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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効としない J7
管理番号 1109723 
審判番号 無効2003-35258
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-06-25 
確定日 2005-01-06 
意匠に係る物品 歯科用模型台 
事件の表示 上記当事者間の登録第1148060号「歯科用模型台」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立ておよび理由
請求人は、第1148060号の意匠登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として審判請求書に記載のとおりの主張をし、証拠方法として、甲第1号証乃至甲7号証の書証を提出した。
その主張の概要は、以下のとおりである。
(1)登録第1148060号意匠(以下、「本件登録意匠」という)は、甲第1号証乃至甲第4号証の公知の特許公報及び公開特許公報の各証から、その意匠に属する分野における通常の知識を有する者が容易に意匠の創作をすることができたもので、本件登録意匠は意匠法第3条第2項に該当し、同法第48条第1項第1号に基づき、無効とすべきである。(以下「無効理由1」とする。)
(2)本件登録意匠は、甲第5号証乃至甲第7号証によって、その出願以前から公然と実施されていたことが認められるもので、意匠法第3条第1項第1号、同項第2号、及び同法第5条第1項第2号に該当し、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。(以下「無効理由2」とする。)
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として答弁書に記載のとおりの反論をしたものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成13年11月21日に意匠登録出願し、平成14年5月31日に設定の登録がなされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「歯科用模型台」とし、その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである(別紙参照)。
すなわち、(a)石膏製の歯型を固定するプレートと、そのプレートを固定する基台とから構成され、相互に嵌合されたものであって、(b)その基台を、前面側を凸湾曲面状とし、背面側を平面状(上面視直線状)とした上下に偏平な横長楕円柱の上面に、湾曲長円状の低い段部を表したものとし、(c)この段部の上面に、段部と同形同大で厚さがほぼ等しいプレートを積層状に嵌合して表したもので、(d)この段部及びプレートは、前端が基台前面側の凸湾曲面に沿い、左右両端が自然な半円弧状で、後端が前端にほぼ平行な凹湾曲状をなし、基台の上面後方寄りに、基台の縦中央の前後幅の1/2弱の部分が左右に向けて漸次幅狭状をなす余地面として残されたものであり、そして(e)横水平をなす段部とプレートの境界線について、前面側及び背面側に共に、7つの小さい半円弧状の隆起部が等間隔に表され、更に(f)基台の底面には、前示プレートの真下に当たる位置に、開口端を湾曲長円状とする深溝が、奥狭状に形成され、この溝の奥に、プレートから垂下する7つのピンの先端、及びこれを囲むように形成された基台上部の矩形孔が認められるものである。
2.無効理由1についての検討
請求人は、本件登録意匠は、甲第1号証乃至甲第4号証の公知の特許公報及び公開特許公報の各書証から、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に意匠の創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項の規定に該当する、と主張するので、以下、検討する。
まず、本件登録意匠は前示のとおりの構成態様であるところ、そのうち、(a)の構成、(b)に関して、基台の前面側を凸湾曲面状とし、基台全体を上下に偏平な横長楕円柱とし、上面に横長の低い段部を表した構成、(c)及び(e)の構成(但し隆起部の数は除く)、(f)のうちの、プレートの下面に、隆起部に対応する数のピンが垂下状に表されている構成、については請求人が提出した甲第2号証(特開2000-245749号)の【図8】及びこれに関連する当該公報の他の図面、及び記載に認められる。
更に、(b)に関して、基台の背面側、或いは凸湾曲面の反対側を平面状(上面視直線状)とする構成、(d)に関して、段部及びプレートの前端を基台の湾曲に沿って表し、更に後端を、前端とほぼ並行な凹湾弧状に表す構成についても、甲第2号証の【図1】に認められるところである。
しかしながら、意匠は視覚を通じて認識される物品の外観形態であるところ、本件登録意匠は、外観形態として看者の視覚を最もよく捉える基台上面において、(d)の、段部及びプレートが左右両端で自然な半円弧状をなして、前述のとおり、基台の上面後方寄りのかなり広い部分を平坦な余地面として残す態様で、段部及びプレートを基台の手前に寄せて表した態様が認められ、しかも本件登録意匠の基台の底面には、(f)の、プレートの真下に当たる位置に、開口端を湾曲長円状とする深溝が奥狭状に形成され、この溝の奥に、プレートから垂下する7つのピンの先端が、基台上部の矩形孔に囲まれて認められるものであり、これらの構成態様は、甲第1号証乃至甲第4号証に認められず、それ自体の創作を否定することができず、またこれらの構成態様は、(a)ないし(f)の他の具体的な構成態様と相互に関連し合って、本件登録意匠の全体のまとまりを形成しており、確かに本件登録意匠を構成する形態要素には、前示のとおりの公然知られた形態要素が含まれているとしても、それらを選択し、特定の形状のものとして相互に組み合わせ、一体的にまとめた点での創作も否定することができず、請求人の提出した甲第1号証ないし甲第4号証によっては、本件登録意匠が容易に創作できたとすることができない。
4.無効理由2についての検討
請求人は、甲第5号証乃至甲第7号証を提出し、本件登録意匠はその出願以前から公然と実施された意匠で、意匠法第3条第1項第1号、同項第2号、及び同法第5条第1項第2号に該当すると主張する。
まず甲第6号証は、出願日を平成12年9月22日とする特開2002-95682号の公開特許公報(公開日平成14年4月2日)の写しで、歯型模型とする歯科用模型台の図面が記載されたものであり、甲第5号証は、1枚目が甲第6号証の特許出願に関する出願依頼文書と認められる、「受付12.9.11」との押印がなされたもので、なおこの甲第5号証には、「「試作品の構成」とする2枚の説明文が添付されており、これに甲第6号証の、本発明の歯型模型とする図面にほぼ対応する歯科用模型台がカラー写真で表されている。
そこで検討するに、甲第6号証の公報の記載と甲第5号証の出願依頼文書の記載内容を照らし合わせれば、確かに本件登録意匠の出願前に、甲第6号証の歯科用模型台、或いは甲第5号証添付の「試作品の構成」に示された歯科用模型台について、これに関する試作品が造られていた可能性は否定できない。しかしながら甲第5号証及び甲第6号証により直ちに、記載された歯科用模型台が公然と実施されていたとする事実は確認できず、しかも形態の上でも、甲第5号証、及び甲第6号証に記載の歯科用模型台と本件登録意匠とは、基台上面の段部の構成、基台上面の余地面の有無、基台とプレートの境界の隆起の向き、基台底面の深溝の有無、等に顕著な差異が認められ、本件登録意匠とは意匠を異にするといわざるを得ないもので、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第1号の意匠に該当しない。
また請求人は、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第2号の意匠に該当すると主張するが、甲第5号証は私信と認められるものでそれ自体刊行物とはいえず、また甲第6号証は本件登録意匠の出願前に頒布されたものではなく、甲第7号証もその意匠登録番号の記載によれば本件登録意匠の出願前に頒布されたものとは認められず、また前示のとおり、本件登録意匠は甲第5号証ないし甲第7号証に記載されたいずれの意匠とも形態を異にしており、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第2号に該当する意匠とはいえない。
更に請求人は、本件登録意匠が意匠法第5条第1項第2号に該当すると主張するが、前示のとおり、本件登録意匠は甲第5号証及び甲第6号証に記載のいずれの意匠とも形態上の違いが顕著で、また他にこれらの意匠と混同を生じるとする理由も見出せず、本件登録意匠は意匠法第5条第1項第2号に該当する意匠ともいえない。
以上のとおりであるので、本件登録意匠は、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、意匠法第3条第2項の規定に該当するにもかかわらず登録されたものとして、また意匠法第3条第1項第1号、同項第2号、及び意匠法第5条第1項第2号の意匠に該当するにもかかわらず登録されたものとして、その登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2004-11-05 
結審通知日 2004-11-09 
審決日 2004-11-24 
出願番号 意願2001-34151(D2001-34151) 
審決分類 D 1 11・ 121- Y (J7)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 2002-05-31 
登録番号 意匠登録第1148060号(D1148060) 
代理人 唐木 浄治 
代理人 近藤 利英子 
代理人 吉田 勝廣 

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