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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立不成立) C3
管理番号 1096472 
判定請求番号 判定2003-60071
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2004-06-25 
種別 判定 
判定請求日 2003-09-02 
確定日 2004-04-22 
意匠に係る物品 物干具 
事件の表示 上記当事者間の登録第1159689号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す意匠は、意匠登録第1159689号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、「イ号に示す物品は、意匠登録第1159689号の意匠の範囲に属しない。との判定を求める。」と申し立て、その理由を判定請求書に記載のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証(枝番を含む)を提出し、更に弁駁書及び甲第12号証ないし14号証を提出した。その主張の大要は以下のとおりである。
フレームが丸棒で成形され、隅角部に丸みをもって形成したフレーム半体を短い連結部を介して連結した物干具は、実開昭56-88493号公報(甲第4号証)によって公開されている公知の形態であり、同公報にはコ字状フレーム半体の自由端近く同士を結合する横桟さえも記載されたものが掲載されており、この形態はなんら目新しいものではない。
また、T字状結合部材については、等径のパイプを結合するときの周知の形態であり、何らの創作性は認められず、何ら目新しいものではない。
また、フレームを短い連結体で連結することは、従前よりこの種の物干具においては古くから周知の形態であり、関節が二つの目玉形状が特に目新しいものではない。
本件登録意匠のフレームの下側に添って突出している玉縁様凸条体は、更に下方に突出した半円弧状の突出部が等間隔をおいて形成してあり、この形態は極めて特異な形態である。
また、本件登録意匠のピンチ吊下部品は、上下のC字フックを短い棒で連結した一体成形品であり、全くユニークな形態である。
本件登録意匠のフレーム吊下部の形態については、本件登録意匠よりも20年も前から知られた形態である。
本件登録意匠の形態の中で、(1)フレームと連結体の形態、(2)フレーム及び横桟のそれぞれ下側にピンチ吊下部品を介してピンチが吊り下げてある構成、(3)V字型に折り曲げたストラップの両端がフレーム半体それぞれの隅角部の一部に横断方向に貫通して係合し、屈曲部が吊下フック取付体に挿通連結してあり、その中央部に吊下フックが設けてある構成は、甲第4号証ないし甲第9号証並びに被請求人自身が自認しているところより明らかなとおり、公知ないし慣用の形態であり、かつ機能上必要な形態である。
フレーム半体につき、本件登録意匠は断面円形であり、下側にピンチ取付縁部があるのに対して、イ号に示す物品は断面楕円であるだけでなく、その一部が潰されてリブ状に形成され、また、T字型ジョイントもこのリブを嵌合する断面洋梨ないし逆達磨形状をしている。
また、ピンチ吊下部品の形態につき、イ号物品のものは長円リングを継いだ短い鎖であるのに対して、本件登録意匠のものは両端にC字型フックを有するピンチ吊下棒であり、一つ一つは小さいが32個の数があり、イ号物品の鎖と比較すると太くて大きく、相当なインパクトがある。
本件登録意匠の吊下フック取付体は横長の長方形体で上面が蒲鉾形であり、長さに対してその高さは1/4と低く、針金の挿通孔は長手方向の長孔になっているのに対して、イ号物品は天井部が平坦であり、長さに対して高さの割合が壷高に形成され、ワイヤー挿通孔は下方に折れ曲がったL字型で両者間に形態の類似点は全くない。
通常取引者ないし需要者は、この物品を手にとって見、または手にとって使用するから、細部の形状も新規なユニークな形態の部分は充分に意匠の重要な要素となるものである。特にピンチ取付部が一体成形であるか、別部材のピンチ取付体をフレームに結合した結合品であるか、半円形状に突出するピンチ取付部の有無、ピンチ取付棒か鎖か、などの部分は意匠全体に及ぼす影響は大きく、全体として非類似の審美感を需要者に与える。また、流通市場においては、各フレーム半体の断面形状、T字型ジョイントの断面形状、ピンチ吊下部品の形状の両者の差異などは充分に認識し、別異の審美感を看者に惹起させるものである。
両者の類似点については、本件登録意匠の出願前に通常の物干具において悉く採用されていた形態であり、実用上ないし機能上の形態であり、これらが類似しているとしても、他の本件登録意匠として独特の形態部分についてはイ号物品とは全く異なり、意匠全体としては相違点が類似点を大きく凌駕して、全体として別異の審美感を看者に与えるものである。
第2.被請求人の答弁
被請求人は、イ号意匠は意匠登録第1159689号の意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と答弁し、答弁書記載のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第28号証(枝番を含む)、及び、検乙第1号証、検乙第2号証を提出した。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年9月8日に意匠登録出願をし、平成14年10月11日に意匠権の設定の登録がなされた、登録第1159689号の意匠であり、登録原簿及び願書の記載によれば、意匠に係る物品が「物干具」であり、形態については、願書に添付した図面代用写真に現されたとおりのものである(別紙第1参照)。
2.イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書添付のイ号図面及びその説明書により示されたものであり、意匠に係る物品が「物干し具」であり、形態については、イ号図面(写真を含む)及びその説明書に示されたとおりのものである(別紙第2参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠の対比検討
両意匠を対比するに、両意匠は意匠に係る物品が共通し、形態については、主として以下の共通点と差異点が認められる。
すなわち、共通点として、
(1)全体の概略につき、上端から、吊下フック、フック取付体、放射状に拡がりフレームを吊下げる吊下ワイヤー、方形状を呈するフレーム、同フレーム下面に取り付けられたピンチ吊具、及びピンチからなるものである点、
(2)吊下フックにつき、全体が線材からなるもので、上部を3/4円弧状とし、中間部を直線状として、下端はフック取付体に挿通しリング状に丸めたものである点、
(3)フック取付体につき、小さい横長箱状のものて、上面中央に吊下フックを挿通するための小突起を設け、前後両面には吊下ワイヤーを挿通係止するための横長の貫通孔を左右一対設けたものである点、
(4)吊下ワイヤーにつき、吊下フックとほぼ同じ太さの線材からなり、左右一対の略V字状に屈曲したもので、それぞれの中央屈曲部がフック取付体の左右の貫通孔にそれぞれ挿通されて、先端がフレームの4隅に向けて浅い角度で下降しつつ全体が放射状に拡がり、先端でフレームの4隅を係止している点、
(5)フレームにつき、コ字状の外枠とこの開放端寄りに横架された横桟からなるフレーム半体が、左右対向状に配されて、全体として、長辺が短辺のほぼ2倍の横長隅丸方形状で、縦中央に2本の横桟が平行状に現れる態様のフレームを形成し、左右のフレーム半体はそれぞれが下方に折りたたみ可能となるよう、前後中央で開放端がヒンジ状に連結されたものである点、
(6)フレーム材は、外枠材、横桟材のすべてに亘り、断面が同一形状のやや太い丸棒状のもので、外枠材、横桟材の下面全長に、長手方向に沿って、下向きに凸縁を設けて、その凸縁に等間隔にピンチを吊り下げるための小孔を穿っている点
(7)フレーム半体を連結するヒンジ部につき、全体が、中央のヒンジ本体と、その左右に直列状に填め込まれたT字継ぎ手からなり、このT字継ぎ手が、ヒンジ本体に対して外枠を下向きに回動させると共に、外枠に対して横桟を直交状に連結しており、ヒンジ本体は、側面視が逆U字状で、左右のT字継ぎ手に上から被さるように填め合わされた、正面視が略横長方形状で、左右の下隅が大きく丸み付けられたもので、正面左右に円形の区画が2つ並置されたものであり、左右のT字継ぎ手は、横幅(直列方向の幅)がヒンジ本体の横幅より稍狭い程度で、太さが外枠材、及び横桟材に対し一回り太径状に形成されたものである点、
(8)ピンチ及びピンチ吊具につき、フレームの外枠3辺及び横桟に各4個ずつ(合計32個)配され、側面視略V字状を呈するピンチが、フレーム下面の凸縁から吊下げられた短いピンチ吊具の先端に、ピンチ中央の環状バネを係止して吊下げられたものである点、が認められる。
一方両意匠には差異点として、
(イ)フック取付体につき、本件登録意匠は上面が曲面状で、貫通孔の位置が上下幅のほぼ中央であるのに対して、イ号意匠は、上面が平坦面状で、全体の高さが本件登録意匠よりやや高く、横長孔が上端直下に位置し、孔の先端が鈎状に曲がったものである点、
(ロ)フレーム材、すなわち外枠材及び横桟材について、本件登録意匠は断面外周形状(下面の凸縁を除く)がほぼ真円状で、凸縁が真円部分に対し別材で填め込まれており、また凸縁の下端の、ピンチを吊下げるための小孔部分が半弧状に突出しているのに対し、イ号意匠は、断面外周形状がやや縦に長い長円状で、凸縁が長円部と一体状に形成され、凸縁の下端が直線状である点、
(ハ)ヒンジ部につき、本件登録意匠は、T字継ぎ手の下面に凸縁がなく、またヒンジ本体の上下幅がT字継ぎ手の上下幅より大きいものであるのに対して、イ号意匠は、T字継ぎ手の下面に凸縁が設けられ、正面視において、ヒンジ本体の上下幅がT字継ぎ手の上下幅とほぼ等幅である点、
(ニ)ピンチ吊具につき、本件登録意匠は、上下端をC字状とした棒状のものであるのに対して、イ号意匠は3つの長円状リングからなる鎖状のものである点、に主として差異が認められる。
そこで、両意匠の共通点と差異点を意匠全体として検討すると、前記共通点は、両意匠において、形態全体の骨格的な構成態様を表すと共に、全体に占める各部の態様を具体的に表すところであり、相互に関連して全体としてのまとまりを形成し、物干具として全体の基調を形成している。とりわけ、(6)及び(8)のフレームの具体的な構成態様とピンチの配置の共通点、及び(7)のヒンジ部全体の構成態様の共通点は、両意匠の特徴をよく表し、その余の両意匠の共通点と相関連して、両意匠に極めて強い共通感をもたらしている。
即ち、(6)の外枠材及び横桟材のすべてを同じ太さ、同じ断面形状の丸棒状のものとし、その下面に凸縁を設けて、この凸縁から、横桟部分も含めて、ピンチを等間隔に配した点は、両意匠の特徴をよく表すところを構成し、(5)のフレームの構成比率、横桟の位置の酷似性等と一体となって、両意匠に強い共通感をもたらしている。更に、(7)のヒンジ部についての、全体が中央のヒンジ本体とこの左右に直列状に填め込まれたT字継ぎ手からなり、このT字継ぎ手が同時に、方形フレームの中央で2本の横桟を平行状に固定する態様としている点は、当審の調査においても本件登録意匠の出願前に他に認められず、本件登録意匠の特徴をよく表すところと認められ、しかもこのヒンジ部は視覚の上でも、フレーム材に対しての相対的な肉厚感及び塊感を印象付け、ヒンジ部の全体としてのまとまりが、訴求力の強い一体的なまとまりとして全体形態に大きな影響を及ぼしている。そしてこれらフレーム及びヒンジの構成態様に係る(5)ないし(7)の共通点、及び(8)のピンチの配置に係る共通点は、相互に関連し合ってフレーム全体として広範囲に亘る、極めて訴求力の強いまとまりを生じさせており、これらの共通点は、前述のとおり、その余の共通点と一体となって、両意匠の全体の基調を形成しており、この基調の共通性は、両意匠の類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものと認められる。
一方、差異点について、(イ)の点は、形態全体としてはフック取付体を共通点(3)の構成とした中でみられる部分的な差異に止まり、全体としては局所的な差異というほかなく、差異点(ロ)については、イ号意匠については確かに丸棒状が縦に稍長いものであるとしても、俯瞰した場合はさほど目立たず、フレーム材について、周面が曲面状のやや太めの丸棒状とした中でみられる微差であり、凸縁が別材か一体状かの差異も、横断して切断面として対比すればともかく、全体としては、丸棒状のフレーム材の下面にピンチを吊り下げるための凸縁を垂下状に設けたという、特徴的な構成上の共通性に吸収される微弱な差異に止まる。また凸縁の下端が直線状か否かの差異も、本件登録意匠の半弧状の突出の度合がさほど大きいものでなく、全体として観察すればその差異は微弱なものである。
(ハ)の点については、ヒンジ部についての(7)の特徴的な構成態様のなかでみられる微差で、類否判断に然したる影響を及ぼすものではない。
(ニ)の点については、確かにピンチ吊具のみを取り出して対比すれば一定の差異が認められるものであるが、意匠全体、即ち、物干し具全体の意匠として観察する場合においては、やはり二義的な部材に係る差異というほかなく、そして両意匠においては、前述のとおり、フレームの構成とピンチの配置、及びヒンジ部の具体的な構成態様の共通性がもたらす視覚的訴求力の強さが極めて大きく、これに対した場合、ピンチ吊具の数が多いことを考慮してもなお、その形状差が、物干し具としての特徴をよく表し全体の基調を形成するところに大きく係わるこれらの共通点を凌駕して両意匠を別異のものに特徴付けるまでのものとは到底言えない。
即ち、両意匠の差異が類否判断に及ぼす影響は、何れも微弱なものとせざるを得ず、そして、差異点の相俟った効果を考慮しても、両意匠に共通する全体の基調を覆し、別異の視覚的まとまりを生じさせているとは到底いえないもので、意匠全体として、両意匠は類似するものである。
被請求人は、両意匠の共通点は何れも周知の形態、或いは公然知られた形態であり、何れも類否判断において大きく評価されるべきでない旨を主張するところ、確かに(1)ないし(7)の共通点の中には、全体の概略について、或いは各々の構成部材について、従前の周知態様、或いは周知、公知の形態が含まれるものであるとしても、これらは相関連して全体の基調を形成するところに大きく係わっており、しかも、(6)及び(7)の態様については、請求人の提出した証拠、及び当審の調査によっても、本件登録意匠の特徴をよく表すところと認められ、これらの共通点を併せ持ったことによる両意匠の共通性は、やはり類否判断に大きな影響を及ぼすものであり、共通点を大きく評価すべきでないとする請求人の主張は採用することができない。
4.結び
以上のとおりであって、両意匠は意匠全体として類似するというほかなく、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
なお請求人は、本件判定請求書の「請求の趣旨」の欄に、「イ号に示す物品は意匠登録第1159689号の意匠の範囲に属しない。との判定を求める。」と記載しているが、判定の趣旨、及び本件判定請求書の記載の全体から、本件請求は、イ号に示す物品(イ号意匠)が意匠登録第1159689号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないことの判定を求めたものと解し、これを記載したものと解する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2004-04-12 
出願番号 意願2000-25176(D2000-25176) 
審決分類 D 1 2・ 1- YB (C3)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 市村 節子
山崎 裕造
登録日 2002-10-11 
登録番号 意匠登録第1159689号(D1159689) 
代理人 山田 正国 
代理人 清水 義仁 
代理人 高田 健市 
代理人 清水 久義 
代理人 木戸 利也 
代理人 黒瀬 靖久 

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