• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) J7
管理番号 1160538 
判定請求番号 判定2006-60061
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2007-08-31 
種別 判定 
判定請求日 2006-11-15 
確定日 2007-06-22 
意匠に係る物品 点滴筒つき定量筒 
事件の表示 登録第1237598号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「点滴筒つき定量筒」の意匠は、登録第1237598号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1. 請求の趣旨及び理由
判定請求人(以下、請求人という。)は、「イ号意匠に示す意匠は登録第1237598号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、要旨以下のとおり主張し、甲第一号証(一及び二)ないし甲第九号証を提出した。
なお、本件判定請求は、被請求人が存在しないものであり、その理由として、請求人は、「イ号意匠(甲第二号証)」に係る製品の製造販売を予定しており、イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属することを明確にするべく、判定請求するものであると述べている。

その理由は、概ね次のとおりである。
1.本件登録意匠の説明
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「点滴筒つき定量筒」とし、その形態の要旨を次のとおりとする。
(1)基本的な構成態様
(ア)円筒体の上部開口端に、断面視、倒コの字状を呈する蓋体が被せられている。
(イ)円筒体の下端には細い排出口が形成され、正面側には目盛りが表されている。
(ウ)蓋体上面には、中心に略円筒状の注入口が形成され、その注入口を挟んで略円筒状の混注口と通気口とが対称的に配置されている。
(2)具体的な構成態様
(a)円筒体の長さとその最大径との比は、約1:0.2である。
(b)円筒体上端から全長の約3分の2の位置における円筒体上方部から円筒体下方部 への縮径部が、正面視、曲線状を呈している。
(c)目盛りは、正面視、円筒体上方部においては、10ml分が一まとまりで略二等辺三角形を呈し、その略二等辺三角形は逆さに8つ縦に並んで表されており、円筒体下方部においては、円筒体上方部に表された略二等辺三角形の約2倍の高さの略二等辺三角形が逆さに2つ縦に並んで表されている。
(d)蓋体には、混注口と通気口とが、平面視、注入口を挟んで左右対称に配置され、吊下チューブ接続用突起は形成されていない。

2.イ号意匠の説明
イ号意匠は、意匠に係る物品を「点滴筒つき定量筒」とし、その形態の要旨を次のとおりとする。
(1)基本的な構成態様
(ア)円筒体の上部開口端に、断面視、倒コの字状を呈する蓋体が被せられている。
(イ)円筒体の下端には細い排出口が形成され、正面側には目盛りが表されている。
(ウ)蓋体上面には、中心に略円筒状の注入口が形成され、その注入口を挟んで略円筒状の混注□と通気口とが対称的に配置されている。
(2)具体的な構成態様
(a’)円筒体の長さとその最大径との比は、約1:0.3である。
(b’)円筒体上端から全長の約3分の2の位置における円筒体上方部から円筒体下方部への縮径部が、正面視、曲線状を呈している。
(c’)目盛りは、正面視、円筒体上方部においては、10ml分が一まとまりで略台形を呈し、その略台形が逆さに8つ縦に並んで表されており、円筒体下方部においては、円筒体上方部において表された略台形の約2倍の高さの略二等辺三角形が逆さに2つ縦に並んで表されている。
(d’)蓋体には、混注口と通気口とが、平面視、注入口を挟んで上下対称に配置され、注入口を挟んで左右対称には、略円柱状を呈する吊下チューブ接続用突起が1つずつ配置されている。

3.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
(1)両意匠の共通点
a)両意匠は、意匠に係る物品が「点滴筒つき定量筒」で一致している。
b)基本的構成態様について、基本的構成態様(ア)?(ウ)において共通し、
c)具体的構成態様について、具体的構成態様(b)と(b')において共通している。
(2)両意匠の相違点
具体的構成態様(a)と(a’)において、本件登録意匠に比して、イ号意匠は、円筒体の長さに対するその最大径が大きく形成されている。
具体的構成態様(c)と(c’)において、本件登録意匠の円筒体上方部に表された10ml分の目盛りは略二等辺三角形を呈しているのに対し、イ号意匠の目盛りは略台形を呈している。
具体的構成態様(d)と(d’)において、本件登録意匠の蓋体には混注口と通気口とが、平面視、注入口を挟んで左右対称に配置されているのに対し、イ号意匠の蓋体には上下対称に配置されており、本件登録意匠の蓋体には吊下チューブ接続用突起は形成されていないのに対し、イ号意匠の蓋体には注入口を挟んで左右対称に、略円柱状を呈する吊下チューブ接続用突起が1つずつ配置されている。

4.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
(1)本件登録意匠に関する先行周辺意匠
本件登録意匠には、意匠登録第707025号、意匠登録第1237927号、意匠登録第1237928号、意匠登録第1237929号、意匠登録第1239258号、意匠登録第1239258号の先行周辺意匠がある。
意匠登録第1239258号は、出願当初、本件登録意匠を本意匠とする関連意匠として出願されたものの、意匠法10条1項違反の拒絶理由を受けたため、本意匠の表示を削除する補正を行った後、独立の意匠として登録されたものである。
(2) 本件登録意匠の要部
上記先行周辺意匠から、審査においては、具体的構成態様である円筒体の長さとその最大径の比率、及び、目盛り模様には重きをおかず、また、蓋体形状は全件共通でもあることからして、円筒体上方部から下方部への縮径部が正面視において曲線状を呈しているか否かに重きをおいて類否判断が為されたことが明らかである。
よって、本件登録意匠の要部は、基本的構成態様(ア)?(ウ)を前提とし、具体的構成態様「(b)円筒体上端から全長の約3分の2の位置における円筒体上方部から円筒体下方部への縮径部が、正面視、曲線状を呈している。」点にあると云える。
(3)本件登録意匠とイ号意匠との類否判断
この種物品の分野の意匠の類否判断においては、具体的構成態様である、円筒体の長さに対するその最大径の比率、及び、目盛り模様には重きがおかれていないし、両意匠の円筒体の長さに対するその最大径の比率(具体的構成態様(a)と(a’)における相違の程度は、本件登録意匠と甲第七号証との間にある相違の程度よりは大きいものの、この程度の相違は設計変更の範囲内であることから、意匠的評価は低いものと考えられる。
また、両意匠の具体的構成態様(d)と(d’)については、吊下チューブ接続用突起は、使用状態において本物品を吊下具に吊り下げるための機能的要請に基づいて形成されたものであり、混注口及び通気口の配置についても、注入口を中心として90度回転させたまでのものであることから、意匠的特徴は低いものであると思料する。
したがって、両意匠は具体的構成態様(a)と(a’)、(c)と(c’)、(d)と(d’)について相違するものの、何れの相違点も意匠的評価は低いものであり、これらの相違点が意匠全体の美感に及ぼす影響は、両意匠の上記基本的構成態様(ア)?(ウ)、及び、本件登録意匠の要部である円筒体縮径部である具体的構成態様における共通性が全体の美感に及ぼす影響を凌駕するものではない。
よって、両意匠は全体として看者に共通の美感を呈していることから、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものである。

第2.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成16年8月12日に出願され(意願2004-024293)、平成17年3月11日に意匠権設定の登録がなされた意匠登録第1237598号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「点滴筒つき定量筒」とした意匠であって、その形態を願書及び同図面記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。

2.本件登録意匠の形態
本件登録意匠の基本的態様は以下のとおりである。
(ア)中途で一回り細く縮径されている円筒体であって、上部開口端に断面視倒コ字状を呈する蓋体が被せられている。
(イ)円筒体の下端には細い排出口が形成され、正面側には目盛りが表されている。
(ウ)蓋体上面には、中心に略円筒状の注入口が形成され、その注入口を挟んで略円筒状の混注口と通気口とが対称的に配置されている。
具体的構成態様は以下のとおりである。
(a)縮径位置は円筒体上端から全長の約3分の2の位置であって、縮径部は正面視曲線状を呈し、円筒体上方部並びに円筒体下方部とも、その円筒はごく僅かに下窄まり状を呈している。
(b)円筒体の長さとその最大径との比は、約1:0.2である。
(c)目盛りは、正面視、円筒体上方部においては、10ml分が一まとまりで略二等辺三角形を呈し、その略二等辺三角形は逆さに8つ縦に並んで表されており、円筒体下方部においては、円筒体上方部に表された略二等辺三角形の約2倍の高さの略二等辺三角形が逆さに2つ縦に並んで表されている。
(d)蓋体には、吊下チューブ接続用突起は形成されておらず、混注口と通気口は、注入口を挟んで平面視左右対称に配置されている。

3.イ号意匠
イ号意匠は、「イ号図面」(甲第二号証)に示された「点滴筒つき定量筒」の意匠であって、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙第2参照)。

4.イ号意匠の形態と、本件登録意匠との差異点
イ号意匠は、基本的構成態様を本件登録意匠と同じとし、具体的態様について、
(A)円筒体の長さとその最大径との比が、本件登録意匠は約1:0.2であるのに対し、イ号意匠は約1:0.3であり、
(B)目盛りの10ml分の一まとまりの形状について、本件登録意匠は略二等辺三角形を呈するのに対し、イ号意匠は略台形を呈し、
(C)蓋体の、混注口と通気口の配置について、本件登録意匠は注入口を挟んで平面視左右対称に配したのに対し、イ号意匠は注入口を挟んで平面視上下対称に配し、吊下チューブ接続用突起について、本件登録意匠は形成していないのに対し、イ号意匠は、注入口を挟んで平面視左右対称に1つずつ配している点が相違し、それ以外は本件登録意匠と同じとしたものである。

5.類否判断
本件登録意匠とイ号意匠の上記差異点を検討すると、両意匠は、ガートル台等に吊り下げられて使用されるものであり、容積が同じ円筒体で、共に、蓋体の中心に注出口を設け、それを挟んで混注口及び通気口を対称状に配したものであることを勘案して、以下検討すると、
まず、円筒体の長さとその最大径との比の差異点(A)については、共に細長い円筒体であることに変わりはなく、またこの分野において通常行われる設計変更の範囲内であるから、いずれの比率とも特徴となることはなく、類否判断を左右するものではない。
目盛りの10ml分の一まとまりの形状についての差異点(B)については、結局、一まとまりの先端部形状が尖っているか否かの相違であるが、両意匠の形状とも、上部から下方に向かって漸次下窄まり状を呈し、それを上下連続して表した態様と相まって、目盛り部全体の共通感を看者に与えているもので、その差異は類否判断を左右するほどではない。
蓋体の、吊下チューブ接続用突起の有無、及び、混注口と通気口の配置の差異点(C)について、まず、吊下チューブ接続用突起は、イ号意匠の該突起は単なる小さい略円筒状で目立つものではなく、混注口と通気口の配置の差異も、イ号意匠の配置は、単に本件登録意匠の配置を約90度回転させたまでのものであり、また、その差異は正面の目盛りと関連付けることで認識可能となる程度のもので、蓋体のこれら差異点を合わせても、類否判断を左右するものではない。
したがって、本件登録意匠とイ号意匠の差異点は、いずれも細部に係るものであり、そのような差異点を総合しても類否判断を支配する要素とはなり得ず、これに対して、両意匠の共通点は、要部に係ると共に、ほとんどの態様にわたり圧倒的で、意匠全体の骨格を形成し、両意匠に共通する美感を起こさせているから、イ号意匠は本件登録意匠に類似するものである。

6.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2007-06-08 
出願番号 意願2004-24293(D2004-24293) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 関口 剛 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 前畑 さおり
樋田 敏恵
登録日 2005-03-11 
登録番号 意匠登録第1237598号(D1237598) 
代理人 小谷 悦司 
代理人 川瀬 幹夫 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ