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審決分類 審判 無効  意48条1項3号非創作者無承継登録意匠 無効とする M2
管理番号 1059721 
審判番号 無効2001-35299
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-07-04 
確定日 2002-05-07 
意匠に係る物品 サドル分水栓用防食金具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1084479号「サドル分水栓用防食金具」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1084479号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張し、その証拠として、甲第1号証乃至同第7号証、甲第8号証の1及び同第8号証の2、甲第9号証乃至同第13号証を提出した。
すなわち、意匠登録第1084479号の意匠(意匠に係る物品「サドル分水栓用防食金具」、以下、「本件登録意匠」と称する)は、創作者を被請求人である「人物A」として登録されたものであり、その意匠登録が意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してされたものであるから、意匠法第48条第1項第3号に該当するものとして、その登録を無効とすべきである。
1.本件登録意匠の真の創作者
甲第3号証は、請求人の従業者である石川和夫、および、橋口卓也を共同発明者として、平成10年7月24日に、特願平10-225379号として、特許出願した内容が記載された公開特許公報の写しである。そして、本件登録意匠と実質的に同一の意匠が、第1図乃至第3図に記載されている。
そうすると、本件登録意匠は、すくなくとも、意匠登録出願よりも先に出願された甲第3号証発明の明細書、および、図面に記載された意匠と同一であるということができる。
2.請求人と被請求人の関係
被請求人は、本件登録意匠の意匠登録出願時には、件外、企業Aの取締役の職にあった(甲第7号証、甲第8号証の1)。
そして、企業Aは、請求人の依頼によって、本件登録意匠の出願時の直前には、甲第3号証発明の試作品を、請求人の求めに応じて製造していた。
しかも、甲第3号証発明の試作については、企業Aは、請求人に対して守秘義務を有しており、これを遵守するために、厳格に秘密状態を維持していた。
しかるに、被請求人は、当時の企業Aにおける、取締役部長という地位を悪用し、甲第3号証発明の内容を、企業Aのみならず、請求人にも無断で盗用し、あたかも自己の創作に係る意匠であるかのごとく意匠登録出願を行ったものである。
甲第8号証の2には、その経緯が、企業Aの代表取締役である人物Bから、請求人宛の「事情説明書」という内容で明らかになっている。
つまり、本件登録意匠は、本来的に、甲第3号証発明の発明者が、意匠登録を受ける権利を有していたところ、被請求人が、当時の自己の立場を利用して、意匠の内容を盗用し、あたかも、自己の創作に係る意匠であるとして、登録を受けたものであり、冒認出願に係る登録であり、意匠法第48条第1項第3号に該当することは明白である。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、請求人の申し立て及び理由に対して、何も答弁していない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年1月12日(2000.7.7)に、創作者を「人物A」とし、出願人を「企業A」として意匠登録出願され、その後平成12年5月22日に、出願人が「人物A」に変更され、その後平成12年7月7日に、意匠権者を「人物A」として、意匠権の設定の登録がなされた、意匠登録第1084479号の意匠であって、その願書の記載及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「サドル分水栓用防食金具」、その形態は、願書の記載及び願書に添付された図面の記載のとおり(本件審決に添付の別紙第1参照)である。
すなわち、その形態は、全体の基本的構成態様を、略円柱体状のアノードの下方に、閉頭略円筒体状の固定金具を螺着したものとし、各部の具体的構成態様を、アノードは、高さと径を略等しくした極僅かな末広がり状とし、固定金具は、上面部をアノードの下端と同径の円板状として中央にボルトを立設し、その等間隔の周縁を下方へ下窄まり状に折り曲げ、高さをアノードの略1/2とする略縦長矩形板状の同大の脚を16本形成した脚部とし、その脚部の略1/5の下端を外方へ拡げたものである。
2.甲第3号証
甲第3号証については、本件登録意匠の出願前の平成10年7月24日に、株式会社タブチが特許出願し、その後、本件登録意匠の出願後の平成12年2月15日に、特許庁より公開された公開特許公報所載の特許出願公開2000年45085号であって、同公報によれば、発明の名称を「犠牲陽極取付装置」とする第1図乃至第3図に、サドル分水栓用防食金具が表されていること、出願人が株式会社タブチ、発明者が石川和夫、および、橋口卓也であることが認められる。
そうして、甲第3号証に表された意匠(以下、「甲第3号意匠」と称する)は、特許出願公開2000年45085号の第1図乃至第3図、および、これに関連する記載により表されたサドル分水栓用防食金具であって、その形態は、同公報の記載のとおり(本件審決に添付の別紙第2参照)である。
すなわち、その形態は、全体の基本的構成態様を、略円柱体状のアノードの下方に、閉頭略円筒体状の固定金具を螺着したものとし、各部の具体的構成態様を、アノードは、高さと径を略等しくした極僅かな末広がり状とし、固定金具は、上面部をアノードの下端と同径の円板状として中央にボルトを立設し、その等間隔の周縁を下方へ下窄まり状に折り曲げ、高さをアノードの略1/2とする略縦長矩形板状の同大の脚を16本形成した脚部とし、その脚部の略1/5の下端を外方へ拡げたものである。
3.甲第8号証の2
甲第8号証の2については、企業Aにより作成されたと推定される事情説明書であって、その事情説明書によれば、企業Aが、株式会社タブチからの依頼により、本件登録意匠に係る物品を製造していたこと、また、企業Aは、株式会社タブチに対して守秘義務を有していたこと、さらに、「人物A」は、本件登録意匠の出願時に、企業Aの取締役部長という地位にあって、その在職中に、その地位を利用して、企業Aに無断で、本件登録意匠について、出願人を企業Aとして出願したことが認められる。
4.無効事由について
本件登録意匠は、その意匠登録が意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してされたものであるから、意匠法第48条第1項第3号に該当するものとして、その登録を無効とすべきである旨の請求人の主張について考察する。
(1)本件登録意匠と甲第3号意匠の比較検討
両意匠を比較すると、両意匠は、分水栓の電気的腐食を防止するために使用されるものであるから、意匠に係る物品が一致し、形態については、以下に示す共通点があるが、差異点はないと言わざるを得ない。
すなわち、両意匠は、略円柱体状のアノードの下方に、閉頭略円筒体状の固定金具を螺着した全体の基本的構成態様が共通し、アノードは、高さと径を略等しくした極僅かな末広がり状とし、固定金具は、上面部をアノードの下端と同径の円板状として中央にボルトを立設し、その等間隔の周縁を下方へ下窄まり状に折り曲げ、高さをアノードの略1/2とする略縦長矩形板状の同大の脚を16本形成した脚部とし、その脚部の略1/5の下端を外方へ拡げた各部の具体的構成態様も共通する。
そこで、両意匠を全体として検討すると、両意匠は差異点がないものであるから、両意匠に共通するとした、全体の基本的構成態様及び各部の具体的構成態様は、形態上の特徴を強く表象すると共に、形態全体の基調を形成するところであって、意匠の類否を左右するに十分な影響を及ぼすと言わざるを得ない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態においても、意匠全体として観察すると、同一の意匠であると言う外ない。
(2)冒認出願について
法は、意匠法第48条第1項第3号において、その意匠登録が意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してされたときは、その意匠登録を無効とすることができると規定している。
すなわち、被請求人を創作者及び意匠権者とする本件登録意匠は、甲第3号意匠と同一の意匠であると言わざるを得ず、その甲第3号意匠は、本件登録意匠の出願前に、被請求人とは別人の石川和夫、および、橋口卓也により創作されたことが認められる。
また、本件登録意匠の当初の出願人である企業Aは、請求人に対して守秘義務を有していたものであり、本件登録意匠の出願時の直前には、甲第3号意匠の試作品を製造していたものであって、その当時、被請求人が、企業Aの取締役部長という地位にあったことが認められる。
さらに、被請求人が、当時の自己の立場を利用して、企業Aのみならず、請求人にも無断で甲第3号意匠の内容を盗用し、自己の創作に係る意匠であるとして、本件登録意匠を出願し、登録を受けたものであると言う点については、被請求人の反論もなく、これらの認定に反する証拠は存在しない。
そうすると、本件登録意匠の創作者は、被請求人である「人物A」ではなく、石川和夫、および、橋口卓也であり、当初の出願人である企業Aは、その意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものであって、本件登録意匠の企業Aから被請求人への出願人名義変更届の正当性を判断するまでもなく、本件登録意匠は、冒認出願であることが認められる。
したがって、本件登録意匠は、その意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してされたものと言う外ない。
5.むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第48条第1項第3号に該当するから、その登録を無効とされるべきである。
よって、結論の通り審決する。
別掲
審理終結日 2002-02-27 
結審通知日 2002-03-04 
審決日 2002-03-25 
出願番号 意願平11-640 
審決分類 D 1 11・ 16- Z (M2)
最終処分 成立  
特許庁審判長 秋間 哲子
特許庁審判官 鍋田 和宣
伊勢 孝俊
登録日 2000-07-07 
登録番号 意匠登録第1084479号(D1084479) 
代理人 濱田 俊明 

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