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審決分類 審判    B3
審判    B3
管理番号 1114749 
審判番号 無効2004-88011
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-05-18 
確定日 2005-03-07 
意匠に係る物品 装身用下げ飾り 
事件の表示 上記当事者間の登録第1184997号「装身用下げ飾り」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び請求の理由
請求人は、意匠登録第1184997号を無効とする、審判請求費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由を請求書の記載のとおり主張し、立証として、甲第1号証ないし甲第8号証(枝番を含む)を提出した。その要点は以下の通りである
〔1〕本件登録意匠
本件登録意匠は、「装身用下げ飾り」を意匠に係る物品とし、部分意匠として意匠登録を受けたものであり、係止具によってキーホルダや携帯電話用ストラップに付される飾りであって、形態の構成要素の詳細は以下の通りである。
E1.顔の中央には、横長の大きな口が開いた状態で設けられ、その内部はわずかに凹み、周辺がわずかに凸となり、上下の歯及び舌が描かれている。
(E11)口の中央下側には、口外へ出した舌を有している。
(E12)上歯として、一本ずつが離れた5本の前歯と、その両側にさらに離れて配置された2本の歯を有している。
(E13)下歯として、上記舌の両脇に2本の歯を有している。
E2.口の上には、前方にわずか突出させ、丸みを帯びた三角形状からなり、左右に2つの丸穴が設けられた鼻が配置されている。
E3.鼻の両側には、前方にわずかに突出させ、ほぼ真円からなる形状の中に上へ凸となる円弧が描かれた一対の目が設けられている。
E4.両目の上方には、前方にわずかに突出させ、横に延び、縦に2本の線が描かれた一対の眉が設けられている。
E5.顔の下半分を取り囲むように、前方にわずかに突出させて、7個の鬣が設けられている。
(E51)中央の鬣は、下に延びる3本の線が描かれている。
(E52)上記中央の鬣に隣接する2本の鬣は、外側に向けて曲げられた線が描かれている。
(E53)その他の鬣は、外側へ向けて曲げられた渦巻き状の線が描かれている。
〔2〕無効理由1
本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠(甲第1号証)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、意匠法第48条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。
1.甲第1号証の意匠(丸シシ)
甲第1号証は、請求人が販売している「丸シシ」と呼ばれるマスコットを撮影した写真であり、請求人は、遅くとも平成13年10月にはこの意匠の販売を開始し、その形態を変更することなく、現在まで継続的に販売を行っている。
ア.甲第1号証の意匠の詳細(本件登録意匠に対応する顔の部分)について
e1.顔の中央には、横長の大きな口が開いた状態で設けられ、その内部はわずかに凹み、周辺がわずかに凸となり、上歯及び舌が描かれている。
(E11)口の中央下側には、口外へ出した舌を出している。
(E12)上歯として、一本ずつ離れた3本の前歯と、その両側に配置された2本の歯を有している。
e2.口の上には、前方にわずか突出させ、丸みを帯びた三角形状からなり、左右に2つの丸穴が設けられた鼻が配置されている。
e3.鼻の両側には、前方にわずかに突出させ、ほぼ真円からなる形状の中に上へ凸となる円弧が描かれた一対の目が設けられている。
e4.両目の上方には、前方にわずかに突出させ、横に延び、縦に2本の線が描かれた一対の眉が設けられている。
e5.顔の下半分を取り囲むように、前方にわずかに突出させて、7個の鬣が設けられている。
(e51)中央の鬣は、下に延びる4本の線で表されている。
(e52)その他の鬣は、外側に向けて曲げられた渦巻き状の線で表されている。
(e53)最も外側の2個の鬣には、4本の線が更に描かれている。
イ.甲第2号証、甲第3号証ないし甲第6号証、及び甲第7号証について
甲第2号証は、甲第1号証に示された意匠(丸シシ)の平成13年10月ないし平成14年1月に販売されたものと同一商品を撮影した写真であり、(a)には「ツインKH丸ペアシシ」、(b)には「ミニコイルストラップ丸ペアシシ」の商品名により販売している携帯電話用ストラップの全体像が示されている。甲第3号証ないし甲第6号証の書類に記載されている商品名「ツインKH丸ペアシシ」及び「ミニコイルストラップ丸ペアシシ」には、甲第1号証の意匠が付されていたことがわかる。甲第7号証の陳述書により、甲第1号証に示された意匠の形態は販売当初から変更されていないことがわかる。
したがって、甲第1号証に示された意匠は、本件登録意匠出願前公然知られるに至ったことは明らかである。
2.甲第1号証の意匠と本件登録意匠との比較
甲第1号証の意匠と、本件登録意匠を構成する構成要素とを比較すれば、次のような共通点がある。
X1.顔の中央に横長の大きな口が開いた状態で設けられ、開いた口からは舌を出している。
X2.口の上には、前方にわずか突出させ、丸みを帯びた三角形状からなり、左右に2つの丸穴が設けられた鼻が配置されている。
X3.鼻の両側には、前方にわずかに突出させ、ほぼ真円からなる形状の中に上へ凸となる円弧が描かれた一対の目が設けられている。
X4.両目の上方には、前方にわずかに突出させ、横に延び、縦に2本の線が描かれた一対の眉が設けられている。
X5.中央ではカールすることなく垂れ下がり、その他は外側にカールする鬣により、顔の下半分が囲まれている。
一方、両意匠は、次のような相違点がある。
Y1.舌がやや短く、上歯の前歯が2本少なく、下歯がない。
Y2.中央の鬣に描かれている線が1本多く、その両脇の2本の鬣が、渦巻き状に描かれ、最も外側の鬣が、やや下に配置され、4本の線が付されている。
横長の大きな口から舌を出し、丸いコミカルな目を持ち、カールした鬣で囲まれた顔を持つというユニークな形態が看者の注意を惹く本件登録意匠の特徴的な形態ということができるが、これらの特徴的形態は甲第1号証の意匠が全て備えている。一方、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠に比べれば、舌の長さや、歯の数、鬣に描かれた線などについて若干の相違点を有しているが、これらの相違点は、上記特徴に比べれば、細部についての極めて軽微な相違である。しかも、意匠に係る物品が、直径1ないし2cm程度の小さな物であることを考慮すれば、この程度の相違は、意匠全体としての美感や印象に何ら影響を与えるものではない。また、本件登録意匠において採用されている舌の長さや、歯の数、鬣に描かれた線などは、極めてありふれた選択肢の一つであって、当業者によって必要に応じて適宜選択される程度のものに過ぎず、創作性を見出すことはできない。
したがって、本件登録意匠は、甲第1号証に示された丸シシの意匠に類似するものである。また、甲第2号証ないし甲第7号証により示したとおり、この丸シシは、平成13年10月6日及び平成14年1月9日に、請求人から複数の問屋へ出荷されており、その数日後には、各問屋において公然知られるに至ったことは明らかであるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当し、無効とされるべきものである。
〔3〕無効理由2
本件登録意匠は、公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(甲第1号証及び甲第8号証)に基づいて容易に創作することができた意匠であり、意匠法第3条第2項に該当し、意匠法第48条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。
1.甲第8号証に基づく無効理由
甲第8号証、平成14年5月30日発行の「ぴあMAP沖縄2002-2003」66頁にはシーサーをモチーフにした4種類の置物が掲載されている。
ア.置物(c)の詳細
f1.顔の中央には、横長の大きな口が開いた状態で設けられ、その内部はわずかに凹み、周辺がわずかに凸となり、上下の歯及び舌が描かれている。
(E11)口の中央下側には、口外へ出した舌を有している。
(E12)上歯として、一本ずつ離れた4本の前歯と、その両側に配置された2本の犬歯を有している。
(E13)下歯として、上記舌の両脇に2本の歯を有している。
f2.口の上には、前方に突出させ、左右に2つの丸穴が設けられた鼻が配置されている。
f3.鼻の両側には、前方にわずかに突出させ、ほぼ真円からなる形状の中に点が描かれた一対の目が設けられている。
f4.両目の上方には、横に延びる一対の眉が設けられている。
f5.顔の下及び両脇には、5個の鬣が設けられている。
(f51)中央の鬣は、下に延びる4本の線で表されている。
(f52)上記中央の鬣に隣接する2本の鬣は、渦巻き状の線で表されている。
イ.置物(c)と本件登録意匠との共通点
x1.横長の大きな口を有し、開いた口からは舌を出している。
x2.2つの丸穴を有する鼻を備えている。
x3.真円からなるコミカルな一対の目が設けられている。
x4.厚めの一対の眉を有している。
x5.中央ではカールすることなく垂れ下がり、その他は外側にカールする鬣により、顔の下半分が囲まれている。
ウ.置物(c)と本件登録意匠との相違点
y1.舌がやや短く、上歯の前歯が1本少ない。
y2.目の中には点が描かれている。
y3.中央の鬣に描かれている線が1本多く、その両脇の2本の鬣が、渦巻き状に描かれている。また、鬣の数が2個少ない。
置物(c)は、横長の大きな口から舌を出し、丸いコミカルな目を持ち、カールした髭で囲まれた顔を持つという本件登録意匠の特徴的な形態を有している。一方、本件登録意匠は、舌の長さや歯の数、鬣に描かれた線、目の描き方などに若干の相違点を有しているが、これらの相違点は細部についての極めて軽微な相違であり、この程度の相違は、意匠全体としての美感や印象に何ら影響を与えるものではない。本件登録意匠に採用されている舌の長さや、歯の数、鬣にえがかれた線、目の描き方などは、極めてありふれた選択肢の一つであって、当業者によって必要に応じて適宜選択される程度のものに過ぎず、このような差異に創作性を見出すことはできない。このことは甲第8号証の(a)、(b)及び(d)からも明らかである。したがって、本件登録意匠は、その出願日前に日本国内において公然知られた甲第8号証に記載された形状及び模様の結合に基づいて、当業者が容易に創作することができた意匠である。
2.甲第1号証に基づく無効理由
甲第1号証の意匠と比較した本件登録意匠の相違点は、舌の長さや、歯の数、鬣に描かれた線などであり、極めてありふれた選択肢の一つであって、当業者によって必要に応じて適宜選択される程度のものに過ぎず、このような差異に創作性を見出すことは到底できない。当業者にとって、このような相違点に創作性がないことは、甲第8号証の置物(a)ないし(d)からも明らかである。したがって、本件登録意匠は、その出願日前に日本国内において公然知られた甲第1号証に記載された形状及び模様の結合に基づいて当業者が容易に創作することができた意匠である。
3.甲第1号証及び第8号証に基づく無効理由
甲第1号証の意匠及び甲第8号証の置物(a)ないし(d)は、本件登録意匠の出願日前に公知になった意匠である。甲第1号証の意匠及び甲第8号証の置物(c)と比較すれば、本件登録意匠は、わずかな相違点しか有しておらず、その相違点も極めてありふれた選択肢の一つであって、当業者によって必要に応じて適宜選択される程度ものに過ぎない。したがって、本件登録意匠は、その出願日前に日本国内において公然知られた甲第1号証及び甲第8号証に記載された形状及び模様の結合に基づいて、当業者が容易に創作することができた意匠である。
第2.被請求人の答弁及び答弁の理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を答弁書の記載のとおり主張し、立証として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。その要点は以下のとおりである。
〔1〕無効理由1
(1)甲第1号証の販売開始日に関して
1)本件登録意匠の出願前に商品を販売した証拠となる甲第3号証の1、甲第4号証の1、甲第5号証の1、甲第6号証の納品書(控)からは、「ツインKH丸ペアシシ」と「ミニコイルストラップ丸ペアシシ」がどのような形態なのか判明せず、甲第2号証に撮影された商品そのものが平成13年10月ないし平成14年1月に販売された商品であるとの客観的な証拠は何もない。しかも、甲第2号証に撮影されている商品の(a)がツインKH丸ペアシシで、(b)がミニコイルストラップ丸ペアシシであるとする証拠が全くなく、その記載のみで、その当時の「(a)ツインKH丸ペアシシ」、「(b)がミニコイルストラップ丸ペアシシ」であったとする請求人の主張は信用することができない。
2)甲第1号証に撮影された丸シシそのものが何時製造されたもので、本件登録意匠の出願前に販売された商品なのかが不明であり、審判請求書の4頁に「遅くとも平成13年10月には、上記丸シシの販売を開始した。」とあるが、甲第3号証の1、甲第4号証の1、甲第5号証の1、甲第6号証の1の納品書(控)以外に、販売を開始したとする日付を客観的に特定できる証拠はなく、これらは甲第2号証とは結びつかないものであるから、甲第1号証が平成13年10月以前に販売を開始したと(請求人は)主張することはできない。請求人は、甲第7号証の陳述書で、平成13年10月以前に販売された丸シシであることを立証しようとしているが、第三者の陳述でない点で完全には信用できない。
これらのことから、甲第1号証の丸シシは、遅くとも平成13年10月に販売を開始したとの請求人の主張は立証がなされておらず、本件登録意匠出願前に公然知られたとする請求人の主張は成り立たない。
(2)本件登録出願前の「シーサ」について
請求人は、(a)のツインKH丸ペアシシ、(b)のミニコイルストラップ丸ペアシシが平成13年10月から平成14年1月に販売されたと主張するが、乙第1号証の森本成美氏の陳述と矛盾し、疑問である。
〔2〕無効理由2
甲第8号証に基づく無効理由については、請求人が付したとしている(a)〜(d)及び矢印が記載されていないので、十分な答弁ができない。請求人が訂正した甲第8号証を提出するならば、その時点で甲第8号証に基づく無効理由を答弁する。
第3.当審の判断
〔1〕本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14年11月5日に出願され、平成15年7月25日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1184997号の意匠であって、登録原簿及び出願書面の記載によれば、意匠に係る物品を「装身用下げ飾り」とした物品の部分について意匠登録を受けたもので、その形態は願書の記載及び願書に添付の図面代用写真の暗調子で表された部分以外に現されたとおりとしたものである(別紙1参照)。
〔2〕甲第1号証意匠
甲第1号証意匠は、請求人が遅くとも平成13年10月に販売を開始し、その形態を変更することなく、現在まで継続的に販売を行っているとしたマスコットの意匠であり、その形態は甲第1号証の(a)ないし(g)の写真に現されたとおりのものである(別紙2参照)。
〔3〕甲第8号証意匠
甲第8号証意匠は、平成14年5月30日発行の雑誌「ぴあMAP沖縄2002-2003最新版」66頁、右上欄3対、合計6個記載された置物のうち上から2列目、右から2つ目に記載された、請求人が「置物(c)」と称している、本体が黄色がかった色をし、口を大きく開けた置物の意匠であって、その形態は、同証の写真版に現されたとおりのものである(別紙3参照)。
なお、甲第8号証の該当頁には下欄も含め計4対、合計8個のシーサーの置物が記載されており、請求人はその中の特定の置物について「甲第8号証の置物(c)」と称し、(a)ないし(d)及び矢印を付しているとしているが、甲第8号証にこれらの記載は認められない。ところが、請求書11頁に「置物(c)では、横に長い口を開いている左側のシーサーが、上歯として4本の前歯と2本の犬歯を有し」、「特に、置物(c)では、中央の鬣がカールすることなく垂れ下がり、その他の鬣はカールしている。」と記載しており、更に、その他請求書の置物(c)に関する記述全てに合致するものは、前記甲第8号証意匠とした意匠以外にないことは明らかであるから、請求書の内容を総合すれば、前記意匠を請求人が「置物(c)」と称している意匠であると解することに何ら支障はない。
〔4〕無効理由1
請求人は、無効理由1として、本件登録意匠は甲第1号証意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当すると主張するから、両意匠を対比し類似するか否かについて検討する。
まず、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態について対比すると、主として以下の共通点及び差異点がある。なお、請求人が「鬣」と称している部分に関し、本件登録意匠は、仮に沖縄の伝統的シーサー(唐獅子若しくは狛犬様のもの)から派生し、沖縄において「シーサー」と称して販売されるものであったとしても、顔の造作、表情は、後述するように獣というよりも擬人化された感が強いものであり、その設けられた位置が顎及び頬のみであることから「鬣」とは称し難く、「髭」と称することとし、対比する甲第1号証意匠及び後述する甲第8号証意匠などについても、便宜上「髭」と称して格別支障がないと認められるから、以下、同様とする。
すなわち、両意匠は、 底部を平坦とし物品全体を概略球形状としたものの前面若しくは前面から上面にかけた部位に大きく表した、架空若しくは実在の動物をやや擬人化表現した顔の部分に関するものであって、主たる共通点として、
(1)ほぼ中央には、横長の大きな開いた口を表し、その上に近接して左右の目及び中央の鼻を横一列状に並べて配置し、目のそれぞれの上側には眉を横方向に1本づつ表し、口の下側に近接して顎髭が表されたものである点、
(2)口部につき、横長であって、内側を段差により凹陥させ、上歯として、一本ずつが離れた5ないし7本を表し、下辺中央にはみ出す舌を表した点、
(3)鼻につき、正面視丸みを持たせた2等辺三角形状、側面視は頂部に丸みを設けた三角形状としたもので、2つ鼻の穴を丸く表した点、
(4)両目及び眉につき、目は、扁平半球状に膨らんだ正面視円形状のもので、それぞれ上へ凸となる弧状線を描き、その両目の上に近接して表された眉は、横に延び前方にわずかに突出したもので、2本の縦線を描いた点、
(5)顎髭部につき、前方に突出させた3ないし5個単位が左右対称的に表されており、最も長い中央の髭の下側形状は丸みを持たせたV字状とし、縦方向の3ないし4本の線が描かれ、この髭に隣接する左右の髭はそれぞれ下側を弧状に丸みを持たせ、何れも外側に向け弧状に曲げた線が描かれている点、がある。
一方、両意匠は、主たる差異点として、
(ア)顔の全面の構成につき、本件登録意匠は、口、鼻、左右の目を僅かずつ離して表し、これらの余地部、すなわち、かなり広い眉間、額、頬、更に顎まで全てが繋がった緩やかな広い凸湾曲面を有しているのに対して、甲第1号証意匠は、両目は上唇及び鼻に接し、眉間は極く僅かの幅、顎も口の下に設けられたやや突出した顎髭に隠れているため、これらの余地部に相当するものが極く狭い頬と額位しかなく、本件登録意匠が有するとした広い全体が緩やかな凸湾曲面に相当するものがない点、
(イ)口部につき、本件登録意匠の外周形状は四隅に丸みを設けた横長方形状であって、その内側を僅かな段差により凹陥させ、上歯として一本ずつが僅かに離れた小方形状の5本の前歯と、その両側にやや離れて配置された2本の三角状犬歯を表し、下歯として上辺側犬歯より極く僅か内側に2本の三角状歯を表し、上下に対の牙を有する感を呈しているのに対して、甲第1号証意匠の外周形状は、上辺及び下辺何れも下方に向け湾曲し、左右両端に向け漸次上下幅を狭めた三日月様のもので、その周囲は僅かの幅で凸縁状に突出させ唇様とし、その内側を段差により凹陥させ、上歯として、一本ずつがやや離れた3本の前歯と、その両側にかなり離れて配置された2本の歯を表し、これらは何れも方形状であって、全体としては疎らに生えている感を呈し、本件登録意匠が有する下歯に該当するものがない点、
(ウ)鼻につき、本件登録意匠は左右幅を口の幅の1/3程の幅広としたやや大きめのもので、鼻の穴については左右をかなり離しやや小さく極く僅かに暗調子としたさほど目立たない態様としているのに対して、甲第1号証意匠は、左右幅を口の幅の1/5程の幅としたやや小さめのもので、鼻の穴については鼻の左右幅のほぼ1/3の幅を有するやや目立つ凹丸状としている点、
(エ)両目及び眉につき、本件登録意匠の鼻は左右幅が大きく、両目及びこれに沿った左右の眉がかなり離れて配置され眉間が広く、両目の外側の位置が口の左右両端位置とほぼ一致し、両目がかなり離れているのに対して、甲第1号証意匠は、やや小さめの鼻に近接しているため、両目が寄った感を呈しており、眉は更に内側に寄り左右が近接している点、
(オ)顎髭部につき、本件登録意匠は、繋がった状態の3個単位が扁平状に僅かに盛り上げられ、全体をさほど目立たない極く僅か暗調子として塗り分け、更に、中央部は縦方向のやや細い3本の線が描かれ、隣接する左右それぞれについては、何れも外側に向けて曲がったJの字の輪郭を描くような細い線が描かれているのに対して、甲第1号証意匠は、5個単位の顎髭部が繋がった状態でそれぞれやや肉厚状に盛り上がり、全体を黒色で塗り分け、更に金色のやや太めの線で髭を描き、本件登録意匠と比較して顎髭全体を際立たせる態様としたもので、中央部は縦方向のやや太い4本の線が描かれ、これに隣接する左右2個単位のそれぞれには、何れも渦巻きを描いている点、
(カ)本件登録意匠は、左右の頬部に上下2個ずつ、扁平状に僅かに盛り上げた円形部に渦巻きを描いた頬髭様のものが表されているのに対して、甲第1号証意匠には該当するものがない点、がある。
そこでこれらの共通点及び差異点を意匠全体として比較し、類否判断に及ぼす影響を検討すると、(1)の共通点については、甲第8号証によれば、シーサーの置物に普通にみられる態様であり類否判断に及ぼす影響を大きいとすることはできず、(2)の口部の共通点については後述するように(イ)の差異点が凌駕し、(3)の鼻の共通点については後述するように(ウ)の差異点が凌駕しており、(4)の共通点についても、上に凸となる弧状線を両目に描いた点、及び、眉に2本の縦線を描いた点は、一定程度類否判断に影響を及ぼすとしても、その他の点については甲第8号証によればシーサーの置物によくみられる態様であり、(5)の顎髭部の共通点についても後述するように(オ)の差異点が凌駕しており、(2)及び(4)の共通点に係る構成態様により擬人化表現された顔が笑った表情をしている感を呈していることにより一定程度の共通感が生じているとしても、前記(1)ないし(5)の共通点のみで両意匠の類否判断を左右する顔の造作及び表情が決定されるものではないから、その他の差異点を検討せずに、意匠の類似するか否かを結論づけることはできない。
これに対して、(イ)の差異点、すなわち、両意匠を構成する目、鼻、口の構成要素の中で最も広い部位を占める口部を比較した場合、口全体の外周形状を方形状としたか三日月状としたかの差異は形態的に顕著な差異であり、歯の形態並びに配置構成は全く異なるといっても過言でなく、(2)の共通点をはるかに凌駕し、(ウ)の差異点、すなわち、両意匠の鼻部の大きさ及び鼻の穴の表現の差異は、顔の造作の印象に与える影響は微弱とはいえず(3)の共通点を凌駕し(甲第1号証意匠の鼻は僅かに獅子鼻の感を残しているのに対して本件登録意匠は殆ど無い)、更に目の表現が(4)の共通点によりほぼ同一であるとしても、(エ)の目及び眉に関する左右の間隔(離れ具合)の差異は顕著であり、(オ)の顎髭部の構成態様についても、顎髭の表現としては全く異なるといっても過言ではなく(5)の共通点を凌駕し、これら(イ)ないし(オ)の差異点に係る構成態様は、共通点に係る構成態様とも関連し合い、総体として両意匠それぞれにおいて別異の感を呈する顔の造作及び表情を形成するのに十分であり、類否判断に及ぼす影響は大きく、更に(ア)の顔全面の構成、(カ)の頬髭様のものの有無に関する差異は、何れも顕著であり、類否判断に一定程度大きな影響を及ぼすものである。
このように、(イ)ないし(オ)の差異点に係る構成態様は、共通点に係る構成態様とも関連し合い、両意匠それぞれにおいて別異の感を呈する顔の造作及び表情を形成するのに十分であり、類否判断に及ぼす影響は大きく、(4)の共通点における上へ凸となる弧状線を描いた態様の部分は一定程度類否判断に影響を及ぼすとしても、この部分を除く(1)ないし(5)の共通点に係る構成態様は、シーサーの置物によく見られる構成態様であって、しかも、前述のように差異点が凌駕している部分が多く、共通点総体としては類否判断に及ぼす影響はさほど大きいとすることはできず、その他に(ア)及び(カ)の顕著な差異があるから、両意匠を意匠全体、すなわち髭も含めた顔全体としてみた場合、類似しないとせざるを得ない。
したがって、本件登録意匠は、請求人の提出した証拠では、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するとはいえないものである。
〔5〕無効理由2
請求人は、無効理由2として、本件登録意匠は、甲第8号証意匠の形態(「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」、以下同じ)、甲第1号証意匠、また、これらの形態に基づいて容易に創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定に該当すると主張するので、これらの点について検討する。
1.甲第8号証意匠に基づく創作容易性の検討
本件登録意匠と甲第8号証意匠の顔の部位の形態を比較すると、両形態は主として以下の共通点及び差異点がある。
すなわち、共通点として、
(1)顔のほぼ中央には、横長の開いた大きな口を表し、その上に近接して左右の目及び中央の鼻を横一列状に並べて配置し、目のそれぞれの上側に沿って眉を横方向に1本づつ表し、口の下側に近接して顎髭が表されたものである点、
(2)口部につき、横長方形状であって、内側を段差により凹陥させ、上歯として一本ずつがごく僅かに離れた小方形状の4ないし5本の前歯と、その両側に離れて配置された2本の三角状犬歯を表し、下歯として上辺側犬歯とほぼ同じ左右位置に2本の三角状歯を有し、その内側中央に僅か下にはみ出す舌をあらわした点、
(3)両目及び眉につき、目は真円からなる膨らんだもので、その上辺に沿った眉は、前方に突出させ厚みのあるものとした点、
(4)顎髭部につき、突出させた3個単位が左右対称的に表されており、最も長い中央の髭の下側形状は丸みを持たせたV字状とし、縦方向の3ないし4本の線が描かれ、隣接する左右の髭は、それぞれ下側を弧状に丸みを持たせ何れも外側に向け弧状に曲げた線が描かれている点、がある。
一方、主たる差異点として、
(ア)顔の全面の構成につき、本件登録意匠は、口、鼻、左右の目を僅かずつ離して表し、これらの余地部、すなわち、かなり広い眉間、額、頬、更に顎まで全てが繋がった緩やかな広い凸湾曲面を有しているのに対して、甲第8号証意匠は、顔の正面に相当する部分に関し、方形状に大きく突出した口、その上中央に前面を同じ高さで接して設けられた鼻、半球状両目、両目に沿った眉により、顔前面がほぼ埋め尽くされ余地部が無く、両眉は上にはみ出した態様とし、頬に相当する部分は側面側となっており、本件登録意匠が有する額、顎の前面までを含む全体が緩やかな凸曲面に相当するものがない点、
(イ)口部につき、本件登録意匠は、唇に相当する突出部分が無く、内側の凹陥部の上下幅を左右幅の1/5程とし、四隅に丸みを設け、舌は全体の半分以上が外にはみ出し、全体として笑った感を想起させるのに対して、甲第8号証意匠は、同幅に形成された唇の感を呈する方形状縁部が前方に大きく突出しており、上下幅を左右幅のほぼ1/2とし、舌は口の中にほぼ収まり、歯を含めた口全体として、獣が威嚇若しくは吠える際の表情の感を想起させる点、
(ウ)鼻につき、本件登録意匠は丸みを有する正面視三角状に突出させ、鼻の穴については左右をかなり離しやや小さく極く僅かに暗調子としたさほど目立たない態様とし、なお、いわゆる獅子鼻の感はほとんど有しないのに対して、甲第8号証意匠は、突出した口の前面、すなわち唇に相当する部分と同一平面上に連なる正面視上側左右両隅に大きな丸みを設けた概略方形状の面に、鼻の丸穴をやや深く設け、いわゆる獅子鼻の感を呈している点、
(エ)目の態様につき、本件登録意匠は上が膨らんだ弧状線で描かれているのに対して、甲第8号証意匠は小さな丸が描かれている点、
(オ)顎髭部につき、本件登録意匠は、繋がった状態の3個単位全体をさほど目立たない極く僅か暗調子として塗り分け、左右の髭を外側に曲がったJの字の輪郭を描くような細い線で描かれているのに対して、甲第8号証意匠は3個単位が分離し、何れも目立つ赤色で塗り分け、左右は外側に丸めた渦巻きを描いている点、
(カ)本件登録意匠は、左右の頬部に上下2個ずつ、扁平状に僅かに盛り上げた円形部に渦巻きを描いた頬髭様のものが表されているのに対して、甲第8号証意匠には該当するものがない点、に差異がある。
請求人は、「置物(c)が、横長の大きな口から舌を出し、丸いコミカルな目を持ち、カールした髭で囲まれた顔を持つという本件登録意匠の特徴的な形態を有している」、一方、「本件登録意匠において採用されている舌の長さや、歯の数、鬣にえがかれた線、目の描き方などは、極めてありふれた選択肢の一つであって、当業者によって必要に応じて適宜選択される程度のものに過ぎず、このような差異に創作性を見いだすこと」は到底できず、「これらの差異は、当業者が必要に応じて選択していることは、甲第8号証の置物(a)、(b)及び(d)からも明らかである」と主張するので、甲第8号証意匠の形態が本件登録意匠の特徴点と共通するか否かも検討し、両形態が相違する点について、本件登録意匠の形態への改変が容易であったか否かについて検討する。
まず、両形態の共通点のうち、(1)及び(3)の構成態様は例えば甲第8号証該当頁に記載された4対のシーサーの置物のうち一番下の右側のものがそうであるように、伝統的シーサー、すなわち唐獅子、若しくは狛犬様のものが普通に有する構成態様であって、本件登録意匠の特徴を構成するといえるものではなく、この他に(2)の口の共通点、(4)の顎髭部の共通点を有するとしても、口については(イ)の差異点、顎髭部については(オ)の差異点があり、これらの点を取り上げただけでも甲第8号証意匠が本件登録意匠の特徴点と共通するとはいえない。更に、(ア)の差異点については、顔の造作に関する基本的構成態様に係わる差異であり、鼻については(ウ)の差異点、頬部については(カ)の差異点があり、(エ)の差異点に係る本件登録意匠の構成態様は甲第1号証意匠にあるものの、これ以外の何れの差異点に係る本件登録意匠の形態に関し、甲第8号証に記載されたその他の置物の形態を検討したとしても見いだすことができない。したがって、請求人の主張するように甲第8号証意匠の形態が本件登録意匠の特徴点と共通するとは言えず、差異点についても「極めてありふれた選択肢の一つ」であるとすることもできず、本件登録意匠の形態は、甲第8号証意匠の形態に基づき容易に改変し得たものとすることはできない。
よって、甲第8号証意匠の形態に基づき、若しくは、甲第8号証意匠を含む甲第8号証に記載された意匠の形態を総合したとしても本件登録意匠は当業者が容易に創作することができた意匠であるとすることはできない。
2.甲第1号証及び第8号証に基づく創作容易性の検討
請求人は、(1)甲第1号証意匠と比較した本件登録意匠の相違点は、極めてありふれた選択肢の一つであって、当業者によって必要に応じて適宜選択される程度のものに過ぎず、このような差異に創作性がないことは、甲第8号証の(a)ないし(d)からも明らかであり、(2)甲第1号証意匠及び甲第8号証の置物(c)と比較すれば、本件登録意匠は、僅かな相違点しか有しておらず、その相違点も極めてありふれた選択肢の一つであって、当業者によって必要に応じて適宜選択される程度ものに過ぎないから、本件登録意匠は、甲第1号証及び甲第8号証に記載された形状及び模様の結合に基づいて当業者が容易に創作することができた意匠であると主張するので、本件登録意匠が甲第1号証意匠及び甲第8号証に記載された置物の形態に基づいて容易に創作することができたか否かについて検討する。
先ず、本件登録意匠と甲第1号証意匠の共通点及び差異点、本件登録意匠と甲第8号証意匠との共通点及び差異点については前述の如く既に検討しているので、これらを前提として、本件登録意匠において、甲第1号証意匠及び甲第8号証意匠何れとも相違する点として、
(ア)顔の全面の構成につき、口、鼻、左右の目を僅かずつ離して表し、これらの余地部、すなわち、かなり広い眉間、額、頬、更に顎まで全てが繋がった緩やかな広い凸湾曲面を有している点、
(カ)左右の頬に上下2個ずつ、扁平状に僅かに盛り上げられた円形部に渦巻きを描いた頬髭様のものが表されている点、
があり、また、これらの構成態様は、甲第8号証に記載された甲第8号証意匠以外の意匠にもみられないものであるから、この構成態様の存在だけでも請求人の提出した証拠では本件登録証が容易に創作することができたとする根拠として不十分である。更に、本件登録意匠と甲第1号証意匠との前述(イ)ないし(オ)の差異点のうち、前述本件登録意匠と甲第8号証意匠の共通点(2)により(イ)の差異点における「口の外周形状を方形状」とした点、「歯の形態及び配置構成」の点、及び、共通点(4)により(オ)の差異点における「顎髭を3個単位」とした点、に限って、容易に改変することができたものと解し得るものの、それ以外の差異点に係る本件登録意匠の構成態様は、個々に取り上げて言及するまでもなく請求人の言うように「舌の長さや、歯の数、鬣に描かれた線など」の差異に止まるものではなく、また、甲第8号証に記載されたその他の置物の意匠の形態を検討したとしても、当業者が容易に改変若しくは変更し得たとする合理的理由を見いだすことができない。
したがって、請求人の提出した甲第1号証意匠に基づき、または、甲第1号証意匠及び甲第8号証に記載された意匠の形態を総合しても、本件登録意匠は当業者が容易に創作し得たものとすることができない。
〔6〕結び
以上のとおり、本件登録意匠は、甲第1号証意匠に類似しないものであり、また、甲第1号証意匠と甲第8号証に記載された意匠の形態の何れか、または、これらを総合しても当業者が容易に創作することができた意匠とすることができない。したがって、甲第1号証意匠が本件登録意匠の出願前に公然と知られていたかどうかを検討するまでもなく、請求人の提出した証拠では、意匠法第3条第1項第3号、または、意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当する意匠であるとすることはできず、本件登録意匠は、意匠法第48条第1項第1号の規定に基づきその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2004-12-27 
結審通知日 2005-01-05 
審決日 2005-01-24 
出願番号 意願2002-30236(D2002-30236) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (B3)
D 1 113・ 113- Y (B3)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
杉山 太一
登録日 2003-07-25 
登録番号 意匠登録第1184997号(D1184997) 
代理人 板垣 孝夫 
代理人 大槻 聡 
代理人 森本 義弘 
代理人 笹原 敏司 
代理人 原田 洋平 
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