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審決分類 審判    F4
審判    F4
管理番号 1116254 
審判番号 無効2004-88016
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-07-23 
確定日 2005-04-01 
意匠に係る物品 結束用ゴムバンド 
事件の表示 上記当事者間の登録第0989315号の類似第1号意匠「結束用ゴムバンド」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、登録第989315号の類似第1号の意匠(以下、「本件類似意匠」という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
1.本件類似意匠登録を無効とすべき理由の要点
(1)無効理由Aについて
本件類似意匠は、その出願前に日本国内において公然知られた意匠(甲第2号証及び同第3号証)と類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同法第48条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
(2)無効理由Bについて
本件類似意匠は、甲第1号証に示す本意匠である登録第989315号の意匠(以下「本件本意匠」という。)に類似しないものであるにもかかわらず類似意匠の登録を受けたものであり、同法第48条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。
2.本件類似意匠登録を無効とすべき理由
(1)無効理由Aについて
本件類似意匠と甲第2号証意匠及び同第3号証意匠とを対比すると、 具体的態様のうち、輪ゴムの形状が長円環状であるか円環状であるか、引掛け部片のきのこ状の形状と大きさに差異があるが、これらの差異は類否判断の重要な要部にはならず、その他において共通するから、互いに類似する意匠である。
(2)無効理由Bについて
本件類似意匠と本件本意匠との対比をすると、具体的態様のうち、本件類似意匠は、引掛け部片の対向位置から中心線に対し左30度に振った点に、先細りの掴み部片を突設したものであるのに対し、本件本意匠は、天部とその対向位置との左右中間点に、突設部片(掴み部片のような機能を有しない。)を突設したものである点に差異があり、両意匠は類似しない。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、要旨以下のとおり主張した。
(1)無効理由Aについての反論
本件類似意匠の特徴は、先細りの掴み部片ときのこ状引掛け部片の態様にあり、本件類似意匠と甲第2号証意匠及び同第3号証意匠とは類似しない。
(2)無効理由Bについて反論
本件類似意匠と本件本意匠の関係は、甲第10号証と甲第11号証の意匠の関係(引掛け部片が共通し、掴み部片の数等が異なる。)と同じであり、本件類似意匠と本件本意匠は類似する。
第3.当審の判断
1.本件類似意匠
本件類似意匠は、平成10年7月6日に意匠登録出願をし、平成11年7月23日に意匠権の設定の登録がなされた登録第989315号の類似第1号の意匠であり、その意匠は、願書の記載によれば意匠に係る物品を「結束用ゴムバンド」とし、形態を願書及び願書に添付の図面に記載したとおりとするものである(別紙第一参照)。
すなわち、その形態は、環状の輪ゴム部を形成し、それに引掛け部片と掴み部片を設け、輪ゴム端部を引掛け部片に引っ掛けて結束するという基本的構成態様であり、正面視の具体的構成態様において、環状の輪ゴム部は、長円環状であり、引掛け部片は、長円環状の輪ゴムの一部(上部)にきのこ傘形状に設け、そのきのこ傘形状は頭頂部が丸くて大きく(切り込み無し)、そこから傘先が輪ゴム部に接近して細長く垂れ下がり、軸部の輪ゴムとの連結部には切り込みがあり、掴み部片は、引掛け部片の対向位置から中心線に対し左30度に振った点に、輪ゴムの幅で、その先が尖った小片を輪ゴムの外縁に突設させて形成したものである。
2.請求人が証拠として示した意匠
(1)無効理由Aの甲第2号証及び同第3号証に示された意匠
甲第2号証意匠は、平成9年8月11日に発行された意匠公報に掲載された登録第986440の類似第1号の意匠であり、意匠に係る物品が本件類似意匠と同一であり、その形態は同意匠公報に記載されたとおりのものである(別紙第二参照)。
すなわち、その形態は、本件類似意匠と同じ基本的構成態様であり、正面視の具体的構成態様において、環状の輪ゴム部は円環状であり、引掛け部片は、円環状の輪ゴムの一部(上部)にきのこ傘形状に設け、そのきのこ傘形状は、略半円状で頭頂部が丸くて大きく(切り込み無し)、傘形状と輪ゴムの間には僅かな空隙があり、軸部で輪ゴムと連結しているものであり、掴み部片は、引掛け部片の対向位置から中心線に対し右30度に振った点に、輪ゴム幅の小片を輪ゴムの外縁に突設させて形成したものである。
甲第3号証意匠は、平成4年7月28日に発行された公開実用新案公報平4-86761の第1図に記載のものであり、意匠に係る物品が本件類似意匠と同一であり、その形態は公報に記載されたとおりのものである(別紙第三参照)。
すなわち、その形態は、本件類似意匠と同じ基本的構成態様であり、正面視の具体的構成態様において、環状の輪ゴム部は、円環状であり、引掛け部片は、円環状の輪ゴムの一部(上部)にきのこ傘形状に設け、そのきのこ傘形状は、略半円状で、丸くて大きい頭頂部に切り込みを設けて左右に翼状片を形成し、傘形状と輪ゴムの間には空隙があり、軸部で輪ゴムと連結しているものであり、掴み部片は、引掛け部片の対向位置から中心線に対し左右30度に振った二点に、輪ゴム幅の小片を輪ゴムの外縁に突設して形成させたものである。
(2)無効理由Bの甲第1号証に示された意匠(本件本意匠)
本件本意匠は、平成7年10月3日に意匠登録出願をし、平成9年5月16日に意匠権の設定の登録がなされた登録第989315号の意匠であり、意匠に係る物品が本件類似意匠と同一であり、その形態は同意匠公報に記載されたとおりのものである(別紙第四参照)。
すなわち、その形態は、本件類似意匠と同じ基本的構成態様(請求人は、掴み部片を本件本意匠については突設片という。)であり、正面視の具体的構成態様において、環状の輪ゴム部と引掛け部片は、本件類似意匠と同じであり、掴み部片(請求人は突設片という。)は、引掛け部片とその対向位置との輪ゴムの左右中間点の二箇所に、輪ゴム幅の小片を輪ゴムの外縁に突設させて形成したものである。
3.本件類似意匠と証拠に示された各意匠の対比と比較検討
(1)無効理由Aの甲第2号証意匠及び同第3号証意匠との対比と検討
各意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については、以下の共通点と差異点がある。
(共通点)
本件類似意匠と甲第2号証意匠及び同第3号証意匠は、(1)環状の輪ゴム部を形成し、それに引掛け部片と掴み部片を設け、輪ゴム端部を引掛け部片に引っ掛けて結束するという基本的構成態様において共通する。また正面視の具体的構成態様において、(2)引掛け部片につき、長円環状の輪ゴムの一部(上部)にきのこ傘形状に設けた点、(3)掴み部片につき、引掛け部片の対向位置の中心線から左右に30度に振った点に、一又は二個の輪ゴム幅の小片を輪ゴムの外縁に突設させて形成したものである点において共通する。
(差異点)
一方、本件類似意匠と甲第2号証意匠及び同第3号証意匠は、正面視の具体的構成態様において、(ア)環状の輪ゴム部につき、本件類似意匠は、長円環状であるのに対し、甲第2号及び第3号証意匠は、円環状である点、(イ)引掛け部片きのこ傘形状につき、本件類似意匠は、頭頂部が丸くて大きく(切り込み無し)、そこから傘先が輪ゴム部に接近して細長く垂れ下がっているのに対し、甲第2号証意匠は、略半円状で頭頂部が丸くて大きく(切り込み無し)、傘形状と輪ゴムの間には僅かな空隙があり、甲第3号証意匠は、略半円状で、丸くて大きい頭頂部に切り込みを設けて左右に翼状片を形成し、傘形状と輪ゴムの間には空隙がある点、(ウ)軸部の輪ゴムとの連結部につき、本件類似意匠は切り込みがあるのに対し、甲第2号証意匠及び同第3号証意匠にはそれが無い点、(エ)掴み部片につき、本件類似意匠は、引掛け部片の対向位置から中心線に対し左30度に振った点に、輪ゴムの幅で、先が尖った小片を輪ゴムの外縁に突設させて形成したものであるのに対し、甲第2号証意匠は、掛け部片の対向位置から中心線に対し右30度に振った点に、輪ゴム幅の小片を輪ゴムの外縁に突設させて形成したものであり、甲第3号証意匠は、引掛け部片の対向位置から中心線に対し左右30度に振った二点に、輪ゴム幅の小片を輪ゴムの外縁に突設させて形成したものである点に差異がある
(比較検討)
そこで、両意匠の共通点、差異点について意匠全体として総合的に検討するに、基本的構成態様における共通点(1)は、両意匠の形態全体に係わるものであるが、請求人が提出した甲号証の従来登録例において多くみられ、ありふれたもので特徴はないから、両意匠の類否判断には影響しないものといえ、また共通点(2)の長円環状の輪ゴムの一部(上部)に引掛け部片をきのこ傘形状に設けた点、(3)の引掛け部片の対向位置の中心線から左右に30度に振った点に、一又は二個の輪ゴム幅の小片を輪ゴムの外縁に突設して掴み部片を形成したものである点もまた、形態の主要な構成要素に関するものであるけれども、従来登録例において多くみられること、そして差異点(イ)、(ウ)、(エ)に対してはこれらの共通点は概念的な共通点に止まるものであることから、これら共通点は、両意匠の類否判断を決定づけるものであるとまではいえない。
差異点についてみるに、正面視具体的構成態様における差異点(ア)の長円環状であるか円環状であるかの差は、弾力性ある輪ゴムであることを考慮すると両意匠の類否判断にはさ程影響しないといえ、差異点(イ)の引掛け部片きのこ傘形状につき、本件類似意匠は、頭頂部が丸くて大きく(切り込み無し)、そこから傘先が輪ゴム部に接近して細長く垂れ下がっているのに対し、甲第2号証意匠は、略半円状で頭頂部が丸くて大きく(切り込み無し)、傘形状と輪ゴムの間には僅かな空隙があり、甲第3号証意匠は、略半円状で、丸くて大きい頭頂部に切り込みを設けて左右に翼状片を形成し、傘形状と輪ゴムの間には空隙がある点は、視覚上の効果差(見た目の差)としてはかなり目立つものであり、両意匠の類否判断に与える影響は少なくないといえ、差異点(ウ)の本件類似意匠軸部の輪ゴムとの連結部には切り込みがあるのに対し、甲第2号証意匠及び同第3号証意匠にはそれが無い点は、本願類似意匠のものは甲第8号証にみられる切り込みよりも明瞭な切り込みであって、一応のみるべき特徴と認められるが、この点は細部の創作に係るもので両意匠の類否判断に与える影響は少ないといえ、差異点(エ)の掴み部片について、左30度に振ったか右30度に振ったかの差は無きに等しいものであり、本件類似意匠が先が尖った小片であるのに対し、甲第2号証意匠、甲第3号証意匠は輪ゴム幅の小片である点の差異が一応目立つところであるが、この点もまた細部の創作に係るもので両意匠の類否判断に与える影響は少ないといえる。
このように、各差異点単独では判断を決する要因にはなり得ないものの、形態の主要な構成要素に関する(イ)のきのこ傘態様の差を中心とした(ウ)の切り込みの有無、差異点(ア)の環状の差、(エ)の先が尖った小片であるか否かが相俟った視覚的な効果は、看者に与える大きな印象の差を生じさせ、概念的な共通点に止まる共通点(2)及び(3)を打ち破るに十分なものであって、両意匠の類否判断を決定づけるものであるといえる。
上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態について、両意匠の共通点および差異点を意匠全体としてみたとき、共通点は、差異点に対しては概念的な共通点に止まるものであるのに対し、各差異点が相俟って看者に与える大きな印象の差は、共通点を打ち破るに十分であって、両意匠の類否判断を決定づけるものであるといえるから、本件類似意匠は甲第2号証意匠、同第3号証意匠のいずれにも類似しないとするのが相当である。
(2)無効理由Bの甲第1号証意匠(「本件本意匠」)との対比と比較検討 両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については、以下の共通点と差異点がある。
(共通点)
本件類似意匠と本件本意匠は、(1)環状の輪ゴム部を形成し、それに引掛け部片と掴み部片(請求人は本件本意匠については突設片という。)を設け、輪ゴム端部を引掛け部片に引っ掛けて結束するという基本的構成態様であり、正面視の具体的構成態様において、(2)環状の輪ゴム部につき、長円環状である点、(3)引掛け部片につき、長円環状の輪ゴムの一部(上部)にきのこ傘形状に設け、そのきのこ傘形状は頭頂部が丸くて大きく(切り込み無し)、そこから傘先が輪ゴム部に接近して細長く垂れ下がり、軸部の輪ゴムとの連結部には切り込みがある点において共通する。
(差異点)
一方、本件類似意匠と本件本意匠は、掴み部片(請求人は本件本意匠については突設片という。)につき、本件類似意匠は、引掛け部片の対向位置から中心線に対し左30度に振った点に、輪ゴムの幅で、先が尖った小片を輪ゴムの外縁に突設させて形成したものであるのに対し、本件本意匠は、引掛け部片とその対向位置との輪ゴムの左右中間点の二箇所に、輪ゴム幅の小片を輪ゴムの外縁に突設させて形成したものである点に差異がある。
(比較検討)
そこで、両意匠の共通点、差異点について意匠全体として総合的に検討するに、基本的構成態様における共通点(1)は、両意匠の形態全体に係わるものであるが、請求人が提出した甲号証の従来登録例において多くみられ、ありふれたもので特徴はないから、両意匠の類否判断には影響しないものといえ、具体的構成態様に係る共通点(2)の長円環状である点もまた、同様に弾力性ある輪ゴムであることを考慮すると両意匠の類否判断にはさ程影響しないといえ、(3)のきのこ傘形状は頭頂部が丸くて大きく(切り込み無し)、そこから傘先が輪ゴム部に接近して細長く垂れ下がったものである点は、視覚上の効果(見た目)としてはかなり目立つものであり、両意匠の類否判断に与える影響は少なくないといえ、そして軸部の輪ゴムとの連結部には切り込みがある点は、一応のみるべき特徴と認められるが、この点は細部の創作に係るもので両意匠の類否判断に与える影響は少ないといえる。
このように各共通点単独では判断を決する要因にはなり得ないものの、形態の掴み部片を除く主要な構成要素に関する共通点(3)を中心とする共通点(2)の相俟った視覚的な効果は、掴み部片を除く各構成要素の態様がほぼ同一のものでもある点も加わって、概念的な共通性を超え、看者に与える印象の共通感を奏するに十分なものであって、両意匠の類否判断を決定づけるものであるといえる。
これに対し、掴み部片の差異点については、請求人は、本件本意匠のものは掴み部片ではなく突設片である旨主張するが、弾力性ある輪ゴムにおいて、必ずしも均一に伸びた状態で使用されるとは限らないことを考慮すると、請求人のいう突設片は引っ掛けた輪ゴム端部を引掛け部片から引き離す掴み部片としての機能をも果たし得るものであるから、その主張は採用できない。また、それが30度に振った点にあるか中間点にあるかの配設位置についての差異は、同様に弾力性ある輪ゴムであることを考慮するとさ程大きなものとはいえないこと、また、掴み部片が一つであるか二つであるかについても、請求人が提出した甲号証の従来登録例の本意匠と類似意匠の関係において既にみられるところであることからすると、差異点中、先が尖った小片であるか否かが一応目立つところであるといえる。
しかし、この点については、無効理由Aで前記したとおり、細部の創作に係るもので両意匠の類否判断に与える影響は少ないといえ、単独では判断を決する要因にはなり得ず、そうして上記に摘出したその他が相俟った効果を考慮してもなお、差異点は、両意匠のとりわけ(3)及び(2)の共通点が奏する看者に与える印象の共通感を打ち破るほどのものではない。
上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態について、両意匠の共通点および差異点を意匠全体としてみたとき、各差異点が相俟っても共通点が奏する看者に与える印象の共通感を打ち破るほどのものではないのに対し、各共通点が相俟った効果は、概念的な共通性を超え、看者に与える印象の共通感を奏するに十分なものであって、両意匠の類否判断を決定づけるものであるといえるから、本件類似意匠は本件本意匠に類似するものと認めるのが相当である。
4.結び
以上のとおりであって、本件類似意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同条同項柱書きの規定に違反して登録されたものではなく、また同法第10条第1項の規定に違反して登録されたものでもないので、請求人の提出した証拠及び主張によっては、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2005-02-18 
出願番号 意願平10-19530 
審決分類 D 1 113・ 3- Y (F4)
D 1 113・ 113- Y (F4)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 芳孝 
特許庁審判長 森 則雄
特許庁審判官 市村 節子
伊藤 敦
登録日 1999-07-23 
登録番号 意匠登録第989315号の類似意匠登録第1号(D989315/1) 
代理人 風早 信昭 
代理人 明田 莞 

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