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審決分類 審判    H1
審判    H1
管理番号 1162278 
審判番号 無効2006-88008
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-04-05 
確定日 2007-07-04 
意匠に係る物品 コネクタ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1242318号「コネクタ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由
請求人は、「意匠登録第1242318号は無効とする、との審決を求める。」と申立て、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した(請求の理由について、平成18年8月30日付で「手続補正書」を提出し、根拠条文を付記した内容に補正した)。
イ(無効理由1)
本件登録意匠は、その出願日の前である2004年3月18日?24日の間のハノーバにおけるCcBIT(CeBITの誤記)展示会で公開されたため新規性を喪失するものである。甲第1号証に請求人が参加企業の一つとして参加、展示ブースが配置されていた。以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条1項1号、2号又は3号の規定に違反して登録がなされたものであり、意匠法第48条1項1号の規定により無効とすべきである。
ロ(無効理由2)
甲第2号証は上記展示会において、請求人のスタンド前で撮られた写真である。本件意匠と同じ商品がDATA PLUS Supplies社のスタンドの戸棚の第二段に展示されており、外部に開示されていることは明らかである(甲第2号証)。以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条1項1号、2号又は3号の規定に違反して登録がなされたものであり、意匠法第48条1項1号の規定により無効とすべきである。
ハ(無効理由3)
請求人は、本件意匠の出願日以前に、顧客にEメールにより本件意匠を開示した(甲第3号証)。以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条1項1号、2号又は3号の規定に違反して登録がなされたものであり、意匠法第48条1項1号の規定により無効とすべきである。
ニ(無効理由4)
本件登録意匠の本当の創作者は「黄海波」であり「陳俊名」ではない。本件意匠の出願人は創作者でもなく、また意匠登録を受ける権利を承継しないものである。
本当の創作者「黄海波」は2004年6月9日に中国で同じ意匠を出願して登録番号D34117165で登録されている。中国での出願は、日本の出願より早いのは明らかである。以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第48条1項3号の規定により無効とすべきである。

第2 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として要旨以下に示すとおり主張した。
〈甲第1号証について〉
ドイツのハノーバにて開催されたCoBIT(CeBITの誤記)展示会に本件登録意匠に係る物品を出展し展示したという事実はなく、本件登録意匠の出願日前の公開には該当しない。
〈甲第2号証について〉
甲第2号証に関しては、実際これらの写真が何時何処で誰によって撮影されたものであるかを特定することができない。また、戸棚内に展示されている商品は何れの商品も撮影が不鮮明であり、どの写真のどの部分に本件登録意匠と同じ商品が展示されているのか、さらには、個々の商品が具体的にどのような形状、模様、色彩等を具備するものであるかを確認することも不可能である。よって、甲第2号証はその証拠能力自体無いものである。
したがって、このような証拠をもって本件登録意匠が無効であるとする請求人の主張を容認できない。
〈甲第3号証について〉
甲第3号証のEメールには、確かに何らかのファイルデータが別途添付されていた痕跡はあるものの、実際に添付されていたデータが別途添付されている図面データであったか否かを第三者が正当に判断できる類のものではないため、その証拠能力自体疑わしく、信憑性は全く無い。
そもそも、Eメールは、一般に公開することを目的としない私的文書であると認識されるものであり、刊行物として取り扱われるものではない。
このような証拠に基づいて本件登録意匠が無効であるとする請求人の主張を容認できない。
〈甲第4号証について〉
甲第4号証は、その出所に関する説明が不十分であるが、おそらく理由ニで述べている創作者「黄海波」が中国で意匠出願した内容を示す書類と推定される。
乙第1号証の秘密保持解約(契約の誤り)のとおり、本件登録意匠の権利者は、上記「黄海波」氏が代表者になっている藍線電子産品製造有限公司との間で、本件意匠物品である「コネクタ」も関係する「フラッシュメモリカードリーダー/ライター」に関して、秘密保持契約を交わしている。
この契約における「フラッシュメモリカードリーダー/ライター」の開示者は、本件登録意匠の権利者である「▲いく▼鋒数位股▲ふん▼有限公司」であり、「陳俊名」は開示者であり、「藍線電子産品製造有限公司」は被開示者である。
「黄海波」氏は、この契約に違反して中国出願したものである。
甲第4号証の証拠能力について検討すると、図面以外の記載を全て手書きにより書き込まれ、請求人の主張する創作者の名前すら記載されていない。また、甲第4号証が実際に中国特許庁によって正規に発行された書類であるか否かも分からず、このような出所不明の書類が刊行物に該当するとは到底考えられず、証拠として採用するには不適当である。
また、請求人は、創作者「黄海波」の中国における意匠出願が、本件登録意匠の出願日より早いことを無効理由として主張しているが、中国意匠出願と日本意匠出願の先後願の関係のみをもって無効理由を構成するとの請求人の主張は言語道断である。
したがって、『本件登録意匠の本当の創作者は『黄海波』であり『陳俊名』ではない。本件登録意匠の出願人は創作者でもなく、また意匠登録を受ける権利を承継しないものである。』とする請求人の主張は何の根拠も無く、これを認容できない。

第3 請求人の弁駁
被請求人の答弁に対して請求人は、要旨以下のとおり弁駁した。
〈甲第1号証について〉
新規性が喪失されているか否かは、写真によるものではなく、展示会に出品されていれば、新規性は喪失するのであり、写真が不鮮明か否かは問題ではない。被請求人は、『写真が不鮮明である』として回答を避けており、CeBIT展示会に「出品した」とも「していない」とも言っていない。出品されていたかどうかは、本人が一番よく知っているはずであり、本願意匠を出品していないとするならば、どういう商品を出品したのか、証拠を出すべきである。
〈甲第2号証について〉
先の甲第1号証において述べたように、展示会に本件登録意匠と同じ商品が展示されているのかが問題なのであって、写真が不鮮明か否かは問題ではない。被請求人は「写真が不鮮明である」として回答を避けており、CeBIT展示会に「出品した」とも「していない」とも言っていない。出品されていたかどうかは、本人が一番よく知っているはずであり、本願意匠を出品していないとするならば、どういう商品を出品したのか、証拠を出すべきである。
〈甲第3号証について〉
Eメールにおいて、開示されたか否かという事実確認の問題である。Eメールにおいて明らかであれば「公然知られた」ものといえるのであり、被請求人の主張は理解できない。被請求人は、Eメールにて添付されていたか否かの明確な回答を何故避けているのか。
〈甲第4号証について〉
請求人が、創作者「黄海波」氏の中国における意匠の出願日が本件登録意匠の出願日より早いことを無効理由としているのは、両出願において偶然同じ意匠を創作したとするのは非常に不自然であり、該証拠は、本件登録意匠が創作したものではなく、盗作の疑いがあるものだとの請求人の主張を補強するものとして提出したものである。

第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成16年7月30日に意匠登録出願し、平成17年4月22日に意匠権の設定の登録がなされた登録第1242318号意匠であり、願書の記載、及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「コネクタ」とし、その形態は、同図面に記載のとおりのものである(別紙第1参照)。
すなわち、その形態は、全体が、縦長薄板状のものであって、その一部を矩形状に切り欠いて平面視略コ字状とした本体部と、その切り欠き部分と略同形同大とした矩形状のUSBプラグ部とからなり、本体部は、正面側を丸面状とし、左側面の正面寄りにUSBコネクタ2個と背面寄りに電源コネクタを配置し、右側面の正面寄りにUSBコネクタ2個を配置し、底面は、コ字状部分の背面側の半分を閉塞したものであり、USBプラグ部は、長辺の長さが、本体部の長辺の長さの略半分で、短辺の長さが、本体部のそれの略3分の1の長さとしたものであり、長辺の略3分の1を本体の切り欠き部分に挿入し、先端側(正面側)3分の1の差込部分を、一回り小さく形成した構成態様のものである点が認められ、なお図面を子細に観察すれば、USBプラグ部は、正面側を軸として平面側に回動し、本体部の切り欠き部分に収容されるものと推認できる。
2.無効理由の判断
(1)無効理由1及び無効理由2について
まず、請求人が無効理由1の証拠として提出した甲第1号証について検討すると、請求人が、2004年3月18日から24日まで、ドイツのハノーバで開催された、CeBIT展示会に参加していたらしいこと(甲第1号証の1頁目と続葉頁の体裁に統一感が感じられず、同一カタログからの抜粋であるかに若干の疑問がある)は認められるが、甲第1号証のみでは、本件登録意匠が同展示会において公開され、新規性を喪失したものであることを裏付ける証拠が何ら提出されていないものであるから、その主張は採用することができない。
次に、請求人が無効理由2の証拠として提出した甲第2号証について検討すると、展示会らしきブースに、ショーケースを置き、多数の商品を展示していることはわかるが、この写真が、上記CeBIT展示会の時の写真であったか否かは不明である。
また、この写真からは、ショーケース内に、本件登録意匠と同じ商品が展示されていたことを看取することができない。この点について請求人は、弁駁書において、請求人の展示ブースであるにもかかわらず、被請求人の展示であるかのように主張し、展示内容について被請求人に開示を求めているが、展示内容についての開示責任は、請求人の側にあることは明らかであるから、請求人の主張は失当といわざるをえない。
そうすると、甲第2号証は、上記のとおり本件登録意匠と同じ商品が、その出願前に公然知られていたとするに足る証拠能力を有するものと認めることができない。
したがって、本件登録意匠は、甲第1号証及び甲第2号証に基づいて、その出願前に公然知られた意匠であるとすることはできない。
(2)無効理由3について
請求人が無効理由3の証拠として提出した甲第3号証について検討すると、まず、1頁目は、Eメールのコピーと思われるが、発信人が誰であるか確認することができない。2頁目は、コネクタが4図現されているが、1頁目のメールに添付されたものであるか否か不明である。3頁目は請求人のEメールのコピーであることは確認できるが、同Eメールの添付ファイルについては何ら開示されていない。
甲第3号証の2頁目に現されたものが、Eメールに添付されていたものと仮定して、その形状について観ると、かなり不鮮明なものではあるが、甲第3号証の意匠は、全体が、縦長薄板状のものであって、その一部を矩形状に切り欠いて平面視略コ字状とした本体部と、その切り欠き部分と略同形同大とした矩形状のUSBプラグ部とからなり、本体部は、左右側面にUSBコネクタとおぼしきものが配置され、底面は、全面を閉塞したものであり、USBプラグ部は、本体部の長辺の長さの略5分の4の長さで、短辺の長さが、本体部のそれの略3分の1の長さとしたものであり、長辺の一部を本体の切り欠き部分に挿入し、先端側(正面側)3分の1の差込部分を、一回り小さく形成した構成態様のものであって、USBプラグ部は、正面側を軸として平面側に回動し、本体部の外側に突出する態様のものと認められる。
そうしてこれを、本件登録意匠と比較検討すると、両意匠は、USBプラグ部及び切り欠き部分の長辺の長さ比率が大きく異なり、全体として観察した場合、この差異が類否判断に大きく影響を及ぼし、別異の意匠を感得させるものであるから、甲第3号証の2頁目に現された意匠が、本件登録意匠の出願前に公知になったものであるとしても意匠法第3条1項1号、同2号及び同3号に該当するものとはいえない。
なお、Eメールの公知性についてであるが、公然知られた意匠とは、不特定多数の人に知られる状態にあった意匠のことをいうのであり、Eメールは、特定の者に送るものであって、不特定多数の者に送るものではないことから、このEメールによって知られた事実をもって、公然知られた意匠であるとすることはできない。
(3)無効理由4について
請求人が無効理由4の証拠として提出した甲第4号証について検討すると、甲第4号証に表された意匠は、特許庁受入の中国意匠公報によれば、2004年6月9日に「黄海波」を創作者及び権利者として出願し、2005年1月5日に公告されたものであり、意匠に係る物品を「コネクタ」とし、その形態を同公報に掲載されたとおりとしたのものである(別紙第2参照)。
同公報によれば、甲第4号証に表された意匠と同一のものと認められる。
そうして、本件登録意匠と甲第4号証の意匠は、USBプラグ部を切り欠き部に収納した状態か否かの差異はあるものの、略同一形状のものと認められる。
本件登録意匠と甲第4号証の意匠は、それぞれの公報の記載によれば、創作者及び権利者が相互に異なるものである点が認められる。
請求人は「偶然同じ意匠を創作したとすることは非常に不自然である。」と主張するが、被請求人の提出した乙第1号証によれば、甲第4号証の創作者であり権利者である「黄海波」氏と、本件登録意匠の創作者(陳俊名」氏)が代表者である権利者「▲いく▼鋒数位股▲ふん▼有限公司」との間で2003年11月25日に秘密保持の契約をしており、その後半年を過ぎた時点で両意匠が少しの時間をおいて中国と日本にそれぞれ出願されたものである。このことから、両意匠は、同契約に基づいて開発・製造されたものと推認できるものであり、同じ意匠が存在しても、何ら不自然ではない。
さらに、同契約によれば、「▲いく▼鋒数位股▲ふん▼有限公司」を開示者としていることからすれば、意匠登録を受ける権利を有する者は、本件登録意匠の意匠権者である「▲いく▼鋒数位股▲ふん▼有限公司」であって、むしろ、「黄海波」氏の中国での出願が冒認出願であったというべきである。
この点について、被請求人の、「中国に於いて商業活動を行っていなかったため、「黄海波」氏の中国出願という契約違反行為をあえて追求しなかった。」との主張は容認できるものである。
また、「黄海波」氏の中国での出願は、上記認定のとおり、本件登録意匠の出願前の出願であるが、公然知られた日、すなわち公告されたのは、本件登録意匠の出願後であるから、本件登録意匠の出願前に公然知られていたものということはできない。
したがって、甲第4号証の意匠の存在によって、本件登録意匠が意匠法第48条1項3号に該当するものとは認められない。
3.むすび
以上のとおりであって、請求人の主張する理由によって、本件の意匠登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2007-01-31 
結審通知日 2007-02-05 
審決日 2007-02-22 
出願番号 意願2004-22877(D2004-22877) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (H1)
D 1 113・ 15- Y (H1)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 行久 
特許庁審判長 西本 幸男
特許庁審判官 鍋田 和宣
岩井 芳紀
登録日 2005-04-22 
登録番号 意匠登録第1242318号(D1242318) 
代理人 鈴木 征四郎 
代理人 吉川 俊雄 

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