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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立成立) L3 |
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管理番号 | 1072013 |
判定請求番号 | 判定2002-60077 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2003-03-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2002-08-12 |
確定日 | 2003-01-20 |
意匠に係る物品 | 手摺用接続具 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1041436号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号意匠及びその説明書に示す「手摺用接続具」の意匠は、登録第1041436号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求人の主張 請求人は、イ号意匠及びその説明書に示す意匠は、登録第1041436号及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求めると申立、その理由として判定請求書の請求の理由に記載のとおり主張をし、証拠方法として甲第1号証を提出した。 甲第1号証 公開実用新案公報 実開平5-35940号 2.被請求人の主張 被請求人は、イ号意匠並びにその説明書に示す意匠は登録第1041436号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求めると答弁し、その理由として大要以下のとおり主張をした。 (1)本件登録意匠とイ号意匠の比較 本件登録意匠とイ号意匠の、 a)及びa’)両端に凹設部が形成された中央連結部を有している。 b)及びb’)中央連結部の左右両端に、手摺接続用の左右可動部が設けられている。 c)及びc’)左右可動部は特定の一方向に首振り可能である。 d)及びd’)左右可動部は、中央連結部の水平軸周りに回動可能である。 の基本的構成態様は全く同一である。 f)及びf’)左右可動部は中央連結具への連結用底部が球面状を為し、球面状底部を中央連結部の両端凹設部に挿入して、中央連結部と連結されている。 g)及びg’)左右可動部の底部には、その中心から一方向へのびるスリットが形成され、該スリットを挿通した連結ボルトを介して中央連結部に連結され、スリットに沿う方向で首振り可能となっている。 h)及びh’)中央連結部及び左右可動部を連通する連結ボルトを中心に左右可動部は中央連結部の水平軸周りに回動可能となっている。 の具体的構成態様は共通しており、 e)及びe’)の中央連結部が略円柱形でズンドウ型に形成されている点と、両端凹設部は球面状に切り欠かれ、左右可動部の球面状底部が挿入されるべくしている点が共通し、わずかに、中央連結部の略円柱形ズンドウ型の両面が、斜めに形成されているか否かという点と円柱形ズンドウ型の具体的な形状に差異を見出すのみである。 (2)本件登録意匠とイ号意匠の類否 意匠の類否要件とは、第1に基本的構成態様の共通たることが挙げられるが、本件登録意匠とイ号意匠の基本的構成態様は共通するから、両意匠が類似の意匠であることの第1の要件は満足している。 基本的構成態様を有する意匠が2以上存する場合、基本的構成態様に意匠の要部がないとされる場合もあり、その場合には、具体的構成態様を比較し、その類否をもって第2の要件とされる場合も多く、本件もそのようなケースに相当する。 請求人は、甲第1号証を示し、甲第1号証の各部の構成態様を本件登録意匠と比較し、本件登録意匠の要部が、中央連結部の形状にのみ存するかの如く主張している。 しかし、この主張は、本件登録意匠の各構成態様から、甲第1号証の各構成態様を引き算して残った構成態様こそが本件登録意匠の要部であると主張しているかの如きものである。 物品の意匠を限りなく細かく見れば、、それは、まぎれもなく公知の部分部分の集まりである筈であるのに、新規性、創作性があるとされるのは、部分と部分の結合により、新たな構成態様を生じ、そこに物品全体を支配する美しさが生まれるからにほかならない。 本件登録意匠は、略円柱形ズンドウ型の中央連結部両端凹設面を球面状に切り欠き、その凹設面に左右可動部の球面状底部挿入して連結すると共に、その状況下にあって中央連結部を「全周にわたって軸方向の長さを等しく」した点に特徴があり、中央連結部と左右可動部とを直線状に連続したすっきりとした印象を看者に与えるものである。 これに対し、イ号意匠は、略円形ズンドウ型の中央部両端凹設面を球面状に切り欠きその凹設面に左右可動部の球面状底部を挿入して連結すると共に、その状況下にあって、中央連結部を「画面をわずかに斜めに形成した」点に特徴を有するものである。 中央連結部の両面を斜めに形成したイ号意匠の構成態様は、わずかに差異を有しているが、中央連結部と左右可動部を直線的に連結した場合、凹凸の隙間がほとんど生ぜず直線的に連続した印象を患者に与える点から見れば、本件登録意匠と殆ど変わりなく、中央連結部の両面がやや斜めに形成された程度の構成態様は全体の美観に与える影響が極めて小さく、甲第1号証の「中央連結部と左右可動部を直線状に連結した」図は、全く直線的すっきり感を提供していない。 甲第1号証の存在にも関わらず、直線的スッキリ感を看者に提供するイ号意匠は全体として同一の美観を呈し、本件登録意匠と類似し、イ号意匠は本件登録意匠に類似する意匠の範囲に属するものである。 3.当審の判断 (1)本件登録意匠 本件登録意匠は、平成9年6月13日の意匠登録出願に係り、平成11年3月26日設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「手摺用接続具」とし、その形態は、願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照) すなわち、全体は、中央連結部とその左右端に同形同大の可動部を回動自在に直列連結した3部材からなるもので、中央連結部は、略短円柱状で、可動部は、開口部側が短円管状で、中央連結部側が半凸球面状で閉塞した形状で、3部材が直線状に並ぶ使用態様においては、全体が略円柱形状に現れ、最大に曲げた使用態様においては、正面視、中央連結部の左右端に可動部の半凸球面状部が、肩状に現れる基本的構成態様のものである。 各部の具体的な態様において、 (a)中央連結部及び左右の可動部は、各最大径が略同大である点、 (b)中央連結部は、中央を最大径とし、長さは中央の最大径より短く、径は中央の最大径部から左右両端部の垂直面に向かって極わずか窄まり、両端面には、内方に向かって半球面状の凹陥部を形成している点、 (c)可動部は、その開口部側の短円管部の長さと閉塞部側の半凸球面状部の高さ(半径)と略同長である点、 (d)中央連結部の両端面の半球面状の凹陥部に、可動部の半凸球面状部を挿入して、ボルトにより回動自在に連結している点、 (e)可動部の開口面は、外周縁をわずかに丸面状に面取りしている点、 (f)最大に曲げた使用態様において、可動部の半凸球面状部が中央連結部の左右端にいかり肩状に大きく露出する点、が認められる。 (2)イ号意匠 イ号意匠は、意匠に係る物品が「手摺用接続具」であってその形態は、「イ号図面代用写真及びその説明図」に示されたとおりのものである。(別紙第2参照) すなわち、全体は、中央連結部とその左右端に同形同大の可動部を回動自在に直列連結した3部材からなるもので、中央連結部は、略短円柱状を長手方向の中央で極僅か湾曲させた形状で、可動部は、開口部側が短円管状で、中央連結部側が半凸球面状で閉塞した形状で、3部材が直線状に並ぶ使用態様においては、全体が略円柱形状に現れ、最大に曲げた使用態様においては、正面視、中央連結部の左右端に可動部の半凸球面状部が、肩状に現れる基本的構成態様のものである。 各部の具体的な態様において、 (a’)中央連結部及び左右の可動部は、各最大径が略同大である点、 (b’)中央連結部は、左右両端面を、曲率の中心に向かう斜面状として、正面視扇面形状を呈するもので、その外周面の最大長(外周)は、管の径より長く、最小長(内周)は管の径より短いもので、両端面には、内方に向かって半球面状の凹陥部を形成している点、 (c’)可動部は、その開口部側の短円管部の長さと閉塞部側の半凸球面状部の高さ(半径)が略同長である点、 (d’)中央連結部の両端面の半球面状の凹陥部に、可動部の半凸球面状部を挿入して、ボルトにより回動自在に連結している点、 (e’)可動部の周側面に、手摺材固定用のビス穴を形成したものである点、 (f’)最大に曲げた使用態様において、可動部の半凸球面状部が中央連結部の左右端になで肩状に小さく露出する点、 が認められる。 (3)両意匠の対比考察 本件登録意匠とイ号意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態については、以下に示す共通点及び、差異点が認められる。 まず共通点として、全体は、中央連結部とその左右端に同形同大の可動部を回動自在に直列連結した3部材からなるもので、中央連結部は、略短円柱状で、可動部は、開口部側が短円管状で、中央連結部側が半凸球面状で閉塞した形状で、3部材が直線状に並ぶ使用態様においては、全体が略円柱形状に現れ、最大に曲げた使用態様においては、正面視、中央連結部の左右端に可動部の半凸球面状部が肩状に現れる基本的構成態様のものである点、 各部の具体的な態様において、 (A)中央連結部及び左右の可動部は、各最大径が略同大である点、 (B)中央連結部の両端面には、内方に向かって半球面状の凹陥部を形成している点、 (C)可動部は、その開口部側の短円管部の長さと閉塞部側の半凸球面状部の高さ(半径)が略同長である点、 (D)中央連結部の両端面の半球面状の凹陥部に、可動部の半凸球面状部を挿入して、ボルトにより回動自在に連結している点、が認められる。 次に差異点として、 (ア)3部材をまっすぐに並べた使用態様において、本件登録意匠は、中央連結部の形状が、外周面がまっすぐな円柱形状であるのに対して、イ号意匠は、曲円柱形状である点、 (イ)最大に曲げた使用態様において、本件登録意匠は、中央連結部の左右端に可動部の半凸球面状部がいかり肩状に、大きく露出するのに対して、イ号意匠は、なで肩状に小さな露出に止まるものである点、 (ウ)可動部の開口部につき、本件登録意匠は、外周縁をわずかに面取りし、内周面も薄く削っているのに対して、イ号意匠は、いずれも有していない点、が認められる。 そこで、これらの共通点、差異点を総合し、両意匠を意匠全体として考察すると、 まず両意匠の基本的構成態様及び具体的な態様における共通する(A)ないし(D)の点は、例えば、平成5年5月18日特許庁発行の公開実用新案公報実開平5-35940号に掲載された丸形手摺のユニバーサルジョイントの意匠に見受けられるように、本件登録意匠の出願前に公然と知られているところであり、これらの点が、両意匠の類否判断に与える影響は微弱に過ぎないものといわざるを得ない。 これに対して、差異点の(ア)及び(イ)の点は、中央連結部の形状が、本件登録意匠とイ号意匠では、左右の可動部の長さに比して短い直管状かやや長い曲げ管状かの差異であって、その結果、まっすぐの使用態様において、本件登録意匠は、直線状で左右上下対称の印象を強くもたらすのに対して、イ号意匠は、極緩やかにくねくね曲がった上下非対称の態様を呈し、また、最大に曲げた使用態様において、本件登録意匠は、ズンドウ型の中央連結部と相まって、肩幅の狭い、いかり肩を想起させるのに対して、イ号意匠は、正面視扇面形状の中央連結部と相まって、肩幅の広い、なで肩の印象を強く感得させ、別異観をもたらしており、これらの態様の差異が両意匠の類否判断に与える影響は、大である。 (ウ)の点は、部分的な微細な差異に過ぎず、類否判断に与える影響は微弱に過ぎない。 そして、これらの差異点を総合し、相まった効果を考慮すると、両意匠の共通する態様を凌駕しており、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2003-01-08 |
出願番号 | 意願平9-57882 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZA
(L3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 遠藤 京子 |
特許庁審判長 |
秋間 哲子 |
特許庁審判官 |
鍋田 和宣 西本 幸男 |
登録日 | 1999-03-26 |
登録番号 | 意匠登録第1041436号(D1041436) |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 深井 敏和 |