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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) L5
管理番号 1070655 
判定請求番号 判定2002-60051
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2003-02-28 
種別 判定 
判定請求日 2002-05-13 
確定日 2002-12-27 
意匠に係る物品 戸車用レ―ル 
事件の表示 上記当事者間の登録第0962920号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「戸車用レ―ル」の意匠は、登録第0962920号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨及び理由
請求人は、「イ号意匠並びにその説明書に示す意匠は、登録第962920号意匠(以下、本件意匠という)及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求める。」と申し立てたものであって、その理由は概ね次のとおりである。
(1)請求人は、本件意匠の専用実施権者であって、イ号図面に示す意匠(以下、イ号意匠という)は、被請求人が実施の準備をしている意匠である。
請求人は被請求人に対して、「イ号意匠の実施は本件意匠の意匠権の侵害である」と警告したが、被請求人は、「イ号意匠は本件意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない」旨主張している。
(2)両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、レール本体の両面に機能の異なる戸車溝、すなわち、脱輪防止機能を有する第1の戸車溝と、それを有さない第2の戸車溝を配設した基本的な構成態様が一致し、具体的な構成態様においても、基本的な構成態様に加えてレール本体の両側面に抜け止め用の突条を形成したことで一致している。
(3)両意匠の差異点として、つぎに示す(a)〜(d)が挙げられるが、類否判断に与える影響はいずれも微弱なものであって、それらが纏まっても類否判断の結論を左右するまでには至らないものである。
(a)本件意匠は、第1の戸車溝の形状が断面視盃形状であるのに対し、イ号意匠は、第1の戸車溝の形状が断面視お椀形状である点。
(b)本件意匠は、第2の戸車溝の形状が、断面視V字形状であるのに対し、イ号意匠は、第2の戸車溝の形状が断面視倒台形状である点。
しかしながら、上記(a)、(b)の溝については、それぞれ同じ範疇に属する形状であるから、両意匠は、基本的構成態様が共通するものである。
(c)本件意匠は、両側面に形成された抜け止め用の突条の数がそれぞれ3つであるのに対し、イ号意匠は、両側面に形成された抜け止め用の突条の数がそれぞれ1つであるが、両意匠のような薄型のレールにあっては、両側面に形成された抜け止め用の突条における差異は、特徴的な基本的構成態様に埋没してしまう程度の微差にすぎない。
(d)イ号意匠にはレール本体下面に本件意匠には無い複数の細溝があるが、それは何等意味のない装飾であり、その有無の差異は、特徴的な基本的構成態様に埋没してしまう程度の微差にすぎない。
2.被請求人の答弁
これに対する被請求人の答弁は無い。
3.本件意匠
本件意匠は、平成7年2月10日に出願(意願平7-3412号)され、平成8年6月24日に意匠権設定の登録がなされ、平成8年9月9日に意匠公報が発行された意匠登録第96290号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「戸車用レール」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。
4.イ号意匠
イ号意匠は、意匠に係る物品を「戸車レール」とし、その形態をイ号図面記載のとおりとしたものである(別紙2参照)。
5.当審の判断
5.1 対比
甲第3号証の参考図(別紙3参照)に基づいて本件意匠とイ号意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者一致し、形態については、次に示す共通点と相違点が認められる。
[共通点]
上面の左寄りと下面の右寄りに戸車溝を設けた板状のレールであって、上面には中央を一段陥没させるとともに縁部に傾斜する戸車転動面を形成した第1の戸車溝を配置し、下面には側壁を開口端部に向けて漸次広がる傾斜面とした第2の戸車溝を配置し、レールの両側面に条溝を形成した全体の基本構成。
[相違点]
(1)第1の戸車溝の態様について、本件意匠においては、戸車転動面を平面状の傾斜面とし、中央の陥没部を断面視長方形状の溝としているのに対し、イ号意匠においては、戸車転動面を湾曲面とし、中央の陥没部を断面視台形状の溝としている点。
(2)第2の戸車溝の態様について、本件意匠においては、開口幅が第1の戸車の略2/3程度で、楔状に切れ込むV字形の溝としているのに対し、イ号意匠においては、底部に水平面を設けた台形の溝として、開口幅と底部水平面の幅を第1の戸車溝における開口幅と陥没部の底部水平面の幅と略一致させている点。
(3)レール下面左半部の水平部の態様について、本件意匠においては、平坦面としているのに対し、イ号意匠においては、4本の細溝を等間隔に刻み込んでいる点。
(4)レール両側面に形成された条溝の態様について、本件意匠においては、断面視二等片三角形状の凸部と凹部を交互に形成することによって、3本の突条と2本の条溝から成る抜け止めを側面全体に略均一に形成しているのに対し、イ号意匠においては、側面の下面寄りに断面視三角形状の条溝を1本刻み込んでいる点。
5.2 類否判断
これらの共通点及び相違点について検討すると、共通点に示す全体の基本構成は、意匠全体の骨格を成すものであるとともに、意匠の設計思想においても、レールを反転することによって、脱輪防止機能を有する第1の戸車溝と脱輪防止機能を有さない第2の戸車溝を適宜選択可能とした点に共通性が認められるが、これらの共通性は多分に抽象的であるため、それに基づく類似性は、各相違点に係る具体的な形態の差異を圧倒するほど強いものではない。
一方、相違点(1)の第1の戸車溝の態様、及び相違点(2)の第2の戸車溝の態様における差異については、溝の形状だけに着目するのであれば、そこに前記共通点に示した共通性、すなわち、第1の戸車溝については、「中央を一段陥没させるとともに縁部に傾斜する戸車転動面を形成」した共通性が、第2の戸車溝については、「側壁を開口端部に向けて漸次広がる傾斜面とした」共通性によって、溝の形状における差異が希釈されてしまうため、その差異は、全体の基本構成に基づく類似性を凌ぐほど顕著なものではない。
しかしながら、イ号意匠の溝の態様を他の部位との係わり合いに着目して全体的に見た場合には、相違点(1)に係る「戸車転動面を湾曲面とし、中央の陥没部を断面視台形状の溝とした」態様と、相違点(2)に係る「第2の戸車溝を底部に水平面を設けた台形の溝として、開口幅と底部水平面の幅を第1の戸車溝における開口幅と陥没部の底部水平面の幅と略一致させている」態様が呼応して、本件意匠とは異なるイ号意匠特有の基調が形成されており、それが全体の基本構成に基づく類似性を凌いでイ号意匠を特徴付けているものと認められる。
また、イ号意匠の相違点(3)に係るレール下面左半部の水平部に刻み込まれた4本の細溝の態様、及び相違点(4)に係るレール側面の細溝については、いずれもこの種の物品における滑り止め、あるいは抜け止め等の態様としてありふれたものであって、イ号意匠を特徴付けるものとは成し得ないが、全体的に見れば、両意匠の基調の違いを際立たせる視覚効果をもたらしているものと認められる。
すなわち、イ号意匠を本件意匠に類似するものとすることはできない。
5.むすび
したがって、イ号意匠は、本件意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものと認められる。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-12-17 
出願番号 意願平7-3412 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (L5)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須田 紳 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 岩井 芳紀
江塚 尚弘
登録日 1996-06-24 
登録番号 意匠登録第962920号(D962920) 

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