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審決分類 |
審判 補正却下不服 取り消す J7 |
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管理番号 | 1124345 |
審判番号 | 補正2004-50030 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2005-11-25 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-29 |
確定日 | 2005-08-01 |
意匠に係る物品 | 医療用クリップ |
事件の表示 | 意願2003- 30182「医療用クリップ」において、平成16年6月28日付けでした手続補正に対してされた補正却下決定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
1.出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の記載 本願は、平成15年10月14日の部分意匠に係る意匠登録出願であり、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「医療用クリップ」とし、願書の「意匠の説明」の欄には、「実線で表した部分が部分意匠の意匠登録を受けようとする部分である。」との記載があり、願書に添付の図面には、「六面図」、「AーA拡大断面図」、「BーB拡大断面図」、「斜視図」、「開いた状態の斜視図」、「使用状態を示す参考図1」及び「使用状態を示す参考図2」の各図の記載があり、医療用クリップの形態のうち、実線で表した部分が部分意匠の意匠登録を受けようとする部分として表されている。 2.当該手続補正書 本願について、原審では、平成16年5月13日付起案日の「本願の意匠は、意匠登録を受けようとする部分とそれ以外の部分の境界が不明確であり、意匠登録を受けようとする部分の形状が特定せず、具体的な意匠を表したものと認められないから、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない。」とする拒絶理由が通知されたところ、出願人は、これに対する意見書とともに手続補正書を平成16年6月28日付で提出し、願書の「意匠の説明」の欄に、「一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」との記載を追加し、また、願書に添付した図面の記載中、「背面図」、「平面図」、「左側面図」、「斜視図」、「開いた状態の斜視図」、「使用状態を示す参考図1」及び「使用状態を示す参考図2」を補正するとした。 3.原審における補正の却下の決定 原審では、この補正に対して、「上記手続補正書により願書及び添付図面に意匠権を主張される部分とそうでない部分の境界を書き加えるべく補正されたが、これらの補正は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面を総合して判断しても特定できなかった意匠の要旨を特定するものであり、したがって、上記手続補正書による補正は、出願当初の願書の記載及び添付図面の要旨を変更するものと認められる。」旨の理由により、平成16年8月18日付起案日で、意匠法第17条の2第1項の規定に基づき補正の却下の決定をした。 4.請求人の同決定の取消理由 請求人は、これを不服として、概ね、「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とそれ以外の部分を明確にするための一点鎖線を加えるという補正を、原決定では、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて出願当初の願書の記載及び添付図面を総合して判断しても特定できなかった意匠の要旨を特定するものと判断しているが、当該補正は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を十分に特定している願書及び図面に、確認のために一点鎖線を加えたにすぎないものである。特許庁の意匠審査基準において、境界線の表示がないことが作図上の誤記と認められ、願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断すれば、意匠登録を受けようとする部分の境界を当然に導き出すことができる場合には、意匠が具体的なものと認められるとあり、そして、翻って本願についてみれば、記載全体から、意匠登録を受けようとする部分がクリップの爪状係止部形状にあることは明白であるから、一点鎖線を加えた補正は、願書の記載及び願書に添付した図面等を総合的に判断した場合に、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すこのができる同一性の範囲のものに訂正する場合に該当し、出願時の要旨を変更するものではない。」と主張して、同決定の取消しを求めたものである。 5.当審の判断 そこで、原決定の当否について検討する。 (1)まず、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の記載を検討するに、願書の「意匠の説明」の欄には、「実線で表した部分が部分意匠の意匠登録を受けようとする部分である。」との記載があり、願書に添付の図面には、「六面図」、「AーA拡大断面図」、「BーB拡大断面図」、「斜視図」、「開いた状態の斜視図」、「使用状態を示す参考図1」及び「使用状態を示す参考図2」の各図の記載があり、各図を通じ、医療用クリップの形態のうち係止部部分に実線が施され、その他の部分に破線が施されており、その形態は記載全体を総合すると以下のとおりである。 すなわり、形態全体は、支点軸で断面四角形の細長棒状体様のものを二つ折りにして装着し、これを開放して使用するものから成り、支点軸の反対側部分には、梃子の作用で装着、開放する係止部を設けたものであって、実線部分の形態(実線が施されている部分の形態)は、係止部のうち、正面視において凸弧状湾曲した板(爪先部に向かって漸次薄く形成されている。)で、これを平面視すると中央部に細横長方形切り欠きがある横長方形が現れる爪状形態であることが認められる。 他方、実線が施されている部分の記載を詳細に観ると、「背面図」、「平面図」、「左側面図」、「斜視図」、「開いた状態の斜視図」、「使用状態を示す参考図1」及び「使用状態を示す参考図2」の一部に実線が記載されていない(一つの領域が実線で閉じられていない。)部位(「背面図」の実線部分右側の部位、「平面図」の実線部分左上の部位、「左側面図」の実線部分左上の部位等)が確かに認められるところである。 (2)次に、当該手続補正書における記載内容を検討するに、願書の「意匠の説明」の欄に「一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」との記載が追加され、「背面図」、「平面図」、「左側面図」、「斜視図」、「開いた状態の斜視図」、「使用状態を示す参考図1」及び「使用状態を示す参考図2」が補正されたが、これらによれば、「背面図」の実線部分右側の部位、「平面図」の実線部分左上の部位等には実線の端と実線の端との間を結ぶ一点鎖線が施されており、「左側面図」の実線部分左上の部位に実線の端と破線の端との間を結ぶ一点鎖線が施されているところが認められる。 (3)以上の事実を踏まえて、出願当初の願書の記載又は願書に添付した図面についてした当該手続補正書による補正がこれらの要旨を変更したものであるかどうかについて検討する。 出願当初の願書に添付した図面の記載の実線部分の一部に実線が記載されていない(一つの領域が実線で閉じられていない。)部位が認められるところであるが、かかる不備があったとしても実線の端と実線の端とを結ぶ境界線を想定し、実線の端と破線の端(「左側面図」の当該破線の後方位置には、「正面図」、「平面図」、「AーA拡大断面図」の記載からすると内角壁面があり、この内角壁面の稜線を表す縦の実線が現れるはずであり、この意味では当該破線は境界線を示す破線に相当するものである。)とを結ぶ境界線を想定することによって、特定した実線部分の形態が善解し得るところであるから、かかる不備は誤記程度のものとするのが相当である。 そうとすると、当該手続補正書における図面の記載において、「背面図」の実線部分右側の部位、「平面図」の実線部分左上の部位等に実線の端と実線の端との間を結ぶ一点鎖線が施され、「左側面図」の実線部分左上の部位に実線の端と破線の端とを結ぶ一点鎖線が施されたが、これらの一点鎖線の記載の追加は、出願当初の願書に添付した図面の記載から想定し、善解し得る範囲のものであるから、当該手続補正書における図面の記載は、出願当初の願書に添付した図面の記載における境界線の表示がない作図上の誤記程度のものを確認的に訂正したまでの補正と認めるのが相当であって、意匠の要旨を変更したものとするには無理がある。 以上のとおりであって、当該手続補正書による補正は、出願当初の願書の記載及び願書に添付した図面の要旨を変更するものと認める、との原審における補正の却下の決定は、補正についての認定を誤ったものであって、取消しを免れない。 よって、結論のとおり、審決する。 |
審決日 | 2005-07-08 |
出願番号 | 意願2003-30182(D2003-30182) |
審決分類 |
D
1
7・
-
W
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 生亀 照恵 |
特許庁審判長 |
森 則雄 |
特許庁審判官 |
伊藤 敦 市村 節子 |
登録日 | 2005-10-21 |
登録番号 | 意匠登録第1257518号(D1257518) |
代理人 | 信末 孝之 |
代理人 | 岩本 牧子 |
代理人 | 山広 宗則 |