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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) C7
管理番号 1102947 
判定請求番号 判定2004-60012
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2004-10-29 
種別 判定 
判定請求日 2004-02-16 
確定日 2004-08-31 
意匠に係る物品 墓前用花立て 
事件の表示 上記当事者間の登録第917981号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面写真並びにその説明書に示す意匠は、登録第917981号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、イ号図面写真「郭輪」並びにその説明に示す意匠は、意匠登録第917981号意匠(以下「本件登録意匠」という)及びこれに類似する意匠の範囲に属しないとの判定を求める、と申し立て、その理由を判定請求書の記載のとおり主張し、添付書類として、本件登録意匠の公報の写し、同公報に各部名称を入れた図面の写し、「菊水」及び「郭輪」と称する両花立ての写真に説明を付したもの、「『菊水』の寸法図」と表示した図面、イ号意匠の製作図面と認められる5図面、「菊水と郭輪の対比表」と表示された表、更に、証拠方法として、「意匠登録第917981号『菊水』」と表示された写真をあらわした書証を提出した。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、イ号写真及び図面に示す意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と答弁し、答弁書の記載のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第10号証(枝番を含む)を提出した。その要旨は以下のとおりである。
イ号意匠の構成「(ア)’上部は開口された蓋部とその下部に設けられた水溜容器部から成る」点、及び「(エ)’蓋部の皿状部の外周までの直径は、水溜容器部の直径より大きく、皿状部周縁が水溜容器部より外側に突出して形成される」点は、本件登録意匠の構成と共通する。
イ号意匠の構成「(イ)’その蓋部は、上方がラッパ状の小径の花立て筒部とその下端に連接され下方向にカールした円弧状周縁部を持つ皿状部とから成り、皿状部の平面部には、円周に沿って3個の穴が設けられている」点に関し、本件登録意匠は、花立て筒部に連接する皿状部の形状が逆皿状であり、イ号意匠が皿状である点及び皿状部の平面部に円周に沿って3個の穴が設けられている点を除き共通している。
しかるところ、皿状部のこのような相違は、同部分の形状が双方とも特異なものでないこと及び同部分が全体に占める大きさの割合からして、需要者に対して特に異なる印象を与えるものではない。また、イ号意匠における平面部の3個の穴は、意匠としては単なる穴にすぎず、これによって外観上異なる印象を与えるものではない。
イ号意匠の構成「(ウ)’その水溜容器部は、蓋部の花立て筒部の下端部分の約2.1倍の直径を持つ有底の円筒状で、その上部が上記蓋部の皿状部と接する」点に関し、本件登録意匠の要部である本件登録意匠の構成と対比して、形状はほほ同様であり、水溜容器部と花立て筒部の直径の比率は、イ号意匠では約2.1倍、本件登録意匠では約1.8倍となっていて、類似している。
イ号意匠の構成「(オ)’水溜容器部の高さは、蓋部の高さの約5倍である」のに対して、本件登録意匠では約3.4倍であるが、その差はさほど大きいものではない。
イ号意匠と本件登録意匠は、物品を共通にするものであり、同一である。
以上を総合すると、イ号意匠は、本件登録意匠と要部において類似し、そのほかの構成においても共通点又は類似点が多く、多少の相違点はあるものの重大なものではなく、全体として観察しても、看者に本件登録意匠と混同を生じさせる共通の美観を備えているものである。
よって、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものである。
請求人は、イ号意匠に係る物品の一番の特徴は花筒部と水溜容器部が分離するところにあると主張するが、この主張は意匠と発明とを混同しているものである。本件登録意匠は、花立て筒部と水溜容器部が一体になった外形を対象とするものであって、両部分が分離するかどうかをその構成に含むものではないから、両部分が分離するかどうかは、意匠の同一性又は類似性を検討するうえで意味がない。イ号物品も、これらの両部分に分離して使用されるものではなく、両部分を組み合わせて一体として使用されるものであり、また、これを一体とした状態も示して販売の広告が行われているため、需要者は一体となった状態でのイ号意匠に対して注意を向けることになるから、一体となった状態において意匠の類似性が認められる以上、分離の可否等の構造の違いによって、その類似性が否定されることはない。
請求人は、更に、水溜容器部の中に収納される花筒の底面に穴があること、同じ花筒の側面に合計6ヵ所の穴があることを主張するが、この花筒は水溜容器部の内部に収納されるものであり、外観からは隠れた部分であって、意匠としては重視されない部分であり、本件登録意匠との額否に影響を及ほすものではない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、登録原簿によれば平成2年10月8日に意匠登録出願をし、平成6年11月9日に意匠権の設定の登録がなされた、意匠登録第917981号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品が「墓前用花立て」であり、形態については、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであり(別紙1参照)、その要旨は以下のとおりである。
すなわち、直径に対する高さをほぼ1.5倍としたやや縦長の中空円柱状容器体部の上面中央に、上側をラッパ状に拡径した円筒状花立て部を立設したものであり、花立て部につき、下端の直径を容器体部の直径の1/2強とし、高さを容器体部の直径のほぼ1/3としたものであって、容器体部周側面上端は周縁部を薄くした鍔状部を設けており、その外周直径は容器体周側面の直径に対して3割程大きくしたもので、容器体部上面につき、周縁部は鍔状部のほぼ1/2幅を平坦とし、その内側を1/4円弧状に盛り上げ花立て部下端までを扁平状に膨出させた態様としたものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、写真により示された「郭輪」と表示されたものであり、意匠に係る物品については、その書類の記載によれば「花立て」であって、形態については、同写真に現されたとおりのものであり(別紙2参照)、その要旨は以下のとおりである。
すなわち、直径に対する高さをほぼ2倍としたやや縦長の有底円筒状容器体部と、細長円筒状であって上部寄りに容器体に被せる円盤状蓋部を一体的に設けた花立て部からなるもので、容器体部につき、周側面上端に上面形状を半円弧状面とした小凸縁を外側に向け突出したもので、花立て部円筒状部につき、太さを容器体の直径の1/2弱とした細長のもので、蓋部から上の高さを容器体部の直径のほぼ1/3とし、上端付近をラッパ状に拡径し、下側は容器体底部近くまで達する長さを有するもので、円盤状蓋部につき、直径を容器体の直径よりも僅かに大きく(1割5分程度)したもので、上面の周縁部分を半円弧面状に盛り上げその内側を凹ませた態様とし、更に花立て部周囲付近を傾斜段差状に盛り上げ、幅広状凹部を形成したもので、前記半円弧面状周縁部を容器体部上端の凸縁に被せる態様としたことにより、組立状態において容器体に対して僅か外側に突出した鍔状にあらわれる、やや肉厚感を呈するものである。
3.両意匠の対比検討
両意匠を対比すると、意匠に係る物品については、共に花を生けるための花立てに関するものであるから、意匠に係る物品は共通する。また、形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
すなわち、両意匠は、共通点として、
(1)やや縦長の中空円柱状容器体部の上面中央に、上側をラッパ状に拡径した円筒状花立て部を立設した点、
(2)容器体部周側面上端に鍔状に張り出した部分を有する点、
(3)花立て部につき、容器体部上面との結合部分の直径を容器体部の直径のほぼ1/2、高さを容器体部の直径のほぼ1/3とした点、がある。
次に差異点として、
(イ)全体の構成につき、本件登録意匠は全体が一体化された構成としているのに対して、イ号意匠は花立て部と一体となった蓋部が容器体部に対して分離開閉可能な構成であり、開蓋時において蓋の下側の細長円筒状部分が視認可能である点、
(ロ)容器体部上面、又は蓋部上面の構成態様につき、本件登録意匠は周縁付近を平坦とし、その内側を1/4円弧状に盛り上げ花立て部下端までを扁平状に膨出させた態様としているのに対して、イ号意匠は周縁部分を半円弧面状に盛り上げ、その内側を凹ませた態様とし、更に花立て部周囲付近を傾斜段差状に盛り上げ、幅広状凹部を形成した点、
(ハ)鍔状部分につき、本件登録意匠のものは、その直径を容器体部周側面の直径に対して3割程大きくし、周縁付近を薄くしているのに対して、イ号意匠のものは、その直径を容器体部周側面の直径に対して僅かに大きく(1割5分程)した蓋の周縁部分であって、その周縁端部は半円弧面状に盛り上げ、側面視やや厚みのある感を呈している点、
(ニ)容器体部の直径に対する高さにつき、本件登録意匠はほぼ1.5倍としているのに対して、イ号意匠はほぼ2倍としている点、に差異がある。
そこで、意匠全体として、これらの共通点及び差異点の類否判断に及ぼす影響について比較検討する。
まず、(1)の点については、中空円柱状容器体は周知形状に属するもので、ラッパ状に拡径した花立て部形状についてもこの分野においてありふれた形状(乙第5号証参照)であり、下部側の中空円柱状容器体、すなわち水溜部の径をその上部の花立て部下端の径に対して2倍程度大きくしたものが、仮に「墓前用花立て」と限定した分野において従前にみられなかったものであったとしても、両意匠共花を生けるために使用するものであるから花瓶等の容器と共通した用途をもつものであり、花瓶一般において、下部を太径の中空円柱状とし、上部を細径の円筒状としたものは具体的事例を示すまでもなく従前からみられる態様である。したがって、この種意匠において中空円柱状容器体、すなわち水溜部の容量を大きくするため、その長さや径を大きくしたことに格別な創作があったとすることはできず、また、本件登録意匠におけるこの構成に関し、格別な形態的工夫ないし美的工夫がなされた部分とすることもできないから、その点が共通すれば全て類似するとすることもできず、これ以外の具体的構成態様(構成比率も含む)における共通点、差異点を検討せずに、この共通点のみを取り上げて、類否判断に及ぼす影響を大きいものとすることはできない。
次に(2)の共通点については、後述するように(ハ)及び(ニ)の差異点により共通感がかなり減殺されているものであるから類否判断に及ぼす影響は僅かとせざるを得ず、(3)の共通点における花立て部(イ号意匠においては花立ての上部)そのものの構成比については、前述の如く花立て部の構成比を含む形状それ自体がありふれたものであり、容器体部と花立て部の直径の比に関しては後述する(ニ)の差異点と同様に、鍔状部よりも下が墓石に隠れてしまうものであるから(請求人が提出した乙第7号証には「水槽が石の中にすっぽりおさまり」と記載されている)、美的配慮というよりは必要とする容量に応じて適宜選択されるものと認められるから、類否判断に及ぼす影響を大きいものとすることはできない。したがって、これら共通点に係る構成態様については、何れも類否判断に及ぼす影響を大きいものとすることができない。
次に差異点に係る構成態様の、類否判断に及ぼす影響について検討する。
まず、(イ)の点における開蓋できるか否かに関しては、容器体における上面部の結合構造に関するものであるが、開蓋して内部を清掃できるか否かにかかわるもので、容器体としては基本的構成態様に関する一般需要者にとって着目される差異と認められ、更に、イ号意匠における蓋体下側の細長円筒状部分については、組立時における内部形状であるとしても、新たに花を立てる度毎なされる清掃時において視覚的に顕著なものとして視認されるものである。したがって、(イ)の差異点は、類否判断に一定程度大きな影響を及ぼすものであるが、組立時における外観上の共通点、差異点を検討せずに、これのみで類否判断を左右し、決定付ける程のものであるとすることはできない。なお、両意匠のこの差異点を従来意匠との関連において比較すると、本件登録意匠は花立て部上端までが容器体そのものを構成するものであるから、従来意匠、例えば乙第5号証あるいは乙第6号証にあるような従前の花立ての意匠に対し、鍔部から下方の水溜部を容量の増大のため鍔状部も含め拡径し花瓶様にしたもの、若しくは水溜部を円柱形とした花瓶に鍔状部を設けたものに相当するのに対して、イ号意匠については、従前の花立てとこれに水を供給するため用意した別体の水槽を組合せ、更に鍔状部を水槽の蓋を兼用できるように拡径したものに相当するものと認められる。
次に(ロ)の差異点についてであるが、本件登録意匠は周縁部を平坦とし、その内側から花立て部下端までの上面内側全体を扁平状に膨出した態様としているのに対して、イ号意匠は逆に周縁部を半円弧状面に膨らませその内側を幅広状に凹ませた態様としているもので、その差異は視覚的に顕著といわざるを得ないものである。そして、使用状態において鍔状部よりも下が墓石に隠れてしまうものであるから、この部分は通常の使用状態において最も着目される部分であって、しかも、両意匠共最も形態的若しくは美的工夫をしている部分と認められるから、この差異点については意匠全体からみれば部分に関するといえども、類否判断に大きな影響を及ぼすものである。なお、被請求人はこの部分の形状に関し「双方とも特異でない」と主張しているが、両意匠の形態何れについてもこの種意匠において従前から見られる態様であるとする根拠は見いだすことができない。
次に、(ハ)及び(ニ)の点についてであるが、(ハ)の点については意匠全体からみれば細部であり、(ニ)の点については、容量との兼ね合いにより必要に応じて適宜選択されるものであり、また、最終使用状態においては墓石に埋め込まれてしまう部分であるから、格別顕著な差異がある場合は別として、高く評価する対象にはなり得ず、それぞれを個別に取り上げた場合には類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ないものである。ところが、容器体部周側面に対する鍔状部の視覚的突出感は、容器体の直径に対してだけでなく高さに対する比によっても大きく影響されるものであるから、意匠全体としてみた場合、(ハ)及び(ニ)の差異点に係る構成態様は相まった視覚効果として、本件登録意匠は周縁部分を薄くした鍔状部がやや顕著に張り出した感を呈するのに対して、イ号意匠の鍔状部はさほど薄くなく僅かに突出したにすぎない感を呈する差異感を生じさせている。よって、これら(ハ)及び(ニ)の差異点は(2)の共通点が生じさせる共通感を減殺させ、かつ、失わせるまでに至っている、すなわち相殺されるといっても過言でない効果を有する一方、(ロ)の差異点に係る構成態様と相まって、鍔状部を含む容器体上面全体として大きな差異感を生じさせるものであり、したがって、これら(ロ)ないし(ニ)の差異点にかかる構成態様は、相まって類否判断を左右する極めて大きな影響及ぼすとすべきものである。
このように、本件登録意匠及びイ号意匠の外観形態において、類否判断に極めて大きな影響を及ぼすとした(ロ)ないし(ニ)の差異点に係る構成態様は、何れも類否判断に及ぼす影響が大きいとすることができないとした(1)ないし(3)の共通点に係る構成態様が相まって生じさせる共通感を凌駕し、意匠全体として別異の感を呈する視覚的まとまりを生じさせるのに十分といわざるを得ず、更に、容器体としてみた場合基本的構成態様に関するものであって、一般需要者にとって着目されると認められる(イ)の点も相違するから、両意匠は類似しないとせざるを得ないものである。
なお、付言するに、本件登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添付した図面の記載により定められるべきものであり(意匠法第24条)、判定請求書において「菊水」と称して示されたもの関しては、何れも本件判定の対象外のものである。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2004-08-19 
出願番号 意願平2-33846 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (C7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 藤 正明生亀 照恵 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
杉山 太一
登録日 1994-11-09 
登録番号 意匠登録第917981号(D917981) 
代理人 弁護士法人衛藤法律特許事務所 
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