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審決分類 審判    B7
管理番号 1157238 
審判番号 無効2006-88001
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-12-27 
確定日 2007-03-01 
意匠に係る物品 安全かみそり 
事件の表示 上記当事者間の登録第1256017号「安全かみそり」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1256017号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由の要点
1.請求理由
審判請求人(以下、「請求人」という。)は、「登録第1256017号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号、又は同条第2項、同条の2の規定に違反して意匠登録されたものであり、同法第48条第1項第1号の規定により無効とされるべきであるとして、審判請求書の記載のとおりの主張をし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第30号証を提出した。

2.手続の経緯
本件登録意匠は、平成17年3月31日に出願され、平成17年10月7日に意匠権の設定の登録がなされたものである。

3.本件登録意匠は無効とするべきである理由
請求人の主張は、概ね次のとおりである。
(なお、以下、意匠の形態を表現するにあたり、請求人、被請求人の主張とも、本体ケース長手方向を水平横向きとし、刃部を左側に、スライドボタン部を上側として表したものとして、書き換える。また、甲第2号証による意匠を「引用意匠」という。)
3-1.意匠法第3条第1項第3号について
[本件登録意匠の要旨]
本件登録意匠の基本的構成態様は、本体ケースに収納可能な刃保持部と本体ケースからなる安全かみそりであって、本体ケースの上側に表れた刃の出し入れに連動するつまみ部が設けられた形状にある。
また、その具体的構成態様は、本体ケースの形状について、縦:横:奥行きの比率は0.2:1:0.1と扁平横長であり、その左右両端は略半円弧状をなし、一方に刃保持部の出し入れ部が、もう一方に孔が設けられ、本体ケースの側面視形状は刃保持部の背側から刃側に向かって肩口がやや角張り先窄まりの形状をなし、刃を出した状態の刃保持部と本体ケースとの長手方向の割合は約0.4:0.1であり、刃保持部と本体ケースとの縦方向の割合は0.1:0.2で、刃保持部の正面視の形状は、刃の背側先端部が丸みを帯びた形状をなしており、刃は刃保持部の先端から本体ケース向かって長手方向に約8割、縦方向に端から約2割の範囲で刃保持部から突出した形状をなしている。
[引用意匠の要旨]
引用意匠(甲第2号証)の基本的構成態様は、本件登録意匠と一致している。
具体的構成態様は、本体ケースの右端部形状、側面視の肩口形状、刃保持部の出し入れ部に設けられた蓋以外は、本件登録意匠と一致している。
[先行周辺意匠の摘示]
先行周辺意匠をみれば、側面視形状が丸みか角張りか、柄の端部形状が矩形状か半円弧状か、あるいは、略台形状か略三角形状か、柄の側面視形状が、板状か左右あるいは上部への膨出状か、あるいは、蒲鉾状か矩形状か、あるいは、肉薄板状で下側に緩やかな先窄まりか肉厚な略五角形状で下側に鋭角に先窄まり状か、柄の正面視形状が、への字状で先細りか略楕円形の下側一部を水平切断で先端丸みか、また、本体ケース端部の刃保持部について、突出していても、あるいは刃保持部が設けられていなくても、この程度の相違では類似の範囲内であると判断されるものである。
[本件登録意匠と引用意匠の対比]
どちらも携帯用のかみそりであるから、物品は同一で、形状については、基本的構成態様、及び、具体的構成態様では、本体ケースの形状、刃保持部の形状、本体ケースと刃保持部の構成比率が、共通している。
両意匠の差異点は、(1)刃を出した状態の蓋の有無、(2)本体ケースの右端部の形状、(3)本体ケースの側面視形状である肩口の張り具合の差異にある。
[本件登録意匠と引用意匠の類否]
両意匠は、その基本的構成態様において共通し、本体ケースの形状、刃保持部の形状、本体ケースと刃保持部の構成比率といった具体的構成態様においても共通し、その結果、意匠全体として見た時には、そのプロポーションにおいて同一であり、非常に類似した印象を醸し出している。
差異点の評価については、差異点(1)刃を出した状態の蓋の有無は、本体ケースに刃を収納した状態、つまり流通状態においては表れない差異点で、その使用状態においても、意匠全体として観察した場合には端部の極めて小さい部位の差異に過ぎず、差異点(2)本体ケースの右端部の形状、及び、差異点(3)本体ケースの側面視形状は、その改変はいわばバリエーションに過ぎず、意匠全体として観察した場合には、端部の極めて小さい部位の差異、あるいはウェイトの低い部分で、いずれも意匠の類否に及ぼす影響は極めて微弱である。
以上の点を踏まえつつ、両意匠の共通点と差異点とを全体的に対比した場合、共通点が差異点を遙かに凌駕し、両意匠の印象・美感を共通ならしめていて、意匠全体として観察した場合には、共にコンパクトでかつ安全性が高く、薄型で握りやすい、非常に使い勝手の良い印象を醸し出すものとなっており、差異点の存在にも拘わらず、全く共通した印象を想起せしめる。特に、この種の美顔用品は主に女性に利用されるものであって、需要者は便利さと安全性、コンパクトさ(携帯性)に着目しこだわりをもって製品の選択を行うものといえる。このような傾向を踏まえれば、両意匠に対し、需要者が共通の印象を抱くことは、しごく当然と思われる。

3-2 意匠法第3条第2項について
本件登録意匠は、引用意匠から蓋を削除(簡略化)したり、本体ケース端部を矩形状から半円弧状に改変したり、肩口を角張らせるといった、ごく一般的にありふれた方法で改変を行ったに過ぎないものである。

3-3 意匠法第3条の2について
本件登録意匠は、引用意匠から蓋を除き、本体ケースの片側端部を矩形状から半円弧状にしたに過ぎない意匠で、その出願の日前の他の意匠登録出願の意匠公報に掲載された意匠の一部と類似である。

第2.被請求人の答弁及び理由の要点
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由として、答弁書に記載のとおりの反論をし、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
被請求人の反論は、概ね次のとおりである。
1.答弁の理由
1-1.本件登録意匠は、引用意匠と別異の意匠を構成するものであって、互いに類似するものでなく、これに基づいて容易に創作をすることができたものではなく、また、引用意匠の願書の記載及びこれに添付した図面に表された意匠の一部と類似するものでもないから、その登録は無効にされるべきものではない。
1-2.本件登録意匠は、その審査過程において、引用意匠と類似する等の拒絶理由通知を受けることなく適正に登録されている。この事実からも、特許庁における審査運用によれば、本件登録意匠は引用意匠とは類似しないことを窺うことができる。

2.請求人の主張に対する反論の要旨
2-1.基本的構成態様の認定及び評価の誤り
本件登録意匠と引用意匠は、いずれも本体ケースから刃(刃保持部)を引き出さない限り使用することができないものであるから、形状が変化する動的意匠である。このような動的意匠類否判断に当たっては、意匠創作の中心となるその物品本来の機能、使用目的を果たす状態の形態を「主たる形態(基本的構成態様)」として認定すべきである。したがって、請求人の両意匠の基本的構成態様の認定には重大な誤認がある。請求人は刃(刃保持部)を本体ケースに収納した状態のみを両意匠の基本的構成態様と認定しているが、むしろ刃(刃保持部)を本体ケースから出した状態(使用状態)の形態を、両意匠の基本的構成態様と認定するべきである。

2-2.差異点(1)(刃を出した状態の蓋の有無)の評価の誤り
請求人の「その差異点は、物品の流通状態においては表れない差異点である。その使用状態においても、意匠全体として観察した場合には端部の極めて小さい部位の差異に過ぎず、この差異が意匠の類否に及ぼす影響は極めて微弱である。」との主張は到底容認できるものではない。その理由については後述する。

2-3.請求人摘示の先行周辺意匠事案の適用の誤り
請求人は甲第3号証ないし甲第30号証を摘示し、側面視形状が丸みを帯びた形状、角張った形状等の差異は類似の範囲内であると判断されていると主張するが、両意匠の類否判断に当たっては、両意匠を全体として観察し、両者の要部、すなわち取引者、需要者の最も注意を引く部分、目立つ部分における差異を抽出して対比するべきであるが、請求人の摘示する事案はいずれも具体的構成態様の差異によるものであって、本件登録意匠の類否判断に適用されるべきものではない。

2-4.意匠法第3条第2項についての主張の誤り
請求人の主張は、両意匠はいずれも動的意匠である点を看過した主張と言わざるを得ない。引用意匠の創作点は、刃の収納部の一端に蓋部を構成し、刃の引き出しに伴う刃のスライドに従って、蓋部が上方に回動して、本体ケースに対する刃の付け根背側に蓋部が突出する点と、刃を取り換える際に、刃保持部の形状が使用状態の形状から特殊の形状に変化する点にあり、本件登録意匠とはその創作点が全く相違する。
なお、両意匠は本体ケースの一側面に刃の出し入れに連動するつまみ部が設けられた所謂刃保持部のスライドタイプを採用するものであるが、請求人が基本的構成態様として認定する「本体ケースに収納可能な刃保持部と本体ケースからなる安全かみそりであって、本体ケースの一側面(正面図略中央)に表れた刃の出し入れに連動するつまみ部が設けられた安全かみそりの形状」は、昭和60年12月9日に公開された公開実用新案公報(乙第2号証)に既に開示されており、このような技術は公知のものであり、両意匠を比較する上で何ら創作性の判断の要素となるものではなく、本件登録意匠の創作性を否定する要素ではない。

2-5.意匠法第3条の2についての主張の誤り
請求人のこの主張も、両意匠はいずれも動的意匠である点を看過した主張と言わざるを得ない。

2-6.本件登録意匠と引用意匠との対比
両意匠の意匠に係る物品は、同一ないしは類似するものであることは認める。
両意匠の形態を具体的に比較するに当たっては、前述したようにいずれも動的意匠として理解、認識されるべきものであるから、使用目的を果たす状態の形態、つまり刃を本体ケースから出した状態(使用状態)の形態を両意匠の基本的構成態様と認定し、これにウェイトを置いて両意匠を対比、類否判断することにする。
a.刃を本体ケースから出した状態の形態の対比
(a-1)本件登録意匠には、本体ケースと刃以外に周囲に突出するものは形成されていない。また引用意匠は、刃を取り換える際に、刃保持部が下方に90度回動した形状を形成するが、このような形状変化は本件登録意匠には存在しない。このように、両意匠はその使用状態において顕著に相違し、この差異点は、需要者(使用者)が最も注意を引く部分、即ち両者の特徴部分における差異であるため、両意匠を全体的に観察しても、両者の奏する美観が著しく相違し、両者は全く異なった印象を看者に与えることは明らかである。
(a-2)また、本件登録意匠の本体ケース右端部は半円弧状を形成しているのに対して、引用意匠の該右端部は矩形状を形成している。また、本件登録意匠の本体ケース側面視形状は肩口が角張った形状を形成しているのに対して、引用意匠の該形状は肩口が丸みを帯びた形状を形成していて、これらの差異点も請求人も認めるところである。このような差異点も目立つ部分における差異であり、両意匠を対比する際には軽視できないものである。
b.刃を本体ケースに収納した状態の形態の対比
本件登録意匠の本体ケース左端部には、刃を本体ケースから引き出すための開口部(溝)が形成されているのに対して、引用意匠の該部は蓋部によって閉口され溝は形成されていない。

2-7.まとめ
両意匠は、需要者(使用者)が最も注意を引く部分、即ち両者の特徴部分において格段に相違し、別意匠を構成する非類似のものであることは明らかである。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成17年3月31日に出願され、平成17年10月7日に意匠権の設定の登録がなされた、意匠登録第1256017号であって、願書の記載及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「安全かみそり」とし、その形態を願書及び同図面記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.引用意匠
請求人が本件登録意匠の無効の理由として引用した意匠は、平成12年6月1日に出願され、平成13年4月13日に意匠権の設定の登録がなされた、意匠登録第1111819号であって、願書の記載及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「まゆ毛そり器」とし、その形態を願書及び同図面記載のとおりとしたものである。(甲第2号証、別紙第2参照)

3.両意匠の対比
本件登録意匠と引用意匠を対比すると、意匠に係る物品において、本件登録意匠は「安全かみそり」であり、引用意匠は「まゆ毛そり器」であるが、その使用目的、使用状態を勘案すれば、両意匠の物品は一致し、形態においては、以下の共通点及び差異点が認められる。
[共通点]
両意匠は、基本的構成態様において、(A)使用時は刃部を本体ケースから突出させ、非使用時には刃部を本体ケースに収納するもので、(B)使用に際して、刃部の突出は本体ケース上に設けた刃部に連動するつまみを刃部の出入り口方向にスライドさせ、収納はつまみを戻して行い、(C)刃部を本体ケースに収納した状態は、奥行き方向が幅狭で横に長い扁平箱体状の本体ケースの幅狭な上面に、スライド溝とつまみが表れる形態とし、(D)刃部を本体ケースから出した状態は、刃の付いた刃保持部がケース長手方向の左方中央から、ケース長手方向と水平に突出する形態とした点が、共通する。
具体的構成態様においては、(E)本体ケースの形態につき、(E-1)縦:横:奥行きの寸法比率を約2:10:1とし、(E-2)正面視上辺と下辺を平行状とし、左端部を略半円弧状に形成し、刃の出し入れ口部とし、(E-3)側面視形状を、下面部を上面部よりさらに幅狭として下窄まり状とし、両側面部を斜面状とし、やや凸曲面に形成し、各稜部に丸みを持たせ、周面全体をなめらかに形成し、(E-4)上面部に長い凹部を形成し、内部にスライド溝を設け、上面に凹凸を形成した矩形状つまみを、該凹部から僅かに上面が覗くよう配し、(F)刃部の形態につき、(F-1)刃保持部を、全体を扁平横長薄板状とし、正面視の刃の背側先端部が丸みを帯びたやや先細り状に形成し、(F-2)刃を、刃保持部の先端から本体ケース向かって長手方向に約8割、縦方向に下端から約2割の範囲で刃保持部から露出するように形成し、(G)刃部を本体ケースから出した状態において、刃部と本体ケース長手方向の寸法比率を約10:23とし、刃保持部と本体ケースの縦方向の寸法比率を約1:2とした点が、共通する。
[差異点]
両意匠は、具体的構成態様において、(a)本体ケースの形態につき、(a-1)刃の出し入れ口に、本件登録意匠は、収納時に本体ケース左端部の略半円弧状の外形状に納まり、刃を出した状態において蓋が刃保持部の上側に略蒲鉾状に突出する蓋部を設けたのに対し、引用意匠は、該部に蓋を設けず開口のままとし、(a-2)右端部形状を、本件登録意匠は、開口部のない矩形状としたのに対し、引用意匠は、左端部と同様に開口部を設けた略半円弧状とし、(a-3)側面視の上面部から両側面部へと続く肩口形状、並びに、側面部から下面部へと続く形状を、本件登録意匠は、角張った形状としているのに対して、引用意匠は丸みを帯びた形状とし、(a-4)上面部の凹部の長さを、本件登録意匠は左端部側に余白部を設けた長さとしたのに対し、引用意匠は両端部近くまで長く形成し、(a-5)つまみ上面の凹凸形状を、本件登録意匠は、略格子状に区画される凹凸としたのに対して、引用意匠は縞状をなす凹凸とし、(b)刃部について、(b-1)刃保持部の正背面側の表面形状を、本件登録意匠はなめらかな平坦状としたのに対し、引用意匠は刃の上部に、先端部と同じ丸みを本体ケース側にも施した帯状囲み部を形成し、(b-2)刃の取り替えを、本件登録意匠は可能とせず固定式にしたのに対して、引用意匠は取り換えを可能とし、刃の付いた刃保持部を、使用状態の形状からさらに延伸させ回動させて、本体ケースとの嵌合を解除し、刃保持部を外し、装着は逆の順序で行うことで取り替えを行うようにした点に、差異が認められる。

4.類否判断
以上の共通点と差異点を総合して、両意匠の類否を全体として検討すると、この種かみそりの意匠においては、需要者はかみそりの使用者であるから、看者は一般需要者であるが、その使用目的から慎重に意匠を認識した上で選択に及ぶものであり、その際は主に刃側を中心とした上方斜視方向から形態全体を観察して意匠を認識するものである。また、両意匠は刃を収納できるかみそりであり、携行性を意図したものであるから、この点も看者の注意が向けられるものである。したがって、看者は、刃を本体ケースから出した状態は当然のこと、刃が収納された状態のケースの態様、そして、刃の出し入れ等の操作の態様にも注意を払って意匠を認識するものと認められる。
そこで、両意匠の共通点を見ると、共通点は意匠全体のほとんどの部分を占めると共に、刃部の使用時と収納時の両態様にわたるもので、特に、ケース本体形状を扁平横長箱体状とし、幅狭な上面部にスライドつまみを配した態様は、両意匠以外にはほとんど見られなかった特徴的な態様であり、意匠全体の骨格を決定しており、看者に共通する美感を起こさせるものである。
すなわち、乙第2号証に開示されているように、「本体ケースに収納可能な刃保持部と本体ケースからなる安全かみそりであって、本体ケースの上面に表れた刃の出し入れに連動するつまみ部が設けられた安全かみそり」はあっても、このかみそりの刃は本体ケース両長手方向に突出するものであり、また、本体ケースの長手方向の一方に突出するものは、意匠登録第608061号、意匠登録第624069号、実開昭56-128170、実開昭56-159069に見られるが、スライドつまみは本体ケースの幅広な正面部に設けられており、本体ケースの形状はいずれも扁平横長の箱体状ではない。
これに対し、差異点は、細部にわたる態様であるか、付加的な部分であるか、または、平常の使用時以外の特別な操作時に係るものであるから、両意匠の共通する美感を変更するものではない。
すなわち、差異点(a-1)刃の出し入れ口の蓋部の有無については、引用意匠の蓋は小さくて意匠全体から見れば目立つものではなく、また、蓋はこの物品本来の用途及び機能には関わりがない付加的なものであるから、その視覚上の効果は限定的で、共通する全体の美感を変更するものではない。
差異点(a-2)正面視右端部形状については、正面視して注意して対比しなければ視認できない程度の差異であり、共通点(B)に述べたように、長手方向の周面の共通性により、通常視認する斜視方向からは、引用意匠の右端部も略円弧状に見えるものであるから、視覚上の効果は微弱で、共通する全体の美感を変更するものではない。
差異点(a-3)側面視の肩口、及び、側面部から下面部へと続く形状は、側面同士を並べて比較して初めて明らかとなる程度の局所的差異で、この種物品においては側面視すること自体まれで、通常視認される斜視方向からは確認できず、共通する全体の美感を変更するものではない。
差異点(a-4)上部の凹部の長さは、両意匠とも刃の背側にあたる本体ケース上面のかなりの部分を占める長い凹部を形成しており、看者には長い部分をスライドさせるものという共通した印象を与え、この程度の長さの差異が全体の美感を変更することはない。
差異点(a-5)つまみ上面の凹凸形状、および、差異点(b-1)刃保持部の正背面側の表面形状は、いずれも注視して初めて明らかとなる局所的差異で、意匠全体の中で目立つことはなく、共通する全体の美感を変更するものではない。
差異点(b-2)刃の取り替えが可能か否かに起因する差異は、通常の使用状態においては視認できず、刃交換という特殊な、付加的な使用状態においてのみ表れる差異であり、視覚効果としては微弱で、共通する全体の美感を変更するものではない。
そして、これら差異点の相まった効果を勘案しても、差異点が両意匠の共通点を凌駕することはなく、共通点は先に述べたとおり、各態様にわたり、圧倒的であるから、両意匠は全体として美感が共通し、類似するものである。

5.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから、意匠法第48条第1項第1号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2006-10-03 
結審通知日 2006-10-05 
審決日 2006-10-20 
出願番号 意願2005-9692(D2005-9692) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (B7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 加藤 真珠 
特許庁審判長 梅澤 修
特許庁審判官 杉山 太一
樋田 敏恵
登録日 2005-10-07 
登録番号 意匠登録第1256017号(D1256017) 
代理人 濱田 初音 
代理人 田澤 博昭 
代理人 田澤 英昭 
代理人 加藤 公延 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 
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