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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする C4
管理番号 1070654 
審判番号 無効2002-35137
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-04-09 
確定日 2003-01-06 
意匠に係る物品 自動洗髪機 
事件の表示 上記当事者間の登録第1117268号「自動洗髪機」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1117268号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.請求人の申立及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立、その理由として以下に示すとおり主張し、甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
意匠登録第1117268号意匠(以下、本件登録意匠という)は、出願前頒布された甲第1号証ないし甲第3号証の刊行物に記載の意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して意匠登録を受けたものであり、また、甲第1号証ないし甲第3号証に記載の意匠に基づいて当業者が容易に創作できたものであるから、意匠法第3条第2項に違反して登録されたものであり、同法第48条第1項第1号の規程により無効とされるべきである。
2.被請求人の答弁
被請求人に対して、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、その期間を経過しても被請求人からは、何ら応答がなかったものである。
3.当審の判断
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、登録原簿によれば平成11年12月17日の意匠登録出願に係り、平成13年6月15日設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「自動洗髪機」とし、その形態は、願書に添付した図面により表されたものである。(別紙1参照)
(2)甲号意匠
甲号意匠は、株式会社大広製作所発行のカタログ「AUTO SHAMPOO SHAMPLIZEii2001」(甲第1号証)4ページ左上、及び、9ページ上所載の写真版により商品名SHAMPLIZEii2001として現された自動洗髪機の意匠である。(別紙2参照)
なお、当該カタログは、巻末の「平成11年1月現在」の記載、及び、雑誌「HairMode1999No.470」5月号(甲第2号証)、及び、雑誌「美容と経営1999NO.411」8月号(甲第3号証)に同一商品の広告が掲載された事実によれば、本件登録意匠の出願前に頒布されていたと認められる。
(3)両意匠の比較・検討
本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が共に洗髪機であって共通し、形態については、主たる共通点、酷似した点、及び、差異点として、以下のものが認められる。
まず、両意匠は、洗髪槽を上面に設けた本体部と、その洗髪槽の上に被せたフード部からなり、本体部の本体につき、(a)全体が直方体状であって、横幅を高さより極く僅かに狭くし、奥行きを横幅より極く僅かに短くしたもので、(b)前面は、平面視曲線状に表れる前後に緩やかな波打ったような曲面の態様とし、その右側辺(正面視において、以下、左・右については同様とする)稜部にやや大きめの面取り部を設け、上辺の中央に首を載せる為の凹弧状切欠部を設け、(c)右側面ほぼ中央には、複数の操作つまみを配置した極く僅かの段差の縦長矩形凹陥部を設けた点、が共通し、本体部上面に関し、(d)前記フード部は、左・右及び後方にほぼ同幅のやや幅広、前側は極く僅かの余地を残して、正方形に区画した範囲から上方に突出した態様で設けられたもので、(e)フード部につき、前方斜め上を向いた前面と、後方斜め上を向いた背面と、側面視において高さの低い三角形状に表れる側面からなり、前面左右中央下端から頭部挿入用逆U字状切り欠きを設けた点、及び、(f)前面の逆U字状切り欠き周囲には数個(3ないし4個)の円形調整ノブを設けた点、が共通し、(g)本体部上面フード部以外の余地部に関し、右側余地部の前後ほぼ中央に、後端を洗髪槽フード後端と一致させた前後に長い矩形操作パネル部を設け、その後方上面隅部付近に水栓ハンドルを2個左右に並べて配置し、左余地部前後ほぼ中央、洗髪槽フードのすぐ脇にハンドシャワーを配置し、その後方上面隅部付近に洗髪剤容器体を2個配置した、基本的配置構成が共通しており、更に詳細に見ると、(h)上面における操作プレート内の区画及び図形の構成態様、給水栓ハンドル、及び、ハンドシャワーの具体的構成態様、そして、本体部の右側面に設けられた矩形凹陥部における操作つまみ等の配置構成も、ほぼ同一と言っていいほど酷似している。
一方、両意匠は、(イ)フード部正面視形状において、甲号意匠は上辺左右両角部は大きな丸みを有しているのに対して、本件登録意匠は正面視ほぼ横長長方形状であって、上辺を緩やかな波状としている点、(ロ)フード部正面の調整ノブにつき、甲号意匠は、上中央に1個、左・右に1個ずつ、計3個設けているのに対して、本件登録意匠は左・右2個ずつ対称的に計4個設けている点、(ハ)洗髪剤容器体設置個所につき、甲号意匠は左右に配列しているのに対して、本件登録意匠は前後に配列している点、に差異がある。
そこで、意匠全体として観察すると、前記共通するとした、(a)及び(b)の本体部の本体形状に関する構成態様と、(d)及び(e)の上面におけるフードの基本的な突出の構成態様は、意匠全体の骨格としての基本形状を構成しており、(g)の本体部上面フード以外の余地部における基本的配置構成、(c)の本体部右側面の構成態様、及び、(f)のフード前面の構成態様と相俟って、それぞれの意匠において共通した視覚的まとまりを形成し、また、(h)のほぼ同一と言って良いほど酷似した構成態様は、更に共通感を高める働きをしており、これら(a)ないし(g)の共通点、及び(h)の酷似した点に係る構成態様は、その総体として共通した基調を生じさせているから、類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
これに対して(イ)の差異点については、意匠全体の基本形状を構成するフード形状そのものに関するものであるが、フード部分のみを比較した場合は別として、本体上面に対するフード部の基本的突出構成に関する(d)及び(e)と、本体部の本体に関する(a)及び(b)の共通する構成態様は、前述のように両意匠それぞれにおいて基本形状を構成し、これらは一定の共通した視覚的まとまりを形成するもので、その基本形状に関する視覚的まとまりの中においては微差といわざるを得ず、(ロ)の差異点については、個々のノブの形態はほぼ共通しており、単なる3個としたか4個としたかの数の増減に関する程度の差異であるから、格別高く評価すべき対象に該当せず、(ハ)の差異点についても、一見、形状的には小さくはないものの、洗髪剤容器体個々形態はほぼ共通しており、その他の部位と比較して付加物的性格の強い構成要素である同容器体の前後に並べたか左右に並べたか程度の差異に関するものであるから微差といわざるを得ず、これら何れの差異点も意匠全体としてみた場合、前記共通するとした基調に埋没してしまう程度の微弱な差異と言わざるを得ないものであり、類否判断に及ぼす影響は僅かで、また、これらの関連し合った効果を考慮したとしても、意匠全体として、本件登録意匠特有の特徴ある視覚的まとまりを生じさせているとは言い難いものである。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態についての前記の共通点、又は酷似した点に係る構成態様は、それぞれの意匠において共通した基調を生じさせ、類否判断に大きな影響を及ぼしているのに対して、甲号意匠に対する本件登録意匠の差異点に係る構成態様は、類否判断に及ぼす影響は僅かであるから、本件登録意匠は甲号意匠に類似するものといわざるを得ない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し、同条同項の規定に違反して登録されたものであって、その登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2002-11-05 
結審通知日 2002-11-08 
審決日 2002-11-22 
出願番号 意願平11-34788 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (C4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 斉藤 孝恵 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 市村 節子
山崎 裕造
登録日 2001-06-15 
登録番号 意匠登録第1117268号(D1117268) 
代理人 稲岡 耕作 
代理人 亀井 弘勝 
代理人 川崎 実夫 

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