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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1089973 |
審判番号 | 不服2002-11616 |
総通号数 | 50 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2004-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-25 |
確定日 | 2003-12-08 |
意匠に係る物品 | 包装用容器のふた |
事件の表示 | 意願2000- 30346「包装用容器のふた」拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願の意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする平成12年10月25日の意匠登録出願であり、その意匠は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「包装用容器のふた」とし、形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであり、実線と一点鎖線で表した部分が意匠登録を受けようとする部分である(別紙参照)。 すなわち、蓋体全体は、有頂円筒状の下端を漸次拡径して短い傾斜面部を形成し、さらに、その裾に同径のリング部を連設し、内側には、リング部下端周りに係止爪を斜状に立設すると共に、傾斜面部とリング部との境の周方向の破断部周りにブリッジを設け、開蓋時にはリング部上方部の螺脱に伴い周方向の破断部で上下に分離するものであり、その蓋体において、意匠登録を受けようとする部分は、傾斜面部とリング部に設けた縦方向の破断部を囲む部分であり、表側においては傾斜面部とリング部の上下に亘り縦直線状の破断部を設け、内側においてはリング部の上下に亘り、表側の破断部位置から右にずれた位置に縦直線状の破断部を設け、表側と内側の破断部間のリング部周壁を二重壁とし、内外壁それぞれの、破断部端部位を厚壁とし、破断部手前の部位を薄壁として、両壁を嵌合した態様のものである。 2.原審の拒絶の理由 本願に対する原審の拒絶の理由は、要旨以下のとおりである。 本願の意匠の創作の主要な点は表側の形状にあると認められるところ、本願の意匠は、その出願前に公然知られたものと認められる包装用容器の蓋の意匠(意匠1)の下部外周形状について、よく設けられることのある切り欠き溝(意匠2、意匠3など)を単に縦に一筋設けたに過ぎないものであり、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当する。 3.請求人の主張 請求人は、意匠法第3条第2項の立法趣旨及び解釈についての見解を述べた上で、当該物品の一部分においてどのような形状の切り欠き溝を構成するかは工夫を要する点であってみれば、原審引用の意匠2、意匠3に見られる切り欠き溝部分の構成態様と本願の意匠のそれとは全く別異である、また、原審引用の意匠1ないし意匠3は公然知られ得る状態にあったかも知れないとしても、現実にそれらがいつ不特定多数人によって閲覧されたものであるとの事実が正確に証明されていない以上、その文献中の特定の図面が公然知られたものとなっていたと断ずることは到底できないから、当業者が本願の意匠のごときものを容易に創作をすることができたと認定することはできない旨主張する。 4.当審の判断 そこで、本願の意匠の創作容易性について検討する。 原審は、拒絶の理由において、本願の意匠の創作の主要な点は表側の形状にあるとした上で、本願出願前に公然知られた包装用容器の蓋の意匠として、意匠1(意匠登録第1013192号公報の意匠)を例示し、また、よく設けられることのある切り欠き溝として意匠2(意匠登録第939295号公報の意匠)、意匠3(意匠登録第1080564号公報の意匠)を例示し、本願の意匠は、意匠1の蓋の下部外周形状について、よく設けられることのある切り欠き溝を単に縦に一筋設けたに過ぎないとしている。 しかしながら、本願は、傾斜面部とリング部に設けた縦方向の破断部を囲む部分について、表側のみならず、内側も含む全体の形態を、蓋体全体形態の中から特定して意匠登録を受けようとするものであって、その部分の形態構成に内側の形状も強く関わることから、原審が本願の意匠の創作容易性の判断において前提とした、本願の意匠の創作の主要な点は表側の形状だけにあるとの認定判断は、誤りである。 そして、意匠1は、中栓蓋の傾斜面状肩部上方に有頂円筒状の外蓋を螺着した態様であって、本願の意匠に係る蓋体とは異なる構造形式のものであり、その下部態様は、本願の意匠登録を受けようとする部分の態様の基礎とは成り得ない。 また、本願の意匠登録を受けようとする部分について、表側においては傾斜面部とリング部の上下に亘り縦直線状の破断部を設け、内側においてはリング部の上下に亘り、表側の破断部位置から右にずれた位置に縦直線状の破断部を設け、表側と内側の破断部間のリング部周壁を二重壁とし、内外壁それぞれの、破断部端部位を厚壁とし、破断部手前の部位を薄壁として、両壁を嵌合した態様とした、破断部界隈の具体的な構成態様は、意匠2、意匠3のものと大きく異なり、従来態様にも見られないものである。 以上によれば、本願の意匠は、意匠1の蓋の下部外周形状によく設けられることのある切り欠き溝を単に縦に一筋設けた程度を遥かに超えて、創意工夫の結果、創作されたものであり、他に本願の意匠を創作容易なものとする証拠もない。 5.むすび 以上のとおりであって、本願の意匠は、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。 したがって、本願の意匠は意匠法第3条第2項の規定に該当するとして本願を拒絶すべきものとした原査定は、当を得ないものであり、取消を免れない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2003-11-27 |
出願番号 | 意願2000-30346(D2000-30346) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 永芳 太郎 |
特許庁審判長 |
遠藤 京子 |
特許庁審判官 |
渡邊 久美 伊藤 晴子 |
登録日 | 2004-01-16 |
登録番号 | 意匠登録第1198652号(D1198652) |
代理人 | 牛木 理一 |