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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1
管理番号 1134406 
審判番号 不服2005-7721
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-28 
確定日 2006-04-04 
意匠に係る物品 鋸用柄 
事件の表示 意願2004- 6344「鋸用柄」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は、平成16年(2004)3月2日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「鋸用柄」とし、その形態は、願書に添付した図面に記載されたとおりのものである(別紙第一参照)。

第2 引用意匠
本願意匠が類似するとして原審が拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、本願の出願の日前、平成8(1996)年7月24日に発行された意匠公報に掲載された意匠登録第959211号の「鋸の柄」の意匠であって、その形態は、上記意匠公報に記載されたとおりのものである(別紙第二参照)。

第3 両意匠の対比
本願意匠と引用意匠を対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、両意匠の形態(本願意匠の方向に倣って、引用意匠の方向を認定する。)については、主として以下の共通点と差異点が認められる。
基本的構成態様の共通点は以下のとおりである。
(1)全体が、細長の棒状体であって、その大部分を断面が略縦長楕円形の握り部として、その右端に薄い板状体を垂直状に設けて鋸の取付部としたものである。
具体的構成態様の共通点は以下のとおりである。
(2)握り部は、左右に若干の余地部を残して、細かい節状に表れており、表面にはその節から成る凹凸が細かく形成されている。
(3)取付部は、板体を上辺で二つ折りにして、正面側板と背面側板から形成され、正面から見て右下部の両側板が大きく切り欠かれて、握り部寄りの縦幅が大きく、先端寄りの縦幅を小さくしたものである。
一方、具体的構成態様の差異点は以下のとおりである。
(イ)本体部の構成態様について、本願意匠では、握り部の節が、外周面に線状体が螺旋状に巻かれるような配置で、正面視やや斜め状に表れているのに対して、引用意匠では、リング状に連続するような配置で、垂直状に表れている。
(ロ)取付部の構成態様について、本願意匠では、握り部寄りのやや下方に二重円状凹部が形成され、先端寄りの下端付近に正背面側板の屈曲による水平線が形成されているが、引用意匠にはそのような凹部や水平線は無い。また、本願意匠では、正面から見た右下部の背面側板縁が斜め直線状であり、正面側板縁が略ヘ字状に表れて、その部分に略ヘ字状切り欠き部を形成しているのに対し、引用意匠では、両側板縁が弧状であり、略ヘ字状切り欠き部は形成されていない。

第4 両意匠の類否の判断
両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として考察すると、前記共通するとした、(1)の基本的構成態様、及び具体的構成態様の共通点(2)及び(3)は、本件登録意匠の出願前にこの種物品の属する分野において、他にも見受けられる態様であって(例えば、実用新案出願公開昭62-194003。)、格別看者の注意を惹くものとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響は微弱にすぎず、それらの共通点をまとめても、特段際立った特徴を奏するとはいい難いので、類否判断に及ぼす影響はなお微弱の域を超えるものではない。
また、具体的構成態様の差異点(イ)についても、本願意匠に見られる握り部の節の態様は、この種物品分野においてありふれた態様である(例えば、上記の実用新案出願公開。)ので、差異点(イ)は看者の視覚的注意を惹くものとはいえないが、一方で、具体的構成態様(ロ)の差異点については、以下のとおり、両意匠の類否判断を左右する要素であるということができる。
先ず、本願意匠に見られる二重円状凹部について、この種物品分野においては、略同位置に鋸を固定するための係止部が凸状又は面一致状に設けられることが多いことを踏まえると、凹部状に、しかも二重線状に表れる本願意匠のその部分の形状特徴は、看者に格別の視覚的印象を与えるものといえる。また、看者は、単に形状の差異を看取するのみならず、正面及び背面の凹部の存在によって、鋸刃がその位置で固定されるということを理解できる(=アフォーダンスの概念)のであり、凹部の無い引用意匠では、そのような理解は得難いといえる。請求人も、「看者は、この凹部を見ることによって、鋸刃を係合させるための係合部が鋸刃取付部の内側に形成されていることをはっきりと認識する」と主張しているところである。したがって、二重円状凹部の有無の差異は、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものといえる。
次に、本願意匠に見られる略ヘ字状切り欠き部については、この種物品分野において切り欠き部を設けることは既に公然知られている(意匠登録第1031557号。)ものではあるが、直線的に略ヘ字状に切り欠かれた形状は特徴的であって、両意匠の視覚的印象を別異のものとしているので、類否判断に影響を及ぼすものといえる。そして、水平線の有無の差異についても、両意匠の正背面視及び右側面視において、その差異がはっきりと看取されるものであり、両意匠の視覚的印象に変化を与えていることから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱とはいえない。
そうすると、前記(ロ)の差異点は、いずれも両意匠に共通するとした構成態様を翻す程の印象を看者に与えるものであり、両意匠の形態全体の印象を異にする程の差異感を与えるものであるから、類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通しているが、形態において、差異点が両意匠の共通点を凌駕して類否判断を左右するという外ないから、本願意匠は、引用意匠に類似する意匠とはいえない。

第5 むすび
本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず、原査定の拒絶の理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。
また、本願意匠について、他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2006-03-22 
出願番号 意願2004-6344(D2004-6344) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 温品 博康 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 小林 裕和
鍋田 和宣
登録日 2006-04-21 
登録番号 意匠登録第1273457号(D1273457) 
代理人 角田 嘉宏 

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