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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする C1
管理番号 1076642 
審判番号 無効2002-35304
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2003-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-07-16 
確定日 2003-04-21 
意匠に係る物品 ブラインド用スラット 
事件の表示 上記当事者間の登録第1138983号「ブラインド用スラット」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1138983号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.請求人の申立及び理由の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
意匠登録第1138983号意匠(以下、本件登録意匠という)は、甲第2号証の意匠に類似するもの若しくは甲第2号証の意匠に基づいて容易に創作できたものであって、意匠法第3条第1項第3号又は意匠法第3条第2項に違反して登録されたものというべきであり、無効とされなければならない。
2.被請求人の答弁及び理由の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めるとし、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、乙第1号証ないし乙第17号証(枝番を含む)を提出した。
請求人の主張は、「本件登録意匠の形態の特定において、客観性のない不適切な表現手段」を用いている。また、本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願日と同日に出願され登録になった、被請求人が所有する「4グループの関連意匠群は、4つの本意匠が互いに類似しないと認定されている」ことから、「『昇降コード挿入用孔』の『形状』と『その上下に設けられたリブ』の『形状』との相互の組み合わせごとに、意匠の創作の傾向・流れを把握して類似する意匠の認定をおこなって」登録されているのであるから、請求人の本件登録意匠と「公知意匠」の差異点の評価に関する「認定方法は失当」であり、「両者の具体的構成態様並びにそこから生じる両者の美感は明らかに相違するものであるから、両意匠は類似しないことは明白」であり、また、本件登録意匠は「複数の公知意匠を当業者にとってありふれた手法によって寄せ集めたに過ぎない意匠の程度を越えた美感が生じている」もので、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号又は同法第3条第2項に違背して登録されたものでないから、請求人の、同法第48条第1項第1号に該当し、その意匠登録は無効にすべきであるとする主張は失当である。
3.当審の判断
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、願書の記載及び添付図面によれば、平成13年1月26日の意匠登録出願に係り、平成14年2月22日に設定の登録がなされた登録第1138983号の物品の部分についての意匠であり、意匠に係る物品が「ブラインド用スラット」であり、その形態は、願書の記載及び願書に添付された図面に実線で描いて表されたとおりのものである。(別紙第1参照)
(2)甲第2号証の意匠
甲第2号証の意匠は、甲第2号証の実願昭56-17510号(実開昭57-129899号)のマイクロフィルム所載の第1図に表されたもので、その形態は、その図と明細書の記載により表されたとおりのものである。(別紙第2、第1図参照)
(3)本件登録意匠と甲第2号証の意匠との比較・検討
そこで、本件登録意匠と甲第2号証の意匠とを比較してみると、両意匠は意匠に係る物品が共通するものに係り、その形態については主として以下のような共通点、及び、差異点がある。
すなわち、両意匠は、短手方向(前後方向)に僅かに湾曲させた、左右に長い細長方形状薄板スラットの、左・右両端から同じ長さ位置に設けられた2箇所の昇降紐等の挿通用孔と、それぞれの付近に設けられた補強リブに関するもので、その形態は、(a)左右2箇所に離れて表された両部分は、同一形態をしたものであり、その(b)一方の構成態様につき、中央の挿通用小矩形孔の前・後の同じ長さ位置それぞれに、同じ長さであって相互に平行な細幅直線状の補強リブを設けており、(c)前後に設けられた補強リブの間隔は、リブの長さと略同程度、若しくはそれよりも僅かに大きく、その(d)補強リブの長さにつき、挿通用小矩形孔の左右幅の略2.5ないし3倍程度とした点、が共通する。
一方両意匠は、イ.挿通用小矩形孔につき、甲第2号証の意匠は略正方形としているのに対して、本件登録意匠は、左右幅が前後幅の1.5倍程度のやや横長とした点、及び、ロ.補強リブの形状に関し、甲第2号証の意匠は、断面形状の具体的態様については、第1図に断面図等により記載されていないため不明確であるのに対して、本件登録意匠の断面形状については、僅かな高さの凸弧状としたものを、短手方向に湾曲させたスラットの凸面側に突出させている点、に差異が認められる。
(4)本件登録意匠と甲第2号証の意匠との類否判断
そこで、両意匠の共通点、及び、差異点を、意匠全体として総合し、検討してみると、両意匠は、前記共通するとした(b)ないし(d)の共通点に係る構成態様は、意匠を構成する基本となる左・右共通するそれぞれの範囲における要旨を構成すると共に、共通した視覚的まとまりを形成し、更に、意匠全体に関する(a)の共通点に係る構成態様と相互に関連しあって、意匠全体の共通した基調を形成しており、類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
これに対して、前記イ.及びロ.の差異点は、以下のように、いずれも、(b)ないし(d)の共通点に係る構成態様により形成される、意匠を構成する基本となる左・右共通するそれぞれの視覚的まとまりの中に埋没してしまう程度の微弱なものであり、意匠全体としてみた場合、類否判断に及ぼす影響は僅かといわざるを得ないものである。
すなわち、イ.の挿通用小矩形孔の縦横比における差異については、左・右共通するそれぞれの1単位のまとまりの中においても小さな矩形孔部の微弱な構成比率に関するもので、しかも、甲第2号証の意匠のように略正方形としたものも、本件登録意匠と同程度の縦横比のものも従前よりみられ、また、挿通用小矩形孔の縦横比は、昇降紐等の挿通物の幅との関連において必要に応じて適宜設定されるものであり、この差異は、創作的にも殆ど評価することができないものである。ロ.の断面形状については、甲第2号証の意匠(第1図)そのものには、断面図が記載されていないものであるが、甲第2号証の第3図(別紙第2、第3図参照)には、断面形状が凸弧状のものが表されており、又、同号証の明細書3頁7行目乃至9行目に「表面側または裏面側に、プラス成形加工によって突出成形し」と記載されていることから、本件登録意匠独自の特徴とはいえず、また、視覚の上では、その態様如何により前記(b)ないし(d)の共通点により形成される視覚的まとまりに変更を生じさせる程のものではなく、結局は微差に相当するものといわざるを得ないものである。
このように、前記(a)ないし(d)の両意匠の共通点に係る構成態様は、その総体として意匠全体の共通した基調を形成しており、類否判断に大きな影響を及ぼしているのに対して、差異点については視覚的に微弱であると共に、創作としても格別評価の対象にならない微差にすぎず、イ.及びロ.の差異点の相俟った効果を考慮したとしても類否判断に及ぼす影響は僅かであるから、本件登録意匠は甲第2号証の意匠に類似するといわざるを得ないものである。
(5)むすび
以上のとおりであるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し、同法同条第1項の規定に違反するにも係わらず登録されたものであって、その登録は、意匠法第3条第2項の規定に該当するか否かを検討するまでもなく、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2003-02-14 
結審通知日 2003-02-19 
審決日 2003-03-10 
出願番号 意願2001-1518(D2001-1518) 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (C1)
最終処分 成立  
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 2002-02-22 
登録番号 意匠登録第1138983号(D1138983) 
代理人 山口 栄一 
代理人 石戸 久子 
代理人 橋場 満枝 
代理人 赤澤 日出夫 
代理人 峯 唯夫 

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