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審決分類 審判    F3
管理番号 1137845 
審判番号 無効2004-88031
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2006-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-12 
確定日 2006-04-27 
意匠に係る物品 封筒 
事件の表示 上記当事者間の登録第1190706号「封筒」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1190706号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及びその理由
請求人は、登録第1190706号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下の主張をし、甲第1号証ないし甲第4号証(枝番を含む)を提出した。
本件登録意匠は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に示す意匠と類似するから、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当する。また甲第3号証に示す意匠と類似するから、意匠法第3条第1項第2号または同項第3号の意匠に該当する。従ってその登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。

第2.被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は審判請求人の負担とするとの審決を求める、と答弁し、要旨以下の主張をした。
甲第1号証の1及び2、甲第2号証は、いずれも請求人か、これと関連する業者が作成、入手したもので、客観的な証拠となり得ない。またこれら相互の関係も明確ではない。また甲第3号証に示す意匠は、ミシン目の形状が本件登録意匠と相違し、本件登録意匠と類似しない。更に甲第4号証に示す意匠は、封筒のミシン目の形状を特定し難い。従って、本件登録意匠が意匠法第3条第1項に該当するとの請求人の主張にはいずれも理由がない。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14年(2002年)12月27日に出願がなされ、平成15年10月3日に意匠権の設定の登録がなされたもので、意匠に係る物品を「封筒」とする物品の部分についての意匠であって、その形状は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのもので、一点鎖線で囲まれて実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けた部分である。(別紙第一参照)。

2.当審の無効理由通知
本件について、当審では、以下のとおりの無効理由を請求人、及び被請求人に通知し、期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えた。

本件意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められますので、意匠法第3条第2項の規定に該当します。

本件意匠は、(財)埼玉県中小企業振興公社が平成14年10月1日付で発行した内国雑誌「アクセスさいたま」2002.No.67.10月号(甲第3号証)の第17頁、下段左所載の往復封筒のミシン目を、単に周知の平行の波形ミシン目(例えば、日本郵政公社が2000年2月22日に発表した報道発表資料「バーコード割引の適用となる封筒の材質等に関する条件の一部改正」の別紙2「ミシン目を設ける場合の条件」所載の波形のミシン目(URL:http://www.japanpost.jp/pressrelease/japanese/yubin/000222j202.html))にした程度にすぎないものと認められます。

3.当審の無効理由通知に対する被請求人の主張
当審の無効理由通知に対し、被請求人は意見書を提出して、要旨以下の主張をした。
本件登録意匠は、開封用舌片に平行な二本のミシン目が設けてあり、言い換えれば二本のみであり、更にこの二本の広さが極端に広いが、甲第3号証の開封用舌片は、左右端側から中央に向かって、平行ではない幅の狭いミシン目が設けてあり、更に中央部には縦にミシン目か切れ目のようなものが確認でき、ミシン目は少なくとも三本設けてある。そして甲第3号証の封筒は開封に際しては中央の切れ目から左右に開封し、開封片は2箇所に分かれ、開封することを示す矢印などが必要となり、しかもミシン目の幅が狭いため、ミシン目上に宛先等を記載することとなり、文字が記載しづらく、見づらくなるという問題が考えられるものであるが、本件登録意匠は、二本のミシン目の広さが、宛先、切手や局承認等が記載可能なように極端に広いためこのような問題点はない。
また甲第3号証においては、通常の横書きで住所等が記載されていると、開封用舌片がこれを邪魔して見難くなるので、これを防止するために封筒の内側に開封用舌片を仕込むようにして使用するしかないと考えられるが、本件登録意匠ではミシン目が幅広で平行なので、横書きで住所等が記載されていても何ら支障はなく、返信時に封筒の内側に開封用舌片を押し込む必要もない。
また、甲第3号証に表された意匠を周知の波形ミシン目に置き換えても、中央部の縦のミシン目も波形ミシン目に置き換わることとなり、本願意匠と同様な意匠とはならないから、意匠法第3条第2項についての特許庁の意匠審査運用基準の「置換の意匠」にも該当しない。
本件登録意匠は、封筒を開封する際は、開封箇所を矢印などで示さなくても、二本の平行な波形ミシン目に従って、往信用宛先等が記載されている開封用舌片を開封すればよいという今までにない封筒であり、容易に創作できた意匠ではない。

4.被請求人の主張に対する検討
被請求人の主張を踏まえて、本件登録意匠を形態創作の観点から更に検討する。
本件登録意匠は、横長矩形状の封筒の長手方向に設けられた扁平台形状の封緘用舌片の形態に係るもので、その形態は、舌片の長手方向(横方向)に、剥取り帯として、2本の平行なミシン目が幅広状に配されたものであり、なおそのミシン目は、直列する切込線の各一端部が規則的に斜めに折曲した態様の、所謂、波形ミシン目であることが認められるものである。
そして、横長矩形状の封筒の長手方向に設けられた舌片について、その長手方向(横方向)に、剥取り帯として2本のミシン目を配することは、請求人が甲第3号証として提出した、(財)埼玉県中小企業振興公社が平成14年10月1日付で発行した内国雑誌「アクセスさいたま」2002.No.67.10月号(甲第3号証)の第17頁、下段左所載の往復封筒の舌片に認められるところである(別紙第二、別紙第三参照)。
本件登録意匠はこれを幅広の平行状に表したものであるが、各種紙製品の分野においては、この種のミシン目を平行状に表すことは、例示するまでもなく普通で、またこれを幅広状に表すことも、この種のミシン目の間隔、或いは剥取り帯の幅は、従来から用途に応じて、広狭様々の幅のものが認められるところであって、(この事例は例示するまでもないほどであるが、敢えてその事例を若干挙げれば、実開昭62-137254号、実開昭63-7626号、実開昭63-11371号、実開昭63-180515号、実開平2-40024号、実開平4-68818号、特開平9-48426号、特開平10-218196号等)、紙製品の分野に係わる者であってみれば、その幅を適宜変更すること、或いは幅広状とすることは、格別の創意を要すものとは認められず、容易に想到し得るものと認められる。
そして本願意匠はこれを波形のミシン目で表したものであるが、この波形ミシン目も、当審例示の、日本郵政公社が2000年2月22日に発表した報道発表資料「バーコード割引の適用となる封筒の材質等に関する条件の一部改正」の別紙2「ミシン目を設ける場合の条件」の「波形のミシン目」(別紙第四参照)に認められるように、また前掲各事例にも認められるように、周知のものであり、この波形のミシン目を採用した点についても、特に創作があったとすることができない。
被請求人は、甲第3号証の封筒は、返信時に剥取り後の舌片を封筒の内側に押し込んで封緘せざるを得ないが、本件登録意匠は、幅広としたことによりこのような問題点はない、旨を主張するところであるが、意匠は、物品の形状、模様、色彩それ自体であって、実際の使われ方、或いは使い勝手の良し悪し等は意匠外の事項とせざるをえず、仮に返信時に別の封緘方法が予定されるとしても、それが由来する本願意匠の形状は、創作の観点から上記のとおりと認められ、被請求人の主張は採用できない。
以上のとおりであって、本件登録意匠は、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、日本国内又は外国において公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができた程度のものと認めざるを得ず、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当するものである。

5.むすび
従って、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものであるから、その登録を無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2006-02-23 
結審通知日 2006-02-27 
審決日 2006-03-16 
出願番号 意願2002-36721(D2002-36721) 
審決分類 D 1 113・ 121- Z (F3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 本田 憲一 
特許庁審判長 森 則雄
特許庁審判官 市村 節子
伊藤 敦
登録日 2003-10-03 
登録番号 意匠登録第1190706号(D1190706) 
代理人 木森 有平 

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