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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 G2 |
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管理番号 | 1137829 |
審判番号 | 不服2004-8601 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2006-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-26 |
確定日 | 2006-05-29 |
意匠に係る物品 | 自動車用遮光フイルム |
事件の表示 | 意願2003-19051「自動車用遮光フイルム」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1.本願意匠 本願は、平成15(2003)年7月2日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「自動車用遮光フイルム」とし、形態は、願書の記載及び願書添付写真に現されたとおりである(本件審決に添付の別掲第1参照)。 第2.当審の拒絶理由 当審において、この意匠登録出願の意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するから、拒絶すべきものと認められるとして、拒絶の理由を通知した。 記 1.本願意匠 本願意匠は、平成15年(2003年)7月2日の意匠登録出願に係り、願書及び願書添付図面の記載によれば、意匠に係る物品を「自動車用遮光フィルム」とし、形態の要旨を以下のとおりとするものである。 すなわち、本願意匠は、(A)外形を左右対称形の湾曲帯状として、内周(上辺)側の両角部を丸く形成し、表面全体に上辺から下辺にかけてグラデーション状の透光性を有する濃淡模様を施し、全体を薄いシート状のもので形成し、そして、(B)表面中央部に略方形の窓孔を設けた構成態様とするものである。 2.本願意匠の創作の容易性について 先ず、前記(A)の前段の構成態様に係る「外形を左右対称形の湾曲帯状として、内周(上辺)側の両角部を丸く形成し、表面全体に上辺から下辺にかけてグラデーション状の透光性を有する濃淡模様を施し」た形態については、下記に示す意匠1において、本願出願前より公然知られており、意匠1に比べて本願意匠の方がより長形で薄いものであるが、本願意匠のような長形で薄いシート状のものは、例えば、下記に示す意匠2によれば、本願出願前に広く知られたものであると認められる。 意匠1:意匠公報所載、意匠登録第374302号の類似第5号意匠(ジドウシャマドテンセツヨウアテバン、本件審決に添付の別掲第2参照)。 意匠2:公開特許公報所載、特開2002-293134号の図2に現された意匠(自動車の前面ガラス上縁用アーチ型カット済み遮光フィルム、本件審決に添付の別掲第2参照)。 次に、前記(B)の構成態様に係る、「表面中央部に略方形の窓孔を設けた」点については、バックミラーの取付台座に合わせて設けられる必然的なものであり、ありふれた手法による態様にすぎないと認められる。 したがって、前記の認定事実によれば、「前記(A)前段の構成態様に係る本願出願前公知の形態のもの」を、「出願前周知のより長形で薄いもの」に変化させ、(B)に係るありふれた手法により表面中央部に略方形の窓孔を設けて、単に一つの形態のものにまとめることは、当業者において格別の困難性を要さず、極く普通に想到するところと考えられる。 第3.請求人の主張 請求人は、概略、本願意匠は、左右の辺が上端から下端に向かって末広がりとなっており、且つ、上辺から下辺にかけてグラデーション状の透孔性を有する濃淡模様が上辺と下辺の湾曲に即した湾曲状をなしていることが特徴であるとし、また、表面中央部に略正方形状の窓孔を設けることは、今まで存在しなかったものであるから、意匠法第3条第2項の規定には該当しないものであると主張した。 第4.当審の判断 本願意匠に係る物品は、車両用の遮光具であり、その形態については、以下に示すとおりである。 すなわち、外形を左右対称形の湾曲帯状として、内周(上辺)側の両角部を丸く形成し、表面全体に上辺から下辺にかけてグラデーション状の透光性を有する濃淡模様を施し、全体を薄いシート状のもので形成し、そして、表面中央部に略方形の窓孔を設けたものである。 そこで、本願意匠の創作非容易性について、意匠全体として検討する。 すなわち、車両用の遮光具の外形を左右対称形の湾曲帯状として、内周(上辺)側の両角部を丸く形成し、表面全体に上辺から下辺にかけてグラデーション状の透光性を有する濃淡模様を施したものは、意匠1により公然知られており、意匠1に比べて本願意匠の方がより長形で薄いものであるが、長形で薄いシート状のものは、例えば、意匠2により広く知られたものであって、極く普通に想到するところと考えられるから、格別評価すべき創作性を見出すことはできない。 しかしながら、本願意匠の出願前、車両用の遮光具の表面中央部に略方形の窓孔を設けたものは、全く見受けられないものであって、広く知られたものとはいい難いから、容易に創作することができたものとはいえない。 そうすると、本願意匠は、公然知られた車両用の遮光具の意匠(意匠1)に基づいて、ありふれた手法により、長形で薄いシート状に変化させた程度のものであるが、その表面中央部に略方形の窓孔を設けた点で、評価すべき創作性を見出すことができるものというべきである。 したがって、本願意匠は、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。 なお、請求人が本願意匠の特徴であると主張する、左右の辺が上端から下端に向かって末広がりとなっている点については、意匠1の他に、例えば、意匠登録第242358号の類似第7号の意匠、特開昭58-194623号の第1図(意匠3)、実開平6-61527号の図1(意匠4)、また、上辺から下辺にかけてグラデーション状の透孔性を有する濃淡模様が上辺と下辺の湾曲に即した湾曲状をなしている点については、意匠2の他に、例えば、前記の意匠3、意匠4により既に知られているところであるから、その主張は採用できない。 第5. むすび 本願意匠は、意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないから、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。 また、本願について、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2006-05-08 |
出願番号 | 意願2003-19051(D2003-19051) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 栄子 |
特許庁審判長 |
伊勢 孝俊 |
特許庁審判官 |
鍋田 和宣 上島 靖範 |
登録日 | 2006-06-16 |
登録番号 | 意匠登録第1277807号(D1277807) |
代理人 | 黒田 泰弘 |