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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) K1
管理番号 1141481 
判定請求番号 判定2005-60083
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2006-09-29 
種別 判定 
判定請求日 2005-11-29 
確定日 2006-08-07 
意匠に係る物品 ハサミ 
事件の表示 上記当事者間の登録第0993671号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の写真並びにその説明に示す「ヘアーカット用ハサミ」の意匠は、登録第0993671号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、「イ号意匠は、登録第993671号(以下、本件登録意匠」という。)意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由として要旨以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1.両意匠の共通点
(1)両意匠は、意匠に係る物品が3本重なり合い1体のハサミとして連結形成された3連ハサミとして一致している。
(2)刃部が3体で柄部が1本、また指掛環が1個に重なり合って連結形成されている。
(3)具体的な構成態様は、刃部と柄部の中心に支軸を置き1本のネジと柄部の両脇側の場所で3本のハサミが連結されている。また、柄部の指掛環を開閉する事によって1体化された3連の刃部が同時に開閉をする構成となっている。
2.両意匠の差異点
(1)本件登録意匠の3本のハサミが重なり合って1体に連結している場所はハサミの中心部と柄部の両方の場合である。また柄部の連結されている位置としては中心部の連結位置と指掛環の中間の位置で連結して構成している。それに対し、イ号意匠の場合3本のハサミの連結は、ハサミの中心部と柄部の両方の場所で同様に連結されている。ただ、柄部の連結場所が指掛環よりの位置で連結されている。
(2)3本のハサミが1本に連結構成された内側の中部ハサミは、柄部が直線的に形成されている本件登録意匠に対して、イ号意匠の場合同様に連結された、内側の中部ハサミの柄部は波状的に形成されている。
3.本件登録意匠とイ号意匠との類比の考察
(1)両意匠の共通点は、基本的構成態様とさらに具体的な態様に係るものであり、特に本件登録意匠の要部である3本のハサミが重なり合って1体に連結形成された今までにはない3本のハサミを独特に重ね合わせ1体のハサミに表現した部分も共通しており、両意匠の類比の判断に大きな影響を与えるものである。
(2)両意匠の差異点の(1)及び(2)について、いずれも看者に与える印象に大きく影響するものではなく、(1)及び(2)の差によって、本件登録意匠とイ号意匠とより違った印象を与えるとは到底考えられず、よって類比の判断に与える影響も微弱である。
(3)以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点は、類比の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって、共通点を凌駕しているものとはいえず、それらが纏まっても両意匠の類比の判断に及ぼす影響は、その結論を左右するまでには至らないものである。
第2.被請求人の主張
被請求人は、「イ号意匠は、登録0993671号(以下、「本件登録意匠」という。)意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1.両意匠の共通点
本件登録意匠とイ号意匠は、3対の鋏体と1個の薬指環とからなり、薬指環と母指環とを開閉することにより、3対の鋏体の動刃と静刃とを開閉するように構成されている。
2.両意匠の相違点
(1)本件登録意匠は、3対の鋏体が、真中の鋏体の1対(即ち、2本)の薬指柄、母指柄の一端に連結され、該1対の薬指柄、母指柄の他端は1対の薬指環、母指環に連結してなるのに対し、イ号意匠は3対の鋏体が3対(即ち、6本)の薬指柄、母指柄に連なっており、両外側の鋏の薬指環、母指環が真中の挟体の1対の薬指柄、母指環に連結されている。
(2)本件登録意匠は鋏体下方の支持機構及び連結機構により、3対の鋏体を連結し、1対の薬指環、母指環の開閉を伝達するように構成されているのに対し、イ号意匠は3対の挟体の3対の薬指柄、母指柄を介して薬指環、母指環の開閉を伝達するように構成されている。
(3)本件登録意匠は薬指環の位置が母指環の位置よりも下方にあるグイチタイプであるのに対し、イ号意匠は薬指環の位置と母指環の位置とが略同水平面にあるメガネタイプである。
(4)本件登録意匠は薬指柄、母指柄がともにストレートの形状からなるのに対し、イ号意匠は薬指柄の略中央外側が、中指を掛けるための「く」字状(ラクダ)に形成されている。
(5)本件登録意匠は、鋏体が該鋏体の厚みの約2倍の厚みのスペーサーを介して回動自在に軸支されているのに対し、イ号意匠は鋏体が薄い(約0.3mm)ワッシャーを介して回動自在に軸支されている。
3.本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
相違点(1)については、本件登録意匠にあっては、3対の鋏体が1対の薬指柄、母指柄(形2本の柄)を通じて薬指環、母指環に連結されているので、上部に対して下部が極端に小さく、その結果、非常に弱々しく且つ不安定な印象を与えるのに対し、イ号意匠は、伝わば3対の鋏体及び薬指柄、母指柄を真中の鋏体の1個の薬指環、母指環に連結した構成からなり、イ号意匠では3対の鋏体の各薬指柄、母指柄(計6本の柄)が薬指環、母指環に連結されてなるから、非常に力強く且つ安定した印象を与える。
相違点(2)については、本件登録意匠では薬指環、母指環の開閉を1対の薬指柄、母指柄を介して3対の鋏体に伝達するので、ひ弱で安定性に欠ける印象が避けられないのに対し、イ号意匠では薬指環、母指環の開閉を3対の薬指環、母指環に介して3対の鋏体に伝達するので、力強く且つ安定した印象を与える。
相違点(3)については、本件登録意匠がグイチタイプであるのに対し、イ号意匠ではメガネタイプであり、両意匠は看者をして全く異なった印象を与える。上記した如く、本件登録意匠の要部は先行意匠との関係からはグイチタイプにあると考えられるから、イ号意匠はこの本件登録意匠の要部において全く異なるものである。
相違点(4)については、本件登録意匠では、薬指柄、母指柄ともストレートの形状であるのに対し、イ号意匠は薬指柄の略中央外側が「く」字状に形成されており、両者は看者をして全く異なった印象を与えるものである。
相違点(5)については、本件登録意匠は、鋏体厚みの約2倍の厚みのスペーサー(乙第2号証の第3頁右下欄16〜17行目には、「例えば1cm程度に設定する。」と記載されている)を介して鋏体が軸支されているため、鋏体間に大きな隙間が介在し、全体として、まとまりのない不安定な印象が免れないのに対し、イ号意匠では、0.3mm程度の微小隙間が存在するに過ぎないため、全体としてまとまりがあり、安定した印象を与える。
4.むすび
以上のように、本件登録意匠の有効性を前提として、本件登録意匠とイ号意匠を全体的に考察するならば、上記両意匠の相違点は上記共通点を著しく凌駕するものであり、全体として、類似しないものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、原出願を特願昭63-52984号として、意匠法第13条の規定の適用を受けようとする意匠登録出願〔出願日、昭和63(1988)年3月7日(原特許出願日遡及)〕であって、その後設定の登録がなされた意匠登録第993671号の意匠であり、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「ハサミ」とし、その形態は、願書の記載及び添付図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照)
2.イ号意匠
イ号意匠は、イ号写真及び判定請求書の記載によれば、意匠に係る物品を「ヘアーカット用ハサミ」とし、その形態は、イ号写真及び判定請求書の記載のとおりとしたものである。(別紙第2参照)
なお、甲第5号証(カタログ写し)に掲載された「T-three cissors」の写真版は、イ号意匠の実施品と推認し、参考資料として扱うものとする。
3.本件登録意匠とイ号意匠との比較検討
意匠に係る物品については、両意匠ともにヘアーカット用のハサミに係るものであるから共通する。
形態については、主として以下に示す共通点及び差異点が認められる。
〔イ号写真の第1頁において、左側の写真版を左側面図(本件登録意匠の右側面図)、右側の写真版を正面図(本件登録意匠の背面図)の向きとして、本件登録意匠をイ号意匠と同じ向きとして比較する。〕
すなわち、共通点として、両意匠は、基本的構成態様において、(1)2つの刃体からなる鋏を三対重ねて配置し、それらを支軸でボルト止めして連結した鋏であり、(2)右側面視中央に刃先から鋏の開閉支軸部までの刃部と、開閉支軸部から円環状指孔部までの把持部と円環状指孔部からなる2つの刃体を組み合わせた鋏(以下、「中央鋏」という。)を配している点、(3)中央鋏の両側に、中央鋏の刃部と略同様の刃部と把持部からなる2つの刃体を組み合わせた鋏(以下、「外側鋏」という。)を配し、各々把持部に連結用支軸部を設け(以下、「連結用支軸部」という。)、中央鋏の指孔部を内外に開閉させることにより、中央鋏とその両側の外側鋏の刃部が連動して交叉するものとした点、各部の具体的態様において、正面視で、(1)刃部が、開閉支軸部から刃先に向かって漸次先細りの鋭角な刃となっている点、(2)把持部の下方がほぼ一定の細幅である点、(3)中央鋏の刃体の長さにおいて、正面視で左側の方が長く、指孔部の位置が上下に若干ずれている点、(4)中央鋏の長い方の刃体の指孔部に、指掛け用片が設けられている点で共通する。
差異点として、(1)本件登録意匠は、外側鋏の把持部が短く、中央鋏の把持部中段に連結用支軸部が設けられているのに対して、イ号意匠は、外側鋏の把持部が長く、中央鋏の円環状指孔部寄りの把持部に連結用支軸部が設けられている点、(2)本件登録意匠は、中央鋏と外側鋏の連結用支軸部間にスペーサーを配しているのに対して、イ号意匠は、スペーサーを配していない点、(3)本件登録意匠は、把持部下方が両方とも略直線状であるのに対して、イ号意匠は、一方が略直線状で、他方が「く」字状の凸部を有している点、(4)本件登録意匠は、刃幅に対してやや刃の厚みが薄いのに対して、イ号意匠は、刃幅に対してやや刃の厚みが厚い点で差異が認められる。
4.本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
まず、両意匠ともにヘアーカット用ハサミであり、意匠に係る物品が共通し、形態について、共通するとした態様は、両意匠の形態についての骨格的な態様であって、形態全体を支配する要素に係るものであり、とりわけ中央鋏の指孔部を内外に開閉させることにより、中央鋏とその両側の外側鋏の刃部が連動して交叉するものとした態様は、本件登録意匠の形態上の特徴を顕著に表すところであって、この点が共通する両意匠は、看者に共通する印象を与えるところであり、両意匠の類否判断を左右する要素と認められる。
一方、差異点(1)について、すなわち、外側鋏の把持部における連結用支軸部の位置の差異であるが、この種物品において、鋏の連結用支軸部の位置を適宜変更することは、ごく普通に行われているところであり、イ号意匠のような把持部下端に設けるものも、本件登録意匠の出願前に見受けられるところであり〔例えば、特許庁発行の実用新案登録公報の実開昭49-25687号のはさみの意匠(別紙第3参照)〕、イ号意匠独自のものではなく、意匠上格別評価できないものであり、類否判断に及ぼす影響は小さいものと認められる。差異点(2)について、すなわち、中央鋏と外側鋏の連結用支軸部間のスペーサーの有無の差であるが、この種物品において、鋏の間隔を調整するため、スペーサーの取り外しをすることは、ごく普通に行うところであり、両意匠とも格別特徴があるとはいえず、類否判断に及ぼす影響は小さいものと認められる。 差異点(3)について、すなわち、把持部下方の形状の差異であるが、この種物品では、把持部に「く」字状に凸部を設けることは、ごく普通に行われているところであり、本件登録意匠の出願前にも見受けられることから〔例えば、特許庁発行の公開実用新案公報の実開昭60-63164号のはさみの意匠(別紙第4参照)〕、格別高く評価することができないものであり、類否判断に及ぼす影響は小さいものと認められる。 差異点(4)について、刃の厚みの差であるが、刃の厚みを変えることも、ごく普通に行われているところであり、イ号意匠の厚さは、その変更の範囲のものであり、形態全体の基調に影響を与えるほどのものでもないから、類否判断に与える影響は微弱である。
そして、両意匠に係る差異点(1)ないし(4)の差異は、いずれも類否判断に及ぼす影響は小さいものであって、これらの差異が相俟って表出する効果を総合したとしても、類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。
第4. むすび
以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態においても、共通点が、差異点を凌駕し、形態全体に係わる基調を形成して類否判断に大きな影響を及ぼしているので、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2006-07-25 
出願番号 意願平7-33471 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (K1)
最終処分 成立 
前審関与審査官 鈴木 充 
特許庁審判長 伊勢 孝俊
特許庁審判官 鍋田 和宣
上島 靖範
登録日 1997-06-20 
登録番号 意匠登録第993671号(D993671) 
代理人 伊丹 健次 
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