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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 C6 |
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管理番号 | 1102940 |
審判番号 | 不服2002-19084 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2004-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-10-02 |
確定日 | 2004-08-17 |
意匠に係る物品 | 冷蔵庫 |
事件の表示 | 意願2001- 18609「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願意匠は、平成13年6月27日の意匠登録出願に係り、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「冷蔵庫」とし、形態を同図面に意匠登録を受けようとする部分として実線で描き、願書の記載のとおりとしたものである(別紙参照)。 2.拒絶の理由 原審の拒絶の理由の要旨は、以下のとおりである。 (1)冷蔵庫の分野において、冷蔵庫本体の正面、側面、上面、背面の各表面を、色彩・明度・模様等を相互にコーディネートしデザインすることは、本願出願前より極普通に行われているのでありふれた手法ですし(意匠2,意匠3,意匠4)、正面と上面、側面と背面という組合せで表面をコーディネートすることも既にみられる態様です。(意匠5) (2)正面扉の左右両端と、上面の左右両端に、同幅の縁取りを設けることは本願出願前よりみられる極普通の手法ですし、左右両端を、中央部と異なる明度差とすることもありふれた手法です。(意匠1,意匠5,意匠6) (3)この意匠登録出願の意匠は、本願出願前に広く知られた、冷蔵庫本体開口部の両側と天板を扉体が覆う形式の、上段を片開き扉に下段を2つの引出とした冷蔵庫を、既に知られている態様のように、正面と上面、側面と背面という組合せで明度を統一し、正面と上面にはありふれた同幅の縁取りを連続して設けた態様のものの、縁取りの明度と側面の明度を単に一致させ、殆どそのまま冷蔵庫の意匠としたに過ぎませんから、容易に創作できたものと認められます。 そして、以下の意匠を提示した。 意匠1:特許庁発行の公開実用新案公報記載 平成1年実用新案出願公開第90978号 意匠2:特許庁総合情報館が1996年4月22日に受け入れた ZuhauseWohnen 1996年3月31日 第40頁所載 冷凍庫の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HB08007481号) 意匠3:特許庁総合情報館が1997年8月4日に受け入れた ABITARE 1997年3月31日 第194頁所載 冷蔵庫の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HB09009169号) 意匠4:特許庁総合情報館が1995年4月18日に受け入れた 国際事務局意匠公報 1995年3月31日 第274頁所載 冷蔵庫の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH07043473号) 意匠5:特許庁発行の意匠公報記載 第274742号類似第9号 意匠6:特許庁発行の意匠公報記載 第311484号 3.請求人の主張 請求人は、審判を請求して、要旨以下のとおり主張した。 (1)本願意匠は、冷蔵庫本体の両壁面とドア両側の縁取り部を一体感あるように明度差を付けた点に特徴を備えていることから、このドア両側の縁取り部のない、引例意匠2,3,4により、本願意匠の創作を否定できるものではない。また、引例意匠5は、天板との連続感を強く印象つける形態であり、前方に大きく張り出した天板がなく、冷蔵庫本体の両壁面と縁取り部とに一体感をもたせた本願意匠とは大きく異なる。 (2)引例意匠1,5,6が、いずれも、冷蔵庫の上面に、ドア面の上部に天板を備え、天板と縁取り部との連続感が一般的な中で、本願意匠は天板ではなく、従来見逃されていた冷蔵庫本体の両壁面と縁取り部との連続感を明度差により表現している。 (3)しかも、冷蔵庫に色彩や模様を施す手法が知られていても、その手法で形成される具体的な創作物は多様に創出される。そして、多様な創作物を生み出す手法をドアの両側の縁取り部を備えた冷蔵庫に適用しても、それら全てが創作容易ではない。 (4)したがって、本願意匠は、引例意匠1から6に基づいて容易に創作できるものではなく、登録になるべき創作のある意匠である。 4.当審の判断 本願意匠は、極僅かな凸状湾曲面とする前面を、上段の片開き扉、中下段の2つの引出扉で構成し、全体を直方体とする冷蔵庫の、脚部、下端前面保護カバー及び正面扉左右両側同細幅平行側縁部で挟む中央幅広部分のそれぞれ破線で描いた部分を除いた外被表面形状であって、冷蔵庫本体(正面扉を除いた部分)の両側面部及び上面の正面扉両側細幅平行側縁部の前面側横幅と同幅の左右両側細幅平行縁部並びに正面扉の各左右両側細幅平行側縁部の表面に共通した微小細点を付して、その余の部分(冷蔵庫本体の上面左右両側細幅縁部を除く中央幅広部分、背面及び底面部分)とは明度が異なるものとし、さらに、冷蔵庫本体の上面と側面により形成される稜部、正面扉の各左右両側細幅平行側縁部の前面と側面により形成される稜部、片開き扉上端の前面側と側面側の稜部とを小さな丸面状にして表した態様のものである。 そこで、本願意匠の創作の容易性について検討する。 冷蔵庫の分野において、色彩・明度・模様等を相互にコーディネートしデザインすることは、原審で指摘したとおり、本願出願前より極普通に行われていることではあるが、本願意匠の具体的な構成態様である、冷蔵庫本体の両側面部及び上面の左右両側細幅平行縁部並びに正面扉の各左右両側細幅平行側縁部とを同一明度とし、その余の部分と異なる明度にした点は、本願意匠の特徴とも言えるところであるが、そのような態様は原審の例示の中からは見出すことができず、また、それらの例示を組み合わせても本願意匠のような態様のものとすることもできない。すなわち、本願意匠の冷蔵庫本体上面の左右両側細幅平行縁部は、両側面部の一端として連なり、かつ両側縁部に挟まれる内側部分と同一平面上を構成しつつ、内側部分とは明度が異なるものとしているのに対して、提示されている意匠1,意匠5,意匠6は、何れも冷蔵庫本体上面の左右両側細幅平行縁部が両側面部と別部材で、かつ内側部分とは段差を設けた構成としており、さらに、意匠1は、両側細幅平行縁部とその内側部分とは明度が異なるものではなく、また、意匠5,意匠6は、何れも上面左右両側細幅平行縁部を内側部分と明度を異なるものとしているとしても、意匠5は天板の左右端部の平行縁部上面のみの明度差に過ぎず、意匠6は天板の左右端部の平行縁部の上面と側面のみの明度差を表しているものであり、結局、本願意匠の特徴とするところのものと同様の態様を表したものとすることもできない。なお、意匠2ないし意匠4は、そもそも正面扉に細幅平行側縁部も無く、冷蔵庫本体上面の態様についても、意匠2,意匠3は明らかではなく、意匠4は左右両側細幅平行縁部が無く、さらに、意匠2は、上端部寄りの全周面と中央全周面とを明度が異なるものとし、意匠3と意匠4は、扉と両側面とを明度が異なるものとしているものであるから、それらの意匠からは到底本願意匠の特徴となる態様が示されているとは言えない。 そして、原審の拒絶の理由において、縁取りの明度と側面の明度を単に一致させ、殆どそのまま冷蔵庫の意匠としたに過ぎないから、容易に創作できたものとしているが、本願意匠は、冷蔵庫本体の両側面部と同一明度で連なった上面の左右両側細幅平行縁部及び正面扉の各左右両側細幅平行側縁部とを同一明度として、その余の部分と明度が異なるものとしているのであって、例えば冷蔵庫本体の上面の左右両側細幅平行縁部を内側部分と明度を異なるものとしている意匠5及び意匠6において、縁取りと側面との明度を一致させることが容易とする根拠が不明であり、また、仮に意匠5及び意匠6において縁取りと側面の明度のみを一致させたとしても、前述のように本願意匠と冷蔵庫本体上面両側細幅平行縁部の構成そのものが異なる以上、同様なものには成り得ない。そうとすれば、本願意匠は、縁取りの明度と側面の明度を単に一致させ、殆どそのまま冷蔵庫の意匠としたに過ぎないとは言えず、容易に創作できたものとすることはできない。 5.むすび 以上のとおりであり、本願意匠は、原審の拒絶の理由によって、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。 したがって、本願について、意匠法第3条第2項の規定に該当するものとして、拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願について拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2004-08-03 |
出願番号 | 意願2001-18609(D2001-18609) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(C6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 樋田 敏恵 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 山崎 裕造 |
登録日 | 2004-09-03 |
登録番号 | 意匠登録第1220476号(D1220476) |
代理人 | 作田 康夫 |