右部に、それぞれ端部に余地部を残して、ほぼ同じ長さの水平状の細溝を上下に3本ずつ等間隔に設け、さらに、左右上方四隅に長方形の浅い凹部を設け、左右側面のやや上方寄りに、それぞれ長方形の凹部を設け、左右の底辺を除く各稜線部及び上面後端部の稜線部を小さく面取りしている。 3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討 (1) 意匠に係る物品については、両意匠は共に車止めに用いられるブロックであるから一致している。 (2) 形態については、両意匠の基本的構成態様、すなわち、全体形状を横長直方体の正面側上方を大きく斜状に切り欠いて一定幅の傾斜面を形成したものとした点が共通し、具体的な態様においても、以下の共通点が認められる。 (a)全体の構成比について、高さと横幅の比を約1:5としている点、(b)傾斜面の大きさについて、上面の略中央から傾斜面を形成している点、(c)傾斜面の表面の態様について、中央部に余地部を残して、その左右部に、それぞれ端部に余地部を残してほぼ同じ長さの水平状の細溝を上下に複数本ずつ等間隔に設けた点、(d)稜線部の態様について、左右の底辺を除く各稜線部及び上面後端部の稜線部を面取りしている点。 一方、両意匠には、具体的な態様において、以下の差異点が認められる。 すなわち、(ア)全体の構成比について、高さと奥行きの比を、本件登録意匠は、約1:1.5 としているのに対して、イ号意匠は、1:1.2 としている点、(イ)傾斜面の大きさについて、正面の位置が、本件登録意匠は、正面の高さの約3分の1の位置まで形成しているのに対して、イ号意匠は、正面の高さの約2分の1弱の位置まで形成している点、(ウ)傾斜面の表面の態様について、中央部の余地部が、本件登録意匠は、上下に幅狭な余地部を残して、全幅の約2分の1以下の横幅を有する横長長方形の浅い凹部を設け、その左右部に細溝を4本ずつ設けているのに対して、イ号意匠は、やや広幅の余地部を残して、その左右部に細溝を3本ずつ設け、左右上方四隅に長方形の浅い凹部を設けている点、(エ)上面の水平面及び左右側面の態様について、上面の水平面左右端部寄りに、本件登録意匠は、それぞれ長方形の貫通孔を左右対称に位置に設けているのに対して、イ号意匠は、そのような貫通孔を設けていない点、また、左右側面のやや上方寄りに、イ号意匠は、それぞれ長方形の凹部を設けているのに対して、本件登録意匠は、そのような凹部を設けていない点。 (3)そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。 まず、両意匠において共通するとした基本的構成態様は、この種物品分野においては、本件登録意匠の出願前に他に見受けられる態様であり(例えば、特許庁発行の公開実用新案公報記載の昭和57年実用新案出願公開第105310号の第1図及び第2図に示された駐車用ブロック)、格別のものではないが、両意匠の形態についての骨格的要素となるものであるから、類否判断に影響を与えるものと認められる。 次に、両意匠は、具体的な態様において前記のとおり(a)ないし(d)の各点が共通し、(ア)ないし(エ)の各点に差異が認められるので、これらの具体的な態様が両意匠の類否判断に及ぼす影響についてみると、まず、共通点の(a)及び(b)については、この種物品分野においては、両意匠のみの特徴といえないが、いずれも形態の基調を形成する要素であるから、これらの態様は、類否判断において考慮すべき要素と認められる。(c)の細溝の態様については、本件登録意匠の出願前に見受けられないものであり、本件登録意匠独自の態様と認められ、また、当該傾斜面は、正面側上方部で最も目立つ部位であり、意匠全体に占める割合も大きいこと、さらに、本件登録意匠の類似第1号の意匠を参酌すると、この態様における共通点は、類否判断に大きな影響を及ぼす要素と認められる。(d)の態様は、特異なものではないから、類否判断を左右する要素としては微弱なものである。 (4)一方、差異点(ア)については、イ号意匠の奥行きが、本件登録意匠よりやや短いが、共に奥行きを高さに比べてやや長いものとした共通する中での差異にすぎないものであるから、その差異は、微弱なものというほかない。差異点(イ)については、傾斜面の大きさが、イ号意匠の方が本件登録意匠よりやや小さいが、これは傾斜面の上辺が上面の略中央の位置にある点で共通しているものの、傾斜面の下辺の位置がイ号意匠の方が本件登録意匠よりやや高い位置にあることによるものであって、その高さもともに全高の2分の1以下の高さの中での差にすぎないものであるから、意匠全体としてみた場合、この差異は微弱なものといわざるを得ない。差異点(ウ)については、まず、傾斜面の中央部において、本件登録意匠は長方形の浅い凹部を設けているのに対して、イ号意匠は、やや広幅の余地部を設けている差異であるが、本件登録意匠のように傾斜面に長方形状の凹部を設けることは、この種物品分野においては、本件登録意匠の出願前に見受けられるところであるから、本件登録意匠独自の態様ではないこと、また、本件登録意匠の類似意匠(登録第885975号の類似第1号)の傾斜面の態様を参酌すれば、傾斜面の中央部における差異が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものと認められる。また、イ号意匠に見られる左右の長方形の浅い凹部は、傾斜面の左右上方隅部に設けられ、傾斜面全体に占める割合が小さいことから、この点の差異は、共通するとした細溝の態様に包摂される程度の微弱なものというほかない。差異点(エ)については、上面水平面の貫通孔の有無及び左右側面の凹部の有無の差異であるが、それらの部位のみを見ればともかく、意匠全体から見れば、部分的なところにおける差異にすぎないものであり、また、物品の使用状態を参酌すれば、それらの差異は微弱なものといわざるを得ない。 (5)以上を総合すれば、両意匠の基本的構成態様は、両意匠の類否判断に影響を与えるものと認められ、具体的な態様における共通点(d)は、両意匠の類否判断を左右する要素としては微弱なものに止まるものの、具体的な態様における共通点(a)及び(b)は、類否判断において考慮すべき要素と認められ、共通点(c)、すなわち、本件登録意匠の新規な態様である傾斜面に中央部に余地部を残して、その左右部にほぼ同じ長さの水平状の細溝を上下に複数本ずつ等間隔に設けた態様は、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められ、それらの共通点が相俟って両意匠の類否判断を左右する要素と認められるのに対し、両意匠の具体的な態様における差異点の(ア)ないし(エ)は、いずれも微弱なものであって、これら差異点が相俟って形成する意匠的まとまりを考慮しても、両意匠を全体として観察した場合、いまだ類否判断に与える影響は小さいものといわざるを得ない。 そうすると、意匠全体として観察した場合、両意匠間における前記の共通点は、前記差異点を大きく凌駕して、看者に共通の美感を与えているものと認められる。 (6)したがって、イ号意匠と本件登録意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、類否判断を左右する要素と認められる共通点があるから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しているものというほかない。 4.むすび よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものであるから、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2001-12-17 |
出願番号 | 意願平3-3718 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
YA
(L2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉山 太一 |
特許庁審判長 |
足立 光夫 |
特許庁審判官 |
藤 正明 伊藤 栄子 |
登録日 | 1993-09-10 |
登録番号 | 意匠登録第885975号(D885975) |
代理人 | 山本 彰司 |