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審決分類 審判    D4
管理番号 1130938 
審判番号 無効2004-88030
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2006-03-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-06 
確定日 2006-02-09 
意匠に係る物品 バーチカルウィンドエアーコンディショナー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1196747号「バーチカルウィンドエアーコンディショナー」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1196747号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由
請求人は、結論と同旨の審決を求める、と申し立て、その理由として、審判請求書の記載のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証の書証を提出した。その要点は以下のとおりである。
1.無効理由の要点
本件登録意匠は、甲第1号証〜甲第4号証で示す公知意匠「CW-169NR」と類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。
2.本件登録意匠を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠の要旨
(a)本件登録意匠は、意匠登録第1196747号の意匠公報に記載のとおり、意匠に係る物品を「バーチカルウィンドエアーコンディショナー」とし、その形態は、基本的構成形態を見ると、全体形は縦長の略直方体である。縦長の略直方体の前面パネルの背面と底面に底板が固定され、この底板は、前面パネルの底面に固定された板状体と横長の略直方体からなる。底板の略直方体の部分の上部と前面パネルの背面に、縦長の略直方体である後板が固定され、後板の上面は、前面パネルの上面より低く、後板と前面パネルはその上部で段差を有している。
(b)更に具体的態様について見ると、正面図において、全体は縦長の略長方形であり、前面パネルの4隅はアールになっている。右側端の上部から右側端の上下方向中央やや下方にかけて、縦長の略長方形の室内側吹出口が形成され、一部を覆うように左右風向板兼吹出口蓋、左側には縦長の略長方形のフィルタ引出部が形成されている。左右風向板兼吹出口蓋の下側には、縦長の小さい長方形体と、更にこの小さい長方形体の下側に連なって、大きい長方形体が形成されている。小さい長方形体と大きい長方形体の左側には、縦長の長方形のランプ表示部が形成され、表示部内には上部から中央にかけて3つの連なる横長の長方形と5つの連なる横長の長方形と1つの縦長の長方形が形成されている。フィルタ引出部とランプ表示部の左側には上部から下部にかけて多数の等間隔の縦線で表される室内側吸込口が形成されている。室内側吸込口の左側には上部と下部がアールとなっている縦長の空白を形成している。また、上部中央には据付用ハンドルが横長の略長方形に突出し、この左側には中央に円形のネジ止め穴を備えた突部を形成している。また、下部には線状の底板が固定されている。
(c)平面図において、全体形は横長の略長方形である。前面パネルは横長の略長方形であり、左右には斜辺が、下側は緩やかなアールに、上側の辺には線状の後板の合わせ面が形成されている。前面パネルとは反対側に横長の略長方形の後板が固定され、前面パネルとは反対側の後板の辺には線状の縁が形成されている。合わせ面の中央から上側には据付用ハンドルが形成され、この左側にはネジ止め用の突起を形成している。
(d)左側面図において、全体形は縦長の略長方形である。前面パネルは縦長の略長方形であって右側には上部から下部にかけて線状の室内側吸込口が、左側端の上部から下部にかけて線状の後板の合わせ面が形成されている。合わせ面の左側には縦長の略長方形の後板が固定され、前面パネルとは反対側の後板の辺には線状の縁が形成されている。前面パネルと後板の上面は段差が形成され、合わせ面の上端から左側には据付用ハンドルの斜辺とネジ止め用の突部が形成されている。
(e)右側面図において、全体形は縦長の略長方形である。前面パネルは縦長の略長方形であって左側には上部から下部にかけて線状の室内側吸込口が、右側端の上部から下部にかけて線状の後板の合わせ面が形成されている。合わせ面の右側には縦長の略長方形の後板が固定され、前面パネルとは反対側の後板の辺には線状の縁が形成されている。前面パネルと後板の上面は段差が形成され、合わせ面の上端から右側には据付用ハンドルの斜辺とネジ止め用の突部が形成されている。
(f)背面図において、全体形は縦長の略長方形である。後板の右側端は、上部から下部にかけて格子状の室外側吹出口が形成され、この室外側吹出口は横桟によって上下方向5段に、縦桟によって左右方向4段に区画して形成されている。後板の中央部は上部から下部にかけて格子状の室外側吸込口が形成され、この室外側吸込口は横桟によって上下方向5段に、縦桟によって左右方向13段に区画して形成されている。また、後板の下側には横長の略長方形の底板が固定されている。また、上部中央には据付用ハンドルが横長の略長方形に突出し、この右側には中央に円形のネジ止め穴を備えた突部を形成している。
(g)底面図において、全体形は横長の略長方形である。前面パネルは左右端部と上部がコの字形であり、左右には斜辺が形成されている。底板は前面パネルの内側から下部にわたって形成されている。底板の中央から右側に略正三角形のリブを形成し、この略正三角形の頂点にはそれぞれ円形で、各円形から略正三角形の中心に向かってリブを形成し、更に略正三角形の各辺から各辺に垂直なリブをそれぞれ3本形成している。底板の下部中央には円形の凹部と、この円形からややななれた上側外周に略半円形のリブが形成され、この半円形の左右側部から左右方向に直線状のリブが連なって形成されている。底板の略正三角形部分を除く、略半円形よりも上側の部分は多数のリブで区分される略長方形が形成されている。
(2)公知意匠が存在する事実及び証拠の説明
請求人は、本件登録意匠の出願前、公知意匠が存在する事実及び証拠として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、その存在する事実を申し立てると共に、公知意匠「CW-169NR」の形態を説明した。
イ.公知意匠が存在する事実及び証拠
甲第1号証は、本件登録意匠の出願前、平成11年3月に請求人が発行したカタログであり、第22頁に記載された「CW-169NR」公知意匠である。
甲第2号証は、本件登録意匠の出願前、平成11年度に請求人が製造、販売を行った公知意匠「CW-169NR」の製品の写真である。
甲第3号証は、請求人が本件登録意匠の出願前、平成11年8月6日に
公知意匠「CW-169NR」の販売を行った事を証明する売上伝票の写しである。
甲第4号証は、本件登録意匠の出願前、平成11年7月に頒布された刊行物の抜粋の写しで、社団法人日本冷凍空調工業界発行の「ルームエアコン検定制度ルームエアコン登録リスト平成11年度」第6頁に公知意匠「CW-169NR」が、製造、販売の目的で社団法人日本冷凍空調工業界に登録されたことを証明するものである。
ロ.公知意匠「CW-169NR」の形態
(a’)基本的構成態様を見ると、全体形は縦長の略直方体である。縦長の略直方体の前面パネルの背面と底面に底板が固定され、この底板は、前面パネルの底面に固定された板状体と横長の略直方体からなる。底板の略直方体の部分の上部と前面パネルの背面に、縦長の略直方体である後板が固定され、後板の上面は、前面パネルの上面より低く、後板と前面パネルはその上部で段差を有している。
(b’)更に具体的態様について見ると、正面図において、全体は縦長の略長方形であり、前面パネルの4隅はアールになっている。右側端の上部から右側端の上下方向中央やや下方にかけて、縦長の略長方形の室内側吹出口が形成され、一部を覆うように左右風向板兼吹出口蓋、左側には縦長の略長方形のフィルタ引出部が形成されている。左右風向板兼吹出口蓋の下側には、縦長の小さい長方形体が形成され、この小さい長方形体内には上部に「corona」の文字が表示され、その下方に設定室温等を表示する略正方形のデジタル表示が、更にその下方には楕円形の運転・停止スイッチが、更にその下方には横長で略長方形であり、左右1対の室温設定スイッチが形成され、更にその下方には「CW-169NR」の製品名が表示されている。そして、この小さい長方形体の下側に連なって、大きい長方形が形成されている。小さい長方形体と大きい長方形体の左側には、縦長の長方形のランプ表示部が形成され、表示部内には上部から中央にかけて3つの抜き文字が、フィルタ引出部とランプ表示部の左側には上部から下部にかけて多数の等間隔の縦線で表される室内側吸込口が形成されている。室内側吸込口の左側には上部と下部がアールとなっている縦長の空白を形成している。また、上部中央には据付用ハンドルが横長の略長方形に突出し、この左側には中央に円形のネジ止め穴を備えた突部を形成している。
(c’)平面図において、全体形は横長の略長方形である。前面パネルは横長の略長方形であり、左右には斜辺が、下側は室内側吸込口の溝が鋸歯形状に、上側の辺には線状の後板の合わせ面が形成されている。前面パネルとは反対側に横長の略長方形の後板が固定され、前面パネルとは反対側の後板の辺には線状の縁が形成されている。合わせ面の中央から上側には据付用ハンドルが形成され、この左側にはネジ止め用の突起を形成している。
(d’)左側面図において、全体形は縦長の略長方形である。前面パネルは縦長の略長方形であって右側には上部から下部にかけて線状の室内側吸込口が、左側端の上部から下部にかけて線状の後板の合わせ面が形成されている。合わせ面の左側には縦長の略長方形の後板が固定され、前面パネルとは反対側の後板の辺には線状の縁が形成されている。前面パネルと後板の上面は段差が形成されている。
(e’)右側面図において、全体形は縦長の略長方形である。前面パネルは縦長の略長方形であって左側には上部から下部にかけて線状の室内側吸込口が、右側端の上部から下部にかけて線状の後板の合わせ面が形成されている。合わせ面の右側には縦長の略長方形の後板が固定され、前面パネルとは反対側の後板の辺には線状の縁が形成されている。前面パネルと後板の上面は段差が形成され、合わせ面の上端から右側には据付用ハンドルの斜辺とネジ止め用の突部が形成されている。
(f’)背面図において、全体形は縦長の略長方形である。後板の右側端は、上部から下部にかけて格子状の室外側吹出口が形成され、この室外側吹出口は横桟によって上下方向10段に、縦桟によって左右方向4段に区画して形成されている。後板の中央部は上部から下部にかけて格子状の室外側吸込口が形成され、この室外側吸込口は横桟によって上下方向5段に、縦桟によって左右方向13段に区画して形成されている。また、後板の下側には横長の略長方形の底板が固定されている。また、上部中央には据付用ハンドルが横長の略長方形に突出し、この右側には中央に円形のネジ止め穴を備えた突部を形成している。
(g’)底面図において、全体形は横長の略長方形である。前面パネルは左右端部と上部がコの字形であり、左右には斜辺が形成されている。底板は前面パネルの内側から下部にわたって形成されている。底板の中央から右側に略正三角形のリブを形成し、この略正三角形の頂点にはそれぞれ円形で、各円形から略正三角形の中心に向かってリブを形成し、更に略正三角形の各辺から各辺に垂直なリブをそれぞれ3本形成している。底板の下部中央には円形の凹部と、この円形からややななれた上側外周に略半円形のリブが形成され、この半円形の左右側部から左右方向に直線状のリブが連なって形成されている。底板の略正三角形部分を除く、略半円形よりも上側の部分は多数のリブで区分される略長方形が形成されている。
(3)本件登録意匠と公知意匠との類否
(a”)エアーコンディショナーを設置すると、看者の視線が最も注目する面は正面であることから、正面からの印象が最も美感に影響を与えるので、本件登録意匠と公知意匠との類否判断においては、正面の形態を主体に置いて判断し、上面、側面、背面、底面は、補助的に判断する。
(b”)正面
両意匠の全体形、室内側吸込口、室内側吹出口、左右風向板兼吹出口蓋、底板の形態大きさ、位置は同じである。また、本件登録意匠の「左右風向板兼吹出口蓋の下側にある、縦長の小さい長方形体の内側が空白で表されている。」この小さい長方形体は、被請求人が平成15年9月16日に提出した意見書の第2頁第26〜28行目に「(3)本願意匠は正面図において、本体右上の吹出口の真下にタッチコントロール部(2つの縦長矩形のうち、上部の縦長がタッチコントロール部で、下部の縦長矩形は装飾部分。)とディスプレイを配してなるのに対し、」と記載されるように図面には表されていないが、小さい長方形体は操作スイッチ類を備えており、公知意匠と同じ機能を備え、かつ、同じ大きさで、同じ位置である。また、公知意匠は、下部の線状の底板が明確に表されていないが、左右の側面図と底面図を見れば、線状の底板が有る事は明白であり、この点においても両意匠は一致するものである。一方、公知意匠が、室内側吹出口内の室内側ファンの端部が表されていない点で相違する。またランプ表示部内のランプの位置が相違する。しかし、この2つの相違点は些細な相違点である。
従って、正面において、本件登録意匠と先行意匠は大変近似するものである。
(c”)上面
両意匠の全体形、後板、据付用ハンドル、ネジ止め用突起の形態、大きさ、位置は同じである。一方、本件登録意匠の前面パネルの下側が緩やかなアール形状であるのに対し、公知意匠は、鋸歯形状に表されている点で相違するが、エアーコンディショナーを設置すると、上面は看者にとって見難い面であることから、ほとんど美感に影響を与えない。
(d”)左側面及び右側面
両意匠の全体形、前面パネル、後板、底板の形態、大きさ、位置は同じである。
(e”)背面
両意匠の全体形、底板、据付用ハンドル、ネジ止め用突起の形態、大きさ、位置は同じである。一方、両意匠の後板に備えた、室内側吹出口の横桟の本数のみが相違するが、この相違点は些細な相違点である。
(f”)底面
両意匠の全体形、底板の形態、大きさ、位置は同じである。特に底面の大部分を構成する底板においては、凹凸形状や穴等の形態、大きさ、位置の細部にわたって全く同じである。一方、本件登録意匠の前面パネルの上側が緩やかなアール形状であるのに対し、公知意匠は、鋸歯形状表されている点で相違するが、エアーコンディショナーを設置すると、底面は看者にとって見難い面であることから、ほとんど美感に影響を与えない。
(g”)本件登録意匠に係る物品と公知意匠に係る物品は同じであり、本件登録意匠と公知意匠とは正面において大変近似し、かつ、上面、左側面、右側面、背面、底面においても大変近似している。
(h”)以上により本件登録意匠と公知意匠とを全体的に観察してみると本件登録意匠は公知意匠に類似する。
第2.被請求人の答弁
被請求人に対して、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、その期間を経過しても、被請求人からは、答弁書の提出がなかったものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14年9月11日の出願に係り、平成15年12月19日に設定の登録がなされた意匠登録第1196747号であって、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「バーチカルウィンドエアーコンディショナー」とし、その形態を、願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
2.甲号意匠
請求人は、本件登録意匠の出願前、公知意匠「CW-169NR」が存在する事実及び証拠として甲第1号証ないし甲第4号証の書証を提出した。そこで、各書証を見ると、甲第1号証のカタログは、表紙に1999年用カタログ(’99カタログ)と明記し、後付にも「平成11年3月現在のもの」と明記されていることから、本件登録意匠の出願前、少なくとも平成11年3月末の時点において、公然知られたものと認められる。一方、甲第2号証については、請求人自身が公知意匠「CW-169NR」の製品の写真と主張するものであるが、それらの写真自体からは公知日が特定できず、平成11年度に請求人が製造、販売を行ったことを直接証明しているものとは言い難く、また、甲第3号証は、請求人発行の売上伝票で、甲第4号証は、消費電力等の性能に関する検定結果であって、いずれも製品番号の記載はあるものの、形態を示す書証が伴われていないことから、製品「CW-169NR」の形態が公然知られた事実を直接示すものとはなっていない。よって、当審においては、甲第1号証の書証に掲載された製品「CW-169NR」の意匠を甲号意匠として検討する。
すなわち、甲号意匠は、株式会社コロナが、平成11年3月に発行したカタログ「CORONA エアコン’99カタログ 空気清浄&光脱臭/マイナスイオン 異風人」、第22頁の左上欄に記載され、製品番号「CW-169NR」と表示された窓取付け用エアーコンディショナーの意匠であって、その形態を同写真版に現されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
3.本件登録意匠と甲号意匠の類否について
そこで、本件登録意匠と甲号意匠とを対比すると、両意匠は、意匠に係る物品がともに窓取付け用エアーコンディショナーであって共通し、形態について、主として、以下に示すとおり、共通点及び差異点が認められる。
両意匠は、共通点について、(1)全体を、横幅に対して、高さを約2.2倍強、奥行きを約0.6倍強とする扁平な縦長略直方体状筐体(甲号意匠は、上記カタログ記載の大きさの数値を参照)の、前後に二分し、前面側筐体の厚みを後面側筐体より厚くし、その前面側筐体の前面を、左寄りの筐体横幅の約3/5強の範囲を、縦極細スリットを多数等間隔に設けた吸込口部とし、その右側に、上方より中央やや下方にかけて、外郭形状を縦長長方形状とし、その内部を縦列に右より吹出口用ルーバー、吹出口開口部、フィルタ引出部とする吹出口部、その吹出口部下の左寄りに、細幅縦長長方形の表示部、さらに表示部右に隣接して、ルーバー下にやや幅広の余地部を開け、略縦長長方形状区画部(甲号意匠にあって、同カタログ公知意匠掲載同頁の中欄右側、「簡単操作スイッチ」写真版参照)を配置した基本的構成態様とした点、
さらに、具体的構成態様として、(2)筐体形状につき、前面側筐体を、各面との稜部を小丸面状とし、上面と両側面を前方をやや窄めるように僅かな傾斜面とし、後面側筐体を、上面を前面側筐体より僅かに低くし、前面側筐体との境界寄りの中央に、ネジ止め金具と据付用ハンドルの小さな突部を並設した点、
(3)前面側筐体の前面形状につき、四周に極細幅帯状の枠状余地部を形成し、その内側に、吸込口部の左端にさらに四周余地部の約3倍幅の細幅帯状の余地部を加え、吸込口部のスリットを上下余地部間に設け、吹出口部の左右両部と上部の周囲に、四周余地部よりやや幅広の細幅帯状余地部を設け、吹出口部の内部を、横幅の1/2強を吹出口用ルーバー、残余部をほぼ二分して吹出開口部とフィルタ引出部を並設し、開口部横幅と同幅の表示部を、吹出開口部下方延長線上に、下端にルーバー横幅とほぼ同幅の余地部を残して設け、さらに表示部右側に隣接して、ルーバー下にルーバー横幅弱の間隔を開け、ルーバー横幅とほぼ同幅とする区画部を形成した点、
(4)表示部の表示を、表示部の上方寄りに横長小長方形の数個を縦列状に配列した点が、主として共通する。
一方、両意匠には、差異点として、(ア)筐体形状につき、本件登録意匠は、前面側筐体と後面側筐体の厚みの比が約2対1であるのに対して、甲号意匠は、正面を中心にして、やや上方の右側面側から見た斜視図であって、厚み比が正確には不明確で、かつ、背面・左側面・底面の態様が不明である点、
(イ)前面側筐体の前面形状につき、四周に形成された余地部幅が、本件登録意匠は、四周同一幅であるのに対して、甲号意匠は、下部の余地部幅が他の余地部幅の約3倍であり、表示部の右側に隣接した区画部を、本件登録意匠は、長短二つの縦長長方形を上下連ねたものとしたのに対して、甲号意匠は、上部に略縦長長方形状区画部を設け、その内部に設定温度等表示部と操作スイッチを設けた点、
(ウ)表示部の表示につき、本件登録意匠は、表示部の上方寄りの上部から、横長小長方形を3つ縦に連ね、その下に同長方形縦幅2個分程度の間隔を開け、同長方形を5つ縦に連ね、さらにその下に同長方形縦幅1個分程度の間隔を開け、やや縦長小長方形を配列したのに対して、甲号意匠は、表示部の上方寄りに、3つの横長小長方形を各々切り離し、下方をやや広く離して配列し、その長方形内及び長方形間に文字を表した点に、主とした差異がある。
そこで、これらの共通点及び差異点を比較検討して、両意匠の類否を意匠全体として判断する。
まず、共通点(1)の構成態様は、窓取付け用エアーコンディショナーの基本的構成態様に係り、全体の骨格を形成するものであり、特に前面側筐体前面形状の構成態様は、主要な構成部分である吸込口部、吹出口部、表示部等で占められ、看者の注意が注がれるが、各部の構成態様及び配置構成を共通にし、顕著な特徴を表すものとなって、両意匠の共通感を強めているので、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。さらに、共通点(2)ないし(4)の構成態様の加味により、共通点(1)における共通感をより強めるものであり、共通点が相まって奏する効果は、両意匠の支配的基調を形成し、両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きくなるから、両意匠の類否判断を決定付けるものとなっている。
一方、差異点(ア)は、甲号意匠が斜視図の状態であることによるが、正面を中心に上面と側面を現したものであるから、厚み比が正確には不明確であっても、共通点(1)及び(2)のとおりであるから、特徴を捉えるに充分であり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は、ほとんどないものである。
差異点(イ)につき、四周に形成された余地部幅の相違は、甲号意匠の下部余地部幅ももとより狭く、細部の箇所の相違であり、下部区画部の有無の相違も、区画部がありふれた長方形であって、何ら注意を惹きつけるところではなく、上部区画部内の操作スイッチ等の有無の相違も、その点だけを見れば、相違するとも言えるが、区画部という狭い範囲で、操作スイッチ等を単に寄せ集めた態様であり、格別注意を惹きつけるところとはならず、結局、それらの相違によって、共通点(1)ないし(4)が奏する共通感を到底覆し得るものではなく、両意匠の類否判断に及ぼす影響は、微弱なものと言わざるを得ない。
差異点(ウ)は、表示部が元々狭く、各表示自体も、個々に小さな表示である上、本件登録意匠の長方形も、甲号意匠の文字による表示も、極めてありふれた表示であり、何ら注意を惹きつけるところではなく、むしろ、光の点灯等によって、視覚的には縦列に配列した表示として共通感を抱かせるものであり、表示部の差異は両意匠の類否判断にほとんど影響を及ぼすものではない。
結局、本件登録意匠は、甲号意匠と意匠に係る物品が一致し、形態においても、各差異点のいずれも類否判断に及ぼす影響が微弱なものであり、差異点の相まって奏する効果を考慮しても、両意匠が持つ共通感を凌駕するものではないことから、本件登録意匠は、意匠全体としてみた場合、甲号意匠に類似するものである。
4.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条同項の規定に違反して登録されたものであるから、意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し、その登録は無効とすべきものである。
なお、請求人は、無効理由として、本件登録意匠は、公知意匠「CW-169NR」と類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであるとしているが、類似する意匠にあっては、同法同項第3号の規定によるものであり、誤りである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2005-09-12 
結審通知日 2005-09-14 
審決日 2005-09-28 
出願番号 意願2002-24701(D2002-24701) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (D4)
最終処分 成立  
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 樋田 敏恵
杉山 太一
登録日 2003-12-19 
登録番号 意匠登録第1196747号(D1196747) 

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