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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない D4
審判 無効  2項容易に創作 無効としない D4
管理番号 1109721 
審判番号 無効2003-35359
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-08-29 
確定日 2004-12-16 
意匠に係る物品 かいろ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1110945号「かいろ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、意匠登録第1110945号の意匠(以下、本件登録意匠という)は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由として審判請求書及び弁駁書の記載のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。その要点は以下のとおりである。
1.第1に、本件登録意匠はその出願前公知の意匠登録第971829号の類似2の意匠(甲第1号証の意匠。以下、引用意匠(1)という。)と類似する意匠といえるものであるから、意匠法3条1項3号に該当する新規性を欠如した意匠である。
すなわち、本件登録意匠と引用意匠(1)とに共通する形態は、(A)全体が略平板状に成る袋体を略横長楕円形状にし、その上下両辺部の縦中央部分を内側方向に凹弯曲状に形成し、このように成る上下両辺部を連継する左右両側辺部をほぼ円弧状の凸曲形状に形成し、前記上下両辺部間の縦中央部分には薄肉状の凹み部を形成し、この凹み部を形成した縦中央部分をはさんだ左右両側部には上側面をやや盛り上げて厚みを形成し、全体形状は左右対称に成るほぼひょうたん型といえるものである点、(B)袋体全体の裏面部には剥離シートを設けている点である。
一方、相違する形態として、(ア)上下両辺部を連継する左右両側辺部の凸曲形状及び(イ)上下両辺部間の縦中央部分に形成される凹み部の薄肉部の厚さに若干の違いがある。
そして、共通点及び相違点を総合して考察すると、本件登録意匠に見られる相違点は、両意匠が共有する共通点を超克するほどに顕著な特徴といえる構成態様ではないから、本件登録意匠の形態は、引用意匠(1)の形態が有する前記(A)(B)の創作上の特徴を具備していることになり、したがって、類似する意匠として意匠法3条1項3号に該当する新規性のない意匠といえるから、意匠登録を受けることができないものである。
2.第2に、本件登録意匠は、その出願前公知の引用意匠(1)及び意匠登録第971829号の意匠(甲第2号証の意匠。以下、引用意匠(2)という。)に基づいて、容易に意匠の創作をすることができたものといえるから、意匠法3条2項に該当する創作力を欠如した意匠である。
すなわち、本件登録意匠と引用意匠(1)との縦中央部分に形成される凹み部の相違点について、引用意匠(2)の図面中、“d-b部分の拡大断面図”には、本件登録意匠の当該部分と同一の構成の空間状態の開示が明らかに認められるのである。してみれば、本件登録意匠は、引用意匠(1)及び引用意匠(2)に基づいて当業者が容易に意匠の創作することができたものといえる意匠であるから、意匠法3条2項に該当する創作力のない意匠として意匠登録を受けることができないものである。
3.以上のように、第1に、本件登録意匠は甲第1号証に係る引用意匠(1)と類似する意匠であるか、第2に、本件登録意匠は甲第1号証に係る引用意匠(1)と甲第2号証に係る引用意匠(2)とに基づいて、当業者が容易に意匠の創作することができた意匠であるから、いずれの規定に該当する意匠であるにせよ、本件意匠は意匠法48条1項1号に該当するものであるとして、その意匠登録は無効とされるべきである。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として答弁書に記載のとおり反論をし、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出したものである。その要点は、以下のとおりである。
1.本件登録意匠は上下非対称であることが明らかであるのに対して、引用意匠(1)は、上下対称であり、外輪郭においてそれ自体違いが顕著であって、看者をしてもっとも容易に認識できる部分である。また、本件登録意匠においては肉薄巾部が周縁部のみに設けられているのに対して、引用意匠(1)では中央部分を縦断するように溝が設けられ、周縁の肉薄巾部と同一厚さで接続して全体として「8」字状になっている点が顕著に目を惹く。
これらを総合すれば、本件登録意匠は全体として引用意匠(1)と異なる美感を基礎にした別異の意匠であることは明らかと思料する。
2.引用意匠にはいずれも、断面がほぼ逆台形の直線状の溝が縦断しているのであって、これらには、本件登録意匠のような縦中央部を上下幅狭部とした点の創作に対して寄与するようなヒントは何もない。引用意匠(1)と引用意匠(2)とを結合してみたところで、本件登録意匠の構成が現出するわけではない。
本件登録意匠は何ら引用意匠(1)と引用意匠(2)に基づいて当業者が容易に意匠の創作をすることができたものではないことから、意匠法第3条第2項の規定にも該当しない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年6月27日に意匠登録出願し、平成13年4月6日に設定の登録がされたものであって、願書の記載並びに願書に添付した図面の記載及び図面代用写真に現されたものによれば、意匠に係る物品を「かいろ」とし、その形態を願書に添付した図面の記載及び図面代用写真に現されたとおりとしたものである(別紙第一参照)。
すなわち、その形態は、略平板状の外周に沿う一定幅の部分を薄肉状とする袋体で、全体の外周形状を、略横長楕円形の上辺中央を内側に向けて緩やかな凹湾曲状としながら、両上辺へとS字状に逆方向の凸湾曲状とし、下辺中央も同凹湾曲状を内側に向け上辺よりやや深く、かつ、幅広の湾曲状にして、両下辺へとS字状に逆方向の凸湾曲状とし、さらに、左右両側辺を上方の円弧を下方の円弧よりやや大きくし、上方のやや広い範囲で浅い弧状とする凸湾曲線で繋いだ構成態様とした、縦中央が幅狭で、全体が左右対称で、上下に非対称としたものである。また、表面部形状は、外周に沿う薄肉状部の内側を盛り上げて厚みを持たせたもので、なお、詳細に見ると、縦中央面部を左右両面より緩やかに凹ませていることが認められるものである。裏面部形状は、全面に平面の剥離シートを設け、なお、外周に沿う薄肉状部の内側が極僅かに盛り上がっているものである。
2.引用意匠(1)
引用意匠(1)は、平成10年5月14日特許庁発行の意匠公報に掲載された意匠登録第971829号の類似2の意匠であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「温熱外用材」とし、その形態を同公報に記載のとおりとしたものである(別紙第二参照)。
すなわち、その形態は、略平板状の外周に沿う一定幅の部分及び該幅よりやや幅広の縦中央面部を薄肉状とする左右2室に区画した袋体で、全体の外周形状を、略横長楕円形の上下辺中央を内側に向けた緩やかな同凹湾曲状としながら、上下辺へとS字状に逆方向の凸湾曲状とし、さらに、左右両側辺を半円弧状とした凸湾曲線で繋いだ構成態様とした、縦中央が幅狭で、全体が上下及び左右を対称としたものである。また、表面部形状は、外周に沿う薄肉状部と縦中央面部の薄肉状部とで囲まれる内側を盛り上げて厚みを持たせたものであり、さらに、縦中央面部を薄肉状部を底部とする浅い溝部を形成したものである。裏面部形状は、全面に剥離シートを設け平面としたものである。
3.引用意匠(2)
引用意匠(2)は、平成9年1月13日特許庁発行の意匠公報に掲載された意匠登録第971829号の意匠であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「温熱外用材」とし、その形態を同公報に記載のとおりとしたものである(別紙第三参照)。
すなわち、その形態は、略平板状の外周に沿う一定幅の部分及び同幅の縦中央面部を薄肉状とする袋体で、全体の外周形状を略横長楕円形の上辺中央を直線状とし、下辺中央を内側に向けた偏平逆V字状とする緩やかな凹湾状とし、さらに、左右両側辺を下方に向けて内方向に徐々に幅狭とする極浅い弧状として、上下両隅でやや角張って、上隅の円弧を大きく下隅の円弧を小さくした、凸湾曲線で繋いだ構成態様とした、縦中央が幅狭で、全体が左右対称で、上下に非対称としたものである。また、表面部形状は、外周に沿う薄肉状部と縦中央面部の薄肉状部とで囲まれる内側を盛り上げて厚みを持たせたものであり、さらに、縦中央面部を薄肉状部を底部とする浅い溝部を形成したものである。裏面部形状は、全面に剥離シートを設け平面としたものである。
4.本件登録意匠と引用意匠(1)との比較検討(意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠による無効の理由について)
請求人は、第1に本件登録意匠はその出願前公知の引用意匠(1)と類似する意匠といえるものであるから、意匠法3条1項3号に該当する新規性を欠如した意匠であると主張していることから、まず本件登録意匠と引用意匠(1)との類否を検討する。
そこで、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について以下に示す共通点及び差異点が認められる。
すなわち、共通点として、(a)略平板状の袋体の外周に沿って一定幅の部分を薄肉状としたものである点、(b)袋体の全体の外周形状を、略横長楕円形の上下辺中央を内側に向けた緩やかな凹湾曲状としながら、両上下辺へとそれぞれS字状に逆方向の凸湾曲状とし、さらに、左右両側辺を凸湾曲線で繋いだ構成態様とした、縦中央が幅狭で、全体が左右対称としたものである点、(c)表面部形状において、外周に沿う薄肉状部の内側を盛り上げて厚みを持たせたものである点、(d)裏面部形状において、全面に剥離シートを設けほぼ平面としたものである点がある。
一方、差異点として、(あ)外周形状につき、本件登録意匠は、上下辺中央の内側に向けた凹湾曲状の上下辺の深さ及び凹湾曲幅を異として、左右両側辺の凸湾曲線の上方と下方とで円弧の径を異なったものとし、上方のやや広い範囲で浅い弧状とした凸湾曲線で繋いだ態様とすることで、全体が左右対称で、上下非対称としているのに対して、引用意匠(1)は、上下辺中央の内側に向けた凹湾曲状の上下辺の深さ及び凹湾曲幅を同じくして、左右両側辺を半円弧状とした凸湾曲線で繋いだ態様として、全体が上下及び左右を対称としている点、(い)表面部縦中央面部の形状につき、本件登録意匠は、詳細に見ると、左右両面より緩やかに凹ませていることが認められるのに対して、引用意匠(1)は、外周に沿う薄肉状部幅よりやや幅広の薄肉状部を底部とする浅い溝部を形成したものである点、(う)裏面部形状につき、本件登録意匠は、外周に沿う薄肉状部の内側が極僅かに盛り上がっているのに対して、引用意匠(1)は全面が平面としたものである点がある。
そこで、これらの共通点及び差異点を総合して両意匠を全体として考察する。
まず、共通点について、(a)及び(c)の点については、出願前この種意匠の分野において、内容物を納めて外周に沿って一定幅部分を薄肉状とし、その薄肉状部の内側を盛り上げて厚みを持たせることは、極普通に見られる態様であり、いずれも類否判断にさしたる影響を及ぼすものではない。
(b)の点については、略平板状の全体の外周形状の概略としてみた場合、看者にとって注意を惹き付けるところの一つとも言えないこともないが、この種物品が身体に当てられる部位によっても種々の態様のものが存在し、身体の部位によって貼付する際にも上下左右の形状にも注意が注がれることになるから、その外形形状の具体的な構成態様も十分注意を惹き付けるところとなり、本件登録意匠の上下非対称の態様も特徴と成り得るものであり、また、この種の身体に当てて使用されるパット材、或いは保温、保冷等のための当て具の分野において、略平板状とした全体形状を略横長楕円形状とすること、上下辺の一方若しくは双方の中央を凹湾曲状とし、上下辺へとS字状に凸湾曲状にし、略平板状の縦中央を幅狭とすること、左右両側辺を凸湾曲線で繋いだ態様とすることは何れも従来より普通にみられる態様であること(例えば、公開特許公報特許出願公開番号特開平9-75388号図4の発熱体、意匠登録第832131号、意匠登録第832133号、公開特許公報特許出願公開番号特開平11-299817号図4の発熱シート等)を考慮すれば、外周形状の共通点のみをもって、類否判断を決定付けられる程のものではなく、類否判断に及ぼす影響はさほど大きいものとは言えない。
(d)の点については、この種の物品において、裏面部全面に剥離シートを設けほぼ平面とした態様は、出願前極普通にみられる態様であり、この点も類否判断にさしたる影響を及ぼすものではない。
してみると、これら共通点が相まった効果を考慮しても、共通点をもって直ちに両意匠の類否を決するまでのものとすることはできない。
これに対して差異点について、(あ)の点については、特に左右両側辺の凸湾曲線の態様において、本件登録意匠が上方の円弧を下方の円弧よりやや大きくし、上方のやや広い範囲で浅い弧状とする凸湾曲線の構成態様として、全体が上下非対称となるものであり、引用意匠(1)の左右両側辺が半円弧状の凸湾曲線の構成態様として、全体が上下対称となるものとでは、この種物品が身体に当てられる部位によっても種々の態様のものが存在し、また、身体の部位によって貼付する際にも上下左右の形状に注意が注がれるものであり、視覚的に本件登録意匠の上下非対称が十分感得できるものであることから、独自の特徴を生じさせ、類否判断に及ぼす影響は過小評価すべきものではなく、むしろ、その差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響には大きなものがある。
(い)の点については、請求人は、本件登録意匠と引用意匠(1)との比較において、「上下両辺部間の縦中央部分には薄肉状の凹み部を形成」(審判請求書7頁12ないし13行目)して共通した形態としているが、一方で、その凹み部について、弁駁書において請求人は「引用意匠(1)の形態は、全体の縦中央部分が左右両側の膨らみ部分とは非連続の構成となる凹溝を形成しているとはいえ、意匠全体の形態上の特徴は、袋体の内部構造とは別に、「膨らみ部-凹み部-膨らみ部」の凸凹凸の三者関係は、引用意匠(1)の形態においても共通性のあるものとして確認することができるのである。」(弁駁書4頁11ないし15行目)として、凹溝状態を含めて広義の概念で「凹み部」を捉えているものである。しかし、意匠が物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合として、物品の形態の具体的な態様の創作に係るものであって、その具体的な態様に基づいて比較すれば、表面部縦中央面部の具体的な態様、すなわち本件登録意匠の左右両面より緩やかに凹ませ、滑らかに窪ませた状態で、明瞭な凹み部が無いものに対して、引用意匠(1)の正面図に示されるように段差が明確に表現された溝部を形成したものとは、明らかに視覚的に顕著な差異をもたらし、看者に異なる印象を与えるものであって、単に「膨らみ部-凹み部-膨らみ部」の凸凹凸の三者関係という広義の概念で括れるものではなく、むしろ、引用意匠(1)は、請求人が言うように「全体の縦中央部分が凹み状に成ることは、使用対象である人の脚,腕,腰その他柔軟に屈曲性を有する身体の様々な部分に貼る」(弁駁書4頁15ないし17行目)ことを積極的に意図して、段差によって明確に区画し、特徴を十分に表現しようとしたものと考えられ、その差異の類否判断に及ぼす影響は大きいものと言わざるを得ない。
なお、請求人は、被請求人の本件登録意匠は「薄肉巾部の内側部は全体にわたって、滑らかなカーブを描いて厚みに変化が看取できるが、段差は全く存在しない」(答弁書4頁7ないし9行目)との主張に対し、「隣接する左右両側部の形状との間に凸凹の差異状態が明らかに存在する引用意匠(1)とは創作の共通性が認められるから、これをもって類似する意匠と認定されてよいのである。」(弁駁書4頁26行目及び5頁1ないし3行目)そして、「本件意匠とほぼ同程度の凹み部とその内部に流通用の空間部を有する引用意匠(2)は、引用意匠(1)と類似意匠の関係にあることを考慮すれば、本件登録意匠は全体として引用意匠(1)と類似する意匠と認められても止むを得ないものである。」(弁駁書5頁9ないし12行目)と主張しているが、本件登録意匠は、縦中央面部と隣接する左右両面の盛り上がりの厚みの差は平面図から見ても僅かであり、その差が縦中央が幅狭で発熱材を収容するに伴って生じる僅かな差とも言え、縦中央面部の滑らかに窪んでいる状態で明らかな差異状態とは言えず、また、引用意匠(1)と引用意匠(2)との類似関係について、空間部を有する引用意匠(2)が存在していたとしても、引用意匠(2)の縦中央面部の態様も段差が明確に表現されているもので、本件登録意匠の態様と明らかに異なり、参酌できるものではなく、引用意匠(2)をもって本件登録意匠が引用意匠(1)と類似するとの根拠にすることはできない。
(う)の点については、本件登録意匠の薄肉状部の内側の盛り上がりも極僅かで、裏面部の全面をほぼ平面にしていることから、両意匠に異なる印象を与える程のものではなく、類否判断にさしたる影響を及ぼすものではない。
そこで、共通点及び差異点を総合してみた場合、共通点(a)(c)及び(d)は、類否判断にほとんど影響を及ぼすものではなく、共通点(b)は類否判断を決定付ける程のものではなく、これら共通点が相まった効果を考慮しても、共通点をもって直ちに両意匠の類否を決定するまでに至らず、一方、差異点は、差異点(う)が類否判断にほとんど影響を及ぼすものではないとしても、差異点(あ)が、独自の特徴を生じさせ、類否判断に及ぼす影響には大きなものがあり、加えて、差異点(い)の視覚的に顕著な差異をもたらし、看者に異なる印象を与えて、類否判断に及ぼす影響は大きいものと言わざるを得ないものとの相まった効果は、両意匠に異なる美感を生じさせ、両意匠の共通点がもたらす共通感を越えて、本件登録意匠について、引用意匠(1)とは異なる独自の特徴をもった視覚的まとまりを形成していると認められる。
したがって、本件登録意匠は、引用意匠(1)とは意匠に係る物品が共通するも、形態において、差異点の相まった効果が、共通点がもたらす共通感を凌駕して、両意匠は類似するものとすることはできない。
5.本件登録意匠の創作容易性について(意匠法第3条第2項の規定による無効の理由について)
(1)請求人は、第2に本件登録意匠は、その出願前公知の引用意匠(1)及び引用意匠(2)に基づいて、容易に意匠の創作をすることができたものといえるから、意匠法3条2項に該当する創作力を欠如した意匠であると主張している。すなわち、本件登録意匠と引用意匠(1)との相違点のうち、本件登録意匠において縦中央面部の凹み部を形成する薄肉部分の厚さとの差異が若干しかなく、その空間部分は、引用意匠(1)において左右両側辺との間を遮断している点について、「引用意匠(2)の図面中、“d-b部分の拡大断面図”には、本件意匠の当該部分と同一構成の空間状態の開示が明らかに認められる」(審判請求書8頁16ないし18行目)から、「本件意匠は、引用意匠(1)及び引用意匠(2)に基づいて当業者が容易に意匠の創作をすることができたものといえる意匠であるから、意匠法3条2項に該当する創作力のない意匠として意匠登録を受けることができないものである。」(審判請求書8頁19ないし21行目)としている。
(2)そこで、本件登録意匠が引用意匠(1)及び引用意匠(2)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとしていることから、まず、本件登録意匠が引用意匠(1)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものか否かについて検討する。
引用意匠(1)は、外周形状を見れば、上下辺中央の凹湾曲状の深さ及び凹湾曲幅を同じく、左右両側辺を半円弧状の凸湾曲線で繋いだ構成態様として、全体が上下及び左右を対称としているもので、本件登録意匠における、特に左右両側辺の上方の円弧を下方の円弧よりやや大きくして、上方のやや広い範囲で浅い弧状とする凸湾曲線の構成態様として、全体が上下非対称となる特徴を表出しているものではない。また、表面部縦中央面部の形状を見れば、引用意匠(1)は、薄肉状部を底部とする段差が明確に表現された浅い溝部を形成したもので、本件登録意匠が左右両面より緩やかに凹ませ、滑らかに窪ませた状態で、明瞭な凹み部を形成しているものではなく、構成態様が明らかに異なるものである。そして、両意匠における外周形状と表面部縦中央面部との構成態様の差異の相まって形成する特徴において、引用意匠(1)に到底本件登録意匠の形成する独自の特徴となる態様が示されているとは言い難い。よって、本件登録意匠は、引用意匠(1)に基づいて当業者が容易に意匠の創作をすることができたものとすることはできない。
(3)次に、本件登録意匠の縦中央面部の凹み部の形状について、引用意匠(2)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものか否かについて検討する。
請求人は、本件登録意匠の縦中央面部に形成されている凹み部を形成する薄肉部分の厚さについて、本件登録意匠の当該部分の構成と同一の構成の空間状態の開示が明らかに認められるとして引用意匠(2)を示している。しかし、発熱材が使用時に移動し得る空間状態かどうかは、あくまでも袋体の内部の構造なり機能を示しているに過ぎず、薄肉部分の厚さだけではなく、薄肉部分から左右両面への厚みの表面部縦中央面部形状についてみれば、引用意匠(2)も正面図に示されるように段差が明確に表現され、本件登録意匠の縦中央面部が左右両面より緩やかに凹ませ、滑らかに窪ませた状態で、明瞭な凹み部を形成しない態様とは明らかに構成態様が異なり、特徴を共通にしたものとは言えない。よって、本件登録意匠の縦中央面部の凹み部の形状について、引用意匠(2)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとすることはできない。
なお、請求人は、「被請求人が否定する本件登録意匠の凹み部の存在は、図面で表現すれば、引用意匠(2)の“d-b部分の拡大断面図”に見られるような状態になるものだからである。」(弁駁書5頁24ないし26行目)としているが、袋体を表現する場合、平面状の袋であっても袋の状態を明確にするために収納する内部に空間部分を僅かに設けて膨らみを表現することは普通に行われていることではあるが、平面を表現する際にあえて段差を設けて表現することは不自然であり、むしろ引用意匠(2)の場合も、段差を設けて明確な区画を強調したものと考えるのが妥当であり、本件登録意匠の凹み部を図面で表現しても、引用意匠(2)の“d-b部分の拡大断面図”に見られるような状態になるものではなく、請求人の主張は採用できない。また、請求人は、「引用意匠(2)の全体形状は、被請求人が本件登録意匠のそれに対して「ハ」字形状と称したと同様に、左右両側辺部の上側辺のアールが大きく、下側辺のアールが小さく成り、その結果、「ハ」字形状に形成されているということになる。」(弁駁書6頁9ないし12行目)としているが、引用意匠(2)の全体形状は外周形状の上辺中央を直線状とし、下辺中央を内側に向けて扁平逆V字状とし、さらに左右両側辺を下方に向けて内方向に徐々に幅狭にしていること等を考え合わせれば、「ハ」字形状に形成されているとは言えず、構成態様が異なり、各々独自の特徴を生じさせていることから、請求人の主張は採用できない。
(4)そして、本件登録意匠が引用意匠(1)及び引用意匠(2)基づいて、すなわち、引用意匠(1)及び縦中央面部の凹み部の形状についての引用意匠(2)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるか否かについては、引用意匠(1)に本件登録意匠の形成する独自の特徴となる態様が示されていないこと、引用意匠(2)に本件登録意匠と構成態様が異なることから、これら二意匠から本件登録意匠の態様が到底直ちに導き出されるものではなく、結局、引用意匠(1)及び引用意匠(2)に基づいて当業者が容易に意匠の創作をすることができたものとすることはできない。
(5)したがって、本件登録意匠は、引用意匠(1)及び引用意匠(2)に基づいて容易に創作できるものではないことから、意匠法第3条第2項の規定に該当するものとして、その登録を無効とすることはできない。
6.むすび
以上のとおりであるので、本件登録意匠は、引用意匠(1)と類似するものとすることができない意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定の意匠に該当せず、また、引用意匠(1)及び引用意匠(2)に基づいて容易に創作できたものとすることもできない意匠であることから、同条第2項に規定する意匠に該当しないものである。
したがって、請求人の主張および提出した証拠によっては、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2004-10-20 
結審通知日 2004-10-22 
審決日 2004-11-04 
出願番号 意願2000-17300(D2000-17300) 
審決分類 D 1 11・ 121- Y (D4)
D 1 11・ 113- Y (D4)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 杉山 太一
山崎 裕造
登録日 2001-04-06 
登録番号 意匠登録第1110945号(D1110945) 
代理人 柳生 征男 
代理人 青木 博通 
代理人 足立 泉 
代理人 牛木 理一 
代理人 中田 和博 
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