• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200335075 審決 意匠

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効としない C3
審判 無効  意3条登録用件 無効としない C3
管理番号 1090020 
審判番号 無効2003-35080
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2004-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-03-03 
確定日 2003-12-10 
意匠に係る物品 物干用吊掛具 
事件の表示 上記当事者間の登録第0923794号「物干用吊掛具」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.請求人の申立及び理由の要点
請求人は、意匠登録第923794号を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、旨の審決を求めると申立、その理由を審判請求書の記載のとおり、また、大要を以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証の1ないし6を提出した。
(1)意匠登録第923794号意匠(以下、本件登録意匠という)は、創作性欠如のため、法第3条第2項に該当するものであって登録を本来認められるべきものではない。
仮に新規な創作であったとしても、例えばカメラ用三脚あるいは一脚、あるいは突っ張り棒、支持棒等々が存在しており、これらの意匠を基に、当業者であれば、本件物品の意匠に容易に転用することができたものであるに過ぎない。のみならず、添付乙号証として提出する実用新案公報には、各種大径部材、小径部材が伸縮する状態が図示ないし説明されている。
これら各種の先行資料に表されている伸縮する、という外形そのものをもって、本件登録意匠に於ける中心的特徴と考えられる、大径、小径の管状ないし棒状をもって、伸縮可能とするする意匠は、当業者であれば極めて容易に創作可能なのであることは、明らかである。そして、その余の本件登録意匠を考えても、格別な工夫の全く見られない外形を呈しているだけである。これらを総合して判断すると、本件登録意匠全体の採択は、当業者であれば容易になしえたものであり、所謂創作性ないし進歩性欠如の意匠であるにすぎない。
(2)本件登録意匠に係る物品は、天井より吊り下げ使用する物干し掛けであるが、全て、物品の機能を確保するために不可欠な形状を呈するだけのものであり、法第5条第1項第3号に該当する。
(3)本件登録意匠の外形には、格別美感を感じとらせるような部分が全くなく、ただ単に、必要最低限の機能を追求しただけのものと考えられ、法第3条に云う「意匠」の概念から外れ、登録を認められるものではなかった。
また、大径部材には、ダボ孔は中心やや下部に一個形成されているだけであり、伸張させ使用するために必要なストッパー機能は発揮しえず、「意匠としては未完成」ないし「工業上利用可能な意匠ではない」との理由で、「工業上利用できる意匠」の概念に反し、法第3条違反であって登録を認められるべきものでなかった。
2.被請求人の答弁及び理由の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めるとし、その理由を判定答弁書の記載のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
3.当審の判断
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿、願書の記載及び添付図面によれば、平成5年5月14日の意匠登録出願に係り、平成7年2月9日に設定の登録がなされた登録第923794号の意匠であり、意匠に係る物品が「物干用吊掛具」であり、その形態は、願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(別紙参照)
(2)本件登録意匠の創作容易性についての検討
まず、請求人が主張する本件登録意匠の創作容易性について検討すると、本件登録意匠の主要構成要素は、下端から順に、イ.リング状掛け部、ロ.伸縮可能な2段構成とした丸棒状支柱部、ハ.上端の丸みを落とした略球形状上部と細長円錐台状下部から構成される、天井に支柱を固定する係止部材、からなるものであり、更に、ニ.支柱本体下端のリング状掛け部を接続するための円柱状継手部、ホ.支柱上端付近の密に巻いたコイル状の中間部材、を有している。請求人は、カメラ用三脚、一脚、あるいは突っ張り棒の一般的態様、添付乙各号証に記載された内容によれば、「各種大径部材、小径部材が伸縮する状態」のものが従前より存在していたと主張するが、本件登録意匠の主要構成要素であるイ.リング状掛け部、ハ.上端付近の丸みを落とした略球形状上部と細長円錐台状下部から構成される、天井に支柱を固定する係止部材、更に、ニ.円柱状継手部、ホ.密に巻いたコイル状の中間部材、等を示すものを乙各号証の中に見いだすことができず、また、前記イ.ないしホ.等、本件登録意匠を構成する要素の形状が、仮に公然知られた形状であったとしても、本件登録意匠のような構成態様で組み合わせることが容易に着想し得たとすることもできず、請求人の証拠、及び理由では、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項に規定する、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとすることはできない。
(3)次に、請求人は、本件登録意匠は物品の機能を確保するために不可欠な形状を呈するだけのものであり、意匠法第5条第1項第3号に該当すると主張するが、同規定は平成10年に改正され、平成11年1月1日に施行された規定であるから、平成5年に出願された本件登録意匠には適用されない。
(4)次に、請求人は、本件登録意匠は格別美感を感じとらせるような部分が全くなく、ただ単に、必要最低限の機能を追求しただけのものと考えられ、意匠法第3条に云う「意匠」の概念から外れ、登録を認められるものではなかった、と主張する。しかしながら、本件登録意匠は、前述のごとく、主要構成要素が、下端から順に、イ.リング状掛け部、ロ.伸縮可能な2段構成とした丸棒状支柱部、ハ.上端付近の丸みを落とした略球形状上部と細長円錐台状下部から構成される、天井に支柱を固定する係止部材、更に、支柱本体の下端にはリング状掛け部を接続するためのニ.円柱状継手部、支柱上端付近にはホ.密に巻いたコイル状の中間部材を有している。これらの構成要素の形状は、乙各号証に照らしてその全体形状及び各部材の形状が物品の機能に対して唯一無二の不可避の形状とは到底云えず、「必要最低限の機能を追求しただけのもの」とすることができず、また、これらの構成要素がそれぞれ一定の構成比率を有し、相俟って一定の視覚的まとまりを形成しているから、訴える「美感」が全く存在しないとすることもできない。
更に、請求人は、大径部材にはダボ孔は中心やや下部に一個形成されているだけであり、伸張して使用するために必要なストッパー機能は発揮しえず、「意匠としては未完成」ないし「工業上利用可能な意匠ではない」との理由で「工業上利用できる意匠」の概念に反し、意匠法第3条違反であると主張する。
しかしながら、本件登録意匠の丸棒状支柱部は、大径の外管(以下「大径部材」とする)の内側に下方から小径の丸棒(以下「小径部材」とする)が嵌入され、これにより伸縮可能となっているものと認められるところ、願書添付図面の「B-B’部のA-A’線拡大断面図」によれば、この図面の下部に大径部材に嵌入された小径部材の上端部分が表されており、これを正面図と照らし合わせると、小径部材の全体の長さは、大径部材に対して僅かに短い程度のものと認められ、願書添付図面の「長さを伸ばした状態の正面図」のとおりに支柱の長さを伸ばした状態においても、当然に、小径部材の上端は大径部材のダボ孔位置(大径部材の中央稍下位置)に届いていることとなるから、このダボ孔位置において、大径部材と小径部材とがダボ構造で停留されているものと解すのが自然で、またこのように解することに何ら不合理はない。従って請求人の「ダボ孔は少なくとも二個穿設されていることが必須不可欠である。」との請求人の主張に理由はない。なお長さを伸ばした状態での停留に関わる小径部材のダボが図面上表されていないとしても、小径部材の該当する位置にダボが設けられているであろう事は上記のとおりであって当然に推認でき、しかもこのダボは外観上現れないものであるから、このような外観上現れない内部構造について、しかも、当然に推認できるダボについて、これを断面図等で詳細に表していないからとして、その意匠が工業上利用できない意匠であるとすることはできない。また請求人の審判請求書、審判事件弁駁書、及び審判事件弁駁書(2)の主張をすべて詳細に検討しても、本願意匠が工業上利用することができない意匠である、とする理由は見出せない。
以上のとおりであって、本件登録意匠が意匠法第3条の規定に違反するにもかかわらず登録されたもの、との請求人の主張に理由はない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張した理由及び提出した証拠では、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項の規定に違反するにも係わらず登録されたものとはいえず、同法第5条第1項第3号の規定により登録されるべきものでなかったとすることはできず、同法第3条の規定に違反するにも係わらず登録されたものともいえないから、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2003-10-14 
結審通知日 2003-10-17 
審決日 2003-10-29 
出願番号 意願平5-14039 
審決分類 D 1 11・ 121- Y (C3)
D 1 11・ 1- Y (C3)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 市村 節子
山崎 裕造
登録日 1995-02-09 
登録番号 意匠登録第923794号(D923794) 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 小出 俊實 
代理人 畠山 隆 
代理人 吉田 親司 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ