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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立不成立) H1
管理番号 1064554 
判定請求番号 判定2002-60019
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2002-10-25 
種別 判定 
判定請求日 2002-02-14 
確定日 2002-09-03 
意匠に係る物品 電気コネクタ用ハウジング 
事件の表示 上記当事者間の登録第1083342号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す「ソケットハウジング」の意匠は、登録第1083342号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1 請求人の申し立て及び理由
請求人は、イ号図面に示す意匠は、登録第1083342号及びこれに類似する意匠の範囲に属しないとの判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
まず物品について、本件登録意匠の電気コネクタ用ハウジングは、相手側コネクタと組み合わせて使用し、プラグターミナル付きケーブルをソケットターミナル付きケーブルへ接続するために使用される。イ号意匠のソケットハウジングは、相手側プラグハウジングと組み合わせて使用し、ソケットターミナル付きケーブルをプラグターミナル付きケーブルへ接続するために使用される。イ号意匠のソケットハウジングは電気コネクタ用ハウジングであり、又、その使用法も一致するから、イ号意匠と本件登録意匠の物品は一致する。
次に形態について、イ号意匠の、全体として平板形のフランジと嵌合部長方形の上辺と下辺の中央に張り出し部を備えた断面輪郭を有する筒状の左右嵌合部及び円筒状をした左右のワイヤ挿入部を備え、フランジの正面に左右の嵌合部を、背面に左右のワイヤ挿入部を、嵌合部とワイヤ挿入部を対としてこれらの軸線をそれぞれ一致させ、軸線をフランジの正面に対して直交させて平行に配置し、嵌合部の下方張り出し部を上方張り出し部の張り出し量より大きくしている基本的な意匠は、本件登録意匠と一致する。
しかし、フランジ、嵌合部、ワイヤ挿通部の具体的形態について異なる点がある。そして、これらが結合されることによる電気コネクタ用ハウジングとしての意匠はイ号意匠と本件登録意匠とで次のように異なる。
イ号意匠では、電気コネクタ用ハウジングの上面に、あたかも地図に表示される三叉路のような印象の“三叉路形態”が顕著に現れている。そして、下面にも、同一面に連続した“三叉路形態”が顕著に現れている。これに対して、本件登録意匠では、電気コネクタ用ハウジングの上面、下面において、フランジの上面、下面と同一面で連続する平面はない(相違点1)。イ号意匠では、全体として角張った輪郭がくっきりとした印象であるが、本件登録意匠では、全体として丸い印象である(相違点2)。イ号意匠では、ワイヤ挿入部の背面形態が、左のワイヤ挿入部では外周が円ですっきりとした印象であるのに対して、右のワイヤ挿入部の外周は上下の目印平面部で開口し、円の上下部分がフランジの上辺及び下辺に溶け合って見える。これに対して、本件登録意匠では、右のワイヤ挿入部の外周上部に目印突条による2個の突起が小さな角のように出ており、また、左のワイヤ挿入部の外周上部には目印突条による1個の突起が小さな角のように出ている(相違点3)。
イ号意匠と本件登録意匠とで一致する前記の基本的な意匠は、甲第3〜17号証に示すように、本件登録意匠の出願前に日本国内において公然知られ、かつ、ありふれた意匠であり、本件登録意匠の要部ではない。
相違点1について、電気用コネクタハウジングに関して前記の基本形がありふれたものである以上、基本形態よりも具体的な形態が看者の注意を喚起するものであり、看者の美感に大きな影響を与える重要な要素となる。すなわち、電気用コネクタハウジングの上面及び下面に現れる具体的形態は、電気用コネクタハウジングにかかる意匠の要部である。そして、イ号意匠による電気用コネクタハウジングの上面及び下面における前記“三叉路形態”は、本件登録意匠による電気用コネクタハウジングの上面が、段差のない平面の組合せを持たない形態とは、意匠上、顕著な差異のあるものであり、看者に異なる美感を与えている。相違点2について、イ号意匠における嵌合部長方形とこれに台形をした上下の張り出し部を組み合わせた形態は、フランジの上面、下面と共に、平らな面で構成される部分が多い意匠なので、全体から輪郭がくっきりとした平らな角張った印象のものとなるが、本件登録意匠では、嵌合部長方形に組み合わせる円による円筒部分が際立ち、全体として輪郭が丸くまた、平らな印象は受けない。このため看者に与える美感は異なる。相違点3について、一方のワイヤ挿入部の上面側と下面側の双方に太い目印平面部と細い目印平面部を備えた形態(イ号意匠)と、一方のワイヤ挿入部の上面側に2本の目印突条を設け他方のワイヤ挿入部の上面に1本の目印突条を有する形態(本件登録意匠)とは、形態が全く異なり、看者に与える美感も全く異なる。
そして、これらを総合すると、嵌合部の形態を嵌合部長方形に上下の台形を組み合わせた角張った形態としていることと、フランジの上下面に、一方のワイヤ挿入部の太い目印平面部と細い目印平面部を同一面に連続させて“三叉路形態”を創作しているところがイ号意匠の要部であり、この要部は、本件登録意匠の対応する部分の意匠と同じではない、また、類似でもない。
以上のとおり、イ号図面に示す意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲にないので、請求の趣旨どおりの判定を求める。
第2 被請求人の答弁
被請求人は、イ号図面に示す意匠は、登録第1083342号意匠の範囲に属す、との判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証を提出した。
判定請求において意匠登録第1083342号の意匠(以下、登録意匠という)とイ号図面で特定される意匠(以下、イ号意匠という)との間で共通する形態は、甲第3号証乃至17号証に示される意匠を考慮すれば、登録意匠の要部ではなく、この登録意匠の要部の認定及び相違点の認識には到底承服できるものでない。
登録意匠は、一側から一対の電線が挿入され、他側から相手側プラグハウジングが嵌合する電気コネクタハウジングに係るものであり、以下の点に主眼をおいて創作されたものである。
a.フランジの正面側に突出する一対の嵌合部を、輪郭が横長長方形で同一形状の角筒形とし、それぞれの角筒形の平面と底面から、嵌合部の軸方向に沿って外側面が傾斜面となった上方張出し部と下方張出し部を膨出させ、上方張出し部より下方張出し部の張出し量を大きく形成している。
b.フランジ部の正面側に突出する嵌合部の突出長は、背面側に突出するワイヤ挿入部の突出長より長く、具体的には、ワイヤ挿入部の突出長の約 1.5倍とし、嵌合接続の安定感を印象づけている。
c.フランジの縦幅を、一対のワイヤ挿入部の円筒形とした外径にほぼ一致させ、左右側面から視たフランジとワイヤ挿入部が、長方形の輪郭内にまとめられている。正面図において、嵌合部の上下張出し部と、フランジの上下辺との間に、それぞれ僅かな間隔を形成し、この間隔に略等しい肉厚のプラグ側嵌合部を有する相手側コネクタ(相手側プラグハウジング)を嵌合接続できるようにしている。
これらのa乃至cの形態は、従来の公知意匠に全く見られず、本件意匠は、公知意匠と顕著に区別されて意匠登録されたものであり、登録意匠全体の基調を表出する要部である。
登録意匠の要部であるa乃至cの形態は、判定請求により提示されたいずれの周辺意匠にも見られない一方で、イ号意匠に共通する形態である。また、登録意匠とイ号意匠の各部の配置と寸法の比率は、全体に亘り近似している。
イ号意匠に共通する登録意匠のa乃至cの要部は、従来の周辺意匠に見られないものであり、しかもこれらの要部は、見易い一対の嵌合部及びワイヤ挿入部の形態に係るものであり、両意匠の類否を支配するものである。更に、両者の各部の構成比率は、細部に至まで近似するので、看者は、共通した印象を受ける。
一方、判定請求書で登録意匠とイ号意匠の具体的相違点として記述された相違点1乃至3は、いずれも全体の細部形態に係るものであり、しかも、両者を際立たせて区別するような特徴的な差異はない。
従って、意匠に係る物品が一致し、意匠の要部においても共通するイ号意匠は、全体として登録意匠に類似するものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年7月8日に意匠登録出願し、平成12年6月23日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1083342号意匠であり、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「電気コネクタ用ハウジング」とし、その形態は、同図面に記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付されたイ号図面により示されたものであり、意匠に係る物品を「ソケットハウジング」とし、その形態は、同図面に示すとおりとしたものである(別紙第2参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、イ号意匠はソケットハウジングであり、本件登録意匠は電気コネクタ用ハウジングであるが、いずれも、プラグターミナル付きケーブル(ワイヤ)とソケットターミナル付きケーブルを接続する電気コネクタ用ハウジングとして使用されるものであるから、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態については、主として以下に示す共通点及び差異点がある。
[共通点]
(1)全体の構成態様について、フランジ板を挟んで正面側に一対の相手側プラグハウジング用の嵌合部が突出し、背面側に一対のソケットターミナル付きケーブル用のケーブル挿入部が突出したものとし、その各嵌合部と各ケーブル挿入部とが、互いにその中心軸孔線を一致させているものであること。
(2)嵌合部につき、横並びした同形状のものであって、横長長方形の筒体状とし、その上面と下面の中央が、長手方向に沿って外側へ膨出して張出し部となり、その張出しの程度は上面のものより下面のものの方が大きく、両張出し部位における嵌合部上下幅がフランジ板の上下辺から余地を残して一回り小さく形成したものであること。
(3)ケーブル挿入部につき、横並びした略同形状のものであって、円形の筒体状とし、その上下幅(外径)がフランジ板の枠内(上下)略いっぱいになるように形成したものであること。
(4)フランジ板につき、横長長方形板状であって、その正面側の両側辺の縁から、フランジ板の側辺よりも幅狭で短い長さの引っ掛け部を耳のように延設し、背面側にくり抜き面があること。
(5)引っ掛け部につき、互いにやや大きさの異なる略矩形状であり、背面側が内法部を除くようにくり抜かれていること。
(6)嵌合部とケーブル挿入部の突出長について、嵌合部の方が長く、その比が略3対2であること。
[差異点]
(イ)嵌合部の張出し部につき、上下面のもの共に、本件登録意匠は台形に膨出して、その頂部が帯状の平坦面状に表れているのに対して、イ号意匠では弧面状に膨出していること。
(ロ)ケーブル挿入部の胴周部につき、目印部として長手方向に沿って、本件登録意匠は一方の上面側に1本の小さな突条があり、他方の上面側に2本の小さな突条があるのに対して、イ号意匠では、一方の上面側と下面側に帯状の浅く突起した平坦面を現していること。
(ハ)フランジ板の背面につき、イ号意匠にのみ、中央の両ケーブル挿入部の間を連結する突起部があること。
(ニ)引っ掛け部につき、イ号意匠にのみ、大きい方の引っ掛け部の外側面に浅いU状溝を設けていること。
これらの共通点及び差異点を総合し、両意匠を全体として観察すると、共通点(1)とした構成態様は、電気コネクタ用ハウジングとしての形態全体の骨格をなす態様であり、これに嵌合部についての共通点(2)、ケーブル挿入部についての共通点(3)、フランジ板についての共通点(4)が相俟って形態の基調を形成するところとなり、とりわけ共通点(2)の態様は従来の公知意匠に見られないものであることより、両意匠に共通の印象を与える要素となり、その他、共通点(5)、共通点(6)もあり、それら共通点の総合的な効果として両意匠の類似性を強く表出していると認められる。
これに対し、差異点(イ)については、嵌合部の張出し部が台形状であるか弧面状であるかの差異であるが、両意匠のものはいずれも、 横長長方形の筒体状とする嵌合部にあって、その上面と下面の中央に表れる、長手方向に沿って外側へ膨出する張出し部であり、両意匠は、その両張出し部それぞれの大きさの割合も近似し、さらに、両張出し部位における嵌合部上下幅がフランジ板の上下辺から余地を残して一回り小さく形成されている態様も共通していることより、その張出し部の頂部が平坦面として表れるか弧面として表れるかという面形状の具体的な差異は格別目を惹かず、前記(1)ないし(6)の共通点の相俟った態様に吸収されて目立たなくなるものとなり、その差異は微弱と認められる。差異点(ロ)については、本件登録意匠の突条は、いずれも細く僅かに突出する程度のものにすぎず、イ号意匠の平坦面も浅く僅かに突起した程度のものにすぎず、むしろケーブル挿入部の胴周部に長手方向に沿った目印部があるという共通する態様が勝って印象づけられる程度のものであって、その差異は微弱と認められる。差異点(ハ)については、イ号意匠の突起部は、フランジ板の背面に突出する両ケーブル挿入部の基部を連絡する程度の低い突起であって格別特徴もないものであるから注目され得ず、その突起部の有無に関わる差異は微弱である。差異点(ニ)については、この種物品において、その引っ掛け部にイ号意匠のような浅いU状溝を設けることは極普通にみられる態様であるから、その有無についての差異は類否判断にさしたる影響を及ぼすものでない。
なお、請求人は、イ号意匠については、電気コネクタ用ハウジングの上面及び下面に“三叉路形態”が顕著に現れているとし、本件登録意匠の態様とは顕著な差異があるところであって、これが看者に異なる美感を与える旨主張しているが、これは、イ号意匠のケーブル挿入部の上下幅(外径)がフランジ板の枠内(上下)いっぱいになるように形成されていることより、その結果として胴周部の頂部の平坦面部とフランジ板の枠面とが同一面状に連なって、道筋を表しているように見えるというものであり、しかしながら、本件登録意匠においても、ケーブル挿入部の上下幅(外径)がフランジ板の枠内(上下)略いっぱいになるように形成されていることより、その結果として胴周部の頂部の突条とフランジ板の枠面とが同一面状に連なって、道筋を表しているようにも見えるのであるから、共通した態様として印象づけられ、その道筋となる面が平坦面であるか、突条に挟まれた緩い弧状面を含むかという差異はあるとしても、その差異は、前記共通点の相俟った態様に吸収されて目立たなくなる程度のものであって、微弱な差異と認められる。
そして、これらの差異点を総合し、相俟って奏する効果を考慮しても、前記共通点によって惹起される類似性を凌駕するものでない。
以上のとおり、本件登録意匠とイ号意匠とは、意匠に係る物品が共通し、その形態においても、前記共通点によって惹起される類似性が支配的であるため、結局類似するものである。
4.結び
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-08-22 
出願番号 意願平11-18282 
審決分類 D 1 2・ 1- YB (H1)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 遠藤 京子
特許庁審判官 伊藤 栄子
藤 正明
登録日 2000-06-23 
登録番号 意匠登録第1083342号(D1083342) 
代理人 早崎 修 
代理人 湯田 浩一 
代理人 和田 隆二郎 

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