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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効としない J7
審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない J7
管理番号 1124379 
審判番号 無効2004-35122
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-03-01 
確定日 2005-09-29 
意匠に係る物品 輸液バッグ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1107140号「輸液バッグ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立ておよび理由
請求人は、意匠登録第1107140号(以下、「本件登録意匠」という)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として審判請求書に記載のとおりの主張をし、証拠方法として、甲第1号証乃至甲14号証の書証(枝番含む)及び検甲第1号証を提出した。
その主張の概要は、以下のとおりである。
(1)本件登録意匠は、その出願前公知意匠である登録第1016887号(甲第1号証、以下引用意匠1という)に類似し、意匠法第3条第1項第3号の規定に反して登録されたものであるから、同法第48条第1項第1号により無効とされるべきものである(以下、「無効理由1」という。)。

(2)本件登録意匠は、上記甲第1号証に示す引用意匠1に、甲第2号証(特開平10-15035号公開公報図1に示す意匠)に示す(以下、引用意匠2という。)を組み合わせることにより、当業者なら容易に意匠の創作ができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定に反して登録されたものであり、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきものである(以下「無効理由2」という。)。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として答弁書に記載のとおりの反論をし、乙第1号証及び乙第2号証の書証を提出したものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年6月20日に意匠登録出願し、平成13年2月23日に設定の登録がなされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「輸液バッグ」とし、その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである(別紙第1参照)。
すなわち、主な形態を、(A)下端部中央に抽出口栓を設け、袋部全体を薄いシート状の略縦長隅丸長方形状とし、シール部により上半部に薬剤収納室を、下半部に溶解液収納室を区分けして一連に設けた構成の輸液バッグであって、(B)一連の袋部(注出口栓及びアルミラミネートシートを除く)を左右対称の正背面を同形状とし、全体の外周形状を、上辺左右を隅丸状とし、下辺中央横幅1/2程の水平部から上方へ左右になだらかな斜辺を描き、角部を隅丸状とし、左右側辺中央稍下寄り部に稍浅い台形状の切り欠き部を設けたもので、熱溶着シール部は、(C)上半部の薬剤収納室を、縦横比6/5程の縦長隅丸長方形下方の左右両隅を内側に、外周台形切り欠き部斜辺とほぼ並行に傾斜させた逆台形状とし、その周りをシール部としたもので、上部シール部は幅広帯状とし、その中央に吊り下げ用の小円孔を穿ち、左右側部シール部は細幅帯状とし、傾斜部シール部はやや幅広帯状とし、下部シール部(上下収納室境部シール部)はその傾斜部シール幅の半分程の幅の帯状としたもので、(D)下半部の溶解液収納室を薬剤収納室より縦幅の長い(内容量の大きい)縦横比約2/1の略縦長隅丸長方形上方の左右両上隅部を内側に、外周台形切り欠き部斜辺と略並行状に傾斜させた台形状(薬剤収納袋の下部傾斜角より稍傾斜角が急)とし、下部を左右両側から中央下へなだらかな傾斜状とした形状とし、その上下部をシールした(左右側部はシール部なし)もので、下部シール部を細幅帯状とし、上部左右傾斜部シール部を下部シール幅の倍弱幅の帯状とし、境部シール部の内側の細幅シールを弱シールとし、それ以外のシール部を強シールとしたもので、(E)正面側上部吊り下げ用小円孔下あたりから中央部までを外形状とほぼ同形状で、下端左右両側部を切り欠き、中央部に小さな半円弧状の突出形状を設けたアルミラミネートシートで覆ったものである。
2.無効理由1について
請求人は、本件登録意匠は、引用意匠1(甲第1号証)と類似するものであるから意匠法第3条第1項第3号に該当すると主張するので、以下、検討する。
そこで検討するに、
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は前示のとおりの構成態様である
(2)甲号意匠
引用意匠1(以下甲号意匠という)は、平成8年4月24日に意匠登録出願し、平成10年5月22日に設定の登録がなされ、平成10年8月4日発行の意匠公報に掲載されたものであって、その公報の記載によれば、意匠に係る物品を「輸液バッグ」とし、その形態を同公報に記載されたとおりとするものである(別紙第2参照)。
なお、本件登録意匠との対比にあたっては甲号意匠を上下逆にし、吊り下げ部を上にした状態で検討する。
すなわち、その主な形態を、(ア)下端部中央に抽出口栓を設け、袋部全体を薄いシート状の略縦長長方形状とし、シール部により上半部に薬剤収容室(薬剤収納室)を、下半部に薬液収容室(溶解液収納室)を区分けして一連に設けた構成の輸液バッグであって、(イ)一連の袋部(注出口栓及びアルミ箔ラミネートフィルム(アルミラミネートシート)を除く)を左右対称の正背面を同形状とし、全体の外周形状を、上辺左右両角部を隅丸状とし、下辺中央横幅2/3程を水平部とし、その左右両角部を斜めに切り落としたもので、熱溶着シール部は、(ウ)上半部の薬剤収納室を、縦横構成比約3/4の隅丸横長長方形状とし、その縦幅は上半部縦幅(境部シール部を含む)の4/9程を占めるのみで、その余の周りの大半の部分をシール部が占めており、上部シール部は幅広帯状とし、その中央に吊り下げ用の小円孔を穿ち、左右側部シール部は上部シール部縦幅の約1/3程の稍細幅帯状とし、下部シール部(上下収納室境部シール部)はその左右側部シール部幅の倍強の帯状としたもので、(エ)下半部の溶解液収納室を、薬剤収納室より縦幅の長い(内容量の大きい)縦横比約10/9の略縦長隅丸長方形の下部を左右両側辺から中央下へ緩やかな湾曲傾斜状とした形状とし、その上下部をシールした(左右側部はシール部なし)もので、その上部を上半部下部(境部)シール部とし、左右両角隅部にほんの僅かな凹湾曲隅形状のシール部を設け、下部の湾曲傾斜状辺下部を稍細幅変形帯状のシール部とし、上下収納室の境部の内側のシール部を、「連通している弱接着部分(弱シール部)を剥離して」との説明の記載から、弱シール部とし、それ以外のシール部を強シール部としたものと認められ、(オ)正面側上部吊り下げ用小円孔下あたりから中央部までを外形状とほぼ同形状で、ほぼ正方形の下端両隅を隅丸形状とし、その下端細幅帯状部を斜めに僅かに浮かし、その上方に額縁状隅丸矩形状線を表したアルミラミネートシートで覆ったものである。
(3)本件登録意匠と甲号意匠との類否について
本件登録意匠と甲号意匠とを対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について以下に示す共通点及び差異点が主として認められる。 すなわち、共通点として、両意匠は、(a)同様に下端部中央に抽出口栓を設け、袋部全体を薄いシート状の略縦長長方形状とし、シール部により上半部に薬剤収納室を、下半部に溶解液収納室を区分けして一連に設けた構成の輸液バッグであって、(b)一連の袋部(注出口栓及びアルミラミネートシートを除く)を左右対称の正背面を同形状とし、全体の外周形状を、上辺左右角部を隅丸形状とした基本的な構成態様とした点、具体的には、熱溶着シール部を(c)上半部は、薬剤収納室の周りをシール部としたもので、上部シール部は幅広帯状とし、その中央に吊り下げ用の小円孔を穿ち、左右側部シール部は細幅帯状とした点、(d)下半部溶解液収納室は、薬剤収納室より縦幅の長い(室内容量の大きい)略縦長隅丸長方形の下部を左右両側辺から中央下へ緩やかな傾斜状とし、その上下部をシールしたもので、下部シール部を細幅帯状とし、上部シール部を境部シール部とし、左右側部にシール部を設けず、その境部シール部の内側の細幅シール部を弱シール部とし、それ以外のシール部を強シール部とした点、(e)正面側上部吊り下げ用小円孔下あたりから中央部までを外形状とほぼ同形状のアルミラミネートシートで覆った点、が認められる。
一方差異点は、(あ)本件登録意匠は、一連の袋部の左右側辺中央稍下寄り部に同形の稍浅い台形状の切り欠き部を設けたのに対して、甲号意匠にはそのような切り欠き部を設けていない点、(い)本件登録意匠は、袋部下辺形状を中央横幅1/2程の水平部から上方へ左右になだらかな斜辺を描き、角部を隅丸状としたのに対して、甲号意匠は、下辺中央横幅2/3程の水平部の左右角部を斜めに切り落とした形状とした点、(う)薬剤収納室の縦横構成比を、本件登録意匠は約6/5の縦長としたのに対して、甲号意匠は約3/4の横長とし、薬剤収納室形状と上半部シール部を、本件登録意匠は縦長隅丸長方形下方(1/4程)の左右両下隅を内側に、両側辺台形切り欠き部斜辺とほぼ並行に傾斜させた逆台形状としたもので、その傾斜部のシール部をやや幅広帯状とし、下部シール部(上下収納室の境部シール部)はその傾斜部シール幅の半分程の幅の帯状としたのに対して、甲号意匠の薬液収納室形状を、隅丸横長長方形状としており、その下方に左右の傾斜辺を構成していないので、下部シール部(境部シール部)はその左右側部シール幅の倍強の水平帯状とし、その上半部シール部の占める縦幅は、薬剤収納室縦幅の4/9程に対して、それ以上の5/9程を占めるシール部分が上半部の大半の面積を占めている点、(え)溶解液収納室の縦横構成比を、本件登録意匠は約2/1の縦長としたのに対して甲号意匠は約10/9とし、溶解液収納室形状とシール部を、本件登録意匠は略縦長隅丸長方形上方(1/3強程)の左右上隅部を内側に、両側辺台形切り欠き部斜辺と略並行状に傾斜させた台形状とし(薬剤収納袋の下部傾斜角よりやや傾斜角が急)、下方左右両側辺から中央下へなだらかな傾斜状とした形状としたもので、上部左右傾斜部シール部幅を下部シール部幅の倍弱幅(薬剤収納室下方傾斜シール部幅より稍幅狭)の帯状形状としたのに対して、甲号意匠は、溶解液収納室形状を略縦長隅丸長方形状とし、下方左右両側辺から中央下へ緩やかな湾曲傾斜状とした形状、上部を上下収納室境部水平帯状シール部形状とした点、(お)本件登録意匠は、アルミラミネートシート形状を縦長長方形状の下端左右両側部を切り欠き、中央部に小さな半円弧状の突出形状を設けたのに対して、甲号意匠は、ほぼ正方形の下端両隅を隅丸形状とし、その下端細幅帯状部を斜めに僅かに浮かし、その上方に額縁状隅丸矩形状線を表した点、が主に認められる。
そこで上記共通点と差異点につき、両意匠の類否判断に及ぼす影響を意匠全体として検討する。
まず、両意匠において共通する前記基本的構成態様の(a)及び(b)の点については、両意匠の属する分野においては通常みられる態様であって、両意匠にのみ限った格別特徴のある態様とは言えず、類否判断に与える影響は小さい。具体的な態様のうち、(c)の薬剤収納室の周りをシール部とすることも、上部シール部中央に輸液バッグ吊り下げ用の小円孔を穿つために幅広帯状とし、左右側部シール部は細幅帯状とすることも、いずれも輸液バッグの分野においては通常みられる態様であって、この点も類否判断に与える影響は小さく、(d)の溶解液収納室は、上半部の薬剤を溶解するために薬剤量より多量の溶解液を必要とすることから、薬剤収納室より縦幅の長い(内容量の大きい)略縦長隅丸長方形状としたまでであり、また、その下辺部を左右同隅丸形状とし、その左右両側辺から中央下へなだらかな傾斜状とした態様は、溶解液を中央注出口栓からスムーズに抽出するために傾斜状としたまでであり、このような形状とすることは用途及び機能的要請によるところとも言え、この分野では通常行われているところであり、両意匠に限った特徴とすることもできず、さらに、溶解液収納室の上下部をシールすることも、下部シール部に注出口栓を設け、その周りを補強するためにやや幅広帯状にすることも、溶解液収納室部分を手で押して上下室の隔壁を開通するため上下収納室の境部シール部の内側の細幅シール部を弱シール部とし、その他の部分を薬液が漏れないように強シール部とすることも、注出口栓や弱シール部を併設するために境部シール幅を側部シール部幅よりやや幅広の帯状とすることも、いずれも輸液バッグの分野においては、その機能を効率よく果たすため、形状やシール幅強度において共通する態様になることは避けられないものと認められることから、それぞれがともに両意匠のみの共通する特徴とすることもできず、類否判断に与える影響が大きいとは言い難く、(e)の正面側上部吊り下げ用小円孔下あたりから中央部までを外形状とほぼ同形状のアルミラミネートシートで覆った点は、薬剤収納室に挿入した薬剤の変質防止のための薄いシートであって、使用時には剥がしてしまうもので形状もほぼ外形状と同形状であることからこの点も類否判断判断に与える影響は小さいものと言えよう。
これに対して差異点は、(あ)の一連の袋部の左右側辺中央稍下寄り部に同形の稍浅い台形状の切り欠き部を設けた点については、両意匠の属する分野においては、上下収納室の境部シール部付近の両脇に半円弧形状や「く」の字形状などの小さな切り欠き形状を設けることは通常行われていることからすれば、この切り欠き形状を設けた点のみでは類否判断に与える影響はさほど大きいものとも言えない。(い)の袋部下辺形状については、中央水平部から左右になだらかな斜辺を形成し、両角を隅丸にしたか、水平部の両角部を斜めに切り落としたかの差異であり、その水平からの斜辺もなだらかであり、ともに中央には水平部を有し、左右の角を隅丸の湾曲状か、斜め直線状かの差であって、その差異はほんの僅かな差異に過ぎないものと言えよう。(う)の薬剤収納室の縦横構成比及び形状の差異については、挿入する内容物の多少に応じてその形状を変更することはこの分野において通常行われているところであり、例えば、基本形状の相似形あるいは縦横比の僅かな変更等については僅かな改変手法であって類否判断に影響をあまり及ぼさないものと考えられ易いが、両意匠の場合には、本件登録意匠は約6/5の長方形状の下方を逆台形状とし、左右側部、境部シール部を比較的細幅に構成したのに対して、甲号意匠は約3/4の横長隅丸長方形状とし、その周りシール部が上半部の大半部を占めていることから、その薬剤収納室が幅広シール部に囲まれ上半部の中で比較的小さな、かつ周りから孤立した印象を与えていることから、その収納室の縦横構成比及びその収納室形状の差異、さらにその収納室の周りのシール部幅との構成関係が上半部において明らかに相違することからすれば、その差異が類否判断に少なからず影響を与えるものと言わざるを得ない。さらに、中央部シール部形状を(う)の薬剤収納室の下方両内側への傾斜形状をその左右側辺台形状切り欠き部斜辺とほぼ平行に形成し、下方形状を逆台形状としたもので、その並行傾斜シール部をやや幅広帯状にした部分及び(え)の溶解液収納室の上方両内側への傾斜形状をその台形状切り欠き部斜辺と略平行状(薬剤収納室の下部傾斜角よりやや傾斜角が急)に形成し、その上方形状を台形状としたもので、その略平行状傾斜シール部を薬剤収納室傾斜シール部幅よりもやや幅広帯状にした部分と、境部シール部とが形成する中央部シール部態様、つまり、概略横倒Y字形状2字を相対抗するように繋いで形成したシール部の態様を、輸液バッグのほぼ中央部分に、全体の縦長さの1/3程を占める部分に表していることからすれば、その態様が全体に与える影響は大きく、特徴を形成しているのに対して、甲号意匠のように薬剤収納室下部幅広シール部及び左右側部の稍細幅シール部で構成する略U字形状と、溶解液収納室上辺両角隅の凹湾曲隅シール部とした態様は、大きく相違し、上記特徴あるシール部形状を有する形態との差異が類否判断に与える影響は大きく別異の態様とせざるを得ない。そうすると、上述のように、そのシール部により形成される態様が特に本件登録意匠の特徴を形成しており、さらに、そのシール部を仔細に観ると、その上下の傾斜シール部形状の長さも幅もその傾斜角度も微妙に相違することから、逆に上下に非対称とする、むしろ均衡を保たない微妙な変化を有する形態と言え、類否判断に与える影響は格別大きいと言わざるを得ない。それに加え、(え)の左右側部シール部分を設けていない溶解液収納室側辺と薬剤収納室の左右側辺の細幅シール部との上下態様の変化も上述したシール部に特徴を際だたせる効果を与え全体の構成態様に与える影響はかなり大きく、類否判断に与える影響も大きいと言わざるを得ない。
なお、(あ)において左右側片に設けた台形状切り欠き形状については、その形状の周りに特徴がない場合に、その切り欠き形状のみを観たときにはこの物品分野で通常行われている中央部分左右側片に設けられている小さな単なる切り込み形状であると言わざるを得ず、大きな特徴となりにくいものとしたものの、上述したように特徴あるシール部形状を構成する横倒Y字形状の一部を形成する台形切り欠き形状としてみた場合とでは大いに異なり、特徴ある態様を形成する一端を担う特徴の一部を構成しているものと認めざるを得ない。
(お)のアルミラミネートシートについては、そのシートそのものが薬剤の変質等を防ぐ薬剤収納室を覆うものであり、輸液バッグの分野においては通常観られるところであって、使用時には剥がしてしまうものであり、その形状も下辺左右両側部を切り欠き中央に小さな指掛け用の突出半円形状を設けたか、下辺両角を隅丸にし額縁状線を表したかの差異は、上半部外形状ほぼそのままの極薄シートであることからすれば、特に特徴を見いだすこともできず、類否判断に与える影響はほんの僅かなものにすぎないと言えよう。
そうすると、前述のとおり共通点はこの物品分野において通常みられる態様、あるいはこれら物品分野において機能を効率的等のため通常行われている範疇に入る形態であって、類否判断に影響を与えるものとは評価できず、これに対して両意匠の差異は、本件登録意匠の特徴をよく表すところに係わり両意匠の別異感を看者に強く印象付けており、共通点の類否判断に及ぼす影響を凌駕するに十分で、両意匠は全体として類似するものとすることができない。
なお、請求人は弁駁書を提出して、「プラスチックフィルム製の袋体の製造において、複数のプラスチックフィルムを熱シールした結果生ずるシール線により形成される形態はこの種袋体の製造方法に付随するものであり、意匠的効果は格別のものとは言えない。」と主張するが、確かにシール部形成においてはプラスチックフィルムを熱シールして製造する訳であるが、輸液バッグ全体のうちのどの部分をどの程度の幅に形成するかは事前に、輸液バッグとしての機能、効果を効率よくするため等を検討して企画、あるいは創作して決定しなければならない訳であって、その企画、創作に基づき決定されたシール部分の形状、幅を含む全体の形態を形成するための製造工程を調整した後製造することが通常と察せられることからすれば、確かにシール部を直接形成するのは機械で製造されるものの、製造前にシール部の形状、幅を創作、決定することから、そこに意匠の創作があったものと認められ、請求人の主張は採用することはできない。
4.無効理由2について
請求人は、本件登録意匠は、引用意匠1(甲第1号証)に、引用意匠2(甲第2号証)を組み合わせることにより、当業者なら容易に意匠の創作ができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定に該当すると主張するので、以下、検討する。
まず、本件登録意匠、引用意匠1の形態は、上記の通りの形態であって、引用意匠2(別紙第3参照)の主な形態は、上端部中央に吊り下げ用の突出片とその右に注入栓、下端部中央に抽出口栓をそれぞれ設け、袋部全体を薄いシート状の略縦長隅丸長方形状とし、周囲を細幅シール部で囲み、中央より上寄りにシール部で上半部に粉末製剤収納室、下半部に液状製剤収納室を区分けして一連に設けた構成の輸液バッグであって、中央上寄りのシール部の左右側片に半円弧状の切り欠き部を設け、吊り下げ突出片の左右角部をやや大きな隅丸状とし、その中央上寄りに吊り下げ用の穴を穿った形状としたもので、「ヒートシールは外力を加えることにより剥離可能に形成されている」ものである。
そこで検討するに、請求人は、引用意匠1の輸液バッグの形態に、引用意匠2に表された図の粉末製剤(引用意匠1では薬剤)の容器の中央やや上、両側辺に設けられた半円弧状の切り欠き形状を組み合わせる(半円弧状に切り欠く)ことにより、容易に意匠の創作ができたものと主張するが、まず、その基礎の形態となる引用意匠1は、上記の如く本件登録意匠とは類似するものとは言えないから、その類似しない引用意匠1の両側辺に本件登録意匠台形状の切り欠き形状と異なる半円弧状に切り欠いた形態を想定しても、そこには本件登録意匠と同様の形態をみいだすことができず、請求人が主張する容易に創作をすることができたものとは認められず、本件登録意匠は意匠法第3条第2項に該当する意匠ともいえない。
以上のとおりであるので、本件登録意匠は、請求人の主張及び提出した証拠によっては、意匠法第3条第1項第3項の規定に該当するにもかかわらず登録されたものとして、また、意匠法第3条第2項の意匠に該当するにもかかわらず登録されたものとして、その登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2005-02-23 
結審通知日 2005-02-25 
審決日 2005-03-08 
出願番号 意願2000-16728(D2000-16728) 
審決分類 D 1 11・ 121- Y (J7)
D 1 11・ 113- Y (J7)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
杉山 太一
登録日 2001-02-23 
登録番号 意匠登録第1107140号(D1107140) 
代理人 小松 陽一郎 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 藤本 昇 
代理人 宇田 浩康 
代理人 岩田 徳哉 
代理人 松井 宏記 
代理人 小谷 悦司 
代理人 薬丸 誠一 

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