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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H5
管理番号 1134407 
審判番号 不服2005-11677
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-22 
確定日 2006-04-04 
意匠に係る物品 メモリカード用アダプタ 
事件の表示 意願2004- 17523「メモリカード用アダプタ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本件審判請求に係る意匠は、2004年(平成16)年6月11日に意匠登録出願したもの(以下、「本願意匠」という。)であって、願書の記載および願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「メモリカード用アダプタ」とし、その形態は、同添付図面に示すとおりのものである。(この審決書に添付した図面第1参照)
2.引用意匠
原審の拒絶理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」という)は、2004年(平成16年)5月27日に、「Sandisk Corporation」がインターネット上で、「SANDISK INTRODUCES WORLD’S FIRST 6-IN-1 PC CARD READER」に掲載し(掲載頁の電子アドレス:http//www.sandisk.com/pressreleas/20040524a.html)、利用可能となった「6-in-1 PC Card Adapter」の意匠(特許庁公知資料番号HJ16001026号)であって、同掲載頁の記載全体によれば、意匠に係る物品を「PCカードアダプター」とし、その形態は、同掲載頁の写真版に示すとおりのものである。(この審決書に添付した図面第2参照)
3.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠と引用意匠は、いずれもパーソナル・コンピューターに装着するメモリーカード用アダプターとして使用するものに係るから、両意匠の意匠に係る物品は同種のものであり共通する。
次に、両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び差異点が認められる。
なお、引用意匠の形態については、前記掲載頁の説明内容からメモリカード類を装填するための扁平な函体状のものとみなし、図面上の向きを本願意匠の平面図に倣ってそれぞれ形態の認定をする。
先ず、共通点としては、全体は、下端を開口した奥行きの短い扁平な略矩形状の函体である点、および開口部中央の前後面に、左右対称状の前後同形に切り欠きを形成している点が認められる。
しかしながら、その具体的な態様について対比すると、次のとおりの差異点が認められる。
先ず、(1)切り欠き部の態様について、本願意匠は、上辺が弧状で左右両辺がやや斜め外開き状の肩突き状としているのに対し、引用意匠は、浅い弧状とし、本願意匠の切り欠き部は引用意匠のものよりも深く大きい点、(2)筐体の開口部側の態様について、本願意匠は、筐体下端の前後の左右両角に小矩形状の窪み形成し、この窪みおよび切り欠き部の縁に沿って複線状に縁取りを施しているのに対し、引用意匠は、このような窪みを形成せず、切り欠き部から筐体の左右両端にかけて暗調子の縁取り状部分を現している点、(3)筐体の左右両端の態様について、本願意匠は、前記複線状の縁取りを除き、それぞれ細幅の几帳面状の面取りを施しているのに対し、引用意匠は、前記暗調子の縁取り状部分が現れているほかは具体的な態様が不明である点、(4)本願意匠は、函体の上辺およびその左右両端から下方にかけて所謂まきがまえ状に横長の枠状部を取り付けた態様であるのに対し、引用意匠は、そのような枠状部を取り付けていない点、(5)筐体の周縁部分を除く平面の態様について、本願意匠は、平坦状であるのに対し、引用意匠は、上端寄りおよび左右両端寄りに余地部分を残して略縦長矩形状部分がわずかに突出している点、および(6)筐体の縦と横の長さの比について、本願意匠は、それぞれ約9:4であるのに対し、引用意匠は、それぞれ約9:6である点が認められる。
4.本願意匠と引用意匠の類似性についての判断
以上の共通点及び差異点を総合し、意匠全体として本願意匠と引用意匠の類似否類似すなわち両意匠の類似性について考察すると、両意匠に共通していると前記した、全体が下端を開口した扁平な略矩形状の函体である点、および開口部中央の前後面に左右対称状の前後同形の切り欠き部を形成している点は、この種物品に多数見受けられる基本的な構成態様とも言えるほどのものであって、両意匠のみに共通する新規の態様を構成したものとは言えず、形態の共通点としてはそれほど評価すべきほどのものでもないから、両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱である。
一方、前記各差異点を検討すると、差異点の(1)については、引用意匠の切り欠き部は、本願意匠の出願前から普通に見受けられるほど一般的な態様であるのに対し、本願意匠のものは、本願意匠の出願前には見受けられない態様を形成し、本願意匠を特徴づける要素であり、その差異は顕著であるから、両意匠の類似性についての判断に与える影響が相当大きいものである。差異点の(2)については、切り欠き部についての前記差異点と相まって、開口部側の態様に明らかな差異をもたらしているから、その差異は両意匠の類似性についての判断に与える影響が大きい。そして、差異点(4)については、本願意匠の枠状部は、函体の上辺およびその左右両端から下方にかけてまきがまえ状に取り付けられているため、筐体の上部を特徴づける要素であり、形態全体に与える影響が大きいから、両意匠の類似性についての判断に与える影響も大きいものである。このほかの差異点(3)、(5)および(6)については、本願意匠の出願前にも、本願意匠の構成態様に共通する要素を形成したものが見受けられるから、本願意匠のみに格別新規であるとは言えないが、差異点(1)および(2)は、前記のとおりの大きな差異であって、操作時に注意を払う部位の態様についての差異に係る点を勘案すると、差異点(4)に係る態様と相まって生じる意匠的な効果は、差異点(3)、(5)および(6)について評価するまでもなく、両意匠の類似性についての判断を左右するほどのものと言うべきである。
以上のとおりであって、本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品が共通しているが、形態については、共通点は両意匠のみに認められるものとは言えないものであるのに対し、前記のとおり、差異点による意匠的な効果は、両意匠の類否判断を左右するほどのものと言えるから、両意匠は、意匠全体として互いに類似しないものと認める。
5.結び
したがって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当しないものであり、原審の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、本願意匠について、他に拒絶すべきものとする理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2006-03-23 
出願番号 意願2004-17523(D2004-17523) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 江塚 尚弘 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 小林 裕和
鍋田 和宣
登録日 2006-04-21 
登録番号 意匠登録第1273384号(D1273384) 
代理人 正林 真之 
代理人 藤田 和子 

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