• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない D2
管理番号 1062999 
審判番号 無効2001-35413
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-09-21 
確定日 2002-07-24 
意匠に係る物品 建築構造材用継手 
事件の表示 上記当事者間の登録第1121059号「建築構造材用継手」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件登録意匠及び手続の経緯
本件登録意匠は、平成9年11月26日の意匠登録願に係り、平成13年7月19日に、意匠登録第1121059号として設定の登録がなされたものであり、その願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品が、「建築構造材用継手」であり、その形態が、同添付図面に示すとおりである(別紙第一参照)。
第2 請求人の申し立て及び理由
請求人は、「登録第1121059号の意匠登録はこれを無効とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として請求書の「6 請求の理由」の項の記載のとおり主張し、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出している。
その主張の大要は、以下の通りである。
1.利害関係
請求人は、合成樹脂製及びスチール製の各種形態の継手群その他の部品類と、好みの長さに切断して前記の継手により接続される合成樹脂接着被覆薄肉鋼管とにより、主として需要者自身の発想、設計による各種の立体構造物(例えば棚、椅子、テーブル等の家具類、藤棚、バラアーチ、植木鉢の台、可搬式のビニル温室、縁台などの屋外装置品、或いは産業用の台車、部品棚、安全柵、ローラコンベア、シューターラックなどの機器類を製作できる新素材商品を、Do it Your Self 商品(DIY商品)として、昭和40年代から登録商標「イレクター」(登録第777170号)を付して製造販売してきた。前記商品は、例えば実公昭36-1014号(考案の名称:組立骨子等における継手)をはじめとして、請求人が昭和30年代の後半から商品化を目指して研究開発を始め、昭和46年8月12日付け特許出願(特開昭48-26878号、発明の名称:合成樹脂を被覆した鋼管の製造方法)に係る発明の完成と共に製造販売を本格化したものである。
被請求人積水樹脂株式会社とタキロン株式会社及び件外のスぺーシア株式会社は、平成10年1月頃から、被請求人積水樹脂株式会社とタキロン株式会社が製造した、上記請求人の合成樹脂接着被覆薄肉鋼管とほぼ同じ構造、同じ外径、同様な地色の合成樹脂接着被覆薄肉鋼管と、径が同じであるがために必然的に請求人商品と互換性があり、対応する商品同士の寸法、形態、地色がそれぞれ見た目にほぼ同じ合成樹脂製およびスチール製の継手群その他の部品類とから成る商品を、スペーシア株式会社が「スぺーシア」の商標を付して、その上、販売方法や商品リスト、カタログの編集方式まで似た内容で販売しはじめた。
そこで請求人は、平成12年6月22日、被請求人積水樹脂株式会社とタキロン株式会社及び件外のスペーシア株式会社を被告とする不正競争防止法第2条第1項第1号等に基づく侵害行為の差止等、及び損害賠償請求の訴を東京地方裁判所へ提起し、現在は平成12年(ワ)第12838号として審理中である。
本件登録意匠に係る物品「建築構造材用継手」も、被請求人及び件外スペーシア株式会社が製造販売する前記合成樹脂製継手群に包含される一種類である。よって、審判請求人が本件審判を請求することについては重大な利害関係を有する。
2.本件登録意匠を無効とすべき理由
登録第1121059号意匠(以下、本件登録意匠という。)は、その出願前に日本国内に頒布された刊行物である甲第3号証に記載された意匠(以下、引用意匠という。)と類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当するにもかかわらず、誤って類似意匠の意匠登録を受けたものであるから、意匠法第48条第1項第1号の理由により登録無効とすべきものである。
(1)本件登録意匠
a.本件登録意匠は、意匠に係る物品が「建築構造材用継手」である。
b.本件登録意匠の基本的構成態様
管壁の一部を中心線と同方向にスリット状に切除して成る2個の短いC型割管を共にそのスリット状開口を下向きとし、且つそれぞれの中心線が直角に交わる配置とし、同2個のC型割管の管壁を管長とほぼ同じ幅寸の連結板にて45度方向に一体的に連結して成る。
c.本件登録意匠の具体的構成態様
(c-1)2個のC型割管は、各々の外径と内径並びに中心線方向の長さ(管長)がそれぞれ同一である(正・背面図と左・右側面図を参照)。
(c-2)C型割管は、中心角にして約100度分の管壁を、管中心を通る垂直線の両側をほぼ等分に切除して成る(正・背面図及び左・右側面図)。
(c-3)連結板の平面形状は、その両端部に、各C型割管の両管端の形状線の延長線部分を含み、前記延長線は45度方向をなす連結板の外形線と円弧によって滑らかに結ばれて、全体として両端に若干の屈曲部を有して二つのC型割管と繋がっている(平面図)。同連結板の横断面は、水平な平板状をなすウエブの両側縁を下向きに屈曲したフランジを有して下向きの溝形状とされ、内側のフランジが長く、外側のフランジは約1/2程度に短く、長短の差がある(A-A端面図)。連結板のウエブ部分が2個のC型割管の中心線の高さに位置して管壁と連接されており(正面図及び右側面図)、両側のフランジはC型割管の管壁外周面に沿って周方向に密着して連接されている(正面図及び右側面図並びに底面図)。連結板の板厚はC型割管の管壁の厚さとほぼ等しい。
(c-4)平面図の方向に見ると、二つのC型割管の外表面に、各C型割管の中心線に沿う位置の全長にわたり、管外径の約1/4相当幅の帯状をなす平面部が1本ずつ形成されている。背面図及び左側面図の方向に見ると、やはりC型割管の外表面に、それぞれの管の中心線に沿う位置の全長にわたり、管外径の約1/4相当幅の帯状をなす平面部が1本ずつ形成されている。前記の各平面部の削り深さは、正・背面図や左・右側面図に見えるC型割管の管壁の厚さ(甲第2号証に示した願書添付図面の実測で約2.5mm程度)に対して同0.5mm程度である。
(2)引用意匠
A.甲第3号証は、請求人が、昭和40年代から登録商標「イレクター」を付して連綿と製造販売してきた商品の販売促進用として、主にホームセンター等にて頒布した、1984年(昭59年)1月印刷の「イレクター仕様書」である。その7頁〜10頁に記載された「(3)プラスチックジョイント一覧表」の中で、8頁最下段の右端に商品番号「J-112A」と表記されたジョイントの意匠、及び同書11頁〜14頁に「(4)プラスチックジョイントの寸法表」を記載した中で13頁の下から2段目、右から2番目の「J-112A」の図面に表されたジョイントの意匠、並びに同書3頁〜6頁に記載された「(2)プラスチックジョイントの使用方法」における4頁下から2段目の右端に「棚受けジョイント」の表題で記載されたジョイント「J-112A」の使用状態に係る意匠をそれぞれ、「引用意匠」として採用する。
B.引用意匠の基本的構成態様
管壁の一部を中心線と同方向にスリット状に切除して成る2個の短いC型割管を共にそのスリット状開口を下向きとし(甲3の8頁の図)、且つそれぞれの中心線が直角に交わる配置とし(甲3の13頁の図)、同2個のC型割管の管壁を管長とほぼ同じ幅寸の連結板にて45度方向に一体的に連結して成る(同前)。
C.引用意匠の具体的構成態様
(C-1)2個のC型割管は、各々の外径および内径並びに中心線方向の長さ(管長)がそれぞれ同一である(甲3の13頁の図)。
(C-2)C型割管は、中心角にして約100度分の管壁を、管中心を通る垂直線の両側をほぼ等分に切除して成る(甲3の13頁の特に上図を参照)。
(C-3)連結板の平面形状は、その両端部に、各C型割管の両管端の形状線の延長線部分を含み、前記延長線は45度方向をなす連結板の外形線と円弧によって滑らかに結ばれて、全体として両端に若干の屈曲部を有して二つのC型割管と繋がっている(甲3の13頁の特に下図参照)。同連結板の横断面は、水平な平板状をなすウエブの両側縁を下向きに屈曲したフランジを有して下向きの溝形状とされ、水平なウエブの両側を下向きに屈曲されたフランジの長さは、内側のフランジが長く、外側のフランジが約1/2程度に短く、長短の差がある(甲3の13頁の上図には、フランジの長さの長短を表す2本の平行線が認識される。上・下の図の関係から、内側のフランジが長く、外側のフランジが約1/2程度に短くて長短の差が認められる。)。連結板のウェブ部分が2個のC型割管の中心線の高さに位置して管壁と連接されており(甲3の13頁の上図)、両側のフランジはC型割管の管壁外周面に沿って周方向に密着して連接されている(甲3の13頁の上・下図)。連結板の板厚はC型割管の管壁の厚さとほぼ等しいことも、甲3の13頁の上図の管壁厚さと、下図のフランジ厚さとの均等性から認められる。
(3)本件登録意匠と引用意匠との対比
[共通点]
1)両意匠の意匠に係る物品は「建築構造材用継手」であり、共通する。
2)両意匠の基本的構成態様bとBは一致している。
3)両意匠の具体的構成態様(c-1)(c-2)(c-3)と(C-1)(C-2)(C-3)も内容が実質一致しており、共通する。
[相違点]
本件登録意匠の具体的構成態様(c-4)、「二つのC形割管の外表面に、同管の中心線に沿う位置の全長にわたり、管外径の約1/4相当幅の帯状をなす平面部が形成されている。」のに対して、引用意匠のC形割管の外表面には「平面部」が無いので、相違する。
(4)類否判断
上記相違点として掲記したとおり、本件登録意匠の具体的構成態様(c-4)は、「平面図の方向に見ると、二つのC型割管の外表面に、それぞれの管の中心線に沿う位置の全長にわたり、管外径の約1/4相当幅の帯状をなす平面部が1本ずつ形成されている。背面図及び左側面図の方向に見ると、やはりC型割管の外表面に、それぞれの管の中心線に沿う位置の全長にわたり、管外径の約1/4相当幅の帯状をなす平面部が1本ずつ形成されている。前記の各平面部の削り深さは、正・背面図や左・右側面図に見えるC型割管の管壁の厚さ(甲第2号証に示した願書添付図面の実測で約2.5mm程度)に対して同0.5mm程度である。」ところ、引用意匠には「平面部」がないので、一応相違点と認めた。しかし、この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響については、次のことが考慮されるべきである。
1)特許庁に対する意匠登録出願は書面主義に支配されており、意匠は基本的に図面に記載して特許庁長官に提出する。したがって、本件登録意匠の上記「帯状をなす平面部」も甲2を見ると、C型割管の外表面に現れる「平面部」の形状線を白色用紙に明瞭に記載しているので、そうした「平面部」を有しない引用意匠とは、図面上の対比において一見相違するようにも見える。
しかし、上記(c-4)に掲記した通り、「平面部」は、C型割管の外表面に、その中心線に沿う位置の全長にわたり、管外径の約1/4相当幅の帯状に、管外径の約1/4相当幅の帯状をなす平面部が、削り深さにして、C型割管の管壁の厚さ(3mm程度)に対して0.5mm程度に極僅かに形成されているに過ぎず、C型管の管壁の厚さの変化も、良く目を凝らして見ないと見分けが付かないほどの微々たるものである。しかも平面部は、2個のC型割管の外表面の真上と真横の2位置に、それぞれ願書添付図面(甲2第号証)の実測によれば、外径が27.5mmの管表面に、幅7mm、中心角にして27度程度に形成されているに過ぎないから、外観上この「平面部」が意匠的工夫ないし創作として需要者に彼我の意匠を区別するに足る異なった美感を起こさせるほどの存在とは認め難い。
2)意匠の類否判断が、需要者の観察において誤認、混同を生ずるや否やにある
との考え、所謂「混同説」に立てば、一例として甲第4号証に両意匠の実施品を並べた写真を示したように、前記「平面部」の存在を表す稜線は合成樹脂の地色に減殺されて殆ど目立たないから、需要者が一見しただけでは彼我の意匠の見分けがつかず、誤認、混同する虞が大である。
3)意匠の保護は、実は意匠の創作が保護されることに基づき、意匠の類否判断を創作性の有無に求める、いわゆる「創作説」の観点に立ち、本件登録意匠の「帯状をなす平面部」が意匠的工夫、創作の結果として、見る者に起こさせる美感ないし意匠的効果に寄与するかについても検討を進める。
この検討に際しては先ず、甲第3号証の頒布時期と、そこに記載された引用意匠の基本的構成態様(上記B)、及び具体的態様(C-1)〜(C-3)による形状全て、本件登録意匠の出願時点から遡ること約13年前から公知、周知形状として需要者に知られた事実が重視されれるべきである。
上記したように、本件登録意匠の基本的構成態様b、及び具体的態様のうち(c-1)〜(c-3)までが、引用意匠の周知形状(B、と(C-1)〜(C-3)による形状)とぴったり一致して共通する。残る本件登録意匠の具体的態様(c-4)のみが僅かに引用意匠と相違するに過ぎないのである。
その上、本件登録意匠の意匠的工夫というべき「平面部」は、いちいち例証するまでもなく、ずいぶん古くより種々な技術分野において日常的に、丸棒や円管等の表面を必要に応じて削除などして形成してきたことであり、格別創作というほどに目新しいものでもない。
したがって、本件登録意匠の「平面部」が存在していて、それが引用意匠の相違点であるとしても、その「平面部」が意匠的工夫ないし創作の主要部として(看者)に注目されたり、格別の印象を与えたり、異なった美感を起こさせる要因(意匠の要部)になるとは認められない。
4)要するに、両意匠の全体観察によれば、引用意匠の全体形状が本件登録意匠の出願日のはるか以前から広知、周知の形状で、本件登録意匠の大部分の形状がそれと共通し、唯一の相違点である「平面部」が発揮する意匠的効果が、見る者に格別異なった美感を起こさせる要因というには程とおく、両意匠の前記共通点がもたらす美感を凌駕するものとは到底認められないので、前記相違点は部分的な微差の域にとどまり、本件登録意匠は、引用意匠と美感を共通にして類似するものと認められる。
(5)むすび
以上に説明した通り、本件登録意匠は、引用意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するにも拘わらず、誤って意匠登録を受けたものであるから、意匠法第48条第1項第1号の理由により、その意匠登録を無効とされるべきである。
第3 被請求人の答弁及び理由
被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由として答弁書の「7 答弁の理由」の項の記載のとおり主張し、その証拠方法として、乙第1号証及び乙第31号証を提出している。
その主張の大要は、以下の通りである。
1.本件「意匠に係る物品」について
本件登録意匠の「意匠に係る物品」は一応「建築構造材用継手」となっているが、具体的には需要者の好みに応じて需要者自身が所要の長さに切断した断面円形パイプを種々の方向、種々の角度に接合することにより、棚、椅子、テーブル等を組み立てることができる Do it Your Self 商品(DIY商品)に用いる継手に関するものであるが、主として、2本のパイプを90度に接続してコーナー部が形成された該コーナー部より若干内方位置の2本のパイプに跨がるように左右両端部のC型割管を上方より各々嵌着することにより、C型割管を連結する連結板がパイプ上面より若干下方に位置した状態となり、その部分に棚板を嵌め込むことができるようにする「棚受けジョイント」として用いられる継手である。
2. 請求人の主張に対する反論
請求人が本件登録意匠と引用意匠との共通点として挙げている「管壁の一部を中心線と同方向にスリット状に切除して成る2個の短いC型割管を共にそのスリット状開口を下向きとし、且つそれぞれの中心線が直角に交わる配置とし、同2個のC型割管の管壁を管長とほぼ同じ幅寸の連結板にて45度方向に一体的に連結して成る」という構成、及び引用意匠の具体的構成として請求人が示す(C-1)、(C-2)、(C-3)の構成を採ることは上記した本件登録意匠の継手の用途である「棚受ジョイント」として機能上必然的な形態であると共に、請求人の引用意匠に示す継手は昭和59年発売以来17年以上も販売されており、最早、陳腐な形状となっており、看者の注意を強く惹く格別顕著な意匠的特徴点を何ら有しているものとは到底いえないものである。
これに対し、両者の相違点である「平面視において、二つのC型割管の外表面に、各C型割管の中心線に沿う位置の全長にわたり、管外径の約え本目当幅の帯状をなす平面部が1本ずつ形成されていると共に、背面視及び左側面視においても、やはりC型割管の外表面に、それぞれの管の中心線に沿う位置の全長にわたり、管外径の約乞相当幅の帯状をなす平面部が1本ずつ形成されている点」は、全体観察上看者の注意を強く惹き両者を充分弁別し得る顕著な相違点といえる。
上記被請求人の主張が妥当なものであることは、請求人の製造に係り,かつ、本件登録意匠出願前に公知となっていた各種継手の意匠と基本的形態において共通し、短円管の外周長手方向に形成された管外径の約1/4相当幅の複数の帯状をなす平坦面の有無において相違する継手の意匠につき、被請求人において本件登録意匠を除き以下に示す28件にものぼる意匠が登録されている事実により証明することができる。
第4 請求人の弁駁
請求人は、被請求人の答弁に対し、甲第5号証乃至甲第7号証(検証物、本件登録意匠及び引用意匠の実施品)を提出し、大要以下の通り弁駁した。
本件登録意匠の意匠の説明は、「物置、温室、盆栽棚、栽培棚、縁台、陳列台、台車等を構成する際に使用されるパイプ等を連結する際に使用されるものである。」と用途を無限定に記載され、その「使用状態参考図」を見ると、2本のパイプの交点は分断されている。従って、これを甲第3号証の4頁に記載した「棚受けジョイント」の使用例と用途が共通するものとは到底認識できないのであり、「機能上必然的な形状である」と反論する根拠がない。
被請求人は、上記の反論の妥当性を、28件掲げた意匠登録の事実で証明するとし、乙2号〜乙29号証を挙示しているが、総論として、拳示された乙2号の1〜乙29号証の1に係る意匠登録の事実は、本件審判とは事案を異にするものであり、また、各乙号証の意匠登録を正当な類否判断の結果と認めるには個別の検討を要するから、前記意匠登録の事実が直ちに本件登録意匠と引用意匠の類否判断に影響を与えるものではない。
被請求人は、「帯状の平坦部」が引用意匠とは異なる印象を与える根拠として乙31号証の対比写真を提出している。これは請求人の甲第5号証に対応するものである。そこで「見ればわかる」と考えて、請求人は甲第5号証に係る二つの物品について証拠申出の手続をとる次第である。
第5 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9年11月26日の意匠登録願に係り、平成13年7月19日に、意匠登録第1121059号として設定の登録がなされたものであり、その願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品が、「建築構造材用継手」であり、その形態が、同添付図面に示すとおりである(別紙第一参照)。
2.甲号意匠
請求人が、引用意匠した意匠は、請求人(矢崎化工株式会社)が頒布した(1984年1月印刷)の「ヤザキのイレクター イレクター仕様書 ERECTOR」の7頁〜10頁に記載された「(3)プラスチックジョイント一覧表」の中で、8頁最下段の右端に商品番号「J-112A」と表記されたジョイントの意匠、及び同書11頁〜14頁に「(4)プラスチックジョイントの寸法表」を記載した中で13頁の下から2段目、右から2番目の「J-112A」の図面に表されたジョイントの意匠、並びに同書3頁〜6頁に記載された「(2)プラスチックジョイントの使用方法」における4頁下から2段目の右端に「棚受けジョイント」の表題で記載されたジョイント「J-112A」の使用状態に係る意匠であるが、同書7頁〜10頁に記載された「(3)プラスチックジョイント一覧表」の中で、8頁最下段の右端に商品番号「J-112A」と表記されたジョイントの意匠を甲号意匠とする。
3.両意匠の対比
先ず、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について、以下の共通点及び差異点が認められる。
[共通点]
基本的構成態様において、直角に位置する2本の円形パイプのコーナー部に橋渡し状に取り付け、その上に板材を載置する継手であり、全体が、下方が開口した略Cの字状の管(C型管)2個を、それぞれの中心線が直角に交わる略「ハ」の字状に配し(斜視図参照)、その2個のC型管の内側部を、平面視略台形の平板状の連結板により接合したものである点、
また、具体的構成態様において、
(1)C型管の長さが、その外径とほぼ等しい点、
(2)2個のC型管について、その内径及び外径、中心線方向の長さ、及び管壁の厚さがほぼ等しい点、
(3)連結板について、略「ハ」の字状に配したC型管の最大径部に接合しており、その連結板の前方及び後方縁部が下方に屈曲されて、細幅のフランジ部が形成されている点、が共通している。
[差異点]
一方、両意匠は、具体的態様において、本件登録意匠が、左右2個のC型管の上面及び側面の中心線に沿う位置に、その全長にわたって、管外径の約1/4相当幅の帯状をなす平面部を形成しているのに対し、甲号意匠は、そのような平面部が形成されていない点に差異がある。
4.両意匠の類否判断
そこで、共通点及び差異点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響について検討する。
先ず、共通点について、両意匠に共通する基本的構成態様、すなわち、全体が、下方が開口した略Cの字状の管2個を、それぞれの中心線が直角に交わる略「ハ」の字状に配し、その2個のC型管の内側部を、平面視略台形の平板状の連結板により接合したものである点は、この種物品分野において、棚板を受ける継手としてありふれた形態であり、また、具体的態様(1)ないし(3)の点は、請求人が、昭和40年代から登録商標「イレクター」を付して製造販売してきた商品の販売促進用として、主にホームセンター等にて頒布した、1984年(昭59年)1月印刷の「イレクター仕様書」である。その7頁〜10頁に記載された「(3)プラスチックジョイント一覧表」の中で、8頁最下段の右端に商品番号「J-112A」と表記されたジョイントの意匠、及び同書11頁〜14頁に「(4)プラスチックジョイントの寸法表」を記載した中で13頁の下から2段目、右から2番目の「J-112A」の図面に表されたジョイントの意匠、並びに同書3頁〜6頁に記載された「(2)プラスチックジョイントの使用方法」における4頁下から2段目の右端に「棚受けジョイント」の表題で記載されたジョイント「J-112A」の使用状態に係る意匠に見られるとおり、広く知られたありふれた形態であり(この点について、請求人も、「甲第3号証の頒布時期と、そこに記載された引用意匠の基本的構成態様(上記B)、及び具体的態様(C-1)〜(C-3)による形状全て、本件登録意匠の出願時点から遡ること約13年前から公知、周知形状として需要者に知られた事実が重視されれるべきである。」と認めている。)、看者が注意を惹かれるところと成り得ず、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。
一方、両意匠の差異点、すなわち、本件登録意匠が、左右2個のC型管の上面及び側面の中心線に沿う位置に、その全長にわたって、管外径の約1/4相当幅の帯状をなす平面部を形成している点は、この種の物品において、請求人が主張するとおり、「ずいぶん古くより種々な技術分野において日常的に、丸棒や円管等の表面を必要に応じて削除などして形成してきたことであり、格別創作というほどに目新しいものでもない。」としても、意匠の外観の主要部に形成されて、本件登録意匠の特徴が発揮されており、両意匠を別異のものとする意匠的効果が認められものであり、その類否判断に及ぼす影響は、大きいというべきである。
ところで、請求人は、「両意匠の全体観察によれば、引用意匠の全体形状が本件登録意匠の出願日のはるか以前から広知、周知の形状で、本件登録意匠の大部分の形状がそれと共通し、唯一の相違点である「平面部」が発揮する意匠的効果が、見る者に格別異なった美感を起こさせる要因というには程とおく、両意匠の前記共通点がもたらす美感を凌駕するものとは到底認められない。」と主張するが、当業者を基準として創作の容易性の観点から比較する場合においてはともかく、一般需要者を基準としての意匠的効果としての印象(美感)の類否の観点から両意匠を比較する場合においては、前記管外径の略1/4幅の帯状をなす平面部の有無による差異から生じる印象の差異は、一般的には、決して小さいものでなく、共通点がこの差異を埋没させてしまうほどに強力な共通の印象をもたらすものでない限り両意匠は、意匠全体として異なった印象をもたらすものというべきである。
また、請求人は、「意匠の類否判断が、需要者の観察において誤認、混同を生ずるや否やにあるとの考え、所謂混同説に立てば、一例として甲第4号証に両意匠の実施品を並べた写真を示したように、前記平面部の存在を表す稜線は合成樹脂の地色に減殺されて殆ど目立たないから、需要者が一見しただけでは彼我の意匠の見分けがつかず、誤認、混同する虞が大である。」と主張するが、本件登録意匠の範囲は、「その願書の記載及び願書に添付した図面に記載された意匠に基づいて定め」(意匠法第24条)られるものであり、請求人の主張を採用できない。
さらに、請求人は、本件登録意匠の「各平面部の削り深さは、正・背面図や左・右側面図に見えるC型割管の管壁の厚さ(甲第2号証に示した願書添付図面の実測で約2.5mm程度)に対して同0.5mm程度である。」と主張するが、意匠の外観がもたらす美感は、実測による精密な数値より把握されるものというより、外観から受ける印象(美感)として把握されるべきものであり、請求人の主張をそのまま採用することはできない。
その他、請求人は、「イレクター仕様書」の11頁〜14頁に「(4)プラスチックジョイントの寸法表」を記載した中で13頁の下から2段目、右から2番目の「J-112A」の図面に表されたジョイントの意匠、及び同書3頁〜6頁に記載された「(2)プラスチックジョイントの使用方法」における4頁下から2段目の右端に「棚受けジョイント」の表題で記載されたジョイント「J-112A」の使用状態に係る意匠も引用意匠とするが、これらの意匠は、甲号意匠と実質的に同一のものであり、本件登録意匠と、同様の理由により、類似するものとは認めることができない。
以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品は共通しているが、その形態について、両意匠における共通点は、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ないのに対し、差異点は、両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいというべきであり、差異点が共通点を凌駕する両意匠は、結局、類似するものということができない。
5.まとめ
したがって、本件登録意匠は、その出願前に日本国内に頒布された刊行物である甲第3号証に記載されたいずれの意匠とも類似しないものであるから、意匠法意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2002-05-20 
結審通知日 2002-05-23 
審決日 2002-06-12 
出願番号 意願平9-76558 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (D2)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 伊藤 晴子
西本 幸男
登録日 2001-07-19 
登録番号 意匠登録第1121059号(D1121059) 
代理人 植木 久一 
代理人 植木 久一 
代理人 山名 正彦 
代理人 小谷 悦司 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 小谷 悦司 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ