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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) D2
管理番号 1108096 
判定請求番号 判定2004-60060
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2005-01-28 
種別 判定 
判定請求日 2004-07-21 
確定日 2004-11-18 
意匠に係る物品 回転飲食台 
事件の表示 上記当事者間の登録第1162766号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真版及び図面並びにその説明書に示す「回転飲食台」の意匠は、登録第1162766号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、イ号写真版、イ号図面1及び2並びにその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は登録第1162766号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証の1ないし3、甲第2号証の1ないし3及びイ号説明書並びに先行周辺意匠に係る資料を提出した。
本件登録意匠とイ号意匠と対比すると、意匠に係る物品が「回転飲食台」である点で一致しており、形態については以下の共通点と差異点がある。
(共通点)
基本的な構成態様において、上段にすしレーンを配した基台外周縁にカウンターを配し、基台内側に2段ケースを複数配し、各2段ケース間に、2段ケースと同一幅の付台を配し、その付台上部の上方に2段ケースの上部がかなり突出して現れ、具体的な構成態様において、付台上部と2段ケースの上部の前面(客側面)については、同一角度で内側に傾斜しており、2段ケースについては、上部は台形状で、上部前面及び上面に透明板を配し、後面(作業者側面)は上下2段に分割され、1段4枚の透明板引戸が配されているという点で共通する。
(差異点)
一方、本件登録意匠はすしレーンの縦横比は1:2であるのに対して、イ号意匠の縦横比は1:6である点、本件登録意匠は2段ケースを基台内側の各辺上に1個ずつ4個配しているのに対して、イ号意匠は2段ケースを基台内側の上辺上に1個、下辺上に3個配している点、また本件登録意匠は各2段ケース間に付台を掛け渡して配しているのに対して、イ号意匠は適所を間引いて掛け渡して配している点、本件登録意匠は基台外周にカウンターを配しているのに対して、イ号意匠にはカウンター及びテーブルが配してある点、本件登録意匠はすしレーンの下部の基台内に湯飲みレーンを配しているのに対して、イ号意匠にはない点に差異がある。
(比較検討)
両意匠の共通点及び差異点を比較検討すると、本件登録意匠の要部は、付台上部の上方に2段ケースの上部がかなり突出して現れ、付台上部と2段ケースの上部の前面は同一角度で内側に傾斜して現れること(要部1)、2段ケースと同一幅の付台が各2段ケース間に掛け渡して(イ号意匠については適所を間引いている点を除く。)現れること(要部2)、2段ケースの上部前面、上面に透明板を配していること(要部3)であるところ、イ号意匠はこれら全てに共通する。要部1、要部2及び要部3、加えて2段ケース後面の構成態様において両意匠は共通する。
一方、すしレーンの縦横比が類否判断に与える影響は微弱であり、本件登録意匠は2段ケースを基台内側の各辺上に1個ずつ配しているのに対して、イ号意匠は2段ケースを基台内側の上辺上に1個、下辺上に3個配している点については、陳列ケースの設置位置、個数を変更することは常套的な手法であり、イ号意匠は付台を適所を間引いて掛け渡して配している点については、如上の要部の中における差異にすぎず、イ号意匠にはカウンター及びテーブルが配してある点については、カウンターとテーブルを使い分けあるいは併用することは常套的な手法であり、また湯飲みレーンについても常套的な手法であり、以上のとおりであって、イ号意匠は本件登録意匠の要部において共通し、両意匠の差異点が類否判断に与える影響は何れも微弱なものであるから、両意匠は類似するものである。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、乙第1号証ないし10号証を提出した。 両意匠は、意匠に係る物品を「回転飲食台」とした点で同一であり、その形態について、両意匠の共通点と差異点を比較検討すると、共通点のうち、平面視略ロ字状に搬送路を設け、その下方に筐体を設けた点については周知であり、付台上部と2段ケースの上部の前面は同一角度で内側に傾斜しているという請求人の主張は、意匠全体からすれば小さな部位に関するものであって当を得ないものであり、陳列ケースについて、上段のみ上方へ突出するように配している点は既に知られた手法であり、側面視略台形状の横長直方体とし、内部を上下2段に分割した点は、本件登録意匠の陳列ケースは出願前に既に公知であり新規性がなく(甲第8号証)、これに対し、イ号意匠は一方の長辺(下辺)に3個、他方の長辺(上辺)に1個の陳列ケースを付台の隣に設けている点、陳列ケースの上下2段の構成態様、イ号意匠の搬送路内周の付台をそれぞれ離して設けている点、イ号意匠は搬送路外周にカウンターとテーブルを配している点、イ号意匠の搬送路はクレセントチェーンが1段である点の各差異は類否判断に影響を与え、両意匠を意匠全体として総合的に判断すると、両意匠は看者に対し別異の印象を与える意匠であると認められる。以上のとおりであるから、イ号意匠は本件登録意匠に類似しない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成13年12月17日に意匠登録出願をし、平成14年11月15日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1162766号意匠であり、その意匠は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「回転飲食台」とし、形態を願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、基本的な構成態様は、上段にクレセントチェーン(すしレーン)を、下段に無端チェーン(湯飲みレーン)を配した基台と、基台外側に配したカウンター幅と、基台内側に配した4個の2段式の陳列ケース(2段ケース)と、各2段ケース間に掛け渡して配した付台とから成るものであり、平面視において、4隅が丸く、縦横比が略1:2の矩形に現れる外形で所定幅のあるすしレーンの外側に、4隅を面取りした外形が矩形のカウンター幅を配し、すしレーンの内周縁に添って長方形状の2段ケースが各辺にそれぞれ1個ずつ計4個と、各2段ケース間に掛け渡して配した2段ケースと同一幅の付台を配したものであり、正面及び側面視において、すしレーンの下方外側にカウンター幅が現れ、すしレーンの内側上方に付台上部が段差をもって現れ、付台上部の上方に2段ケースの上部が突出して現れるものであり、さらに具体的な構成態様は、E-E部拡大断面図において明らかなように、付台上部と2段ケースの上部の前面(客側面)については、同一角度で内側に傾斜しており、2段ケースについては、上部は台形状で、参考斜視図にみられるように後面(作業者側面)は上下2段に分割され、1段4枚の板から成る引戸が配されているものである。なお、2段ケース上部前面、上面が透明である点、1段4枚の板から成る引戸が透明である点の請求人の主張については、願書及び願書に添付した図面の記載からは認められない。
2.イ号意匠
イ号意匠は、意匠に係る物品が「回転飲食台」であり、その形態は判定請求書に添付の甲第2号証の1ないし3(写真版、図面1及び2)及びその説明書により示されたとおりとするものである(別紙第2参照)。
すなわち、基本的な構成態様は、上段にクレセントチェーン(すしレーン)を配した基台と、基台外側に配したカウンター幅及びテーブル席と、基台内側に配した4個の2段ケースと、各2段ケース間に適所を間引いて掛け渡して配した付台とから成るものであり、甲第2号証の2の平面視図面において、4隅が丸く、縦横比が略1:6の矩形に現れる外形で所定幅のあるすしレーンの外側に、外形が略L字状のカウンター幅及びがテーブル席を配し、すしレーンの内周縁に添って長方形の2段ケースを4個(上長辺に1個、下長辺に3個)と、各2段ケース間に適所を間引いて掛け渡して配した2段ケースと同一幅の付台を配したものであり、甲第2号証の1(イ号意匠の写真版)によれば、正面視及び側面視において、すしレーン下方外側にカウンター幅及びテーブル席が現れ、すしレーンの内側上方に付台上部が段差をもって現れ、付台上部の上方に2段ケースの上部が突出して現れるものであり、さらに具体的な構成態様は、甲第2号証の1(イ号意匠の写真版)によれば、付台上部と2段ケースの上部の前面(客側面)については、同一角度で内側に傾斜しており、2段ケースについては、上部は台形状で、前面及び上面に透明板を配し、後面(作業者側面)は上下2段に分割され、1段4枚の透明板から成る引戸が配されていることが認められるものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討
本件登録意匠とイ号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点がある。
(共通点)
両意匠には、基本的な構成態様において、(1)基台上段に平面視矩形状のすしレーンを配した点、(2)すしレーンの内周縁に添って、4個の2段ケースと、各2段ケース間に2段ケースと同一幅の付台を配し、付台上部はすしレーンの内側上方に段差をもって現れ、付台上部の上方に2段ケースの上部が突出して現れる点、(3)すしレーンの外側にカウンター幅を配した点、具体的な構成態様において、正面視及び側面視の上で、(4)付台上部と2段ケースの上部の前面は同一角度で内側に傾斜している点、(5)2段ケースは上部が台形状で、後面が上下2段に分割され、1段4枚の板引戸が配されているという点に共通点が認められる。
(差異点)
一方、両意匠には、基本的構成態様において、(ア)本件登録意匠のすしレーンの縦横比は略1:2の矩形であるのに対して、イ号意匠のその縦横比は略1:6の矩形である点、(イ)本件登録意匠は2段ケースをすしレーンの内周縁の各辺上に1個ずつ配し、付台は各2段ケース間に掛け渡して配しているのに対して、イ号意匠は2段ケースをすしレーンの内周縁の上長辺に1個、下長辺に3個配し、付台は適所を間引いて掛け渡して配している点、(ウ)本件登録意匠はすしレーンの外側に矩形状のカウンター幅のみを配しているのに対して、イ号意匠には略L字状カウンター幅及びテーブル席が配してある点、(エ)本件登録意匠はすしレーンの下部の基台内に湯飲みレーンを配しているのに対して、イ号意匠にはない点、(オ)2段ケースの細部の構成態様にそれぞれ差異が認められる。
(比較検討)
請求人が提出した周知意匠1及び2(なお、先行意匠1及び2については、本件登録意匠の出願日の後の意匠公報に掲載されたものであって、先行意匠として参考にしない。)、並びに被請求人が提出した乙第1号証ないし7号証及び9号証によれば、基台上部に矩形状のすしレーンを配したもの、すしレーン下部に湯飲みレーンを配したもの、すしレーンの外側の矩形状のカウンター幅やテーブル席を配したもの、すしレーン内側に付台、陳列ケースを配したものは本件登録意匠の出願前に既にみられることが認められので、これらを参考とし、上記の共通点と差異点について総合的に検討する。
まず、すしレーンについてみるに、すし皿等を載せて回転するすしレーンの基本的構成態様は、店内における「回転飲食台」等のレイアウトを決め、客に回転飲食店の印象を与え、また作業者と客との動線(接触面)を決める「回転飲食台」の基本骨格に係るものであるところ、両意匠に共通する(1)基台上段に平面視矩形状のすしレーンを配したという点は、請求人及び被請求人の提出する資料からも明らかなように本件登録意匠の出願前に既にみられるものであり、それだけでは格別特徴的なものにはなり得ず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいが、これに対応する差異点(ア)の本件登録意匠のすしレーンの縦横比が略1:2の矩形であるのに対して、イ号意匠のその縦横比が略1:6の矩形である点は、店内のレイアウトを決め、客に回転飲食店の印象を与え、作業者と客との動線を決める「回転飲食台」の意匠の基本骨格に係るものであるから、縦横比が略1:2の矩形にさ程の特徴はないものの、その差異は両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さくないといわざるを得ない。
次に、すしレーンの内周縁に添って配設された2段ケースと付台についてみるに、両意匠に共通する(2)すしレーンの内周縁に添って4個の2段ケースと、各2段ケース間に2段ケースと同一幅の付台を配し、付台上部はすしレーンの内側上方に段差をもって現れ、付台上部の上方に2段ケースの上部が突出して現れる点、及び(4)の具体的構成態様における付台上部と2段ケースの上部の前面は同一角度で内側に傾斜している点は、従来態様に照らし特徴といえるものではある。しかしながら、これに対応する差異点(イ)の4個の2段ケースの配置、本件登録意匠の付台は各2段ケース間に掛け渡して配しているのに対して、イ号意匠の付台は適所を間引いて掛け渡して配している点は、作業者だけでなく客からもよく看取されるすしレーンの僅か上に位置する部位に係るものであって、付台を各2段ケース間に掛け渡して配しているか、適所を間引いて掛け渡し配しているかどうかで印象は大きく異なり、従来態様に照らし特徴といえるとした共通点の中に埋没してしまう程のものとはいえず、そしてすしレーンの縦横比率の差異点(ア)と相俟ったこの差異は、両意匠の類否判断を左右する程に大きな影響を及ぼすものであるといえる。これに比べ、(1)及び(2)の共通点は両意匠の類否判断に及ぼす影響はさ程大きいものとはいえない。
さらにカウンター幅及びテーブル席についてみるに、両意匠に共通する(3)のすしレーンの外側にカウンター幅を配している点、これに対応する差異点(ウ)のイ号意匠には略L字状カウンター幅及びテーブル席が配してある点は、何れも本件登録意匠の出願前に既にみられる範囲内のものであり、格別に特徴あるものではなく、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。また本件登録意匠は湯飲みレーンを配しているが、この点も既にみられる範囲内のものであるから、湯飲みレーンの有無の差異点(エ)もまた両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。そして2段ケースについては、共通点(5)の2段ケースは上部が台形状で、後面が上下2段に分割され、1段4枚の板引戸が配されているという点、これに対応する2段ケースの細部の構成態様の差異点(オ)の何れも、「回転飲食台」の意匠全体からみれば部分に属するものであるから、この点が両意匠全体の類否判断に及ぼす影響は小さい。
請求人は、本件登録意匠の要部は、付台上部の上方に2段ケースの上部がかなり突出して現れ、付台上部と2段ケースの上部の前面は同一角度で内側に傾斜していること(要部1)、2段ケースと同一幅の付台が各2段ケース間に掛け渡して配されていること(要部2)、2段ケース上部前面、上面に透明板を配していること(要部3)であると主張するが、以上のとおりであって、その主張は採用できない。
したがって、両意匠の形態についての共通点は、両意匠の類否判断に及ぼす影響はさ程大きいものとはいえないのに対して、差異点については、とりわけ、(ア)及び(イ)の点は、両意匠の類否判断を左右する程に大きな影響を及ぼすものといえ、他にも(ウ)、(エ)及び(オ)の点の差異が認められるところであって、差異点が共通点を凌駕するものであることは明らかであり、意匠全体として、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものとはいえない。
4.結び
以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2004-11-08 
出願番号 意願2001-36987(D2001-36987) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (D2)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 森 則雄
特許庁審判官 市村 節子
伊藤 敦
登録日 2002-11-15 
登録番号 意匠登録第1162766号(D1162766) 
代理人 日高 一樹 
代理人 渡邉 知子 

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