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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする J7 審判 無効 2項容易に創作 無効とする J7 |
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管理番号 | 1059722 |
審判番号 | 無効2001-35301 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2002-07-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-07-09 |
確定日 | 2002-05-24 |
意匠に係る物品 | 歯科用超音波研削チップ |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1013961号「歯科用超音波研削チップ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1013961号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.請求人の申し立て及び理由 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。 1.1無効理由の要点 (1)無効理由1 甲第1号証及び甲第6号証で明らかなように、本件意匠の全体形状は従来の標準であり、歯科医師の誰もが用いている周知の形状である。本件意匠は、この周知形状のものに、その出願前の甲第2号証ないし甲第5号証等の周知のダイヤモンドの微粉末を付着させたものにすぎないから、意匠法第3条2項に該当する。 (2)無効理由2 本件意匠は、甲第1号証及び甲第6号証の研削チップの形状に、甲第2号証ないし甲第5号証の周知・慣用手段であるダイヤモンドの微粉末を付着させたにすぎないものであるから、意匠法第3条1項3号に該当する。 1.2無効理由の詳細な説明 (1)本件意匠 本件意匠は、全体形状として、研削チップの略中央から湾曲し、湾曲部の略中央部付近から先端まで略直線状に延び、その部分が先端に向かって漸次細く尖った形状をなしている。特に、研削チップの先端から湾曲部の略中央まで、その表面にダイヤモンドの微粉末を固着して研削部を形成し、研削部の表面がざらざらした感じを与えている。 (2)無効理由1の詳細な説明 本件意匠の出願前に、超音波加工用チップにダイヤモンド等の砥粉を一体的に接着させた医療用超音波加工機や圧縮空気駆動により振動する歯科用エアースケーラーの表面にダイヤモンドの粉を電着したスケーラーチップ、先端の長円錐形部分にダイヤモンド微粒子を加着加工してなるダイヤモンド微粒子付歯根管切削針、あるいはダイヤモンド微粒子付歯根面廊清研磨用切削チップが存在していたことは周知の事実であった(例えば、甲第2号証ないし甲第5号証)。 そして、本件意匠は、意匠公報中の意匠に係る物品及び説明の記載から「先端にダイヤモンドの微粒子が固着された研削チップは、ハンドピースの先端に取り付けられ、超音波振動が加えられ、先端近傍の小孔から水が噴射され、前記研削チップは、振動しながら歯根や歯周を治療する歯科用超音波研削チップ」であることが認められる。他方、甲第1号証の意匠は、「歯石除去器」やロトソニック・スケーラーであることが認められる。また、甲第6号証のものは、「歯科用切削器」であることが認められ、冷却水を噴射するための噴射口を設けたものとしては、甲第4号証の「ダイヤモンド微粒子付歯根管切削針」等がある。 したがって、当業者が、本件意匠の登録出願前に日本国内で周知であった甲第1号証の意匠、甲第6号証の意匠及び甲第2号証ないし甲第5号証の周知の事実に基づいて「先端から湾曲部の略中央まで、その表面にダイヤモンドの微粒子を固着して研削部を構成し、研削部の表面にざらざらした感じを与える歯科用超音波研削チップ」である本件意匠を創作することは、容易であったというべきである。 (3)無効理由2の詳細な説明 甲第1号証の構成態様は、いずれも研削チップの略中央から湾曲し、湾曲部の略中央付近から先端まで略直線状に延び、その部分が先端に向かって漸次細い形状に形成されており、更に、甲第6号証1の構成態様は、切削器の略中央から先端まで滑らかに湾曲し、漸次先端に向かって細く尖った形状をなし、しかもその表面が滑らかに形成されている。さらに、甲第6号証2の構成態様は、切削器の略中央から「く」の字状に折れ曲がり、「く」の字状折れ曲がり部から漸次先端に向かって細くなり尖った形状となっており、しかもその表面が滑らかに形成されている。 そして、本件意匠と甲第1号証及び甲第6号証との差異である先端から湾曲部の略中央まで、その表面にダイヤモンドの微粒子を固着して研削部を構成した点については、当業者ならば周知・慣用の技術である甲第2号証ないし甲第5号証の意匠に基づいて容易に創作できたものであって、加えて、その部位の態様は梨地様の地模様的なものであって、形態全体に影響を与える程の格別の態様ではないから、両意匠の類否判断を左右する要素には未だ至っておらず、他方、具体的な態様において、切削チップの略中央から湾曲し、先端が細く尖った形状となっているという共通点がみられるから、意匠全体として観察すると両意匠は類似する。 2.被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のように主張した。 2.1無効理由1について 本件登録意匠と甲第1号証及び甲第6号証の意匠は、基本的構成態様において共通点を有するものの、その具体的構成態様においては顕著な差異を有する。すなわち、甲第2号証等によって、研削チップ先端にダイヤモンド等の砥粉を固着させることが周知の技術的思想であったとしても、そのダイヤモンド微粒子が固着された本件登録意匠が、「日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基」く意匠とはいえず、この点、請求人は何ら立証していない。よって、本件登録意匠は、当業者が容易に創作することができたものとは認められず、意匠法第3条2項に該当しない。 2.2無効理由2について 本件意匠と、甲第1号証及び甲第6号証に記載される意匠は、その基本的構成態様においては類似すると認める。しかし、本件登録意匠が、研削チップの先端から湾曲部の略中央まで、その表面にダイヤモンドの微粒子を固着して研削部を形成し、研削部の表面がざらざらした感じを与えているのに対し、対比する甲第1号証及び甲第6号証の意匠は、いずれも切削針の先端から略中央まで、その表面が滑らかに形成されているものであるから、両意匠はその具体的な構成態様において顕著な差異を有している。 すなわち、研削チップの先端部は、その機能を発揮する最も重要な部分であり、専門家たる歯科医師が最も注目する部分であるから、その先端部分において、対比する公知意匠とその形状等において差異がある場合には、その差異がたとえ微差であっても異なる美感を与え、この種の物品の意匠の要部となる。しかも、専門家たる歯科医師が、この種の物品を見るとき、性能・機能を発揮する部分が最も注意を惹く部分であり、その部分において例えば切れ味が非常に良いという専門家に与える印象と美感とは密接な関係を有するものである。 そこで、研削チップに係る本件登録意匠の先端部についてみると、上記のように先端から湾曲部の略中央まで、その表面にダイヤモンドの微粒子を固着して研削部を形成し、研削部の表面がざらざらした感じを与えている態様からなり、それは他に全く見られないところであるから、これが本件登録意匠の全体の基調を表出する要部である。超音波研削チップにダイヤモンド等の砥粉を一体的に固着させることが甲第2号証ないし甲第5号証により開示されており、これが公知の技術的思想であることは認めるが、対比する甲第1号証及び甲第6号証に記載される意匠にダイヤモンドの微粒子が固着されてない以上、本件意匠と甲第1号証及び甲第6号証に記載される意匠は、形態の要部において相違し、看者に全く異なる美感を与える。 したがって、本件意匠と甲第1号証及び甲第6号証に記載される意匠とは、請求人の主張するように、研削チップの略中央から湾曲し、先端が細く尖った形状となっているという共通点を有するとしても、上記のように要部において顕著な差異を有するものであるから、その支配的態様が異なり、両意匠は全体としては類似しない。 3.当審の判断 (1)本件登録意匠 本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書類の記載によれば、平成4年5月22日の意匠登録出願に係り、平成10年4月17日に設定登録された登録第1013961号であって、意匠に係る物品を「歯科用超音波研削チップ」とし、その形態を別紙第1に示すとおりとしたものである。 すなわち、基軸部と刃部よりなるものであって、基軸部は、水を通すための中空部を有する略円形筒状とし、刃部寄り端部周面に対称状に平坦状切り欠き部を形成し、刃部は、直線状部と匙状湾曲部とからなり、漸次先細りとし、直線状部から湾曲部略中央まで中空部を形成し、先端にダイヤモンドの微粒子を固着させたものである。 (2)無効理由1について 本件登録意匠の出願前の昭和60年12月10日に発行された「新常用歯科辞典」(甲第1号証1)によれば、本件登録意匠の全体形状は、弧状に湾曲した刃部を有することから、「鎌形」スケーラーに属するものと認められ、その具体的な形状についても、本件登録意匠の出願前の昭和62年11月9日発行の意匠公報(別紙第2)記載中の「本物品の使用状態を示す斜視図」に、本件登録意匠の形状とほぼ同様の形状、すなわち、直線状部と匙状湾曲部とからなり、漸次先細りとした刃部を有するスケーラーが記載されていることから、上記刃部の形状は、本件登録意匠の出願前から普通に知られた形状と認められる。また、基軸部の形状については、本件登録意匠の基軸部の形状と同様の、中空部を有する略円形筒状で、刃部寄り端部周面に対称状に平坦状切り欠き部を形成した基軸部の形状も、本件登録意匠の出願前からごく一般的な態様である(例えば、平成1年8月25日公開の特開平1-212547号第1〜7図、甲第5号証:別紙第3)。基軸部の形状を、螺旋状としたり、切り欠きのある円柱状とする等のことは、ホルダーとの結合に応じて適宜選択されるものであるから、上記普通に知られた形状である刃部を有するスケーラーの基軸部を、略円形筒状で、刃部寄り端部周面に対称状に平坦状切り欠き部を形成したものにすることも当業者であれば容易になし得る改変といえる。さらに、先端にダイヤモンドの微粒子を固着させたスケーラーの態様については、本件登録意匠の出願前の昭和60年4月23日公開の実開昭60-58118号第2図(甲第3号証)、昭和62年6月10日公開の実開昭62-90615号第1〜3図(甲第4号証:別紙第4)に、本件登録意匠と同様の構成のスケーラーの先端部が示されていることから、この分野でごく一般的な手法であると認められる。 したがって、上記の事実を総合すると、周知のスケーラーの形状にわずかな改変を加えて本件登録意匠の形状とし、その先端に、周知の手法であるダイヤモンドの微粒子を固着させて本件登録意匠のような態様とすることも、この意匠の属する分野の通常の知識を有する者であれば容易に創作できるものと言わざるを得ない。 (3)むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条2項に違反して登録されたものであるから、意匠法第48条1項1号に該当し、その余については判断するまでもなく、その登録は無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2002-03-04 |
結審通知日 | 2002-03-07 |
審決日 | 2002-04-12 |
出願番号 | 意願平4-15022 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(J7)
D 1 11・ 121- Z (J7) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 足立 光夫 |
特許庁審判長 |
藤木 和雄 |
特許庁審判官 |
岩井 芳紀 温品 博康 |
登録日 | 1998-04-17 |
登録番号 | 意匠登録第1013961号(D1013961) |
代理人 | 長門 侃二 |
代理人 | 蔵合 正博 |
代理人 | 長門 侃二 |
代理人 | 酒井 一 |