• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効とする M3
管理番号 1063004 
審判番号 無効2001-35454
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-10-16 
確定日 2002-07-31 
意匠に係る物品 リベット 
事件の表示 上記当事者間の登録第1116470号「リベット」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1116470号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第一 請求人の申立て及びその理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として審判請求書の請求理由の項の記載のとおり主張した。
第二 被請求人の答弁の趣旨及びその理由
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を述べた。
第三 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年5月31日に意匠登録出願し、平成13年6月1日に意匠登録第1116470号として意匠権の設定の登録がされたものであり、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「リベット」とし、その形態を、別紙第1に示されるとおりのものである。
すなわち、その形態は、リベットの通孔下端側から、頭付きボルトを挿入螺合した基本的な構成態様のもので、各部の具体的な態様について、リベット部は、本体部とフランジ部からなり、本体部は短円筒状で、フランジ部は本体の上端側外周面を、上方視その輪郭形状が縦幅を本体の径より僅かに大きい横長隅丸方形状で、やや厚みのある板状に延設し、その前後面の下方側を円弧状に抉った態様のもので、ボルト部は、頭部とネジ部からなり、頭部はその径をリベット部の本体部の径と同径で、やや厚みのある略円形板状で、先端面側の外周縁を小さく面取りした態様で、ネジ部は、その径がリベット部の高さの略倍の長さの棒状の外周にねじを切った態様で、リベット部の通孔の下端側から、挿入螺合され、そのネジ部上半がフランジ部の上方に突出する態様のものである。
2、無効理由通知
(1)当審は、当事者が申し立てない理由について審理したので、その審理の結果を当事者に、意匠法第52条で準用する特許法第153条第2項により、平成14年3月12日付けで通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会をあたえたもので、その通知した無効理由は以下のとおりである。
本件登録意匠は、出願前広く知られたブラインドナット(意匠登録第921689号意匠)の通孔の下端側から、周知の円形の頭のボルトを螺合してリベットの意匠としたまでの創作に過ぎない。
すなわち、意匠登録第921689号意匠のブラインドナットの意匠公報の説明の欄には、次のように記載されている。
「このブラインドナットは、タップ立て(雌ねじの形成加工)が困難な薄板やパイプ等の部材に予め通孔を穿孔し、この通孔の片側から、先端に該ブラインドナットを取付けたブラインドナッター(ブラインドナットの取付機)の先端を挿通し、該ブラインドナッターを作動してブラインドナットの雌ねじ部のない中空部を外側に膨出するように座屈させることにより、使用状態の参考図に示すように、薄板やパイプ等の部材に取付けられるものであり、このようにして取付けられたブラインドナットの雌ねじ部を利用して、薄板やパイプ等の部材に、例えば雄ねじ付きフック等の所要の物品を、該雄ねじ部を螺合して取付けたり、或はボルトを螺合して他の所要の物品を取付けるものである。」
すなわち、本件登録出願前、意匠登録第921689号意匠の通孔の内周に設けられた雌ねじ部は、中空部を座屈するためにブラインドナッターを使用する際、そこにブラインドナッターの雄ねじ部を螺合して使用するためのものでもあり、かつ、座屈後、すなわち、ブラインドナッターをはずしたのちには、該雌ねじ部に、他物であるボルトの雄ねじ部を螺合し種々の物を取付けるために使用されるためのものでもあることが周知となっていた。
すなわち、本件登録意匠のボルト(雄ねじ)を除いた部分は、意匠登録第921689号意匠と同一意匠であり、意匠登録第921689号意匠の雌ねじ部は、前記のとおりボルトを螺合する目的のものであることも、本件登録意匠の出願前、周知であった。
そして、本件登録意匠の下端側から螺合されている円形の頭を有するボルトは周知の形状である。すなわち、通常ボルトの形状は種々の使用態様目的に合わせてその径及び長さ雄ねじ部の長さ等が調整製造されるのが通常である。
そして、本件登録意匠に螺合のボルトの形状は、周知の円形の頭のボルトの形状と実質的に同一の範囲内の形状であることが認められる(参照、実公昭30ー14611、実公昭13ー3817、実公昭35ー32223、特公昭51ー48541、特開昭53ー79151、実公昭50ー22182、特公昭35ー1561等の図面に記載の円形の頭のボルト)。
そうであるから、 本件登録意匠は、出願前広く知られたブラインドナット(意匠登録第921689号意匠)の通孔の下端側から、周知の円形の頭のボルトを螺合してリベットの意匠としたまでの創作に過ぎない。
よって、本件登録意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項の規定に該当する。

3、無効理由通知に対する被請求人の意見
被請求人は、無効理由通知に対して意見書を提出し、要旨以下のように意見を述べた。
(1)本件登録意匠の出願前から登録第921689号意匠のようなブラインドナットの通孔の下端側からボルトを螺合してリベットとすることは、この種物品分野において、慣習化されていないことは明らかであり、審決は、本件登録意匠を寄せ集めの意匠としながらこの点については、一切、立証されていない。
(2)螺合させるボルトの周知例として引用された複数のボルトのいずれも、本件登録意匠の下端部から露出したボルトの頭部の形状とは異なるものであり、これらの形状に基づいて本件登録意匠のボルトを容易に創作することはあり得ない。
以上、本件登録意匠は、創作性が認められるべきものである。
4、上記被請求人の意見の(1)について
当審の無効理由通知において既に明記したように、出願前広く知られたブラインドナットである登録第921689号意匠の雌ねじ部はボルトを螺合する目的のものであることは当該意匠公報の「意匠の説明」の欄において明記されており、且つ、その通孔の態様から、頭付きボルトをリベットの上面側からも下面側からも挿入できることは明らかである。
また、出願前より、リベットの外周面を拡開座屈させる目的と、座屈後にその上方に突出するネジ部に他物品を取り付ける目的のために、リベットの通孔の下端側から頭付きボルトを挿入螺合した態様のものは、登録第921689号意匠の例を挙げるまでもなく出願前に広く知られていたところである。
この点は、請求人が審判請求書の無効理由において引用したところの意匠登録第1037095号の平成11年4月26日発行の意匠公報、及び第1037095号の類似1の平成11年8月24日発行の意匠公報の各「意匠の説明」欄に、「本物品は、締結工具を用いて、ボルト部分がパネルから立ち上がるようにパネルに固定される。締結工具のノーズピース先端の穴にボルト部分を挿入してボルト保持部に保持させ、締結工具から出ているリベット部分をパネル取付穴に挿入する。締結工具の動作により、ボルト部分だけを強力に引っ張り上げてリベット部分を座屈変形させ、変形部分とリベット部分のフランジでパネルを強く挟持して、本物品をパネルに固定する」とあることでも明らかであるから、被請求人の主張は認められない。
5、被請求人主張の(2)について
当審が無効理由通知において周知の円形の頭のボルトの形状の周知例として参照で挙げて既に明らかにしたところであるが、さらに、前記の意匠登録第1037095号の意匠において、その下面側から螺合されるボルトの頭の形状はリベットの短円筒状の本体部の径と同径の、やや厚みのある円板状で、先端面を水平平坦面状とし、その外周縁を小さく斜状に面取りしている態様であって、本件登録意匠のボルト部の頭部の形状は、出願前広く知られたボルトの頭部と実質的に同一の範囲内の形状であることが明らかであるから、被請求人の主張は認められない。
6、結び
よって、本件登録意匠は、無効理由通知で通知した理由のとおり、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項の規定に該当し、その登録は無効とすべきものである。
審判に関する費用については、意匠法第52条において準用する特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2002-05-31 
結審通知日 2002-06-05 
審決日 2002-06-19 
出願番号 意願2000-14451(D2000-14451) 
審決分類 D 1 11・ 121- Z (M3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川崎 芳孝 
特許庁審判長 秋間 哲子
特許庁審判官 鍋田 和宣
伊勢 孝俊
登録日 2001-06-01 
登録番号 意匠登録第1116470号(D1116470) 
代理人 中村 稔 
代理人 今城 俊夫 
代理人 小川 信夫 
代理人 竹内 英人 
代理人 箱田 篤 
代理人 西島 孝喜 
代理人 大塚 文昭 
代理人 藤本 昇 
代理人 村社 厚夫 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 宍戸 嘉一 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ