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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする K1
管理番号 1059720 
審判番号 無効2001-35328
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-07-26 
確定日 2002-05-10 
意匠に係る物品 穿孔工具用雄刃 
事件の表示 上記当事者間の登録第1097957号「穿孔工具用雄刃」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1097957号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申し立て及び請求の理由
1.請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
2.意匠登録無効の要点
本件登録意匠(甲第1号証)は、甲第2号証(実開平7-15124号公報)に開示された意匠(以下、「先行意匠1」という)および甲第5号証(登録意匠第909376号公報)に開示された意匠「先行意匠2」と類似のものであり、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するから、本件意匠は、意匠法第48条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。
3.本件登録意匠
(1)本件登録意匠は、意匠に係る物品を「穿孔工具用雄刃」とし、部分意匠として意匠登録を受けた部分の機能、用途は、対向する雄刃とともに鋼板等の被加工物に貫通孔をあけるためのものである。
(2)登録部分自体の形態については、基本的構成態様は、全体的に円筒状であり、具体的構成態様は、(ア)先端面は、平面視したとき、円形の径方向中心軸線に沿って延びる帯状の水平面と、該水平面の両側に設けられた互いに傾斜方向が逆である2つの傾斜面とからなり、(イ)水平面の中心に、先端が尖った突起が設けられ、(ウ)水平面と傾斜面との間に切り立った面が、水平面に対して略垂直に延びている。
(3)物品全体の中に占める登録部分の位置、大きさ、範囲については、登録部分は全体の先端部に位置している。また、登録部分は、長手方向において、点線で示された登録部分以外の部分(以下、「非登録部分という」)を含めた長さ全体の、約30%の大きさを占めている。また、非登録部分は、点線で示されているように、截頭円錐形部分と、その基端側に位置する円筒状部分との組合せ形状をなしており、登録部分が、径方向全体に対して占める大きさは約50%であり、また、円筒状部分とはほぼ同径である。更に、登録部分は、先端から長手方向に約30%の範囲を占めている。
4.先行意匠1
(1)先行意匠1は、本件登録意匠の出願日前の平成7年3月14日に公開され(実開平7-15124号公報)、その意匠の内容は甲第2号証に示すとおりである。
(2)実用新案登録出願に係る甲第2号証の記載によれば、考案の名称は「パンチャー用ポンチ」である。これは、意匠法上、本件の意匠に係る物品である「穿孔工具用雄刃」に相当する。
(3)登録部分に対応する部分(以下、「対応登録部分1」という)の機能・用途
対応登録部分1は、対向する雄刃とともに鋼板等の被加工物に貫通孔をあけるためのものである。
(4)対応登録部分1自体の形態については、基本的構成態様は、全体的に円筒状であり、具体的構成態様は、(ア)先端面は、平面視したとき、円形の径方向中心軸線に沿って延びる帯状の水平面と、該水平面の両側に設けられた互いに傾斜方向が逆である2つの傾斜面とからなり、(イ)水平面の中心に先端が尖った突起が設けられ、(ウ)水平面と傾斜面との間の切り立った面が、水平面から傾斜面に向かって僅かに径方向に傾斜している。
(5)対応登録部分1の位置、大きさ、範囲については、対応登録部分1は、全体の先端部に位置し、更に、対応登録部分1は、先端から長手方向に約30%の範囲を占めている。
5.先行意匠1が本件登録意匠に類似する理由の説明
(1)両意匠は、上記の通り、意匠に係る物品が同一である。
(2)登録部分および対応登録部分1の機能・用途が共通している。
(3)登録部分および対応登録部分1自体の形態
本件登録意匠と先行意匠1の共通点および差異点を比較検討するに、両意匠は基本的構成態様、すなわち、基本的構成態様が全体的に円筒状である点が共通している。また、両意匠は、具体的構成態様、すなわち、(ア)先端面は、平面視したとき、円形の径方向中心軸線に沿って延びる帯状の水平面と、該水平面の両側に設けられた互いに傾斜方向が逆である2つの傾斜面とを有し、(イ)水平面の中心に先端が尖った突起が設けられている点で共通している。
上記基本的構成態様は、両意匠の形態の骨格的要素となり、意匠全体の基調を決定づけ、また、具体的構成態様(ア)および(イ)は、特に、穿孔工具用雄刃全体の中で、穿孔を行う刃を構成する部分であり、看者の注意を最も引く部分であるから、基本的構成態様と相俟って、両意匠を特徴づけ、これらが類否判断に与える影響は大きい。
一方、両意匠の上記具体的構成態様(ウ)に関する差異点、すなわち、本件登録意匠においては、水平面と傾斜面との間の切り立った面が、水平面に対して略垂直に延びているのに対して、先行意匠1においては、水平面から傾斜面に向かって僅かに径方向外方に傾斜している点は、傾斜角度が小さく、わずかな変更の範囲であり、その差異はいまだ両意匠の類否判断を左右するほどの要素には至っていない。
(4)登録部分および対応登録部分1の位置、大きさ、範囲
登録部分と対応登録部分1とは、全体に対して径方向に占める大きさが相違する点で、両意匠には差異があるが、本件登録意匠および先行意匠1と同様な形態の雄刃は、いずれも、当業界において、様々な径の大きさのものが、本件出願前から周知であるから、登録部分および対応登録部分1の全体に対して径方向に占める大きさはありふれており、この点で、本件登録意匠と先行意匠との間で差異があっても、類否判断において与える影響は小さいといえる。
6.本件登録意匠と先行意匠1との対比の結論
上記両意匠の共通点は、両意匠の類否判断に与える影響が大きいのに対して、差異点は、類否判断を左右するほどとは認められない。したがって、意匠全体としては、両意匠の共通点は、差異点を大きく凌駕しており、両意匠は看者に共通の美観を与えているといえる。したがって、本件登録意匠は先行意匠1に類似しているといえる。
第2 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張した。
1.本件登録意匠の説明
(1)本件登録意匠に係る物品は,穿孔工具用雄刃である。
(2)本件登録部分は、対向する雌刃に挿入可能で、被加工物に貫通孔をあける刃部として機能する。
(3)物品全体の中に占める意匠登録部分の位置、大きさ、範囲
本件登録部分は、物品全体の先端部に位置し、物品全体の長さに対する登録部分の長さの比は、約0.3 であり、物品全体の最大径に対する登録部分の最大径の比は、約0.5 である。
(4)意匠登録部分自体の形態については、本件登録部分の基本的態様は円柱形であり、長さに対する径の比は、約1.0 である。具体的態様は、本件登録部分の先端には、帯状の水平面があり、この水平面の両側には、互いに傾斜方向が逆である二つの弓形の傾斜面があり、これらの傾斜面の最上端は水平面と同じ高さにあり、従って傾斜面と水平面とは連続し、また、水平面の中心部には円錐状の突起が設けられ、さらに、水平面と傾斜面との間にある面はほぼ垂直に延びている。
2.本件登録意匠と甲第2号証との対比
(1)物品全体の中に占める刃部の大きさ、範囲
本件登録意匠では全体に対する刃部の長さの比が約0.3 であるのに対して、甲第2号証では約0.7 である。また本件登録意匠では、全体に対する刃部の径の比が約0.5 であるのに対して、甲第2号証では1.0 である。さらに、甲第2号証では平面視において刃部しか見えない点、及び底面視において刃部が見える点でも,本件登録意匠と異なる。よって、本件登録意匠と甲第2号証とでは、物品全体の中に占める刃部の大きさ・範囲がかなり相違する。
尚、請求人は、本件登録部分と対応する部分を先端からの約30%の部分と認定して、登録部分の長さは穿孔工具のラムのストローク長に依存するためこのような認定に問題がないとの主張をしている。しかし、物品の同一性が用途・機能の同一性をもって判断されることからすれば、本件登録部分と同一の用途・機能を備え、他から区別可能な部分こそが対比の対象となり得るのである。そして、本件登録部分は、そのほぼ全長が雌刃と嵌合する刃部である。従って、甲第2号証において対比されるべき部分も先端から段部に至る円柱状部分全体である。よって、請求人の主張は失当である。
截頭円錐形部分を有する穿孔工具用雄刃が本願出願前から公知であることを示したからといって、全体に対する刃部の径の比が約0.5 であることが公知だという証拠を示したことにはならない。しかも、それが本件出願前から周知で、ありふれているという根拠はない。そもそも物品全体の中に占める大きさ・範囲がありふれているか否かが、何故類否判断と関係するのか説明がなされていない。。類否判断で重要なのは、本件登録意匠と甲第2号証とを対比観察したときの美観が異なるか否かである。従って、請求人の主張は妥当性に欠ける。
(2)刃部の基本的態様
本件登録意匠は、長さに対する径の比は約1.0 の円柱形であるのに対して、甲第2号証は約1.6 の円柱形である。従って、本件登録意匠に比べると、甲第2号証はかなり長い。
(3)刃部の具体的態様
本件登録意匠では、水平面と弓形の傾斜面との間にある面がほぼ垂直に延びているのに対し、甲第2号記では径方向外方に傾斜している点で異なる。このことについて請求人は、傾斜角度が小さく類否判断を左右しないと主張している。しかし、当該面の傾斜角度は弓形の傾斜面の角度とほぼ等しい。従って、当該面の傾斜は弓形の傾斜面と同等に看者の目を引きつけるはずであり、決して無視することはできない。また、甲第2号証では、平面視において当該面がはっきりと見える。
さらに甲第2号証では、水平面に設けられた円錐状の突起が本件登録意匠に比べて小さく、ほとんど自立たない。従って、甲第2号証は、本件登録意匠とは外観が大きく相違する。
(4)本件登録意匠と甲第2号証との対比の結論
本件登録意匠と甲第2号証とでは、物品全体の中に占める刃部の大きさ・範囲、刃部の基本的態様及び刃部の具体的態様が大きく異なる。よって、両者は非類似である。
3.むすび
以上の通り、本件登録意匠は、甲第2号証及び甲第5号証のいずれとも非類似であり、従って意匠法3条1項3号の規定に該当しない。
第3 口頭審理
1.本件審判について、当審は、平成14年1月22日に口頭審理を行った。(平成14年1月23日付け口頭審理調書)
2.請求人は、甲第2号証において、本件登録意匠の部分に相当する部分は、先端から約30%の範囲である旨述べた。また、甲第3号証及び甲第4号証は、参考資料とした。
3.被請求人は、全甲号証の証拠の成立を認め、本件登録意匠の部分は、刃部であり、甲第2号証において、本件登録意匠の部分と対比すべき部分は、先端から段部に至る円柱状部分(刃部)である旨述べた。
第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書類の記載によれば、平成11年11月24日の意匠登録出願(意願平11-32507号、物品の部分について意匠登録を受けようとする出願)に係り、平成12年11月17日に設定の登録がなされた意匠登録第1097957号であって、意匠に係る物品を「穿孔工具用雄刃」とし、部分意匠として意匠登録を受けた部分の形態を実線で表したとおりとするものである(別紙第1参照)。
すなわち、部分意匠として意匠登録を受けた物品の部分の形態は、全体の基本構成を略縦長円柱状とし、中央寄りにやや大きな異径部を形成した穿孔工具用雄刃の先端の刃部部分に係り、その部分を実線で表した態様のものであり、その部分の範囲は、軸方向に全体の約30%とするものである。そして、その部分の基本的な構成態様については、刃部全体を略短円柱状とし、その先端面に段差面状の刃先部を形成した態様のものであり、その具体的な態様については、刃部の直径と軸方向の長さの比を略1対1とし、刃先部は、先端面の中心の径方向に沿って細幅帯状の水平面部を形成し、その幅を直径の約30%とし、水平面の中心に円錐形状のやや小さな突起を設けたものであり、その水平面部の両外側の面をそれぞれ逆方向に傾斜させて略15度の傾斜面状とし、水平面から傾斜面に至る両側面を垂直状の略直角三角形状に表した態様のものである。
2.甲号意匠
(1)甲号意匠は、請求人が甲第2号証として提出した刊行物に記載されたものに係り、本件登録意匠の出願前、平成7年3月14日付で特許庁が発行、頒布した公開実用新案公報の平成7年実用新案出願公開第15124号(考案の名称「パンチャー用ポンチ」)の図2ないし図3に表されたパンチャー用ポンチの形態のうち、本件登録意匠の部分に相当する部分とするものである(別紙第2参照)。
(2)本件登録意匠に相当する甲号意匠の部分につき、請求人は、甲第2号証において本件登録意匠の部分に相当する部分は、先端から約30%の範囲である旨主張し、一方、被請求人は、甲第2号証において本件登録意匠の部分と対比すべき部分は、先端から段部に至る円柱状部分(刃部)である旨主張するので、まず、この点について検討する。
(a)本件登録意匠の部分意匠として意匠登録を受けた部分は、前記認定のとおり、穿孔工具用雄刃の先端の刃部部分に係り、その部分の範囲を、軸方向に全体の約30%とし、刃部の直径と軸方向の長さの比を略1対1としたものである。
一方、甲第2号証によれば、図2ないし図3において、全体の基本構成を略縦長円柱状とし、中央寄りに異径の段差を形成したパンチャー用ポンチの形態が表されており、その先端部(「12」と表示されたもの)の先端部分に本件登録意匠の部分に相当する部分を認めることができる。そして、本件登録意匠は、刃部の直径と軸方向の長さの比を略1対1としたものであるから、相当する部分は、パンチャー用ポンチの先端面側から、直径と長さの比を略1対1とした部分とすべきである。なお、この部分は、パンチャー用ポンチの形態全体からみると、約40%を占めている。したがって、本件登録意匠と対比すべき甲号意匠の部分は、刃部の先端から約40%の範囲とするのが相当である。
(b)被請求人は、図2ないし図3に表されたパンチャー用ポンチの先端から段部に至る円柱状部分(「12」と表示の先端部)と本件登録意匠の部分を対比すべきである旨主張するが、この点については、物品の部分について、意匠的にみて特徴のある創作をした場合に保護される部分意匠制度の趣旨に鑑みれば、部分意匠の対比は、物品の部分として対比の対象となり得る部分、すなわち、本件登録意匠と甲号意匠の場合は、本件登録意匠の部分に相当する甲号意匠の部分について判断されるべきものであり、必ずしも物品の機能上まとまりのある部位相互を対比しなければならないものではないから、被請求人の主張は採用することができない。
(3)甲号意匠の部分は上記のとおりであるから、その形態は、全体の基本構成を略縦長円柱状とし、中央寄りに異径の段差を形成したパンチャー用ポンチの先端の刃部部分に係り、その部分の範囲は、刃部の先端から約40%とするものである。そして、その基本的な構成態様については、全体を略短円柱状とし、その先端面に段差面状の刃先部を形成した態様のものであり、その具体的な態様については、刃部の直径と軸方向の長さの比を略1対1とし、刃先部は、先端面の中心の径方向に沿って細幅帯状の水平面部を形成し、その幅を直径の約30%とし、水平面の中心に円錐形状の小さな突起を設けたものであり、その水平面部の両外側の面をそれぞれ逆方向に傾斜させて略15度の傾斜面状とし、水平面から傾斜面に至る両側面をやや傾斜状の略直角三角形状に表した態様のものである。
3.本件登録意匠と甲号意匠の比較検討
(1)意匠に係る物品については、本件登録意匠は「穿孔工具用雄刃」とし、甲号意匠は「パンチャー用ポンチ」としたものであり、いずれも、穿孔用工具において対向する雌刃とともに鋼板等の被加工物に貫通孔をあけるために使用されるものであるから、意匠に係る物品が共通する。
(2)部分の位置については、本件登録意匠の部分及び甲号意匠の部分とも、雄刃の先端部分としたものであるから、部分の位置が一致する。部分の大きさ、範囲については、本件登録意匠の部分が刃部の先端から30%とし、甲号意匠の部分が刃部の先端から40%としたものであるから、差異が認められる。
(3)部分の形態については、以下の共通点と差異点が認められる。
すなわち、本件登録意匠と甲号意匠は、その全体を略短円柱状とし、その先端面に段差面状の刃先部を形成した基本的な構成態様が共通し、具体的な態様についても、刃部の直径と軸方向の長さの比を略1対1とした点、刃先部は、先端面の中心の径方向に沿って細幅帯状の水平面部を形成した点、その幅を直径の約30%とし、水平面の中心に円錐形状の小さな突起を設けた点、その水平面部の両外側の面をそれぞれ逆方向に傾斜させて略15度の傾斜面状とし、水平面から傾斜面に至る両側面を略直角三角形状に表した態様とした点が共通する。
一方、両意匠間には、(イ)水平面の中心に設けた円錐形状の突起の態様について、本件登録意匠よりも甲号意匠のものが僅かに小さい点、(ロ)水平面から傾斜面に至る両側面の態様について、本件登録意匠は、垂直状であるのに対して、甲号意匠は、傾斜状である点に差異が認められる。
4.本件登録意匠と甲号意匠の類否
本件登録意匠と甲号意匠を部分全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について総合的に検討する。
(1)部分の大きさ、範囲についての差異は、物品の形態全体からみて格別の相違ともいえず、全体に占める割合についての軽微な差異に止まる程度のものであり、また、部分意匠の対比においては、物品の全体の構成及び破線部分の態様の相違が類否判断に及ぼす影響は相対的に低いものというべきであるから、部分の大きさ、範囲についての差異が類否判断に与える影響は微弱である。
(2)両意匠において共通する基本的な構成態様は、この種の物品分野においては他にもみられる構成態様であり、格別のものではないとしても、両意匠の形態についての骨格的要素となるものであり、また、共通するとした各部の具体的な態様、特に、刃先部について、中心の径方向に沿って細幅帯状の水平面部を形成し、水平面部の両外側の面をそれぞれ逆方向に傾斜させて略15度の傾斜面状とした点は、形態の主要な構成部位である刃先部の態様に係り、その刃先部の形態上の基調を形成し、意匠的効果を有する要素と認められるから、両意匠の類否判断に影響を及ぼすというべきであり、そうして、共通するとしたこれらの態様が相俟って意匠的まとまりと特徴を形成しているということができるから、共通するとしたこれらの態様は、看者の注意を強く惹くところであり、両意匠の類否判断を左右する要素と認められる。
(3)これに対して、差異点 (イ)は、その大きさの差異が僅かであって、形態全体としてはそれほど目立たず、前記の共通するとした態様に包摂される程度の微弱な差異と認められる。
差異点(ロ)については、水平面から傾斜面に至る略直角三角形状に表れる側面の面角度についての差異であり、又、その差異は、側面視において詳細に観察した場合に、僅かに認識できる程度の微弱な差異に止まり、両意匠の美感を異ならせる要素には至らない。
(4)以上を総合すれば、両意匠の具体的な態様における共通点は、両意匠の類否判断に影響を及ぼし、共通点が相俟って両意匠の類否判断を左右するほどの要素と認められるのに対し、両意匠の具体的な態様における差異点(イ)及び(ロ)は、いずれも両意匠の全体的な観察の際に与える影響が微弱であり、これら差異点が相俟って形成する意匠的効果を考慮しても、いまだ両意匠の類否判断に与える影響は小さいものといえるところであるから、結局、差異点は、いずれも類否判断を左右する要素とは認められない。
(5)したがって、本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が共通し、本件登録意匠の部分意匠に相当する部分が甲号意匠に認められ、両意匠の形態については、前記のとおりの差異点があっても、類否判断を左右する要素と認められる共通点が差異点を大きく凌駕して看者に共通の美感を与えているといえるから、両意匠は、全体として類似するものというほかない。
5.結び
以上のとおり、本件登録意匠は、その出願前に国内において頒布された刊行物に記載された意匠に類似するものであって、意匠法第3条第1項第3号に該当し、その意匠登録は、同条同項の規定に違反してなされたものであるから、他の無効理由について検討するまでもなく、意匠法第48条第1項の規定により、その意匠登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2002-01-28 
結審通知日 2002-01-31 
審決日 2002-03-29 
出願番号 意願平11-32507 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (K1)
最終処分 成立 
前審関与審査官 江塚 尚弘 
特許庁審判長 足立 光夫
特許庁審判官 伊藤 栄子
藤 正明
登録日 2000-11-17 
登録番号 意匠登録第1097957号(D1097957) 
代理人 大塚 文昭 
代理人 村社 厚夫 
代理人 矢野 正行 
代理人 西島 孝喜 
代理人 竹内 英人 
代理人 宍戸 嘉一 
代理人 富岡 英次 
代理人 小川 信夫 
代理人 井野 砂里 
代理人 箱田 篤 
代理人 今城 俊夫 
代理人 中村 稔 
代理人 熊倉 禎男 
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