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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) D2
管理番号 1168845 
判定請求番号 判定2007-600037
総通号数 97 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2008-01-25 
種別 判定 
判定請求日 2007-04-25 
確定日 2007-11-30 
意匠に係る物品 洗面室用収納棚 
事件の表示 上記当事者間の登録第1222967号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠は、登録第1222967号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1. 請求の趣旨及び理由
1.請求理由
判定請求人(以下、「請求人」という。)は、「イ号意匠は意匠登録第1222967号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)に類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、その理由を判定請求書のとおり主張し、証拠として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
その理由の内容は、概ね次のとおりである。
なお、請求人は、判定請求書の「請求の理由」の中で「(9)イ号意匠の登録意匠」の項を設けているが、イ号意匠は「(3)イ号意匠について」の項に記載された意匠であるので、本判定ではその意匠とのみ判定を行うものである。

(1)本件登録意匠
本件登録意匠は、平成16(2004)年1月30日に出願し、同年10月1日に意匠権設定登録が成された、意匠に係る物品が「洗面室用収納棚」である、登録第1222967号意匠である。

(2)イ号意匠
イ号意匠は、甲第1号証の被請求人の製品カタログに掲載されている、製品名をマルチミラーとする製品であり、意匠に係る物品は「洗面台用化粧棚」である。

(3)本件登録意匠とイ号意匠の、形態の要旨の対比
[ア]共通点
[基本的構成態様について]
〈a〉全体を正面側に配された扉部と筺体内に設けられた収納部により構成され、扉部は矩形状に分割され、該分割された扉部のうち、中央下方に配された扉部に可動鏡部を配し、
〈b〉可動鏡部は背面が鏡部枠体前面と接着し上下端部を鏡部枠体により係止され、
〈c〉可動鏡部及び鏡部枠体は側面においてフレーム部と上部蝶番により蝶着され、
〈d〉上部蝶番は可動鏡部、鏡部枠体及びフレーム部側面の上端近傍に取り付けられ、下部蝶番はフレーム部側面下端近傍に取り付けられ、
[具体的構成態様について]
〈e〉可動鏡部形状を横長長方形状の板体とし、
〈f〉鏡部枠体上下端部に、それぞれ可動鏡部を係止するための縁部を形成し、
〈g〉該上端縁部には取手部を設け、
〈h〉可動鏡部背面は鏡部枠体により全て覆われ、
[鏡部枠体について]
〈i〉側面視下端において略鍵状の縁部を形成して可動鏡部下端を係止し、
〈j〉上端近傍に上部蝶番を蝶着し、
〈k〉該幅広部から下端縁部まで細い一定幅の板体とし、
可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部の動きについて、
〈l〉閉じた状態において、可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部は近接した状態で折り畳まれ、
〈m〉上部蝶番を支点に可動鏡部及び鏡部枠体のみ上方に跳ね上げた状態を形成し、
〈n〉更に下部蝶番を支点にフレーム部を前方へ倒して側面視略くの字状の状態を形成し、
〈o〉下部蝶番を支点に可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部を閉じた状態のまま前方へ倒した状態を形成する。
[イ]相違点
[基本的構成態様について]
〈a〉イ号意匠には、上端に照明部、及び下端に収納部の無い厚みの薄い前垂れ部が設けられているのに対し、本件登録意匠には無く、
〈b〉本件登録意匠は、可動鏡部を筺体に対し下方を背面側へ僅かに傾斜させて配しているのに対し、イ号意匠は、可動鏡部を筺体に対し垂直に配し、
[具体的構成態様について]
〈c〉鏡部枠体の側面視について、本件登録意匠は上部蝶番と接する面及びその稍下方までを稍幅広としているのに対し、イ号意匠は上部蝶番と接する面の上方部分を稍幅広とし、
〈d〉フレーム部の側面視において、本件登録意匠は上下端部を稍幅広として上端幅広部を上部蝶番を介して可動鏡部及び鏡部枠体と蝶着し、下端幅広部を下部蝶番を介して筺体収納部内側面と蝶着しているのに対し、イ号意匠は同一幅として上端を上部蝶番を介して可動鏡部及び鏡部枠体と蝶着し、下端を下部蝶番を介して筺体収納部内側面と蝶着している。

(4)本件登録意匠の要部
この種物品において、全体を正面側に配された扉部と筺体内に設けられた収納部により構成され、扉部を矩形状に分割し、扉部前面を鏡部とした収納棚(化粧棚)の意匠は本願出願前より一般的であり、また、扉部前面を可動鏡部として可動鏡部内側にフレーム部を設け、可動鏡部とフレーム部の動きにより形状が変化する意匠は、本件登録意匠出願前より存在していた。
しかし、本件登録意匠は、扉部前面の可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部の具体的な形状について出願前のこの種物品の意匠には全く無い新規性の高い意匠であり、意匠の説明の欄に記載されているように、鏡を前方へ引き出したり、角度調整が可能な点に特徴を有する。扉部前面の可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部の具体的な動き、及び当該具体的な動きによりもたらされる機能上の効果についても、従来の意匠には全くない新規性の高い意匠である。下部蝶番を支点に可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部を閉じた状態のまま前方へ倒せば、背面側に設けられた収納部に収納された物の出し入れを容易に行うことができる。
よって本件登録意匠は、請求部分である扉部前面の可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部の具体的な形状、及び動きにより形状が変化する点は、従来のこの種物品にはない新規な特徴があり、要部と認められる。

(5)両意匠の類否判断
[相違点について]
相違点〈a〉は、本件登録意匠の請求部分ではない部位における相違点であり、相違点〈b〉は、本件登録意匠の請求部分ではない筺体との関係から生じる傾斜の有無であり、これらは類否判断を左右する観点とは成り得ない。また、相違点〈c〉は、鏡部枠体の側面視における上方の幅が多少異なる程度の相違であり、相違点〈d〉は、フレーム部の側面視において、上下端部が稍幅広に形成されているか否の相違であり、本件登録意匠が稍幅広に形成されているのは、蝶番の幅に合わせたに過ぎないものであるから、いずれも微差にすぎないものと認められる。
[共通点について]
共通点は、基本的構成態様における共通点〈a〉-〈d〉に加え、具体的構成態様についても、〈e〉-〈o〉の多岐に渡り多くの点について共通するものと認められる。
特に本件登録意匠の請求部分である、可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部の構成が一致する点に加え、本件登録意匠の要部を成す、可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部による動き、及び当該動きによりもたらされるこれらの形状、及び可動鏡部の様々な角度について両意匠は完全に共通する。当該観点は製品価値を左右する、視覚的にも明らかに看者に対し強い印象を与えるものであり、類否判断を左右する観点であると認められる。
[総合判断]
以上を意匠全体として総合的に判断すると、(1)で述べたとおり、本件登録意匠は、請求部分である扉部前面の可動鏡部及び鏡部枠体、並びにフレーム部の具体的な形状、及び動きにより形状が変化する点は、従来のこの種物品にはない新規な特徴があり、要部と認められるから、本件登録意匠の要部を含む両意匠間の共通点は、看者に対し共通の印象を強く与えるものである。
一方、相違点としての評価の対象となるのは、鏡部枠体及びフレーム部の小さな部位における僅かな形状の相違であり、いずれも類否判断を左右する観点とは成り得ない、意匠全体から見れば徴差にすぎない相違点であると認められる。
してみれば、意匠全体として総合的に判断しても、相違点は両意匠の共通するとした態様に包摂される程度の部分的な相違に止まるものであって、類否判断を左右する要素としては微弱なものと認められ、共通点は相違点を凌駕し、看者に対し共通の印象を与え、両意匠は類似するものと判断される。

2.答弁に対する弁駁
(1)本件登録意匠の要部に関する、被請求人の主張「理由1」について
〈i〉本件登録意匠は、鏡を前方へ引き出したり、角度調整が可能な点に特徴を有するという点に対する主張について。
被請求人は、補助的な鏡の角度が変化すること自体ありふれたことであると主張するが、乙第6号証に示された意匠は、いずれも変化の態様が本件登録意匠とは相違する。単に鏡の角度が変化する意匠は本件登録意匠の出願前より存在していたものの、本件登録意匠は、上部蝶番の位置そのものを上下前後に動かすことができるため、図面に表したように、鏡を上下前後の様々な角度に設定可能である。すなわち1つの意匠でありながら様々な使用態様に対応することができ、このような意匠は本件登録意匠出願前には全く存在しなかった。
なお、乙第3号証(甲第3-3号証と同じ)の意匠は、鏡を左右前後に動かすことができるが、上下に動かすことは出来ない。従って具体的な形状、動きが相違する乙第3号証と本件登録意匠は、全く異なる意匠である。よって本件登録意匠の鏡の角度変化がありふれているとする被請求人の主張には、根拠がない。
〈ii〉正面視、下部中央にある横長矩形の補助的な鏡は多数知られており、それ自体は、ありふれた形態であるという主張について。
その根拠として被請求人が示した資料である、乙第5- 1、5-2、5-4及び5-5号証は、いずれも横の長さが縦の長さに比べかなり長いため、本件登録意匠の縦横比率とは大きく相違する。乙第5-3及び5-6号証については、逆に縦の長さが長くなり、本件登録意匠の縦横比率とは異なる。これらの意匠とは異なり、本件登録意匠とイ号意匠の鏡の縦横比率はほぼ同一であることから、看者に対し強く共通する印象を与えるものである。加えて、上記〈i〉に記載したように、動きも同一であるため、更に両意匠の共通性が強調されるものである。
〈iii〉可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部が折りたたまれ、一体となった形態において、「斜め配置」自体が要部であるという主張について。
可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部が折りたたまれ、一体となった形態については、本件登録意匠のように下部蝶番を下部左右位置で固定し、上部蝶番の位置そのものを上下前後に動かすことのできる意匠は、本件登録意匠出願前には存在せず、当該形状及び動きは本件登録意匠の要部と認められる。
被請求人の主張は、先行意匠の具体的形状を無視し、単に「動く」または「折り畳まれる」という概念的共通性に着目して成された主張であり、根拠に欠ける主張と言わざるを得ない。

被請求人は補助的鏡の「斜め配置」が先行意匠に存在しないため、本件登録意匠の要部であると主張する。しかしながら本件登録意匠には、上記のような、本件登録意匠出願前にはない、商品価値を左右する大きな特徴点が認められるため、「斜め配置」が特徴を構成するものとは認められない。
この種物品の正面下部を、背面方向へ斜めに形成することは、例えば乙5-2号証の左右端部にも見られるように、以前より存在する手法である。
当該意匠の傾斜面は鏡ではないが、正面に鏡を適宜配置することは、この種物品においてありふれた手法である。従ってこのようなありふれた手法に基づく形状が、上記本件登録意匠の特徴を凌駕し、本件登録意匠の要部とは成り得ない。

(2)本件登録意匠の要部に関する、被請求人の主張「理由2」について
〈i〉「本件登録意匠において、斜め配置の傾斜がたとえ僅かであっても、…(略)斜め配置された可動鏡部(物品の補助部)の形態は、インパクトがあり、特異な印象を与える」との主張について。
本件登録意匠は、動的意匠として登録されたものであり、扉を閉めた状態のみにより意匠が判断されるものではない。また、その特徴は意匠の説明にも記載されているように、鏡を前方へ引き出したり、角度調整が可能な点が特徴であり、当該特徴が看者に対し今までに無い新規な印象を与える点である。従って、僅かな斜め配置が看者に対しインパクトを与えるものとは認められない。
〈ii〉配置と類否判断の関係について、請求部分の配置(位置)は、類否判断を左右する観点として、必ず考慮されるべきものであるとの主張について。
意匠審査基準では、請求部分の配置(位置)についても、共通点及び差異点を認定することが記載されているに過ぎない。例えば、同審査基準71.9.1.1に、類似する部分意匠として記載されている事例2は、請求部分の配置(位置)が相違する。また、例示に示された判例は、本件登録意匠とイ号意匠のような動的意匠ではなく、かつ動的部分が共通するわけではなく、更に部分意匠の請求部分として大きな範囲を占める部分(可動鏡部)の形状がほぼ同一であるわけでもない。従って判例の存在が、本件の判定結果に影響を及ぼすものではない。

(3)相違点(c)(d)に関する主張について
フレーム部の段差の相違について、側面視における相違に過ぎず、意匠全体から見れば徴差の範囲に止まるものである。
フレーム部と鏡部の長さについて、鏡を閉じた状態では、イ号意匠の筐体は鏡部下方に側面視凸部が設けられていることから、フレーム部と鏡部の長さの相違は、全く視認することが出来ない。更に、鏡を前方へ引き出した状態においては、鏡の角度とフレーム部の角度はそれぞれ設定されるため、これら長さの相違は使用者が殆ど気づかないような相違点に過ぎない。

(4)可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部が動き、可動鏡部(鏡部枠体)の角度が変化することに関する主張について
被請求人は、請求人の甲第4号証の説明が、使用上の効果であり、本件登録意匠の形態よりもたらされる美感についての効果ではなく、技術的効果に過ぎず、このため意匠の類否判断に影響するものではない、と主張するが、意匠が変化することは明らかに看者に別異の印象を与えるものであり、かつ当該変化が商品価値を左右する効果をもたらすものであれば、更にその印象を強固なものとすることは言うまでもないことである。

第2.被請求人の答弁
被請求人は、「本件判定請求は成り立たない。請求人が示すイ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める」と答弁し、その理由を答弁書の記載のとおり主張し、証拠として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。その理由の要旨は、以下のとおりである。

(1)本件登録意匠とイ号意匠との対比
[共通点について]
〈a〉意匠の構成要素として、可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部自体を有すること、構成態様として、可動鏡部と鏡部枠体が一体となり、これとフレーム部とが、上部蝶番により蝶着され、フレーム部と、筺体収納部(洗面室用収納棚本体)とが下部蝶番により蝶着されていることは共通する。
[相違点について]
〈b〉本件登録意匠は、可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部が折りたたまれ、一体となり、下方を背面側に傾斜させて、洗面室用収納棚の中央下部の筺体収納部に配置(斜め配置)されている。それに対し、イ号意匠は、可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部が折りたたまれ、一体となり、垂直に、洗面室用収納棚の中央下部の筺体収納部に配置(垂直配置)されている。
〈c〉本件登録意匠は、側面視においてフレーム部の上部及び下部に段差が(上部段差、下部段差)あるのに対し、イ号意匠は、フレーム部の上部にも下部にも段差がない。
〈d〉本件登録意匠は、側面視において鏡部枠体の長さが、フレーム部の長さより短く、正面から見て、フレーム部が露出している。これに対し、イ号意匠は、鏡部枠体の長さが、フレーム部の長さより長く、正面から見て、フレーム部が隠されている。
(2)意匠の類否判断
[1]共通点〈a〉について
構成態様として、可動鏡部と鏡部枠体が一体となり、これとフレーム部とが上部蝶番により蝶着され、フレーム部と洗面室用収納棚本体とが下部蝶番により蝶着されていることは、乙第3号証及び乙第3号証の各部の名称を示した意匠図(乙第4号証)に示したように、よく知られた形態である。そして、その機能(可動鏡部の角度が変化する)において、前記のような形態を取ること自体は必然であるため、側面視において、前記のような形態が共通することは、その機能(可動鏡部の角度が変化する)において当然である。従って、その形態自体がありふれた形態である点、その形態を有することがその機能において当然である点から、要部にはなり得ず、類否判断に対する影響は極めて小さいと考える。
[2]相違点〈b〉について
本件登録意匠において、可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部が折りたたまれ、一体となり、下方を背面側に傾斜させて、洗面室用収納棚の中央下部の筺体収納部に配置されていることが、本件登録意匠の要部である。
[理由1]公知意匠との関係からの、要部認定
この種物品において、正面視下部中央にある横長矩形の補助的な鏡は、多数知られており、それ自体はありふれた形態である。そして、このような横長矩形の補助的な鏡は、洗面化粧台本体に対し、垂直に配置されているものが多数である。また、中央下部に配置された横長矩形の補助的な鏡の角度が、垂直に配置された状態から変化する形態も知られている。補助的な鏡の角度が変化すること自体も、ありふれたことである。すなわち、補助的な鏡は、「横長矩形」、「垂直配置」、「角度変化」するものが多数知られており、これらはありふれた形態であり、要部たりえない。
しかし、正面視下部中央にある横長矩形の補助的な鏡が、下方を背面側に傾斜させて配置されているものは、見当たらない。また、主部の鏡の下部に、横長矩形の補助的な鏡の上部を近接させ、下方を背面側に傾斜させて配置されているものも、見当たらない。
したがって、部分意匠である本件登録意匠は、可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部が折りたたまれ、一体となった形態において、前例のない前記の「斜め配置」自体を、要部として、登録されたものと思料する。つまり、本件登録意匠は、部分意匠であり、その形態そのものが、ありふれたものであっても、その配置が、新規であり、それを以て、登録されたものである。
それに対し、イ号意匠は、可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部が折りたたまれ、一体となり、主部の鏡の下部に近接し、垂直に、洗面室用収納棚の中央の筺体収納部に配置(垂直配置)されたものである。この相違点は、本件登録意匠の要部が、「斜め配置」である点から、類否判断に対する影響は、極めて大きいと思料する。
[理由2]物品全体の印象を左右する点からの、要部認定
上部の鏡部(物品の主部)が機能の上から、直垂に配置される必要性が極めて高い点から、その下部に配置される可動鏡部(物品の補助部)が、斜め配置であるか、垂直配置であるかの相違は、物品全体の印象を左右する極めて重要な要素である。
つまり、通常、上部の鏡部(物品の主部)が斜めに配置されることはなく、必然的に、垂直に配置される上部の鏡部(物品の主部)に対して、下部に配置される可動鏡部(物品の補助部)が、斜め配置では、その接点が必ず屈折し、垂直配置では、その接点が平坦になる。そして、それらの印象は全く異なるものとなる。実際、公知意匠においては、上部の鏡部(物品の主部)が斜めに配置される物品は、見当たらず、通常は垂直配置である。なお、上部の鏡部(物品の主部)自体は、本件登録意匠の権利範囲外だが、その配置は、破線で示された上部の鏡部との関係より本件登録意匠のとおり、特定されるものである。
したがって、下部の可動鏡部(本件登録意匠の請求部分)が、垂直たる上部の鏡部(物品の主部)の下部に近接し、配置される以上、本件登録意匠の斜め配置では、上部の鏡部と、下部の可動鏡部(本件登録意匠の請求部分)では、側面視において、必ず屈折する。そして、この屈折した形態そのものを生じさせる「斜め配置」こそが、本件登録意匠の要部である。斜め配置の傾斜がたとえ僅かであっても、垂直に配置された上部の鏡部(物品の主部)から、下部に引き込まれるように、斜め配置された可動鏡部(物品の補助部)の形態は、インパクトがあり、特異な印象を与える。可動鏡部の配置の相違は、物品(洗面化粧台)全体の印象すらも左右する重要な要素である。
本件登録意匠は部分意匠であり、意匠審査基準にあるように、請求部分の配置(位置)は、類否判断を左右する観点として必ず考慮されるべきものであり、権利範囲外の部分との関係から生じる可動鏡部の傾斜の有無は、類否判断を左右する要部となり得るものである。この点について、平成18年(行ケ)第10317号の審決取消請求事件において、「部分意匠は物品の部分であって、意匠登録を受けようとする部分だけで完結するものではなく、破線によって示された形状等は、それ自体は意匠を構成するものではないが、意匠登録を受けようとする部分がどのような用途及び機能を有するものであるかを定めるとともに、その位置等を事実上画する機能を有するものである。」と、判示されている。
[3]相違点〈c〉、〈d〉について
本件登録意匠では、可動鏡部(鏡部枠体)がフレーム部に対して短く、看者が頻繁に手を掛ける可動鏡部(鏡部枠体)の下部の手掛け部の近傍に下部の段差があるため、その下部の段差の存在により、可動鏡部(鏡部枠体)の下部の手掛け部の存在が強く印象づけられ、またこの段差と手掛け部により、側面視において、立体的で、やや複雑との印象を与える。さらに、本件登録意匠は、可動鏡部(鏡部枠体)がフレーム部に対して短いので、手掛け部を最下端にできず、視覚的に段差により、手掛け部の位置を強調しているが、イ号意匠では、可動鏡部(鏡部枠体)がフレーム部に対し、長いため、手掛け部が最下端となり、手掛け部の位置を直感的に感知できる。また、本件登録意匠においては、可動鏡部(鏡部枠体)を引き出したとき、フレーム部の上部の段差により、陰影のある線があらわれるが、イ号意匠では、そのような陰影のある線は存在しない。段差の存在しないイ号意匠は、側面視において、すっきりした平面的な印象を与え、視覚的に、看者に異なるとの印象を強く与えるものである。
[4]可動鏡部と鏡部枠体、フレーム部が動き、可動鏡部(鏡部枠体)の角度が変化することについて
請求人は、甲第4号証において使用上の効果を説明しているが、これは本件登録意匠の形態よりもたらされる美感についての効果ではなく、技術的効果に過ぎず、意匠の類否判断に影響するものではない。また、フレーム部と可動鏡部(鏡部枠体)が動く物品自体は、周知の存在であり、その形態は、なんら予想外に変化したわけではなく、その動き自体(変化)も、ありふれたものである。すなわち、本件登録意匠は、中央下部の鏡を、乙第3号証の可動鏡部(鏡部枠体)に置換させたものであり、鏡が動くこと自体は、要部たりえない。本件登録意匠における、この自明な変化自体は、いわば、良く知られた使用状態の説明にすぎず、いわば洗面台の扉を開いた状態、あるいは、引き出しを引いた状態を示していることとなんらかわらない。したがって、この動きにより変化した態様自体は、意匠の要部になりえるものではなく、意匠の類否判断の対象にもなりえない。
[5]総合判断
以上のとおり、両意匠の相違点は、いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり、イ号意匠の可動鏡部の垂直配置、フレーム部の段差無し、鏡部枠体がフレーム部より長い点は、いずれもイ号意匠の特徴を成しており、本件登録意匠と異なる意匠的効果を発揮し、いずれも看者の注意を惹くものである。よって、両意匠の相違点が両意匠の共通点を凌駕していることは明らかであり、両意匠は非類似の意匠である。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成16年1月30日に出願され(意願2004-2296)、平成16年10月1日に意匠権の設定登録がなされた、意匠登録第1222967号の意匠で、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品が「洗面室用収納棚」であり、部分意匠であって、その意匠登録を受けた部分(以下、「本件当該部分」ともいう。)の用途及び機能、そして、本件当該部分として同図面に実線で表した部分の位置、大きさ、範囲、形態は、次項のとおりのものである(別紙第1参照)。

1-1.本件当該部分の「用途」及び「機能」
本件当該部分の「用途」は、必要に応じて化粧鏡の補助として、その補助鏡全体の角度や距離を変更して使用することである。そして、本件当該部分の「機能」は、必要に応じて鏡全体の角度や距離を変更するため、フレーム部側面部の上下端部の軸点により、鏡部枠体側面部とフレーム部側面部が可動し、鏡体が上下前後に可動することである。

1-2.本件当該部分の「位置」、「大きさ」、「範囲」
本件当該部分の「位置」は、全体矩形状の洗面室用収納棚正面側の、6枚(上方3枚、下方3枚)の扉のうちの中央部下方側の扉部分にあたり、可動しない状態では、正面部において、取手兼用上下縁部である破線部を鏡部として見た場合、本件当該部分の鏡部の周囲は、四方とも破線で表された部分と接しており、上側の破線による上方扉部との接続の態様は屈折状であり、左右と下側の接続の態様は、破線部で表された各部が傾斜状であるため面一状であり、本件当該部分の下端部は、洗面室用収納棚全体の下端部と面一状である。また、可動した状態では、フレーム部側面部は下端部を軸点に前後方向に角度変化し、そのフレーム部側面部の上端部に蝶着した鏡部枠体側面部は、略上端部を軸点に前後方向に角度変化しつつ、任意の位置で保持されるので、鏡体は前後上下に位置変化するものである。
そして、その「大きさ」は、正面部は、すなわち鏡体正面部であるが、洗面室用収納棚全体の正面部の大きさ(面積)の約1/10であり、側面部は、鏡体と鏡部枠体とフレーム部が表れるが、最長であるフレーム部側面部上下の長さは鏡体正面部上下の長さの約1.2倍であり、その「範囲」は、正面部において、縦方向で洗面室用収納棚全体の約1/4、横方向で同約1/2であり、具体的には、本件当該部分は、鏡体は取手兼用上下縁部を除いた板体部分であり、鏡部枠体とフレーム部は側面部以外を除いたものである。

1-3.本件当該部分の「形態」
本件当該部分全体は、横長矩形板体状の取手兼用上下縁部を除いた鏡体と、これを背面から支える鏡部枠体の略細幅帯状側面部と、鏡部枠体に連結され、筺体に接続されたフレーム部の略細幅帯状側面部から成り、鏡体は、収納状態(折り畳み状態)で下向き傾斜状に設置され(傾斜状は、側面図において明らかである。通常この種の物品が設置される状態において、本件登録意匠の鏡部は下向き傾斜している。傾斜状は、本件物品と使用者との関係において決まる方向性であり、意匠登録を受けた部分の形態そのものと認定される。)、鏡体背面側の両側に、鏡部枠体側面部が当接し、鏡部枠体側面部の上端部内側に、フレーム部側面部の上端部が蝶着し、フレーム部側面部の下端部が筺体に蝶着し、鏡体を収納した状態では、鏡部枠体側面部とフレーム部側面部が当接して折り畳まれ、筺体の鏡部収納凹部の前面に扉状に収まり、可動の状態では、フレーム部側面部をそのままにして鏡部枠体側面部のみを引き出して鏡部角度を変えたり、鏡部枠体側面部とフレーム部側面部を当接したままに鏡部角度を変えたり、鏡部枠体側面部とフレーム部側面部をそれぞれ引き出して鏡体の角度と正面側からの距離を変えられる、基本的態様としたものである。
具体的態様は、(A)鏡体について、正面部の縦横比が約2:5の横長矩形状で、(B)鏡部枠体側面部について、全長は鏡体側面と略同長であり、中央部は極細幅直線状で、下端部は略鍵形状であり、先端部を倒T字状とし、略鍵形状の凹部に鏡体側面部を嵌め込み、上端部の背面側をやや長い幅広部とし、前面側上端部を短い膨らみ部とし、上部には突起部が形成されているが該突起を除いた形状とし、幅広部の上端位置をフレーム部側面部を蝶着する軸点部として、蝶番状のもので軸点部付近の鏡部枠体側面部だけでなく鏡体側面部までを覆い、(C)フレーム部側面部について、全長は鏡部枠体側面部の約1.2倍であり、下端部の前面側につき、鏡部枠体側面部の長さを越える部分を幅広部とし、その幅広部の上方から上端部までの前面側凹部に、折り畳み状態の鏡部が収まり、上端部には背面側に向けた幅広部を設けたものである。

2.イ号意匠
請求人は、イ号意匠を、被請求人の製品カタログに掲載されている、製品名をマルチミラーとする製品とし、イ号意匠の図面を提出しているが、その図面をすべて実線で表わしている。そして、請求人は、請求の趣旨を、「イ号意匠は、登録第1222967号意匠に類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める」としているが、本件登録意匠は部分意匠であるから、対比すべきは部分意匠であるが、請求人提出のイ号意匠の図面には対比すべき部分意匠は明示されていない。しかし、甲第2号証で「各部の名称を示した意匠比較図」を提出し、本件登録意匠の意匠登録を受けた部分(本件当該部分)、及び、イ号意匠のそれに相当する部分を、その比較図の各図に着色して表しているので、そのイ号意匠に係る各図の着色部分(以下、「イ号意匠の本件相当部分」という。)を、本件登録意匠と対比すべきイ号意匠と認定し、以下、判定する(別紙第2、別紙第3参照)。
なお、イ号意匠が現されている製品については、請求人が甲第1号証のカタログにより、被請求人が乙第1号証の写真により、それぞれ示している。

3.両意匠の対比
両意匠の共通点および差異点は、以下のとおりである。
意匠に係る物品は、「洗面室用収納棚」と「洗面台用化粧棚」であるから共通する(以後、イ号意匠も「洗面室用収納棚」として扱う。)。
本件当該部分とイ号意匠の本件相当部分の、「用途」及び「機能」は、共に、化粧鏡の補助として、その補助鏡全体の角度や距離を変更して使用するもので、角度や距離を変更するため、フレーム部側面部の上下端部の軸点により、鏡部枠体側面部とフレーム部側面部が可動し、鏡体が上下前後に可動するのであるから、両意匠共通する。
本件当該部分とイ号意匠の本件相当部分の「位置」について、共通点は、全体矩形状の洗面室用収納棚正面側の、左右3分割状に区割りした扉部の中央の扉部を、さらに上下に約2:1に分割した下方側の扉部分にあたり、可動した状態で、フレーム部側面部は下端部を軸点に前後方向に角度変化し、そのフレーム部側面部の上端部に蝶着した鏡部枠体側面部は、略上端部を軸点に前後方向に角度変化しつつ、任意の位置で保持されるので、鏡体は前後上下に位置変化する点であり、差異点は、可動しない状態で、本件当該部分は、正面部において、取手兼用上下縁部である破線部を鏡部として見た場合、本件当該部分の鏡部の周囲は、四方とも破線で表された部分と接しており、上側の破線による上方扉部との接続の態様は屈折状であり、左右と下側の接続の態様は、破線部で表された各部が傾斜状であるため面一状であり、本件当該部分の下端部は、洗面室用収納棚全体の下端部と面一状であるのに対して、イ号意匠の本件相当部分の周囲は、下側は空間部であって何にも接しておらず、左右と上側は、接する各部と面一状の態様で接続するが、それは接する各部が垂直状だからであり、本件相当部分の下端部は、洗面室用収納棚全体の下端部より上の位置にあるという点である。
本件当該部分とイ号意匠の本件相当部分の「大きさ」について、共通点は、正面部、すなわち鏡体正面部の大きさは、洗面室用収納棚全体の大きさ(面積)の約1/10である点で、差異点は、側面部について、本件当該部分は、フレーム部側面部が長くて、その上下の長さは鏡体正面部上下の長さの約1.2倍であるのに対して、イ号意匠の本件相当部分は、フレーム部側面部は鏡部枠体側面部と同じ長さであるから、鏡体正面部上下の長さと同程度という点である。
本件当該部分とイ号意匠の本件相当部分の「範囲」について、共通点は、洗面室用収納棚全体の正面部における横方向の範囲は、約1/2を占め、具体的には、鏡体は取手兼用上下縁部を除いた板体部分であり、鏡部枠体とフレーム部は側面部以外を除いたものという点であり、差異点は、洗面室用収納棚全体の正面部において、縦方向に占める範囲は、本件当該部分は約1/4であるのに対して、イ号意匠の本件相当部分は約1/5にとどまる点である。
本件当該部分とイ号意匠の本件相当部分の「形態」の、共通点と差異点は次のとおりである。
まず、共通点は、〈1〉基本的態様において、全体は横長矩形状の板状鏡体と鏡部枠体とフレーム部の略細幅帯状側面部から成り、鏡体背面側の両側に、鏡部枠体側面部が当接し、鏡部枠体側面部の上端部内側に、フレーム部側面部の上端部が蝶着し、フレーム部側面部の下端部が筺体に蝶着し、鏡体を収納した状態では、鏡部枠体側面部とフレーム部側面部が当接して折り畳まれ、筺体の鏡部収納凹部の前面に扉状に収まり、可動の状態では、フレーム部側面部をそのままにして鏡部枠体側面部のみを引き出して鏡部角度を変えたり、鏡部枠体側面部とフレーム部側面部を当接したままに鏡部角度を変えたり、鏡部枠体側面部とフレーム部側面部をそれぞれ引き出して鏡体の角度と正面側からの距離を変えられる態様とした点、具体的態様においては、〈2〉鏡体について、正面部の縦横比が約2:5の横長矩形状で、上下は取手兼用縁部で覆われているが該縁部分を除いた形状とし、〈3〉鏡部枠体側面部について、全長は鏡体側面部と略同長であり、中央部は極細幅直線状で、下端部は略鍵形状であり、先端部を倒T字状とし、略鍵形状の凹部に鏡体側面部を嵌め込み、上端部の背面側をやや長い幅広部とし、前面側上端部を短い膨らみ部とし、上部には突起部が形成されているが該突起を除いた形状とし、幅広部の略上端位置をフレーム部側面部を蝶着する軸点部として、蝶番状のもので軸点部付近の鏡部枠体側面部を覆った点、である。
そして、差異点は、《1》基本的態様において、収納状態(折り畳み状態)の鏡体を、本件登録意匠は下向き傾斜状としたのに対し、イ号意匠は垂直状とした点と、具体的態様において、《2》鏡部枠体側面部については、フレーム部側面部との蝶着の軸点位置を、本件登録意匠は上端部としたのに対し、イ号意匠は上端部からやや下がった位置とし、蝶番状のものが覆っている範囲を、本件登録意匠は鏡部枠体側面部から鏡体側面部までとしたのに対し、イ号意匠は鏡部枠体側面部のみとした点、《3》フレーム部側面部について、本件登録意匠は、全長を鏡部枠体側面部の約1.2倍とし、下端部の前面側に幅広部を設け、その幅広部の上方から上端部までの前面側凹部に、折り畳み状態の鏡部が収まり、上端部の背面側にも幅広部を設けたのに対し、イ号意匠は、鏡部枠体側面部と略同長とし、上下端部までを凹凸のない細帯状とし、収納状態で鏡部側面部がフレーム部側面部の前面部全体に重なるようにした点である。

4.本件登録意匠の要部について
意匠の類否を判断するに当たっては、意匠を全体として観察することを要するが、意匠に係る物品の用途、機能、使用態様、公知意匠にない新規な創作部分の存否を参酌し、その意匠の中で需要者の注意を最も引きやすい部分を意匠の要部として把握し、両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察して、両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきであり、これは物品の部分の意匠についても同様である。
そこで、本件登録意匠の要部を検討する。
[意匠に係る物品の用途、機能、使用態様]
本件登録意匠に係る物品である「洗面室用収納棚」は、主として家庭向けに販売されるものであるから、その購買者が需要者であると認めるのが相当である。そして、この需要者が「洗面室用収納棚」を選択する際に注目するのは、通常、前面の鏡部と、背部の収納部であるが、本件当該部分は、鏡体と鏡部枠体及びフレーム部の左右側面部分であるから、その部分の中で需要者が注目するのは、鏡体のある正面を中心とした外観の態様、及び、その可動の態様というべきである。
そうすると需要者は、まず収納状態の鏡部正面を中心として観察し、鏡部が可動することから、鏡を様々に角度変化させて映り具合を確認し、さらに、鏡の可動手法への関心から、鏡部の可動機構部に着目して観察すると考えられるので、正面部の観察を中心に、鏡部を可動させた態様について側面方向からの観察も含めて、意匠を把握するものといえる。
[公知意匠との対比]
本件登録意匠の出願前に公知であった意匠を参酌すると、
(あ)中央主鏡部の下に横長矩形状の補助鏡部が別体で設けられた意匠は、たとえば、乙第5-1号証から乙第5-6号証を始め、下記に提示する意匠の中にも、多数記載されているとおり、ありふれている。
(い)可動扉状鏡部を設けた意匠は、意匠登録第1166540号(甲第3-3号証、乙第3号証)、意匠登録第903789号(乙第5-6号証)があり、その他にも、実開昭50-108671(別紙第4 公知意匠1参照)、特開昭57-45811(別紙第4 公知意匠2参照)、実開昭58-139941(別紙第4 公知意匠3参照)、実開昭60-27762(別紙第4 公知意匠4参照)、実開平1-67923(別紙第4 公知意匠5参照)、特開2000-245644(別紙第4 公知意匠6参照)等にも記載され、中でも実開平1-67923(別紙第4 公知意匠5参照)に記載された意匠は、可動鏡が前後上下に自在に角度変化するものである。
(う)扉ではないものの、上下に角度変化する鏡は、意匠登録第747599号(乙第5-5号証)に、その他にも、実開昭63-88138(別紙第4 公知意匠7参照)、実開平3-21234(別紙第4 公知意匠8参照)等に記載され、さらに、鏡が前後上下に自在に可動する意匠が、実開昭63-118841(別紙第4 公知意匠9参照)、特開2001-87057(別紙第4 公知意匠10参照)、特開2001-112654(別紙第4 公知意匠11参照)に記載されている。また、実開昭63-88138(別紙第4 公知意匠7参照)の可動補助鏡部は、本件登録意匠と同等の縦横比率である。
(え)背面に収納部を設けた可動鏡部の意匠は、先の、実開昭50-108671(別紙第4 公知意匠1参照)、実開昭58-139941(別紙第4 公知意匠3参照)に表されている。
(お)しかし、収納した可動鏡部や固定状の鏡部について、上向き傾斜状とした意匠は、例えば先の実開昭60-27762(別紙第4 公知意匠4参照)に記載されているものの、同鏡部を下向き傾斜状とした意匠は、本件登録意匠の出願前にはない。
(か)一方、可動手法に焦点を当てると、可動体の左右に細長支持具を設け、細長支持具の上下両端部を軸点とし角度変化可能とし、水平方向を軸に、可動体を上下前後に動かせるようにした意匠は、例えば、特開2003-312348(別紙第4 公知意匠12参照)や、実開平5-46374(別紙第4 公知意匠13参照)等に記載されているものの、「洗面室用収納棚」の可動鏡部に採用したものはない。(なお、垂直方向を軸に、可動鏡部を左右前後に動かせるようにした意匠は、乙第3号証すなわち甲第3-3号証を始め、多数見られる。)
したがって、上記の公知意匠を参酌すれば、この種「洗面室用収納棚」においては、本件登録意匠のように可動鏡部を収納状態において下向き傾斜状に設置したものはなく、したがって、上方の主鏡との位置関係において、屈折状に連接した態様のものは見られず、さらに、この種「洗面室用収納棚」においては、鏡部の左右に、上下両端部を軸点とした細長支持具を設けて、鏡部を上下前後に動かせるようにしたものはこれまでにはなく、本件登録意匠の鏡部枠体やフレーム部の側面部形状も、これまでにはなかったものである。そうすると、これらは本件登録意匠の新規な創作部分といえる。
[まとめ]
以上、意匠に係る物品の用途、機能、使用態様、及び、本件登録意匠の出願前の公知意匠等を参酌すると、本件登録意匠の需要者の注意を最も引きやすい部分であり、要部となるのは、鏡部を収納状態において下向き傾斜させた点と、それを上下前後に可動可能とするための、両端部に軸点を設けたフレーム部の略細幅帯状の側面部形状、そして、洗面室用収納棚全体の外観に影響を及ぼす本件当該部分の「位置」とによって構成された態様と認められる。

5.両意匠の類否判断
本件登録意匠の要部は、前項で認定したとおりである。
そうすると、両意匠の対比の項で認定した各項目の中の、「位置」の差異と、「形態」における差異点《1》及び差異点《3》の差異は、本件登録意匠の要部に係るものであり、両意匠の共通点は、本件登録意匠の要部の一部に過ぎないといわざるを得ない。
したがって、差異点《1》基本的態様における、収納状態での鏡部が下向き傾斜状であるか垂直状かの態様の相違は、鏡部の正面形状自体がありふれているため、その新規な傾斜状の態様が看者に強く印象付けられることとなり、イ号意匠の垂直状とは異なる印象を看者に与え、さらに、その鏡部に係わる「位置」の差異が加わることにより、上方扉部との接続の態様が屈折状か面一状か、そして下方が覆われているか空間となっているかの差異が生じ、その態様の相違は、両意匠間に異なる正面部の美感を起こさせるものとなっている。
また、側面部についても、可動機構部のうち意匠登録を受けた部分は、鏡枠体部とフレーム部の側面形状のみであるから、可動状態においては、当該側面部形状が注視されるものである。そうすると、両意匠の側面部は、大まかな形状は共通していても、差異点《3》折り畳まれた鏡部の収まりの態様の差異、及び、差異点《2》鏡部枠体側面部とフレーム部側面部の蝶着の軸点位置の差異があり、側面部を視認した看者に異なる美感を起こさせるものである。
そして、共通点〈1〉可動態様の共通性について、請求人は、『鏡を前方へ引き出したり、角度調整が可能である』点が本件登録意匠の特徴と主張するが、上下前後の自在な動きをする鏡部は、提示した公知意匠に明らかなようにこの種物品分野においての新規な態様ではない(公知意匠9、10、11参照)。また、2本の水平軸が回動軸となり、可動体が前後上下に可動し収納されるという態様は、提示した公知意匠(公知意匠12、13参照)の例からも明らかなように、従来から見られる一般的な手法であるといえる。よって、「洗面室用収納棚」の鏡部に可動と収納のための一般的な手法を応用した程度であるので、本件登録意匠の可動の態様が本件登録意匠独自の創作であるとの強い印象を、看者に与えるほどではない。
なお、請求人は、弁駁書において、本件登録意匠の鏡部の「斜め配置」は特徴ではない旨主張している。しかし、先に提示した公知意匠からも明らかなとおり、この種「洗面室用収納棚」の鏡部において、主鏡の下に配される補助鏡の角度の態様は従来より創作や発明の対象となってきたのであり、請求人の主張の如何に関わらず、本件登録意匠の要部と認められる。
以上のとおり、本件登録意匠とイ号意匠は、その態様の一部が共通するが、要部について大きな差異があり、全体として差異点が共通点を凌駕し、イ号意匠の差異点は、看者に対し本件登録意匠とは異なる印象を与えており、本件登録意匠とイ号意匠は美感が異なるものであるから、イ号意匠は本件登録意匠に類似しない。

8.むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2007-11-20 
出願番号 意願2004-2296(D2004-2296) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (D2)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 梅澤 修
特許庁審判官 樋田 敏恵
杉山 太一
登録日 2004-10-01 
登録番号 意匠登録第1222967号(D1222967) 
代理人 日高 一樹 
代理人 皆川 一泰 
代理人 渡邉 知子 
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