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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H2
管理番号 1144830 
審判番号 不服2005-14941
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2006-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-04 
確定日 2006-09-25 
意匠に係る物品 便所用局部洗浄器リモートコントローラー 
事件の表示 意願2004- 27581「便所用局部洗浄器リモートコントローラー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は、平成16年(2004年)9月10日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「便所用局部洗浄器リモートコントローラー」とし、意匠登録を受けようとする部分を実線で表したものであり、その形態は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第一参照)。

第2 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められますので、意匠法第3条第2項の規定に該当します。

この意匠登録出願に係る便所用局部洗浄器リモートコントローラーの分野において、コントローラー本体上部に、厚みが本体と同一の操作釦部を一列に配設することは、本願出願前より極普通に行われているのでありふれた手法である(意匠1及び2参照)から、便所用局部洗浄器リモートコントローラー本体上部に、周知形状である蒲鉾状の操作釦部(厚みは本体と同一のもの)を左端部から3つ配設したに過ぎない本願意匠は、この程度では容易に創作をすることができたものと認められます。
意匠1:
特許庁意匠課が2003年 7月30日に受け入れた
New Toilet
第38頁所載
便器用コントローラーの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC15029801号)
意匠2:
特許庁意匠課が2004年 5月19日に受け入れた
TOTO 総合カタログ 2004-2005
第188頁所載
コントローラーの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC16020314号)」

第3 請求人の主張
請求人は、原査定の取り消す旨の審判請求を行い、請求の理由として、概略以下の通り主張した。
蒲鉾型形状は「抽象的な概念」としては周知の形状かもしれないが、それは食品である蒲鉾の形状の特徴、即ち、一辺を曲線とする略四角形を概括的に「蒲鉾型」と呼称しているのに過ぎない。即ち、蒲鉾型といってもその形状は多種多様であり、略正方形の一辺を曲線とした蒲鉾型から略長方形の一辺を曲線とした蒲鉾型までいろいろな態様がある。
即ち、意匠を構成する一要素の形状が蒲鉾型を主題とする場合であっても、意匠にかかる物品に採択し適用できる蒲鉾型の種類は多数存在し、意匠創作の過程においていくつかの蒲鉾型形状から意匠を構成する他の要素との調和(ハーモニー)などを検討の上、ふさわしい蒲鉾型形状を選択し意匠の創作に及ぶものである。
本願にかかる部分意匠の形状等を単独に抽出した場合であっても、蒲鉾型形状の操作釦部をコントロールパネル部本体の長手方向と等しい長さにて配置するか、また、蒲鉾型の操作釦部をどのように分割して配置するかなど、独自の創作が必要となる。
本願意匠の操作釦部は、全体を四分割して形成するとともに、コントロールパネル部本体の長手方向と等しい長さをもって配置し、四分割した操作釦部の長手方向Yの長さは、全長Xの約四分の一の長さをそれぞれ構成することにより、バランスの取れた操作釦部の形状と配置を形成する。一方、その様な操作釦部の形状と配置方法が公然知られた形状等ではない。しかしながら、原審は、そのような操作釦部の形状と配置方法が公然知られた形状等に基づき容易に意匠の創作をすることができたことを、何ら検証していない。
本願意匠は意匠法第3条第2項に該当するとの原審の判断は理由が無く、意匠法第3条第2項の適用及び解釈を誤ったものである。即ち、原審は、蒲鉾型形状が広く知られた形状等であることを徒に拘泥する一方、かかる蒲鉾型形状が本願意匠に「ほとんどそのまま」取り入れたものあることをなんら検証することなく、本願意匠は意匠法第3条第2項に該当すると即断するものである。
仮に、蒲鉾型形状が広く知られた形状等であるとしても、本願意匠は複数ある蒲鉾型形状の種類、コントロールパネル部本体への配置、他の意匠との調和などに工夫を致しており、蒲鉾型形状を「ほとんどそのまま」表しているものではない。蒲鉾型形状をほとんどそのまま意匠に係る物品に表すという抽象的な手法では、本願意匠の形状が当然に想到されるものではない。
よって、本願意匠は公然知られた形状等に基づき容易に意匠の創作をすることができた意匠ではなく、意匠法第3条第2項には該当しない意匠である。

第4 当審の判断
本願意匠に係る物品は「便所用局部洗浄器リモートコントローラー」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」の記載によれば、トイレルームの壁面に設置されるリモートコントローラーであり、意匠登録を受けようとする部分は、三つの操作ボタン部を含む上部の形態であって、以下に示すとおりである。
すなわち、略薄型箱形状のリモートコントローラーの上部であり、正面視略細長矩形状に表れ、側面視略蒲鉾状に表れている部分であって、左右全幅を略4等分して左から三つをボタン部、右端側を非ボタン部としたものである。各ボタン部及び非ボタン部は略同形同大であって、それぞれの間には若干の隙間が形成され、各ボタン部の下端周縁にはごくわずかな段差部が設けられている。
そこで、本願意匠の創作性の有無について検討すると、確かに略薄型箱形状のリモートコントローラーの上部にボタン部を列状に設けたものは、前記の意匠1や意匠2(別紙第二参照)に見られるように、本願意匠の出願前にこの種物品分野において公然知られているものである。また、ボタン部を含む側面視形状も、略蒲鉾状であって、周知形状であるといえる。
しかしながら、本願意匠は、左右全幅を略4等分して左から三つをボタン部、右端側を非ボタン部とし、各ボタン部及び非ボタン部を略同形同大としたものであって、この態様は、意匠1や意匠2には見受けられない本願意匠の特徴といえるものであり、当業者が意匠1と意匠2に基づいて容易に想到し得る態様であるといえるものではない。
この点について、請求人は、本願意匠の操作釦部の形状と配置方法が公然知られた形状等ではない旨を主張されており、この主張は、公知意匠である意匠1及び意匠2から、本願意匠のボタン部の形状や配列などが一意に決まるものではない点に言及するものであり、是認できるものである。
そうすると、本願意匠は、略薄型箱形状のリモートコントローラーの上部にボタン部を列状に設けた意匠1及び意匠2の形状と、周知形状である略蒲鉾状の形状に基づいて容易にその意匠の創作ができたものとすることは困難である。
したがって、本願意匠は、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当せず、原査定の拒絶の理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。
また、本願意匠について、他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2006-08-31 
出願番号 意願2004-27581(D2004-27581) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 江塚 尚弘 
特許庁審判長 西本 幸男
特許庁審判官 小林 裕和
岩井 芳紀
登録日 2006-10-06 
登録番号 意匠登録第1286674号(D1286674) 
代理人 中村 知公 

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