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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立不成立) M2
管理番号 1061434 
判定請求番号 判定2001-60138
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2002-08-30 
種別 判定 
判定請求日 2001-11-30 
確定日 2002-07-01 
意匠に係る物品 断熱用カバー材 
事件の表示 上記当事者間の登録第1090798号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠並びにその説明書に示す「断熱用カバー材」の意匠は、登録第1090798号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号意匠並びにその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第1090798号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
公知資料(甲第5号証ないし甲第8号証)の図に示されている「断熱カバー材」に明らかなように、外装材の延長部は断熱性成形体の外装材に沿うのが一般的であり、本件登録意匠の形態的に特徴を有する要部は、外装材の延長部と離型フィルムの幅広部の積層部分が立設され自立している点及び離型フィルムの幅狭部が折り返され断熱カバー材の表面に立設されて自立している点である。
そして、本件登録意匠が、(1)延長部が118度で折り返されて自立している点、(2)離型フィルムの掴み代が間隙部の側縁部で外方に折り返され、延長部の幅の約30%の幅で立設され自立している点に対して、イ号意匠が、(3)延長部が折り返し角度が180度で円周方向に沿って折り返され円周方向に寝ている点、(4)離型フィルムが折り返されることなく延長部に積層され、かつ5mmの幅で延設された防塵部を有している点、(5)自立した掴み代を有していない点、(6)離型フィルムが断熱性成形体の表面を面積比にして約40%覆って形成されている点、(7)露出部が間隙部を挟んで全週の約14%形成されている点とで、両意匠は著しく相違する。両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、需要者の視覚に強く訴え注意を喚起し注目されるところであり、イ号意匠と本件登録意匠とは混同を生じないものである。また、本件登録意匠類似第1号の意匠とイ号意匠も著しく相違し、イ号意匠と本件登録意匠類似1号の意匠とは混同を生じないものである。
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠、本件登録意匠類似第1号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
両意匠の基本的形状が中心部を空洞にした円筒状であること、内側が厚みのある断熱性成形体とされていること、外側に薄膜状外装材が貼着されている構成、カバー材の全長に亘り1条の断裂が形成されている構成、外装材に帯状部位が円筒全長に亘り連続して形成されている構成、該部位が既設パイプ管覆包後に筋状断裂部を閉鎖・固定する目的で断裂部を跨いだ外周面上に貼着されるものであること、それ故に接着剤層を離型フィルムが保護していること、これらは、機能上必然的に採用せざるを得ない形態あるいは最も合目的構成と言え、ほとんど代替余地のない構成であって、これらの共通点については、この種断熱カバーが例外なく備えている構成要件と言うべきものであり、これらの構成は、それのみでは本件両意匠の類否を左右する意匠の要部とはなり得ない。
すなわち、配管施工業者が商品選択を行う際における両意匠の類否を左右する要部は、作業性の優劣を直接的に左右する、外装材に設けられた帯状部の具体的な構成に存在する。帯状部の幅よりも広幅の離型フィルムが、帯状部全面を被覆した後、帯状部の付け根側下側から延伸して形成された剥離用把持部位を備えている態様とした共通点は、作業用手袋をはめたままで容易に離型フィルムを剥離できるとの利便性を提供するものであるから、配管施工業者が強く重視する部位における顕著な共通点として、「断熱カバー」における意匠の類否を左右する構成要件である。
一方、両意匠間の差異点としては、本件登録意匠は断熱性成形体のほぼ全面を断裂部近傍位置まで外装材が被覆しているのに対して、イ号意匠では断熱性成形体の断裂部左右細幅部位のみは外装材により被覆されていない点とイ号意匠の帯状部がやや本件登録意匠よりも広幅に形成されている点が挙げられるが、前者の点は、結局は配管施工時に被覆されてしまう部位であり、しかも、片側が被覆されていない意匠であっても本件登録意匠の類似範囲に入るものであることが本件登録意匠類似第1号の意匠に示されていることに照らせば、この点の差異が両意匠間の類否を左右し得ないものであることは自明であり、また、後者の差異もそれ自体では、格別の意味を有さない構成上の差異であり、類否判断上も格別の差異とはなし得ないものである。
したがって、両意匠を意匠全体として観察する場合には、剥離用把持部を備えた離型フィルム部の共通性が、その余の基本的な構成態様の一致点と相俟って、にわかには両意匠を区別しがたいほどに彼我類似との印象を惹起せしめるものとなっており、両意匠は類似する。
なお、請求人は、本件登録意匠の外装材及び離型フィルムが図面上自立して表されていることと、イ号図面においてはそのようには表していないことをもって両意匠間の差異と主張するが、本件登録意匠の該部位がイ号意匠と変わるところのない軟質材であることは本件登録意匠の「意匠に係る物品の説明」の記載から自明であり、請求人の主張は誤りである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、願書及び願書に添付の図面の記載によれば、実用新案登録出願(実願平5-42626号)を意匠登録出願に変更し、平成12年9月8日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1090798号意匠であり、意匠に係る物品を「断熱用カバー材」とし、その形態を、願書及び願書に添付の図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、その形態を、判定請求書に添付のイ号意匠の図面並びにイ号意匠の説明書により示すとおりとするものであって、意匠に係る物品が「断熱用カバー材」と認められる(別紙第2参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
先ず、共通点として、断面形状が一様で左右に連続する長尺材において、断熱体を、中心に断面円形状の広い空洞を有する厚みのある円筒状として、その長手方向には1条の裂け目を入れて細い間隙を現したものとし、断熱体の外周面には断熱体保護用の薄い外装材を貼着すると共に、外装材を一方の貼着基部から延長して幅広の帯状カバー部を形成し、さらに、帯状カバー部より幅広の薄い離型フィルムで帯状カバー部全面を被覆し、帯状カバー部との幅差により生じた離型フィルムの幅狭帯状の余剰部を帯状カバー部基部から突出させて剥離用把持部を形成した構成態様とし、使用前は、帯状カバー部を裂け目側とは反対側にひっくり返した状態に置き、使用の際は、断熱カバーで既設パイプ管を包覆後に剥離用把持部を利用して離型フィルムを帯状カバー部から剥離し、帯状カバー部を裂け目側に返し、裂け目を跨いだ断熱カバー外周面に貼着して裂け目を閉鎖するものとした点がある。
一方、差異点として、(イ)断熱体外周面の外装材を貼着していない露出部の有無につき、イ号意匠は、裂け目を挟んで左右に若干幅広の帯状の露出部を有しているのに対して、本件登録意匠は、露出部を有していない点、(ロ)帯状カバー部につき、イ号意匠は本件登録意匠よりも幅広に形成している点、(ハ)剥離用把持部につき、本件登録意匠は、帯状カバー部基部位置で先端側に折り曲げているのに対して、イ号意匠は、折り曲げていない点、がある。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討するに、共通点に係る本件登録意匠の態様のうち、断熱体を、中心に断面円形状の広い空洞を有する厚みのある円筒状として、その長手方向には1条の裂け目を入れて細い間隙を現したものとした点、及び、断熱体の外周面には断熱体保護用の薄い外装材を貼着すると共に、外装材を一方の貼着基部から延長して幅広の帯状カバー部を形成した点は、本件登録意匠の出願前からこの種物品分野において普通に見られる態様であることから、これらの態様は、それ自体のみでは本件登録意匠の特徴とは成り得ず、そうすると、従来態様に照らしてみても、帯状カバー部より幅広の薄い離型フィルムで帯状カバー部全面を被覆し、帯状カバー部との幅差により生じた離型フィルムの幅狭帯状の余剰部を帯状カバー部基部から突出させて剥離用把持部を形成した態様とした、帯状カバー部と離型フィルムとの具体的な組合せ態様は、本件登録意匠においてとりわけ看者の注意を引くところとせざるを得ず、イ号意匠も、この態様を有しており、この帯状カバー部と離型フィルムとの具体的な組合せ態様の共通性は、その余の両意匠の共通点に係る態様と一つにまとまって両意匠の共通する基調を決定づけ、両意匠の形態全体としての共通感を看者に強く印象づけているものと言え、以上によれば、両意匠の共通点は、全体として両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものと言うほかない。
一方、差異点のうち、(イ)の点については、イ号意匠の露出部は、単に裂け目沿いに設けた程度のものであって、使用の際、最終的に帯状カバー部で被覆されてしまうものに過ぎず、本件登録意匠の類似第1号の意匠が裂け目沿いに露出部を設けた態様のものであることも参酌すると、イ号意匠の露出部を有する態様は格別のものとは言えず、この差異が類否判断に及ぼす影響は微弱なものに止まると言わざるを得ない。(ロ)の点については、帯状カバー部を幅広のものとした両意匠の共通する態様の中での幅の比率の改変に過ぎない差異であって、さして注目されず、その類否判断に及ぼす影響は微弱なものと言える。(ハ)の点については、本件登録意匠に見られる剥離用把持部を折り曲げること自体は、離型フィルムを剥離し易くする為の手法として従来から行われていることであって、注目されるほどのことではなく、この差異は類否判断に然したる影響を及ぼすものではない。
そして、これら差異点が相俟った効果を考慮してもなお、両意匠の共通する基調を覆して、両意匠をそれぞれ別異のものと印象づけるほどの効果を発揮するものとは到底言えない。
なお、請求人は、本件登録意匠の帯状カバー部が図面上自立して表されていることと、イ号意匠が図面上そのようには表されていないことをもって、両意匠の差異である旨主張する。しかしながら、本件登録意匠の帯状カバー部は、薄いものであって、当該願書の意匠に係る物品の説明の欄の「配管等への固定は、・・・接着剤塗布面を、円周上対向位置に押着させて行われる。」との記載によれば、その形状を変化させ、円筒状の断熱カバー外周面に貼着できる程度に柔軟なものであると認められ、また、この種断熱カバーの分野において、帯状カバー部を柔軟なものとするのが一般的とも言えることから、本件登録意匠は、イ号意匠と同様に柔軟なものとした帯状カバー部を図面作図上自立した状態に表したまでのものと解するのが自然であり、したがって、帯状カバー部が自立して表されているか否かを両意匠の差異とする請求人の主張は妥当なものと言えない。
以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について、共通点は、全体として両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものであって、差異点は共通点を凌駕することができず、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものと言える。
4.結び
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-06-19 
出願番号 意願平11-8835 
審決分類 D 1 2・ 1- YB (M2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子 浩明 
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 藤 正明
伊藤 栄子
登録日 2000-09-08 
登録番号 意匠登録第1090798号(D1090798) 
代理人 榎本 一郎 
代理人 畑中 芳実 
代理人 福迫 眞一 

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