• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200235306 審決 意匠
無効200488017 審決 意匠

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効とする C1
管理番号 1076633 
審判番号 無効2002-35303
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-07-16 
確定日 2003-04-18 
意匠に係る物品 ブラインド用スラット 
事件の表示 上記当事者間の登録第1138982号「ブラインド用スラット」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1138982号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.請求人の申立及び理由の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、甲第1号証ないし甲第5号証(枝番を含む)を提出した。
意匠登録第1138982号意匠(以下、本件登録意匠という)は、甲第2号証の意匠に類似するもの、又は、甲第2号証、甲第3号証の意匠に基づいて容易に創作できたものであって、意匠法第3条第1項第3号、又は、意匠法第3条第2項に違反して登録されたものというべきであり、無効とされなければならない。
2.被請求人の答弁及び理由の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めるとし、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番を含む)を提出した。
本件登録意匠に係る意匠出願の出願日と同日に出願され登録になった、被請求人が所有する「4グループの関連意匠群は、4つの本意匠が互いに類似しないと認定され」ていることから、「『昇降コード挿入用孔』の『形状』と『その上下に設けられたリブ』の『形状』との相互の組み合わせごとに、意匠の創作の傾向・流れを把握して類似する意匠の認定をおこなって」登録されているのであるから、請求人の本件登録意匠と「公知意匠」の差異点の評価に関する「認定方法は失当」であり、本件登録意匠は「縦長の『昇降コード挿入用孔』の上下を同『昇降コード挿入用孔』とほぼ同じ幅の横長リブで挟み込む構成」を有しており、「両者の美感は本質的に相違」し、また、「両者の具体的構成態様並びにそこから生じる両者の美感は明らかに相違するものであるから、両意匠は類似しないことは明白」であり、また、「昇降コード挿入口」の形状として請求人が提出した公開実用新案公報及び公開特許公報に記載されたものは、「『昇降コード挿入用口』のみの形状とその配置が記載されているのみ」であり、本件登録意匠は「複数の公知意匠を当業者にとってありふれた手法によって寄せ集めたに過ぎない意匠の程度を越えた美感が生じている」もので、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号又は同法第3条第2項に違背して登録されたものでないから、請求人の、同法第48条第1項第1号に該当し、その意匠登録は無効にすべきであるとする主張は失当である。
3.当審の判断
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、願書の記載及び添付図面によれば、平成13年1月26日の意匠登録出願に係り、平成14年2月22日に設定の登録がなされた登録第1138982号の物品の部分についての意匠であって、意匠に係る物品が「ブラインド用スラット」であり、その形態は、願書の記載及び願書に添付された図面に実線で描いて表されたとおりのものである。(別紙第1参照)
(2)甲第2号証の意匠
甲第2号証の意匠は、甲第2号証の実願昭56-17510号(実開昭57-129899号)のマイクロフィルム所載の第1図に表されたもので、その形態は、その図と明細書の内容により表されたとおりのものである。(別紙第2、第1図参照)
(3)本件登録意匠と甲第2号証の意匠との比較・検討
そこで、本件登録意匠と甲第2号証の意匠とを比較してみると、両意匠は意匠に係る物品が共通するものに係り、その形態については主として以下のような共通点、及び、差異点がある。
すなわち、両意匠は、短手方向(前後方向)に僅かに湾曲させた、左右に長い細長方形状薄板スラットの、左・右両端から同じ長さ位置に設けられた2箇所の昇降紐等の挿通用孔と、それぞれの付近に設けられた補強リブに関するもので、その形態は、(a)左右2箇所に離れて表された両部分は、同一形態をしたものであり、その(b)一方の構成態様につき、中央の挿通用孔の前・後の同じ長さ位置それぞれに、同じ長さであって相互に平行な細幅直線状の補強リブを設けた点、が共通する。
一方、両意匠は、イ.挿通用孔の形状につき、甲第2号証の意匠は略正方形としているのに対して、本件登録意匠は、前後に細長く、その両端を半円弧状とした点、及び、ロ.補強リブの形状に関し、甲第2号証の意匠は、2本の補強リブの長さと両リブの設けられた前後間隔を略同じとし、断面形状の具体的形態については、第1図に断面図等により記載されていないため不明確であるのに対して、本件登録意匠は、補強リブの長さを甲第2号証の意匠よりも短くし、かつ、前後の間隔を補強リブの長さの略3倍近くとし、断面形状については僅かな高さの凸弧状としたものを、スラットの凸面側に突出させている点、に差異が認められる。
(4)本件登録意匠と甲第2号証の意匠との類否判断
そこで、両意匠の共通点、及び、差異点を、意匠全体として総合し、検討してみると、両意匠は、(a)及び(b)の構成態様、すなわち、挿通用孔と補強リブに関する全体の基本的構成態様は共通するものの、視覚的効果を決定付ける各部の具体的構成態様を検討せずに、これのみによって、意匠の類否判断を結論付けることはできず、一方、イ.の挿通用孔の形状における差異点については、意匠を構成する基本となる左・右一方のまとまりの範囲における要旨を構成する主要部分の顕著な形態上の差異に関するもので、更に、ロ.における顕著な構成比率に関する差異と相俟って、意匠を構成する基本となる左・右一方のまとまりの範囲において、別異の視覚的まとまりを生じさせるものと認められるから、補強リブの具体的形状について検討するまでもなく、意匠全体として本件登録意匠は、甲第2号証の意匠に類似するとは言えないものである。
(5)本件登録意匠の創作容易性についての検討
次に、本件登録意匠の創作容易性について検討するに、まず、本件登録意匠と、前記(a)及び(b)の構成態様、すなわち、挿通用孔と補強リブに関する全体の基本的構成態様が共通する甲第2号証の意匠において、イ.における挿通用孔の形状、ロ.における補強リブの、長さと、その長さに対する前後に設けられた両リブの間隔、そして、補強リブの形状を、本件登録意匠のように変更することが、容易であったか否かを検討する。
イ.における挿通用孔形状について、甲第3号証の4、特開平10-148074号公報の図3(別紙第3参照)には、本件登録意匠と同じ物品であるブラインド用スラットにおいて、スラットの短手方向(本件登録意匠において前後方向)に細長く、その両端を半円弧状とした挿通用孔の形状が表されており、本件登録意匠の挿通用孔の形状は、公然知られた形状であり、ロ.における補強リブの形状は、甲第2号証の第3図(別紙第2、第3図参照)には、スラットの長手方向に細長く、断面形状が凸弧状の補強リブが記載されており、公然知られた形状と認められる。なお、甲第2号証の第3図に表された補強リブは、スラット全体の凸面の反対側に突出しているが、明細書の3頁7行目ないし9行目に「表面側または裏面側に、プラス成形加工によって突出成形し」と記載されている。
そこで、(a)及び(b)の共通点と、イ.及びロ.の差異点を総合し、本件登録意匠の創作の容易性を検討してみると、イ.の、甲第2号証の意匠における昇降紐等の挿通用孔の形状を、甲第3号証の4に表された挿通用孔の形状に改変することは、同一物品における同一目的のための挿通用孔に関するものであるから、容易に着想し得たものと認められ、ロ.における補強リブの形状及び突出の向きについては、甲第2号証の第3図及び明細書の記載により実質的に表されており、甲第2号証の意匠において、補強リブの形状及び突出の向きを、本件登録意匠と同じとすることは容易に着想し得たものと認められ、補強リブの長さについては、甲第2号証の明細書3頁11行目に、孔の幅の長さの「2〜3倍長位」とする旨の記載があるように、幅の狭い挿通孔に対してリブの長さを短くすることは、そのリブを設ける目的から至極当然の変更と認められ、設けられた前後の間隔については、挿通用孔が前後に長くなれば、両リブの間隔が相対的に広がるのは自明のことであるから、挿通用孔の形状の変更に伴い、当業者が当然のごとく行う設計変更にすぎないものと認められる。
してみると、本件登録意匠は、当業者であるならば、甲第2号証の図1、図3、と明細書の内容とにより表された全体形状と補強リブの形状、及び、甲第3号証の4、特開平10-148074号公報の図3に表された挿通用孔の形状に基づき、容易に創作できたものとせざるを得ないから、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとせざるを得ないものである。
(6)むすび
以上のとおりであるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項の規定に違反するにも係わらず登録されたものであって、その登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2003-02-14 
結審通知日 2003-02-19 
審決日 2003-03-07 
出願番号 意願2001-1517(D2001-1517) 
審決分類 D 1 11・ 121- Z (C1)
最終処分 成立  
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 市村 節子
山崎 裕造
登録日 2002-02-22 
登録番号 意匠登録第1138982号(D1138982) 
代理人 橋場 満枝 
代理人 峯 唯夫 
代理人 赤澤 日出夫 
代理人 山口 栄一 
代理人 石戸 久子 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ