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審決分類 審判    K6
管理番号 1121256 
審判番号 無効2004-88022
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-09-08 
確定日 2005-06-27 
意匠に係る物品 流体移送管用磁気活性器 
事件の表示 上記当事者間の登録第1037106号「流体移送管用磁気活性器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1037106号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張し、その証拠方法として、甲第1号証ないし甲第15号証を提出した。
1.本件登録意匠
意匠登録第1037106号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、意匠に係る物品を「流体移送管用磁気活性器」とするものである。
2.無効理由
(1)本件登録意匠は、本件登録意匠の出願前に頒布された刊行物に記載された意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、あるいは、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が本件登録意匠の出願前に日本国内において広く知られた形状に基いて容易に意匠の創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項に該当し、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。
(2)本件登録意匠は、意匠の創作をした者でないものであってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してなされたものであり、意匠法第48条第1項第3号に該当し、無効とすべきである。
(3)本件登録意匠は、日本における販売代理人としての地位を不当に独占する目的を意図して意匠登録出願したものであり、意匠法第5条第1号に該当し、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。
3.無効理由(1)のうちの意匠法第3条第1項第3号について
本件登録意匠の出願前、1997年に頒布された季刊誌であるThe Cooling Tower Institute 発行「CTI Journal summer l997 Vol.18,No.2 」(甲第6号証)の第48頁の続頁(第49頁)左上に、米国マグネジエン社の磁気活水器「Pipe Protector Mode1 2000」の斜視図が示されているが、図示の状況からは六面の形状のうち、三面の形状しか分からない。
三面形状から先行意匠には、少なくとも設置する流体移送管の軸方向にリベット締めされたコ字状カバー(商品ラベル付)、対向する側にそれぞれ凹部を形成した一対のプレート状コンセントレータ、このプレート状コンセントレータに接続するブロック状磁性体の存在を示しているが、これらがどのような形で構成されているかは、コ字状カバーが存在するために明らかでない。
そこで、本件登録意匠と甲第6号証に記載の「Pipe Protector Model 2000 」の類否を検討するに、本件登録意匠ではプレート状コンセントレータをビスによってブロック状磁性体に取り付けるのに対し、甲第6号証ではこの点が明らかでなく具体的態様で相違しているが、別部材を結合して一体構成とするときの常套手段に過ぎず、この具体的態様の差異が類否判断に与える影響は微弱である。
したがって、本件登録意匠は、甲第6号証に記載の意匠と類似するものである。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めると答弁し、その理由として、要旨次のとおり主張し、その証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証(枝番を含む。)を提出した。
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、流体を移送する管路(パイプ)外周に装着し、管路内部に磁界を形成して流体をイオン化して活性化する流体移送管用磁気活性器であり、その形態は、A.全体形状が概ね左右幅1.7、上下高さ1.1、奥行き1.0の比率の直方体状のブロック形状をなしており、B.上記ブロックは、直方体状の内部ブロック(中央の磁石と左右の金属片からなるコンセントレータ)の管路装着面側に左右に分割されたプレート状コンセントレータを、その中間に溝状の間隙を介して固着し、C.各プレート状コンセントレータは前後に2個等間隔に配置された4個の丸頭付ビスによって内部ブロック側に固着され、D.各プレート状コンセントレータの装着面側の内端に同心の円弧溝状の凹部が形成されており、E.上記内部ブロック及びプレート状コンセントレータの前後面及び底面には、薄板をアングル状に折り曲げた形状のカバーを、各面の左右端側及び装着面側端部側に幅狭の帯状露出部を残して嵌合状態で抱着しており、F.上記カバーの前後面の上方左右位置には該カバーを内部ブロック側に固定する固定ピンの丸頭状のリベットヘッドが突出している。
2.甲第6号証の意匠
甲第6号証第49頁の商品名「Magne Gen」と表示された意匠は、流体を移送する管路(パイプ)外周に装着して流体をイオン化する流体移送管用磁気活性器であるものと認められ、形態上は、A'.全体形状が概ね左右幅2.5、上下高さ1.9、奥行き2.5前後の比率の直方体状のブロック形状をなしており、B'.上記ブロックの管路装着面側には左右に分割されたプレート状コンセントレータと解されるものが、その中間に溝状の間隙を介して内部ブロック側に取り付けられ、C'.上記プレート状コンセントレータの装着面側の内部との取付構造及びその表面構成は不明である。D'.各プレート状コンセントレータの装着面側の内端に同心の円弧溝状の凹部が形成されている。E'.上記ブロック形状の前後面及び底面(パイプ装着面の反対側の面)の3面には、シート状のカバー又はレッテルと解されるものが、各面の左右端部に幅狭の帯状の露出部を残して貼り付けられているものと理解される。F'.上記カバー又はレッテルの前後面の先端左右位置には多数のドット(又は網目)が付された円形の模様が配されている。
3.本件登録意匠と甲第6号証の意匠の対比
両意匠はA〜FとA'〜F'のうち、A、B、DとA'、B'、D'は意匠の基本構成として共通しているものと認められるが、(1)CとC'において、本件登録意匠の各プレート状コンセントレータが前後2個のビスにより取り付けられ、その丸頭状のビスヘッドが管路装着面側に計4個表れているのに対し、甲第6号証の意匠にはこのような構成は見当たらない。(2)EとE'において、本件登録意匠はカバーが薄板ではあっても一定の厚みをもってチャンネル状に折り曲げ形成されており、これをブロック側に嵌合抱着していることが明らかであるが、甲第6号証の意匠のイラスト表示では、ブロックの3面を覆うのは厚みの殆どないシート状のカバー又はレッテル類を接着したものと看取される。(3)FとF'において、本件登録意匠においては、上記カバーを固定する固定ピンの丸頭状リベットヘッドがブロック前後面の左右位置に立体的に突出しているのに対し、甲第6号証意匠では前記シール状カバー又はレッテルの先端側に多数のドット又は網目模様で覆われた円形の模様として表れているに過ぎず、立体性は全くない。
4.本件登録意匠と甲第6号証意匠の類否
本件登録意匠と甲第6号証は、上記(1)〜(3)のような相違点があり、これと全体的に観察すると本件登録意匠は第1にプレート状コンセントレータの表面やブロック全体のカバーを取り付けるビスヘッドや立体的な丸頭状のリベットヘッドの存在、第2にカバー自体は明らかに厚みのある板状部材を折曲形成した立体感や剛性感を備えたものである点において、甲第6号証の意匠とは一般需要者にとって決して相紛らわしめることない外観上の特徴を備えたものである。
5.両意匠の類否等に関する請求人の主張について
請求人はプレート状コンセントレータの表面側について、別部材を結合する手段としてのビス止めは技術分野を問わず一般的である旨述べているが、意匠の判断においては、技術的にビス止めが一般的技術手段か否かではなく、ビス止めを用いた時にそのビス止めが当該意匠にどのように表われ、外観に影響を与えているかが問題であり、そうして判断した結果、記述のように本件登録意匠の管路装置面に平面図で示すような4個の円形ビスヘッドが配置されることは、これがないものと比べて大きな意匠的特徴となることは一見明白である。
よって、本件登録意匠は甲第6号証意匠とは非類似の意匠であることが明らかであり、請求人のこの点に関する主張は理由がない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9(1997)年10月8日に意匠登録出願され、その後平成11(1999)年2月19日に、意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1037106号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「流体移送管用磁気活性器」とし、形態は、願書に添付された図面の記載のとおりである(本件審決書に添付の別紙第1参照)。
すなわち、その形態は、基本的構成態様について、左右の磁極体の間に磁石を設けて略直方体状の本体とし、その本体の前後面及び下面にカバーを設けたものとし、各部の具体的態様について、(1)磁極体は、左右一対の角塊状磁極体と、その上方の左右一対の板状磁極体から成るものとし、上方の板状磁極体は、その中央に幅狭の間隙を設けて、内方側上面に弧状の凹部を形成したものとし、(2)カバーは、同幅の帯状薄板を、本体の前後面の上方と左右に幅狭の余地を残して倒コ字状に折り曲げたものとし、(3)リベットは、カバーの前後面の上方に丸リベットを左右2個設けたものとし、(4)ビスは、本体上面の左右に、皿ビスを前後2個設けたものである。
2.甲第6号意匠
甲第6号証に表された意匠(以下、「甲第6号意匠」という。)は、米国のThe Cooling Tower Instituteにより頒布された季刊誌、「CTI Journal summer l997 Vol.18,No.2 (甲第6号証)」第49頁左上に所載の、「MagneGen Mode1 2000 Pipe Protector」と記載された斜視図、および、これに関する記載の内容によって表された「磁気活水器」の意匠であって、形態は、同斜視図によって表されたとおりである(本件審決書に添付の別紙第2参照)。
そうして、甲第6号証は、その表紙における「summer l997」の記載、および、これに関する記載の内容から、1997年夏、遅くとも、本件登録意匠の出願前の1997年8月末日までに、米国において頒布された刊行物と認められる。
なお、被請求人は、甲第6号意匠について、そのコ字状カバーは、厚みの殆どないシート状のカバー又はレッテル類を接着したものと看取される旨、また、そのコ字状カバーのリベットは、多数のドット又は網目模様で覆われた円形の模様として表れているにすぎず、立体性は全くない旨主張している。
しかしながら、甲第6号意匠が「磁気活水器」であることを鑑みると、コ字状カバーは、同幅の帯状薄板を折り曲げたものと解されるものであり、また、コ字状カバーに設けられたリベットも、その前後面に設けられているものと解されるものであるから、被請求人の前記主張は、甲第6号意匠の斜視図を、物品性を考慮せずに、単なるイラストとして、硬直した捉え方に終始したにすぎず、採用できない。
すなわち、甲第6号意匠の形態(斜視図からは、形態全体が視認できるとはいい難いが、磁気活水器という物品を考慮して、すなわち、形態的及び機能的な合理性から推定して認定する。)は、基本的構成態様について、左右の磁極体の間に磁石を設けて略直方体状の本体とし、その本体の前後面及び上面にカバーを設けたものとし、各部の具体的態様について、(1)磁極体は、左右一対の角塊状磁極体と、その下方の左右一対の板状磁極体から成るものとし、下方の板状磁極体は、その中央に幅狭の間隙を設けて、内方側下面に弧状の凹部を形成したものとし、(2)カバーは、同幅の帯状薄板を、本体の前後面の下方と左右に幅狭の余地を残して倒コ字状に折り曲げたものとし、(3)リベットは、カバーの前後面の下方に左右2個設けたものである。
3.本件登録意匠と甲第6号意匠の対比
本件登録意匠と甲第6号意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態について(本件登録意匠及び甲第6号意匠において、管当接側を上方及びその管路を前後方向として認定する。)は、主として、以下に示す共通点及び差異点がある。
すなわち、両意匠は、基本的構成態様について、左右の磁極体の間に磁石を設けて略直方体状の本体とし、その本体の前後面及び下面にカバーを設けた点が共通し、各部の具体的態様について、(1)磁極体は、左右一対の角塊状磁極体と、その上方の左右一対の板状磁極体から成るものとし、上方の板状磁極体は、その中央に幅狭の間隙を設けて、内方側上面に弧状の凹部を形成している点、(2)カバーは、同幅の帯状薄板を、本体の前後面の上方と左右に幅狭の余地を残して倒コ字状に折り曲げたものとしている点、(3)リベットは、カバーの前後面の上方に左右2個設けている点が共通する。
一方、各部の具体的態様において、(ア)リベットの形状について、本件登録意匠は、丸リベットとしているのに対し、甲第6号意匠は、丸リベットとしているかどうか明確でない点、(イ)本体上面のビスの有無について、本件登録意匠は、その上面の左右に皿ビスを前後2個設けているのに対し、甲第6号意匠は、ビスの有無が不明である点に差異がある。
4.本件登録意匠と甲第6号意匠の類否判断
両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として検討する。
先ず、両意匠に共通するとした、全体の基本的構成態様については、形態全体の基調を表象するものであって、並びに、各部の具体的態様の(1)ないし(3)については、形態上の特徴を表出するものであり、これらの共通する態様が相俟って、両意匠の醸し出す形態全体の印象を同じにする程の著しい共通感を奏するものであるから、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。
次に、差異点とした各部の具体的態様のうち、(ア)のリベットの形状については、本件登録意匠は極普通の丸リベットであり、甲第6号意匠は、丸リベットとしているかどうか明確でないが、両意匠の何れも、円形を基にしている点で変わりはないものであり、格別特徴がない態様のリベットであって、それ程看者の注意を引くとはいえず、形態全体から観れば、その差異は、両意匠の共通点に包含される部分的な差異にすぎず、類否判断に及ぼす影響は微弱すぎない。(イ)の本体上面のビスの有無については、本件登録意匠が、その下面の左右に皿ビスを前後2個設けているとしても、極普通のビスをありふれた配置とした程度にすぎないものであり、使用状態においては視認し難い部分であることも勘案すると、甲第6号意匠のビスの有無が不明であっても、機能的にはともかく、形態上は格別看者の注意を引くとはいえないものであって、形態全体から観れば、その有無は、共通するとした態様の共通感を凌駕するものとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎない。
そうすると、前記の(ア)及び(イ)の差異点は、何れも類否判断に及ぼす影響が微弱にすぎず、さらに、それらの差異点を纏めても、両意匠の醸し出す形態全体の印象を異にする程の格別な特徴を表出するとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響がなお微弱の域を超えないといわざるを得ず、前記の共通点の奏する基調と特徴を凌駕して、類否判断を左右するとはいい難い。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、前記の共通点は、両意匠に著しい共通感を生じて、類否判断を左右するといわざるを得ないから、意匠全体として観察すると、類似するものというほかない。
5.むすび
本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当するものであり、同法同条同項柱書の規定に違背して登録されたものであるから、その余の点について審理するまでもなく、その登録は、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2005-04-18 
結審通知日 2005-04-21 
審決日 2005-05-17 
出願番号 意願平9-70939 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (K6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川越 弘綿貫 浩一 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 鍋田 和宣
小林 裕和
登録日 1999-02-19 
登録番号 意匠登録第1037106号(D1037106) 
代理人 河野 誠 
代理人 小林 英一 

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