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審決分類 審判    L6
管理番号 1162281 
審判番号 無効2007-880001
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-01-15 
確定日 2007-07-23 
意匠に係る物品 建物用格子材 
事件の表示 上記当事者間の登録第1154659号「建物用格子材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1154659号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求の趣旨及び理由の要旨
1.請求人は、結論同旨の審決を求めると申立、その理由を審判請求書の記載のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。その要点は以下のとおりである。
理由1.意匠法第3条第1項第3号該当性
(1)登録第1154659号意匠(以下、「本件登録意匠」という)は、甲第1号証の意匠と類似であり、意匠法第3条第1項第3号の規定に違背して登録されたものであるから、同法第48条第1項第1号により無効とすべきものである。
(2)本件登録意匠は、甲第6号証の意匠とも類似であり、これにより、意匠法第3条第1項第3号の規定に違背して登録されたものであるから、同法第48条第1項第1号により無効とすべきものである。
理由2.意匠法第3条第2項該当性
本件登録意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状(甲第4号証)に基づいて、容易に意匠の創作をすることができたものと認められるのであり、意匠法第3条第2項の規定に違背して登録されたものであって、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。
第2.被請求人の答弁及び答弁の理由
被請求人は、本件請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めるとし、その理由として答弁書に記載のとおり主張し、乙第1号証の1及び乙第1号証の2を提出した。その要点は以下のとおりである。
(a)理由1の(1)について
甲第1号証の中空部に設けられた小突起片は全体に占める割合は小さいけれども、全体の形状が比較的単純であり、また小さいだけに余計に目に付き、注意を引く形状である。しかも、上記小突起片は角筒状のジョイント金具を係止するための特定の機能を有するものであるから、角筒状ジョイント金具を使用しない本件登録意匠に係る物品の使用者にとってみれば、注意を促されて見たものの、自分が欲しいものとは別個の部材であるということを直接に認識できる目印、つまり本件登録意匠と甲第1号証に係る意匠は互いに異なるものであると認識できる目印である。意匠の類否とは、突き詰めて言えば、ある物を購入しようとして、これと混同して他の物を購入してしまうほど似ているかどうかということであるから、特定の機能を有するがために混同しようがない形態があれば、たとえそれが小さいものであっても互いに非類似であると言わざるを得ない。
(b)理由1の(2)について
嵌合部の左右の外周壁の肉厚部の有無について、嵌合部の左右の外周壁を肉厚にすることによって嵌合部の形状がリップ溝形鋼とは全く異なる形状になっていることは一目瞭然であり、とうてい「嵌合部の形態にほとんど影響をあたえない」などということはできない。
むしろ、全体が比較的単純な形状でほとんどが同じ肉厚に形成されている中で、上記肉厚部は十分に目立つ程度に厚く、しかもその肉厚部は中空部側にのみ偏在し、開口部側にはない。このため、嵌合部の形状を、奥が狭く、開口部側が広いという複雑なものにしている。これに対し、本件登録意匠では、嵌合部は、その逆に、奥が広く、開口部側が狭いという形状となっている。
以上のことから、具体的形態において、嵌合部の形状が全く異なるから、本件登録意匠と甲第6号証の意匠とは類似するものではなく、互いに非類似の意匠である。
(c)理由2について
審判請求人の主張は、甲第4号証の意匠と本件登録意匠とは類似しないということを前提とするものであるが、甲第4号証と甲第1号証とを対比すると、ほとんど小突起片と小突片が違うだけであり、本件登録意匠に対し、甲第1号証意匠は類似するが、これに対し甲第4号証の意匠は類似しないとする根拠は何なのか、明確な説明は全くない。
また、甲第4号証と甲第6号証とを対比すると、ビスホールと肉厚部において差異が認められるが、請求人によれば、ビスホールは意匠を特徴付けるものではなく、肉厚部の有無は局所的徴差にすぎないと述べている。それでは、本件登録意匠に対し、甲第6号証意匠は類似するが、これに対し甲第4号証の意匠は類似しないとする根拠は何なのか、これについても明確な説明は全くない。
要するに、本件審判請求の理由は矛盾が多く、意匠の類否の判断を自己に都合のよいように解釈しているとしか思われない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成13年4月3日に出願され、平成14年8月9日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1154659号の意匠であって、登録原簿及び出願書面の記載によれば、意匠に係る物品は「建物用格子材」であって、その形態は願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである(別紙1参照)。
2.甲号意匠
甲号意匠は、甲第1号証のカタログ、すなわち、東京都品川区西五反田2丁目8番1号所在の株式会社パイロット/軽金属事業部が作成したカタログ、「メタルビーアルピュア」に掲載された「ステアガードF30型」の意匠であって、その形態は、当該カタログ43頁の上欄左端の図面に表されたとおりのものである(別紙2参照)。
3.甲号意匠の公知性について、
甲第1号証のカタログ裏表紙には、「96.10」の記載、すなわち、カタログ作成における一般的慣行により、作成日の1996年10月を示すと認められる記載があり、また、これを疑うべき格別な理由がないから、甲第1号証のカタログは、少なくとも本件登録意匠出願前に頒布され、甲号意匠は公然知られるに至ったものと認められる。
4.本件登録意匠と甲号意匠との比較検討
そこで、本件登録意匠と甲号意匠を対比すると、両意匠は意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点、及び、差異点がある。なお、両意匠とも、本件登録意匠の願書添付図面において使用状態を示す参考図の状態の向きで使用されるものと認められるが、同添付図面における正面図上側を「上」として、以下認定する。
すなわち、両意匠は、主たる共通点として、
(1)縦幅(両側壁の高さ幅)よりも横幅(上・下両面側の短手幅)を狭くした、断面形状を一定のものとする概略角筒状中空長尺材であって、下面側には係合用開口部を形成し、該開口部のやや奥まった位置に、平板状両側壁に対して垂直状とした中空部を形成する平板状隔壁を設け、下面の開口部側については、両側壁下端からそれぞれ内側に向け直角状に曲げた態様の、相互同一平面状に揃えた等幅の係止片を設け、隔壁との間にチャンネル状空隙部を形成したものである点、
(2)横幅に対する縦幅は、概ね1.8倍程度とし、底面の開口幅は、係止片幅よりやや広くした点、がある。
一方、両意匠は、主たる差異点として、
(ア)両係止片上面について、甲号意匠は、何れも内側端部から上方に向け直角状に突設した小凸条を設けているのに対して、本件登録意匠は、何れも内側の端部からやや離れた位置に、引用意匠よりもやや大きい凸条を垂直状に設けた点、
(イ)上面について、甲号意匠は、何れも平面状とした高部と低部が、短手方向に交互に繰り返される平行筋目模様を表しているのに対して、本件登録意匠は、全体を単なる平面状としている点、
(ウ)中空部側について、甲号意匠は、両側壁の隔壁近傍に、相互向き合う対の小凸条を設けているのに対して、本件登録意匠は、対の小凸条に相当するものがなく、一方、上下両面それぞれの中央位置に、甲号意匠には存在しないタッピングホールを形成する相互向き合う小弧状突片を設けている点、
がある。
そこで、両意匠を意匠全体として観察し、これら形態上の共通点及び差異点が、類似するか否かの結論(以下、「類否判断」という。)に及ぼす影響について検討する。
先ず、前記(1)の共通点に係る構成態様は、両意匠の全体に係わる骨格を形成するものであり、(2)の構成比率に関する点は、共通感を大きく強める働きをするものであり、これら(1)及び(2)の構成態様を同時に併せ持った点は、意匠全体として訴求力の強い視覚的まとまりを形成するものであるから、類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
一方、(ア)の差異点について、甲号意匠のものは微小なものであり、本件登録意匠のものはやや大きいとしても、意匠全体からみれば、(1)の共通点に係る構成態様と比較して、細部形状に属するものであって、しかも、係止片上面の開口部側から奥まった視認しにくい部位に設けられたものであり、また、使用状態を示す参考図によれば、凸条が慣用的に用いられるストッパーの役割を果たしている程度のものであって、格別着目される程のものではないから、類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎない。
(イ)の差異点について、甲号意匠に設けられた平行筋目模様は、高部と低部の高低差が極く僅かなことにより視覚的に極めて微弱なものであり、また、本件登録意匠においてこれを廃した点に格別特徴があるとも認められず着目されるものでもないから、類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎない。
(ウ)の差異点について、圧倒的広い部位を占める周面形状に対して、何れも側端面側からしか視認することができない実質的には内部形状に相当するもので、また、本件登録意匠に設けられた相互向き合う小弧状片についても、この種意匠の分野において、組立時における結合手段として必要に応じて適宜付加されるもので、格別着目される程のものではないから、類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎない。
このように、両意匠の共通点に係る構成態様は類否判断に大きな影響を及ぼすのに対して、差異点は類否判断に及ぼす影響は僅かであり、また、これら差異点の相まった効果を考慮したとしても、共通するとした訴求力の強い視覚的まとまりを凌駕し、別異の視覚的まとまりを生じさせるまでに至っているとは到底いえないものであり、結局、本件登録意匠は、甲号意匠に類似するものとせざるを得ず、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当する。
5.むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、その出願前頒布された刊行物に記載された甲号意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するもので、同法同条第1項の規定に違反するにも係わらず登録されたものであるから、その登録は、甲第6号証の意匠に類似するか否か、及び、意匠法第3条第2項の規定に該当するか否かを検討するまでもなく、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2007-05-18 
結審通知日 2007-05-23 
審決日 2007-06-11 
出願番号 意願2001-9633(D2001-9633) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 早川 治子 
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 2002-08-09 
登録番号 意匠登録第1154659号(D1154659) 
代理人 瀬川 幹夫 
代理人 新関 和郎 

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