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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) L6
管理番号 1093325 
判定請求番号 判定2003-60079
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2004-04-30 
種別 判定 
判定請求日 2003-10-16 
確定日 2004-02-27 
意匠に係る物品 トラス付きデッキプレート 
事件の表示 上記当事者間の登録第1096120号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す「トラス付きデッキプレート」の意匠は、登録第1096120号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1 請求人の申立て、及び理由
1.請求人は、イ号意匠図に示す意匠は、意匠登録第1096120号(以下、「本件登録意匠」という。)、及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証-1ないし第5号証-2を提出した。
2.請求人は、本件登録意匠を出願した後、製品改良形としての製品製造を行う予定が、販売先である株式会社富士昭からの製造依頼が無く、製造を行うことができなかった。その後、富士昭グループ側が自社の製造ラインを形状変更し、請求人に対し無断でこのニューフェローデッキ製品(甲第3号証-2)をイ号意匠図(甲第4号証-1)の現形意匠図を変更案の形状に変更した上、平成14年9月より、ニューフェローデッキ(150m/m型)、エコタイプ(200m/m型)として製造販売を行っている。これらの製品が、本件登録意匠(甲第2号証-1)と同一の意匠製品であるとの判定を請求する。
第2 被請求人の答弁
1.被請求人は、イ号意匠図の変更案の形状に係る「トラス付きデッキプレート」の意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、本件登録意匠、及びこれに類似する意匠の範囲に属さない、との判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
2.本件登録意匠と実施意匠との類否について
本件登録意匠の構成要素のほとんどが、その出願前に日本国内で頒布された刊行物(乙第3号証ないし第5号証、及び乙第8号証)に記載された意匠と同一ということができる。
あえて本件登録意匠と上記刊行物に記載された意匠との相違点を挙げるならば、本件登録意匠は、平面視が細長い長方形状をなす亜鉛メッキ鋼板と、吊り材の底辺部の両側、又は片側の屈曲部近傍の位置に、亜鉛メッキ鋼板を小さな上向き円弧状に皺状に屈曲した凸部を1個ずつ合計2個形成し、これと底辺部の接点を接合した形状であるのに対し、刊行物に記載された意匠は、吊り材の底辺部の中央部位に2個の凸部を設けた意匠(乙第3、4号証、及び第8号証)、又は吊り材の底辺部の屈曲部近傍の位置に、2個ずつ合計4個の凸部を設けた意匠(乙第5号証)である点が僅かに異なると認められる。結局、この差異点のみが本件登録意匠の意匠的創作の拠り所ということができる。
3.本件登録意匠とイ号意匠の類否について
まず、イ号意匠の亜鉛メッキ鋼板の長手方向の両端縁に形成された略レ形状の接合縁の形状は、本件登録意匠の接合縁の形状とは異なる形状である。
一方、イ号意匠の他の構成態様は、いずれも上記した乙第5号証記載の意匠と同一であり、吊り材の底辺部の屈曲部近傍位置に2個ずつ合計4個の凸部を設けた構成であるから、この点において本件登録意匠、及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判断は成り立たない。
また、ニューフェローデッキのエコタイプの意匠は、本件登録意匠の全体の幅員を縮小した構成のものであり、基本的構成態様の変わるところはないが、吊り材の底辺部の屈曲部近傍位置に2個ずつ合計4個の凸部を設けた構成であるから、本件登録意匠、及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判断は成り立たない。
以上のとおり、本件登録意匠とイ号意匠は、唯一の意匠的創作の拠り所と認められる亜鉛メッキ鋼板の凸部の態様(凸部の配置と個数)において明らかに大きく相違するものであるから、イ号意匠は、本件登録意匠、及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判断は成り立たない。
よって、本件判定の請求は成り立たない旨の判定を求める次第である。
第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9年5月9日に意匠登録出願し、平成12年11月2日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1096120号意匠であり、願書の記載、及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「トラス付きデッキプレート」とし、その形態は、同図面に記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、その形態を、判定請求書に添付されたイ号意匠図のうち、甲第4号証-1に表されるニューフェローデッキ断面図の変更案と甲第4号証-2に表されるニューフェローデッキ・150mm型の写真(カラーコピー)により示すとおりのものであって、意匠に係る物品が「トラス付きデッキプレート」と認められる(別紙第2参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点、及び差異点がある。
まず、共通点として、全体は、長方形薄板状の鋼板の上面のほぼ全体にトラス構造を有する鉄筋部を設けたものであり、鋼板は、左端部に、正面視略変形「コ」の字状、右端部に、略「レ」の字状とする係止片をそれぞれ形成し、その上方の鉄筋部は、等間隔に4箇所三角波形に折曲した鉄筋(以下、「吊り材」という。)を鋼板の長手方向に一定の間隔で複数本接合し、その吊り材の三角波形折曲部と鋼板の間に、ジグザグ状に折曲した鉄筋の上下にやや太い鉄筋を平行に取り付けその両端部に垂直状の丸棒材を固着した「トラス型鉄筋」を渡して、吊り材の三角波形折曲部の頂部下側と接合して取り付けたものであり、鋼板と吊り材の接合部の態様は、鋼板に小さな突条を吊り材の三角波形折曲部の左右の付根近傍に設け、その突条部に吊り材を接合したものであって、また、吊り材の三角波形折曲部の開放下部に位置する鋼板の部分は、平坦面としている態様が共通している。
一方、差異点として、(ア)鋼板と吊り材の接合部の態様について、本件登録意匠は、鋼板に設けられた突条を吊り材の三角波形折曲部の左右の付根近傍に1本ずつ設けているのに対し、イ号意匠は、2本ずつ設けている点、(イ)鋼板の左端部に形成される係止片の態様について、本件登録意匠は、その係止片の高さが突条の頂部と同じ高さであるのに対し、イ号意匠は、その係止片の高さが吊り材の左端部よりやや高い点が認められる。
そこで、上記の共通点と差異点について総合的に検討すると、両意匠の共通点として挙げた態様、すなわち、左右端部に係止片を設けた長方形薄板状の鋼板の上面のほぼ全体に、吊り材に固定したトラス型鉄筋を、鋼板の長手方向に等間隔に4箇所設けた態様は、本件登録意匠の出願前から、この種物品分野において普通に見られる態様であることから(例えば、特許庁発行の意匠公報に掲載される意匠登録第727684号の類似1の意匠)、本件登録意匠独自の特徴といえないものであるが、両意匠の形態についての骨格的な態様であって、形態全体を支配する要素に係るものであるから、両意匠の類否判断に影響を与えるものと認められる。また、鋼板において、吊り材の三角波形折曲部の開放下部を平坦面としている共通点は、その態様が、本件登録意匠の出願前に見受けられないものであるから(従来態様においては、吊り材の三角波形折曲部の開放下部の位置に、ほぼ同幅の浅い溝を形成している。)、本件登録意匠の特徴と認められ、また、この部位は、幅広で、看者の注意を惹くところといわざるを得ないから、この共通点は、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものと認められる。さらに、鋼板と吊り材の接合部の態様について、鋼板に小さな突条を吊り材の三角波形折曲部の左右の付根近傍に設け、その突条部に吊り材を接合している共通点は、本件登録意匠の出願前に見受けられないものであるから、類否判断において考慮すべき要素と認められるものである。そうすると、これらの共通点は、一つにまとまって、両意匠の共通する基調を決定づけ、形態全体としての共通感を看者に強く印象づけるものといえるから、全体として両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものといわざるを得ない。
一方、差異点のうち、(ア)の差異について、すなわち、鋼板と吊り材の接合部の態様において、本件登録意匠は、鋼板に設けられた突条を吊り材の三角波形折曲部の左右の付根近傍に1本ずつ設けているのに対し、イ号意匠は、2本ずつ設けている差異は、突条の数が1本の差に過ぎないものであり、形態全体からみれば、両意匠の共通する態様、とりわけ、三角波形折曲部の左右の付根近傍に設けた共通する態様に埋没する程度の差異にとどまるものであって、形態全体の基調に影響を与えるほどの要素ではないから、この差異は、両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものといわざるを得ない。(イ)の差異については、その部位のみを見ればともかく、形態全体として観察した場合、ともに、係止片が端部に形成され、その形状が正面視略変形「コ」の字状とする共通する態様の中での部分的な差異にすぎないものであるから、この差異は微弱なものというほかない。
そうすると、これらの差異点は、いずれも微弱なものであるから、形態全体として見た場合、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであって、これらの差異点を総合し相まった効果を考慮しても、前記の共通点を凌駕して類否判断を左右するほどのものとは認められない。
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態についても、前述のとおりの差異があっても、類否判断を左右する要素において共通するから、全体として類似するものというほかない。
4.結び
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠、及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2004-02-17 
出願番号 意願平9-53925 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橘 崇生 
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 西本 幸男
内藤 弘樹
登録日 2000-11-02 
登録番号 意匠登録第1096120号(D1096120) 
代理人 山名 正彦 
代理人 山名 正彦 

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