• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) L2
管理番号 1143275 
判定請求番号 判定2006-60014
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2006-10-27 
種別 判定 
判定請求日 2006-03-09 
確定日 2006-08-21 
意匠に係る物品 側溝用ブロック 
事件の表示 上記当事者間の登録第0912878号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す「側溝用ブロック」の意匠は、登録第0912878号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
1.請求人は、結論同旨の判定を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし第6号証を提出した。
2.イ号意匠が登録第912878号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属しないとする理由の説明
(1)両意匠の共通点は、基本的な構成態様にかかるもので、特に本件登録意匠の要部とされる以下の点で共通している。
a)「基本的な姿態となる略直方体の基本的形状をなすコンクリート製の側溝用ブロックで、軸方向へ向かってはその中央部分に水路となる貫通孔が形成されている点」、
b)「前記貫通孔の形状は、下側の曲面が急カーブの湾曲をなし、上側の曲面がなだらかなカーブの湾曲を有するいわゆる断面卵形の形状となっている点」、
c)「側溝用ブロックの接続面となる長手方向端部には、接続する際に介在される充填材用の取り付け部が設けられており、該取り付け部は枠線として形成されている。この枠線内に前記充填材が取り付けられ、側溝用ブロック同士が機密性を保持して接続されるものとなる点」、
d)「側溝用ブロックの上面幅方向中央部に、長手方向に延びる直線状のスリットが設けられている点」、
e)「このスリットにより側溝用ブロックの上面外部側と内部の水路とが連通するものとなり、側溝が敷設されたとき、路面を流れる雨水などが前記スリットを通過して側溝の水路にスムーズに流れ込むものとなる点」、
f)「スリットの形状につき、本件登録意匠は、スリット上面側の開ロ幅よりスリット下面側の開口幅が狭められた形状となっており、イ号意匠は、逆にスリット上面側の開ロ幅よりスリット下面側の開ロ幅が広くなった形状となっている。しかしながら、本件登録意匠に設定された登録類似意匠権、登録意匠第912878号の類似の2におけるスリットの形状はイ号意匠と同様に、スリット上面側の開ロ幅よりスリット下面側の開ロ幅が広くなった形状となっている点」、
g)「側溝用ブロックの幅方向両側面は長手方向両端側を除いて、下側に向かって薄肉となるよう形成されており、その薄肉となる線が現れている点」、
h)「側溝用ブロックの長手方向両端側にボルトなどで接続固定する接続用の取り付け部が設けられており、当該取り付け部を示す線が現れている点」
以上、両意匠の類否の判断に影響を与えるa)からh)の点につき共通している。
(2)これに対し、
a)「イ号意匠ではスリットの長手方向両端側がスリット下面側で繋がっており、その線が平面図で可視できる点」、
b)「イ号意匠では側溝用ブロックの上面幅方向、イ号意匠のイ号図面正面図での左側端部が四角状に切り欠かれている点」、
c)「本件登録意匠及びイ号意匠共に、側溝用ブロックの幅方向両側面は長手方向両端側を除いて、下側に向かって薄肉となるよう形成されており、その薄肉となる線が現れているが、本件登録意匠ではその線は曲線として現れ、イ号意匠ではその線は直線として現れている点、また段差を示す直線の現れる位置が異なる点、すなわち、本件登録意匠では薄肉面を下部所定の部分まで曲線状の湾曲面として下部所定部分から底面部までは、底面部に対して垂直に形成しているのに対し、イ号意匠では薄肉形成が開始される部分を鋭角に形成し、そこから底面部までは段差なく直線的に傾斜した薄肉面となっている点」、
d)「側溝用ブロックの長手方向両端側にボルトなどで接続固定する接続用の取り付け部が設けられ、当該取り付け部を示す線が現れているが、当該取り付け部の形状が異なる点」、
e)「側溝用ブロックの接続面となる長手方向端部には、接続する際に介在される充填材用の取り付け部が設けられており、当該取り付け部を示す線が現されているが、本件登録意匠では二重線状の枠線となるのに対し、イ号意匠では、単線状の枠線で現されている点」、
以上a)からe)の点が差異点とされる。
(3)ところで、本件判定請求人(ゴトウコンクリート株式会社)は平成13年9月20日に意匠登録出願(意願2001-27728号)を行った(甲第3号証参照)。
そして、かかる意匠登録出願は平成14年3月8日「この意匠登録出願の意匠はその出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠(特許庁発行意匠公報記載、意匠登録第0912878号の類似第2号「意匠にかかる物品、側溝用ブロック」の意匠:甲第2号証参照)に類似するものと認められるとして、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する。」との拒絶理由(甲第4号証)に接した。これに対し出願人は平成14年4月11日に意見書(甲第5号証参照)を提出したが、受け入れられず、平成15年4月18日拒絶査定(甲第6号証)を発送されるに至った。
そして、これに対し、出願人は拒絶査定不服審判を請求しないため、前記拒絶査定が確定したものである。
(4)以上、上記の意匠登録出願の経過をみると、
a)「スリットの長手方向両端側がスリット下面側で繋がっているか否か」、
b)「側溝用ブロックの上面幅方向左側端部が四角状に切り欠かれているか否か」、
c)「下側に向かって薄肉となるよう形成されている、その薄肉となる線が曲線として現れているか、直線として現れているか、すなわち、曲線状の湾曲面として薄肉面か直線的に傾斜した薄肉面となっているか否か」、
などの相違点はいずれも細部の相違にすぎないと認められ、従って両意匠は意匠全体として観察する場合においては類似の範囲と出ないものと判断された。
(5)むすび
以上説明した内容をふまえ、イ号図面に示す意匠は登録第912878号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める次第である。
第2.被請求人の答弁
1.被請求人は、「イ号意匠は、登録第912878号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するとの判定を求める。」と答弁し、その理由として要旨以下のように主張した。
2.判定請求人は、判定請求書の中で、過去にイ号意匠と異なる意匠について意匠登録出願し、拒絶された旨を記載しています。
そこで、イ号意匠と本件登録意匠及びこれに類似する意匠の差異点(以下差異Aとする)と上記拒絶査定された意匠と本件登録意匠に類似する意匠の差異点(以下差異Bとする)を比較検討すると、下記のようにイ号意匠と本件登録意匠及びこれに類似する意匠の差異点の方が、差異は小さいと思料されます。
〔差異A〕
a)「イ号意匠ではスリットの長手方向両端側がスリット下面側で繋がっており、その線が平面図で可視できる点」
b)「イ号意匠では側溝用ブロックの上面幅方向、イ号意匠のイ号図面正面図での左側端部が四角状に切り欠かれている点」
c)「本件登録意匠及びイ号意匠共に、側溝用ブロックの幅方向両側面は長手方向両端側を除いて、下側に向かって薄肉となるよう形成されており、その薄肉となる線が現れているが、本件登録意匠ではその線は曲線として現れ、イ号意匠ではその線は直線として現れている点、また、段差を示す直線の現れる位置が異なる点、すなわち、本件登録意匠では薄肉面を下部所定部分まで曲線状の湾曲面としていて下部所定部分から底面部までは、底面部に対して垂直に形成しているのに対し、イ号意匠では薄肉形成が開始される部分を鋭角に形成し、そこから底面部までは段差なく直線的に傾斜した薄肉面となっている点」
d)「側溝用ブロックの長手方向両端側にボルトなどで接続固定する接続用の取り付け部が設けられ、当該取り付け部を示す線が現れているが、当該取り付け部の形状が異なる点」
e)「側溝用ブロックの接続面となる長手方向端部には、接続する際に介在される充填材用の取り付け部が設けられており、当該取り付け部を示す線が現されているが、本件登録意匠では二重線状の枠線となるのに対し、イ号意匠では、単線状の枠線で現されている点」
〔差異B〕
a)「拒絶された意匠ではスリットの長手方向両端側がスリット下面側で繋がっており、その線が平面図で可視できる点」
b)「拒絶された意匠では側溝用ブロックの上面幅方向、意匠の図面正面図での右側端部が四角状に切り欠かれている点」
c)「拒絶された意匠では正面図において、左上の角部分が多少R部として構成されている点」
d)「本件登録意匠に類似する意匠及び拒絶された意匠共に、側溝用ブロックの幅方向両側面は長手方向両端側を除いて、下側に向かって薄肉となるよう形成されており、その薄肉となる線が現れているが、本件登録意匠に類似する意匠ではその線は曲線として現れ、拒絶された意匠ではその線は直線として現れている点」
e)「当該先細りし始める部分が、拒絶された意匠では3段階に先細りしている点」
f)「拒絶された意匠では正面図の左上部から右下方向へ向かって略卵型の孔に繋がっている空洞が存在する点」
g)「本件登録意匠に類似する意匠では側溝用ブロックの長手方向両端側にボルトなどで接続固定する接続用の取り付け部が設けられ、当該取り付け部を示す線が現れているが、拒絶された意匠ではそのような部材の存在がない点」
そうすると、上記差異Bが存在しても、特許庁審査官は細部の相違にすぎないと認められ、従って意匠全体として観察する場合においては類似の範囲を出ないものと判断されたのでありますから、かかる差異Bよりも小さい差異Aを有するイ号意匠と本件登録意匠及びこれに類似する意匠は、類似の範囲に属するものと思料いたします。
よってイ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものと主張いたします。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書類によれば、昭和61年2月21日の出願に係り、平成6年8月25日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「側溝用ブロック」とし、その形態は、次のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、その基本的構成態様は、(A)全体を正面視縦長長方形状のやや長い略直方体とし、その内部中央に長手方向に沿って水路となる貫通孔を形成しているものであって、各部の具体的な態様は、(B)その上面部において、中央長手方向に直線状のスリットを両端部まで通して設け、(C)貫通孔の断面形状を、下方を窄まり状とする略卵形に形成し、(D)正面部及び背面部の貫通孔の周縁に、ブロック連接用の細溝及び細い凸条を設け、(E)左右側面下方にそれぞれ両端部に余地部を残して、全高の約2分の1の高さから底面中央側に向け緩やかな曲面の傾斜面とし、底面部寄りを垂直面とする凹部を形成し、(F)長手方向両端側の角部下方にそれぞれブロックを接続固定するためのボルト等取り付け用凹部を形成している。
2.イ号意匠
イ号意匠は、請求人が提出したイ号図面及びイ号意匠の説明によれば、意匠に係る物品を「側溝用ブロック」とし、その形態については、次のとおりとしたものである(別紙第2参照)。
すなわち、その基本的構成態様は、(A)全体を正面視縦長長方形状のやや長い略直方体とし、その内部中央に長手方向に沿って水路となる貫通孔を形成しているものであって、各部の具体的な態様は、(B)その上面部において、中央長手方向に直線状のスリットを両端部に余地部を残して設け、また、左側角部に長手方向に沿って一定幅で直角状に小さく切り欠いた切欠き部を形成し、(C)貫通孔の断面形状を、下方を窄まり状とする略卵形に形成し、(D)正面部及び背面部の貫通孔の周縁に、ブロック連接用の細溝を設け、(E)左右側面下方にそれぞれ両端部に余地部を残して、全高の約3分の1の高さから底面中央側に向け平坦な傾斜面とする凹部を形成し、(F)長手方向両端側の角部下方にそれぞれブロックを接続固定するためのボルト等取り付け用凹部を形成している。
3.本件登録意匠とイ号意匠との比較検討
(1)意匠に係る物品については、両意匠ともに側溝用ブロックであるから、一致している。
(2)形態については、両意匠の基本的構成態様において、(A)全体を正面視縦長長方形状のやや長い略直方体とし、その内部中央に長手方向に沿って水路となる貫通孔を形成している点が共通するものと認められる。
また、各部の具体的な態様においても、(B)上面部において、中央長手方向に直線状のスリットを設け、(C)貫通孔の断面形状を、下方を窄まり状とする略卵形に形成し、(D)正面部の貫通孔の周縁に、ブロック連接用の細溝を設け、(E)左右側面下方にそれぞれ両端部に余地部を残して、底面中央側に向け傾斜面とする凹部を形成し、(F)長手方向両端側の角部下方にそれぞれブロックを接続固定するためのボルト等取り付け用凹部を形成している点が共通するものと認められる。
一方、両意匠には、各部の具体的な態様において、以下の点に差異が認められる。
(ア)上面部のスリットについて、本件登録意匠は、両端部まで通して設けているのに対して、イ号意匠は、両端部に余地部を残して設けている点、(イ)上面の左側角部について、イ号意匠は、長手方向に沿って一定幅で直角状に小さく切り欠いた切欠き部を形成しているのに対して、本件登録意匠には、そのような切欠きがない点、(ウ)背面部の貫通孔の周縁について、本件登録意匠は、正面部の細溝と接合するように細い凸条を設けているのに対して、イ号意匠は、正面部と同様の細溝を設けている、(エ)左右側面下方の凹部について、本件登録意匠は、全高の約2分の1の高さから上方の垂直面に連続して緩やかな曲面の傾斜面とし、底面部寄りを垂直面としているのに対して、イ号意匠は、全高の約3分の1の高さから底面部まで平坦な傾斜面とするのみで、底面部寄りに垂直面がない点。
(3)そこで、本件登録意匠とイ号意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について、総合的に考察する。
まず、両意匠において共通するとした基本的構成態様(A)については、形態全体に係るところであり、骨格的な要素となるものであるから、類否判断に影響を与えるものではあるが、この種意匠の分野において、従前から見受けられ、一種の類型を示すにすぎないものであるから、類否判断に大きな影響を与えるものとすることができない。
次に、各部の具体的な態様における共通点について、まず、(B)ないし(E)については、いずれも、この種物品において、本件登録意匠の出願前にごく普通に見受けられることから、新規な態様とはいえず、類否判断を左右する要素としては小さいものである。次に、(F)については、本件登録意匠の出願前に見受けられないことから、本件登録意匠の特徴ではあるが、その凹部の大きさが形態全体から見れば、小さいものであり、さほど目立つものではないから、類否判断を左右する要素としては小さいものである。
(4)一方、差異点(ア)について、この差異は、上面部のスリットの両端部に余地部があるか否かの差異であるが、イ号意匠に見られる余地部は、スリット全体の長さに比べて極めて短く、また、上面より一段低い位置に形成していることから、さほど目立つものではなく、格別看者の注意を引くものとはいえず、この差異は、形態全体から見れば、両意匠の共通するとした態様に吸収される程度の部分的かつ微弱な差異というほかない。
差異点(イ)について、この差異は、上面左角部の直角状の小さな切欠き部の有無の差異であるが、イ号意匠に見られる切欠き部の大きさは、形態全体の大きさに比べれば小さいものであり、また、この種物品において、このような切欠き部を形成することは、縁石ブロックと組み合わせて使用する場合の常套的手段であることから、格別看者の注意を引くものとはいえず、形態全体としてみた場合、この差異は、微弱なものといわざるを得ない。
差異点(ウ)について、この差異は、背面部の貫通孔周縁の細溝か細い凸状かの差であるが、溝及び凸条ともに細いもので貫通孔周縁に近接して設けていることから、形態全体からみれば格別目立つものではなく、また、両意匠の態様共にありふれた態様であることから、微弱な差異というほかない。
差異点(エ)について、この差異は、左右側面下方の凹部の態様の差異であるが、両意匠は、その凹部の傾斜面の開始位置、傾斜面の態様、底部寄りの態様がいずれも異なり、また、当該部位は、左右側面において広く、かつ、目立つ部位であることを考慮すると、看者に別異の印象を与えるものであり、この差異は微弱なものといえず、類否判断に与える影響は大きいものといわざるを得ない。
なお、本件登録意匠の左右側面下方の凹部の態様は、全高の約2分の1の高さから底面中央側に向け緩やかな曲面の傾斜面とし、底面部寄りを垂直面とする凹部を左右端部に余地部を残して1個形成した態様のものであるが、この態様は、凹部の個数に差異があるものの本件登録意匠の出願前に見受けられるものである(意匠登録第616596号〔凹部3個〕、意匠登録第616596号の類似第2号〔凹部2個〕の側溝ブロック)。
(5)以上を総合すると、両意匠の共通するとした基本的構成態様(A)は、類否判断に大きな影響を与えるものとすることができず、具体的な態様における共通点(B)ないし(F)は、それぞれ両意匠の類否判断を左右する要素としては小さいものに止まり、それらのまとまりは一定の共通感を生じさせるものであるから、類否判断に影響を与えるものであるが、差異点(エ)の類否判断に与える影響は更に大きいものである。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が一致するが、形態において、形態全体としてみた場合、前記の類否判断に与える影響が大きい差異点(エ)が、前記の共通する態様のまとまりを凌駕するものであり、また、他の差異点があるから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似するものということができない。
4.むすび
以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2006-08-03 
出願番号 意願昭61-5695 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (L2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関 陽一 
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 山崎 裕造
越河 香苗
登録日 1994-08-25 
登録番号 意匠登録第912878号(D912878) 
代理人 伊藤 儀一郎 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ