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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200626021 審決 意匠

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審決分類 審判    L6
管理番号 1179101 
審判番号 無効2007-880005
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-04-17 
確定日 2008-02-12 
意匠に係る物品 平板瓦 
事件の表示 上記当事者間の登録第1174461号「平板瓦」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由

請求人は登録第1174461号意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。

1.無効理由

(1)本件登録意匠は、本件登録意匠の正面図には意匠登録を受けようとする部分として、略中央に縦線のある矩形が実線で表されているが、正面図以外の他の図には該縦線に相当する線が表されていないことから、該縦線がどのような形状を表すのか、本件登録意匠の六面図からは認識することができない。したがって、意匠を特定することができず、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないものであるから、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。

(2)本件登録意匠は、甲第2号証の意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。
本件登録意匠に係る意匠登録出願は、2002年特許願第376395号(甲第1号証 以下「参考意匠1」という。別紙第2参照)から出願変更されたものである。甲第1号証の願書に最初に添付された明細書には、本件登録意匠の意匠公報における平面図、左側面図、及び背面図に相当する図面がない。特に、本件意匠公報の平面図は、意匠登録を受けようとする部分の意匠の形態を特定する上で重要な図面であるが、甲第1号証の図7における本件相当部分の形状は、本件登録意匠の底面図における本件相当部分の形状を表しているのであり、本件登録意匠の平面図における本件相当部分の形状を表していない。甲第1号証の明細書からは本件登録意匠の平面図でみたときの本件登録意匠の部分の意匠を特定することができる図が全くないのであるから、甲第1号証からは本件登録意匠を特定することができない。したがって、本件登録意匠に係る意匠登録出願は甲第1号証の特許出願の時にしたものとはみなされずに、本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願日は、その意匠登録出願の現実の出願日である平成14年12月26日となる。他方、本件登録意匠は、その意匠登録出願前である平成14年9月17日に頒布された意匠登録第1153179号の意匠公報に掲載された意匠(甲第2号証 以下「引用意匠1」という。別紙第3参照)と類似するものである。

(3)本件登録意匠は、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能を確保するために不可欠な形状のみからなる部分について意匠登録を受けようとするものであるので、意匠法第5条第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。

(4)本件登録意匠は、甲第3号証の意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。
1)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「平板瓦」とし、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフック部分について意匠登録を受けようとする部分意匠に係るものである。意匠登録を受けようとする部分の形態は、全体が立上部とその上端から一側方へ伸びる水平部からなる鉤状であり、具体的な態様として、差込空間を画定する面が一側方に開口する凹円弧面であり、立上部の差込空間と反対側の側面が傾斜し、水平部の上面が差込区間の左端付近の上方で立上部の差込空間とは反対側の側面と緩やかに連続する曲面であるという特徴がある。意匠登録を受けようとする部分は、瓦の後端部中央付近で瓦の表面から突出する位置にある。
2)証拠の意匠
一方、昭和15年9月21日に公告された昭和15年実用新案出願公告第13792号の公報に掲載された意匠(甲第3号証 以下「引用意匠2」という。別紙第4参照)は、意匠に係る物品を「瓦」とするものである。引用意匠2には、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分として、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能を有する部分である爪状突起の意匠が記載されている。引用意匠2における爪状突起部分の形態は、全体が立上部とその上端から一側方へ伸びる水平部からなる鉤状であり、具体的な態様として、差込空間を画定する面が一側方に開口する曲面であり、立上部の差込空間とは反対側の側面が傾斜し、水平部の上面が差込空間の左端付近の上方で立上部の差込空間とは反対側の側面と緩やかに連続する曲面であるという特徴がある。
3)本件登録意匠と証拠の意匠との対比
(a)共通点
本件登録意匠と引用意匠2は、意匠に係る物品が瓦である点、意匠に係る部分の用途機能が使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能である点、意匠の基本的態様が立上部とその上端から一側方へ伸びる水平部からなる鉤状である点、意匠の具体的態様について差込空間を画定する面が曲面であり、立上部の差込空間とは反対側の側面が傾斜し、水平部の上面が差込空間の左端付近の上方で立上部の差込空間とは反対側の側面と緩やかに連続する曲面である点が共通する。また、本件登録意匠と引用意匠2を対比すると明らかなとおり、意匠登録を受けようとする部分の大きさと範囲は、ありふれた範囲の相違にすぎない。
(b)差異点
他方、本件登録意匠と引用意匠2には、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分の位置が瓦の後端部中央付近で瓦の表面から突出するものであるのに対し、引用意匠2における意匠登録を受けようとする部分に対応する部分の位置が瓦の前端部中央付近で瓦の表面から突出するものである点に差異がある。
(c)共通点と差異点の評価
本件登録意匠と引用意匠2は、その基本的形状と具体的形状の全てが共通する。本件登録意匠における意匠登録を受けようとする部分は一見してその全体の形状を把握することができること、具体的形状のそれぞれが鉤の全体の輪郭に影響を与えていることを考慮すると、本件登録意匠の要部は、個々の具体的形状が組み合わさって特徴づけている鉤全体の形状にある。本件登録意匠も引用意匠2も下端が末広がりであり、その下端から先端に向けて緩やかに湾曲する形状を成し、その全体の形状から波頭が張り出した波を想起させる共通の美感を看者に与えるものとなっている。
意匠登録を受けようとする部分の位置の違いについては、平成8年6月18日に公開された平成8年特許出願公開第158542号の公開公報に掲載された意匠(甲第4号証、以下「引用意匠3」という。別紙第5参照)、平成7年7月21日に公開された平成7年実用新案登録出願公開第40847号の公開公報に掲載された意匠(甲第5号証、「参考意匠2」別紙第6参照)に示されるとおり、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能を有する鉤状部分が瓦の表面の様々な位置に設けられることが知られていたので、位置の差異は、意匠登録を受けようとする部分そのものの意匠の形態が共通に看者に与えられる美感を凌駕するほどの差異とはいえない。したがって、本件登録意匠と引用意匠2は、意匠に係る物品と、意匠登録を受けようとする部分の用途機能が共通し、意匠の形態そのものが実質的に同一である。そして、意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲は、意匠が看者に与える美感を異ならしめるほどの差異とは言えないから、両意匠は類似する。したがって、本件登録意匠は引用意匠2と類似する。

(5)本件登録意匠は、甲第3号証と甲第4号証の意匠に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。
1)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「平板瓦」とし、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフック部分について意匠登録を受けようとする部分意匠に係るものである。意匠登録を受けようとする部分の形態は、全体が立上部とその上端から一側方へ伸びる水平部からなる鉤状であり、具体的な態様として、差込空間を画定する面が一側方に開口する凹円弧面であり、立上部の差込空間と反対側の側面が傾斜し、水平部の上面が、差込区間の左端付近の上方で立上部の差込空間とは反対側の側面と緩やかに連続する曲面であるという特徴がある。意匠登録を受けようとする部分は、瓦の後端部中央付近で瓦の表面から突出する位置にある。
2)証拠の意匠
一方、引用意匠2(別紙第4参照)には、爪状突起が記載されており、また、引用意匠3(別紙第5参照)には、係止突起が記載されている。
3)本件登録意匠と証拠の意匠との対比
引用意匠2には爪状突起が記載されているが、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠2の爪状突起の意匠については、意匠に係る物品が瓦であること、意匠登録を受けようとする部分の用途機能が使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能であること、意匠の基本的形状と具体的形状の点で共通する。爪状突起の瓦における大きさと範囲は、本件登録意匠における大きさと範囲とあふれた範囲の相違にすぎない。また、引用意匠3には、係止突起が記載されているが、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠3の係止突起の意匠は、意匠に係る物品が瓦である点、意匠登録を受けようとする部分の用途機能が使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能である点、瓦の後端略中央に位置する点で共通する。引用意匠3の係止突起と引用意匠2の爪状突起は、ともに瓦の部分であり、その用途機能が共通するから、両者は当業者にとって置換することが容易な関係にある。引用意匠3の係止突起を、引用意匠2の爪状突起で置換すると、置換した爪状突起は、上記の共通点に加えて、部分の位置が瓦の後端略中央となって本件登録意匠における意匠登録を受けようとする部分の位置と共通する。そうすると、置換後の爪状突起の意匠は、その意匠を含めて本件登録意匠と実質的に同一の意匠となる。したがって、本件登録意匠は、引用意匠3と引用意匠2に基づいて当業者が容易に創作をすることができた意匠である。

(6)本件登録意匠は、甲第6号証の意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。
1)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「平板瓦」とし、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフック部分について意匠登録を受けようとする部分意匠の意匠登録出願に係るものである。意匠登録を受けようとする部分の形態は、全体が立上部とその上端から一側方へ伸びる水平部からなる鉤状であり、具体的な態様として、差込空間を画定する面が一側方に開口する凹円弧面であり、立上部の差込空間と反対側の側面が傾斜し、水平部の上面が、差込区間の左端付近の上方で立上部の差込空間とは反対側の側面と緩やかに連続する曲面であるという特徴がある。意匠登録を受けようとする部分は、瓦の後端部中央付近で瓦の表面から突出する位置にある。
2)証拠の意匠
一方、平成8年9月24日に公開された平成8年特許出願公開第246606号の公開公報に掲載された意匠(甲第6号証 以下「引用意匠4」という。別紙第7参照)は、意匠に係る物品を「屋根瓦」とするものである。引用意匠4には、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途するフックの機能を有する部分である桟部支持部の意匠が記載されている。引用意匠4における桟部支持部の形態は、全体が立上部とその上端から一側方へ伸びる水平部からなる鉤状であり、具体的な態様として、差込空間を画定する面が、一側方に開口する曲面であり、立上部の差込空間とは反対側の側面が傾斜しており、水平部の上面が、差込空間の左端付近の上方で立上部の差込空間とは反対側の側面と緩やかに連続する曲面であるという特徴がある。
3)本件登録意匠と証拠の意匠の対比
(a)共通点
本件登録意匠と引用意匠4は、意匠に係る物品が瓦である点、意匠登録を受けようとする部分の用途機能が、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途するフックの機能である点、意匠の基本的態様が立上部と、その上端から一側方から伸びる水平部からなる鉤状である点、意匠の具体的態様が差込空間を画定する面が曲面であり、立上部の差込空間とは反対側の側面が傾斜し、水平部の上面が、差込空間の左端付近の上方で立上部の差込空間とは反対側の側面と緩やかに連続する曲面である点が共通する。
(b)差異点
本件登録意匠と引用意匠4とは、本件登録意匠は、意匠登録を受けようとする部分の一が瓦の後端部中央付近で瓦の表面から突出する位置であるのに対して、引用意匠3は、当該部分の位置が瓦の桟部で瓦の表面から突出する位置である点に差異がある。
(c)共通点と差異点の評価
本件登録意匠と引用意匠4は、その基本的形状と具体的形状の全てが共通する。本件部分は一見してその全体の形状を把握することができること、具体的形状のそれぞれが鉤の全体の輪郭に影響を与えていることを考慮すると、本件登録意匠の要部は、個々の具体的形状が組み合わさって特徴づけている鉤全体の形状にある。本件登録意匠も引用意匠4の意匠も下端が末広がりであり、その下端から先端に向けて緩やかに湾曲する形状を成し、その全体の形状から波頭が張り出した波を想起させる共通の美感を看者に与える。意匠登録を受けようとする部分の位置の違いについては、引用意匠3、参考意匠2に示されるとおり、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能を有する鉤条部分が瓦の表面の様々な位置に設けられることが知られていた。位置の差異は、意匠に係る部分そのもの意匠の形態が共通に看者に与えられる美感を凌駕するほどの差異とはいえない。本件登録意匠と引用意匠4は、意匠に係る物品と、意匠登録を受けようとする部分の用途機能が共通し、意匠の形態そのものが実質的に同一である。そして、意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲は、意匠が看者に与える美感を異ならしめるほどの差異とは言えないから、両意匠は類似する。したがって、本件登録意匠は、引用意匠4に類似するものである。

(7)本件登録意匠は、甲第6号証と甲第4号証の意匠に基づいた当業者が容易に創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。
1)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「平板瓦」とし、使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフック部分について意匠登録を受けようとする部分意匠の意匠登録出願に係るものである。意匠登録を受けようとする部分の形態は、全体が立上部とその上端から一側方へ伸びる水平部からなる鉤状であり、具体的な態様として、差込空間を画定する面が一側方に開口する凹円弧面であり、立上部の差込空間と反対側の側面が傾斜し、水平部の上面が、差込区間の左端付近の上方で立上部の差込空間とは反対側の側面と緩やかに連続する曲面であるという特徴がある。意匠登録を受けようとする部分は、瓦の後端部中央付近で瓦の表面から突出する位置にある。
2)証拠の意匠
一方、引用意匠4には、爪状突起が記載されており、また、引用意匠3には、係止突起が記載されている。
3)本件登録意匠と証拠の意匠との対比
本件登録意匠と引用意匠4については、意匠に係る物品が瓦である点、意匠登録を受けようとする部分の用途機能が使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能であること、意匠の基本的形状、そして具体的形状が共通する。引用意匠4における桟部支持部の瓦における大きさと範囲は、ありふれた範囲の相違にすぎない。他方、引用意匠3には、係止突起を備えた瓦が記載されているが、本件登録意匠と係止突起の意匠は、意匠に係る物品が瓦である点、部分の用途機能が使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能である点、瓦の後端部中央に位置する点で共通する。引用意匠3の係止突起と引用意匠4の桟部支持部は、ともに瓦の部分であり、その用途機能が共通するから、両者は、当業者にとって置換することが容易な関係にある。引用意匠3の係止突起を、引用意匠4の桟部支持部で置換すると、桟部支持部は、上記の共通点に加えて、部分の位置が瓦の後端略中央となって本件登録意匠に係る部分の位置と共通する。したがって、本件登録意匠は、引用意匠4と引用意匠3の意匠に基づいた当業者が容易に創作をすることができた意匠である。

第2 被請求人の答弁及び理由

被請求人は、結論同旨の審決を求める答弁し、要旨以下のとおり主張した。

1.本件登録意匠の構成

(1)本件登録意匠に係る物品
平板瓦である。本件登録意匠に係る物品の本来の用途は屋根を覆うこと、本来の機能は防水・遮熱などである。本物品の付加的な用途は千鳥葺きに葺設すること、付加的な機能は下段の瓦の係合凸部と、斜め上段の瓦の係合差込部とは結合することによる、強風に対する耐風機能等である。

(2)意匠登録を受けようとする部分の用途と機能
本件登録意匠公報に記載されたとおり、実線で表された部分(すなわち係合凸部)が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。本物品が有する上記の機能及び用途に基づき、係合凸部の用途は、斜め上段の瓦の係合差込部の差込みによる係合を受けること、係合凸部の機能は、係合相手である係合差込部の浮き上がり防止機能である。

(3)意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲
係合凸部の位置は、上下方向においては瓦の「上面側」であり、流れ方向(尻部から頭側へ水が流れる方向)は同方向全長の中央点よりやや左側の「中央付近」である。係合凸部の大きさは、製品実寸においておよそ、上下方向に20ミリ程度、流れ方向に20ミリ程度、横方向に30ミリ程度である。係合凸部の範囲は、上下方向においては瓦本体の裏面から尻側水返しの上面までの高さに対して約70%の高さをもって上方へ突出しており、流れ方向においては同方向全長の約6%の範囲であり、横方向においては同方向全長の約8%の範囲である。

(4)意匠登録を受けようとする部分の形態
1)基本的形態
立上部とその上端から桟(瓦の右側にある)側への水平部とが連続し、水平部の下方に桟側へ開口する差込空間を有し、先端まで所定の厚さを維持し鉤状である。
2)具体的形態
差込空間は、縦断面形状が流れ方向で一定である凹円弧面で形成されており、凹円弧面の上部は桟側へ向かって湾曲しており、凹円弧面の下部は桟側へ向かって湾曲している(立上部の下基端の断面積を増大させる手法である)。凹円弧面と反対側の立上部の側面は、平らな傾斜面であり、その水平面に対する傾斜角は約50度である。前記傾斜面と水平部の上面との間は湾曲コーナー面で穏やかに連続している。

2.無効理由(1)について(意匠法第3条第1項柱書違反)

本件登録意匠の正面図の、意匠登録を受けようとする部分の略中央にある縦線は、係合凸部の傾斜面と水平部の上面との間に湾曲コーナー面があることを示すハイライト線、すなわち、湾曲コーナー面に光源が映り込んで現れたハイライト線である。したがって、本件登録意匠は工業上利用することができる意匠に該当しないとはいえない。よって、無効理由1には理由がない。

3.無効理由(2)について(意匠法第3条第1項第3号違反)

本件登録意匠の意匠公報の平面図は甲第1号証(別紙第2参照)図7に基づく。図7は、相互に矛盾のない甲第1号証の図1?図6の記載に照らせば、図7の左右反転は誤記であり、誤記は合理的に治癒されることも明らかである。本件の出願変更にあたっては、かかる左右反転の誤記以外は矛盾のない図7に基づき、その誤記を是正して本件登録意匠の意匠公報の平面図を作成したものであり、正当なものである。
また、本件登録意匠の左側面図、背面図については、甲第1号証図1?図7に把握可能に記載されている。さらに、甲第1号証図1?図7には、部分を含む物品全体の形態である「平板瓦」を認識するのに必要な最低限の構成要素が少なくとも明確に表されている。したがって、本件登録意匠に係る意匠登録出願は、甲第1号証からの変更要件を満たしており、出願日は最初の原出願の出願日(平成11年7月29日)に遡及するから、本件登録意匠は引用意匠1(別紙3参照)によって新規性を阻却されるものではない。

4.無効理由(3)について(意匠法第5条第3号違反)

引用意匠3(別紙第5参照)の意匠のようにその機能を確保できる代替的な形状が他に存在しているので、意匠審査基準で規定する必然的形状や準必然的形状のいずれかには該当しない。したがって、本件登録意匠が、フックの機能を確保するために不可欠なフックの形状のみからなる意匠であるとはいえない。

5.無効理由(4)について(意匠法第3条第1項第3号違反)

意匠登録を受けようとする部分の用途について、本件登録意匠の係合凸部は斜め上段の瓦の差込部側縁の係合差込部と係合させる用途であり、引用意匠2(別紙第4参照)の爪状突起は下段の瓦の上端縁中央部の突出部に引っ掛ける用途である。意匠登録を受けようとする部分の機能について、本件登録意匠は、係合相手である係合差込部の浮きあがり防止機能であり、引用意匠2は、爪状突起自身の浮き上がり防止機能であり、部分の用途及び機能において顕著な相違点がある。
本件登録意匠における意匠登録を受けようとする部分の位置が上面側の尻部にあるのに対し、引用意匠2の爪状突起の位置が下面側の頭寄途中部にあることは、両意匠の美感を大きく異ならせており、類否判断に対して形状等と並ぶ影響を及ぼすものである。
本件登録意匠と引用意匠2については、基本的形態と具体的形態に差異があり、本件登録意匠における意匠登録を受けようとする部分は、係号凸部の先端まで所定の厚さを維持していると共に、凹円弧面の下部が桟側へ向かって湾曲しており、係合凸部の基端の断面積が差込空間側で増大しているため、安定的でがっしりした美感を生じるのに対し、引用意匠2については、爪状突起の先端が薄く尖っているとともに、凹円弧面の上部が頭側へ向かって湾曲せずにやや鋭角をなして瓦裏面に突き当たっており、爪状突起の基端の断面積が引掛け空間側で増大されないため、シャープで刃物のような美感を生じる。かかる美感の相違が全体の美感に与える影響は、決して軽微ではなく大きなものがある。したがって、本件登録意匠と引用意匠2とは生じる美感が類似しないから、本件登録意匠が引用意匠2に類似する意匠であるとはいえない。

6.無効理由(5)について(意匠法第3条第2項違反)

引用意匠3(別紙第5参照)に係る物品は、平板瓦である。本物品の本来の用途は屋根を覆うこと、また、本来の機能は防水、遮熱などである。本物品の付加的な用途は千鳥葺きに葺設すること、付加的な機能は下段の瓦の係止突起と、斜め上段の瓦の差込係合受部とが係合することによる、強風に対する耐風機能等である。本物品が有する上記の機能及び用途に基づき、係止突起の用途は、斜め上段の瓦の差込係合受部の差込みによる係合を受けること、係止突起の機能は、係合相手である差込係合受部の浮き上がり防止機能である。係合凸部の位置は、上下方向においては平板瓦の上面側であり、流れ方向においては「尻部」にあり、横方向においては同方向全長の「中央付近」である。
係合凸部の大きさは、製品実寸においては不明であるが、次に述べる範囲を参照すれば、上下方向に34ミリ程度、流れ方向に30ミリ程度、横方向にお26ミリ程度と推認される。
係合凸部の範囲は、上下方向においては瓦本体の裏面から尻側水返しの上面までの高さに対して約120%の高さをもって上方への突出をしており、流れ方向においては同方向全長の約9%の範囲であり、横方向においては同方向全長の約7%の範囲である。
引用意匠3の係止突起の形態は、全体を立上部とその上端から桟(瓦の右側部分)側への水平部とが連続し、水平部の下方に、桟側へ開口する差込空間を有する鉤状である。具体的形態としては、立上部の垂直面と水平部の水平下面とで縦断面形状が流れ方向で一定に形成されており、湾曲はなく、垂直面とは反対面の立上部の側面は平らな垂直面であり、垂直面と水平部の水平上面との間は直角をなしている。
他方、引用意匠2(別紙第4参照)は、物品が筋葺きする波状の和形瓦であり、爪状突起が、下段の和形瓦の上端縁中央部の突出部に引っ掛ける用途及び爪状突起自身の浮き上がり防止機能を有し、その用途及び機能に基づいて瓦の下面側の頭部寄り途中に頭部側へ開口して設けてあるものである。爪状突起が下段の和型瓦の上端縁中央部の突出部2に引っ掛ける用途及び爪状突起4自身の浮き上がり防止機能を有し、その用途及び機能に基づいて、瓦の下面側の頭部より途中に頭部側へ平行して設けてあるものである。従って、これとは異なる引用意匠3のように千鳥葺きをする平板瓦において、斜め上段の防災瓦の係合差込部の差込みによる係合を受ける用途と、係合相手である差込係合受部の浮き上がり防止機能を有し、その用途及び機能に基づいて瓦の上面側の尻部に桟側へ開口して設けてある係止突起を、上記のような引用意匠2の爪状突起で置き換えることは、ありふれた手法とはいえないというべきである。
仮に上記の置換をしたとしても、本件部分意匠と引用意匠2の爪状突起とは、基本的、具体的形態の対比において顕著な相違点があり、異なる美的印象を受けるものであるから、実質的同一の意匠とはならない。
したがって、本件登録意匠が当業者が引用意匠3,引用意匠2に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠であるとはいえない。よって、無効理由5には理由がない。

7.無効理由(6)について(意匠法第3条第1項第3号違反)

引用意匠4(別紙第7)に係る物品は、波状の和形瓦である。本物品の本来の用途は屋根を覆うこと、本来の機能は防水・遮断等である。本物品の付加的な用途は筋葺きを葺設すること、付加的な機能は桟部支持部が横隣の瓦の差込み部に対して係合することによる、地震・台風時の剥離、位置ずれ防止機能である。
引用意匠4の桟部支持部の用途は、横隣の瓦の差込部に対して係合させること、桟部支持部の機能は、桟部支持部自身の浮き上がり防止機能である。
桟部支持部の大きさは、製品実寸においては不明であるが、次に述べる範囲を参照すれば、上下方向に66ミリ程度、流れ方向に20ミリ程度、横方向に56ミリ程度と推認される。
引用意匠4の桟部支持部の範囲は、上下方向においては瓦本体の裏面から尻側水返しの上面までの高さに対して約230%の高さをもって下方で突出しており、流れ方向においては同方向全長の約6%の範囲であり、横方向においては同方向全長の約15%の範囲である。
引用意匠4の桟部支持部の形態は、全体が立上部のみからなり、下端側が桟部側へ傾斜した円錐棒状であり、具体的形態としては、係合空間は、桟部支持部の円錐周面の上部面に生じるから、縦断面形状が流れ方向で一定ではない。また、図8(B)等にはこの上部面の基端部に凹円弧の線が見られ、これが流れ方向でどうなっているのか不明であるが、桟部支持部の円錐周面に沿って周状に肉盛りされたものと推認するのが自然であり、少なくとも縦断面形状が流れ方向で一定である凹円弧面であると推認させる記載はない。また、q6の上部面とは反対側の桟部支持部の下部面は、平らではなく円錐周面の傾斜面であり、瓦裏面に対するその傾斜角は約60度である。水平部はないから、湾曲コーナー面もない。
意匠登録を受けようとする部分の用途については、本件登録意匠の係合凸部は、斜め上段の瓦の差込部側縁の係合差込部と係合させる用途、引用意匠4の桟部支持部は、横隣りの瓦の差し込み部に対して係合させる用途である。意匠登録を受けようとする部分の機能については、本件登録意匠が係合相手である係合差込部の浮き上がり防止機能で、引用意匠4は、桟部支持部自身の浮き上がり防止機能であり、意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能において顕著な相違点があり、それに基づいて、部分の位置の上下方向と流れ方向において顕著な相違点がある。また、意匠登録を受けようとする部分の位置について、本件登録意匠の位置が上面側の尻部にあるのに対し、引用意匠4の桟部支持部の位置が下面側の流れ方向中央付近と尻部寄り途中部にあること、しかも本件登録意匠と比べて、引用意匠4の桟部支持部の特に上下方向の大きさが際だって大きいことは、両意匠の美感を大きく異ならせており、類否判断に対して形状等と並ぶ影響を及ぼすものである。
意匠登録を受けようとする部分の形態については、本件登録意匠は、鉤状でストレートな美感を生じるの対し、引用意匠4は棒状でストレートな美感を生じる。かかる美感の相違が全体の美感に与える影響は、決して軽微ではなく大きなものがある。したがって、本件部分意匠と引用意匠4とは生じる美感が類似しないから、本件部分意匠が引用意匠4に類似する意匠であるとはいえない。よって、無効理由6には理由がない。

8.無効理由(7)について(意匠法第3条第2項違反)

引用意匠4については、引用意匠4に係る物品が筋葺きする波状の和形瓦であり、桟部支持部が、横隣りの瓦の差し込み部に対して係合させる用途及び桟部支持部自身の浮き上がり防止機能を有し、その用途及び機能に基づいて瓦の下面側の流れ方向中央付近と尻部寄り途中部に設けてあるものである。したがって、これとは異なる引用意匠3のように千鳥葺きにする平瓦において、斜め上段の防災瓦の係合差込部の差込みによる係合を受ける用途と、係合相手である差込係合部の浮き上がり防止突起を、上記のような引用意匠4の桟部支持部で置き換えることは、ありふれた手法といえないというべきである。
さらに、本件登録意匠の係合凸部と引用意匠4の桟部支持部とは、基本的形態の対比、具体的形態の対比において顕著な相違点があり、異なる美感を生じさせるものであるから、実質的に同一の意匠とはならない。したがって、本件部分意匠が、当業者が引用意匠4、引用意匠3に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠であるとはいえない。よって、無効理由7には理由がない。

第3 当審の判断

1.本件登録意匠

本件登録意匠に係る意匠登録出願は、意匠法第13条第1項の規定による2002年特許願第37639号(甲第1号証、別紙2参照)から出願変更されたものであり、同法同条第2項及び特許法第44条第2項本文の規定に基づき、もとの特許出願の日である平成11年7月29日に意匠登録出願されたものとみなされた部分意匠に係る意匠登録出願である。本件登録意匠は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「平板瓦」とし、形態は、願書の記載及び願書添付図面に現されたとおりであり、意匠登録を受けようとする部分を実線で表したものである。
すなわち、その形態は、平板瓦の上端部左寄り中央に、平板瓦の縦の長さの約15分の1の幅を有する係合凸部を設け、該係合凸部について意匠登録を受けようとするものである。該係合凸部は平板瓦の厚みとほぼ同様の高さを有し平板瓦の桟側に略半円弧状に突出する立ち上げ部と差込空間から形成されており、該係止部は立ち上がり部の最も高く突出している部分の内側を立ち上がり部の高さの半分を直径とする凹円弧面で形成されるものとなっている。

2.請求人が無効の理由として引用した意匠の形態

請求人が無効の理由として引用した意匠は4つあり、1つめは、平成12年1月25日に意匠登録出願され、平成14年7月26日に意匠権の設定の登録がなされた登録意匠第1153179号(引用意匠1)であり、意匠公報が発行されたのは平成14年9月17日であり、甲第2号証として提出され、2つめは、昭和14年12月22日に実用登録出願され、昭和15年9月21日に公告された昭和15年実用新案出願公告第13792号(引用意匠2)であり、甲第3号証として提出され、3つめは、平成6年12月5日に特許出願され、平成8年6月18日に公開された平成8年特許出願公開第158542号(引用意匠3)であり、甲第4号証として提出され、4つめは、平成7年3月9日に特許出願され、平成8年9月24日に公開された平成8年特許出願公開第246606号(引用意匠4)であり、甲第6号証として提出されたものであり、その形態をそれぞれ別紙第3、別紙第4、別紙第5、別紙第7として示すとおりのものである。

(1)引用意匠1
引用意匠1について、意匠に係る物品を「平板瓦」とし、その形態は、平板瓦の上端部左寄り中央に、平板瓦の縦の長さの約18分の1の幅を有する係合凸部を設け、該係合凸部について意匠登録を受けようとするものである。該係合凸部は平板瓦の厚みとほぼ同様の高さまで平板瓦の前方に略半円弧状に突出する立ち上げ部と係止部から形成されており、該係止部は立ち上がり部の最も高く突出している部分の内側を立ち上がり部の高さの半分を直径とする半円弧状に瓦に接したところを切り込むことによって形成されるものとなっている。

(2)引用意匠2
引用意匠2について、意匠に係る物品を「瓦」とし、その形態は、瓦の下部略中央に、瓦の横幅の長さの約10分の1の幅を有し、瓦の縦の長さの約16分の1の長さを有する爪状突起部を設けている。該爪状突起部は瓦下部の方向へ約30度上方に突出し、該爪状突起部の内側である他の瓦の突起部との接触部分については、約60度の角度で緩やかな円弧状の切り込みをいれるものとなっている。

(3)引用意匠3
引用意匠3について、意匠に係る物品を「平形瓦」とし、その形態は、平形瓦の上端略中央に、平形瓦の横幅の長さの約10分の1の幅と、平形瓦の長さの約10分の1の長さを有する尻係合覆部を設けている。該尻係合覆部は、瓦面に対して直角に立ち上げられた横長矩形の互いに接する二面の上に矩形板材を載せて、その三面によって形成される内側の空間部分を他の平形瓦との係合部とするものとなっている。

(4)引用意匠4
引用意匠4について、意匠に係る物品を「屋根瓦」とし、その形態は、屋根瓦の表面中央部分に突起状の桟部支持部及び頭部支持部を各2個ずつL字型に配置するものとなっている。該桟部支持部は、全体を瓦の表面より盛り上がるように形成した円錐台上のものとなっており、瓦の表面に向いている桟部支持部の内側の面と瓦面は鈍角に、他方、桟部支持部の外側の面は瓦面より半円弧上に盛り上がるものとなっている。

3.無効理由(1)について(意匠法第3条第1項柱書違反)

請求人は、本件登録意匠は、意匠を特定することができず、意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないものである旨主張するので、この点について検討する。
先ず、本件登録意匠は、その形態が、別紙第1に示すとおりのものである。本件登録意匠の正面図には、意匠登録を受けようとする部分として、略中央に縦線のある矩形が実線で表されているが、他方、正面図以外の他の図には、該縦線に相当する線が表されていない。また、意匠登録を受けようとする意匠に係る形状を特定するための線、点その他のものを記載する場合には、意匠法施行規則様式第6備考7の規定に従って、その旨及びいずれの記載によりその形状が特定されているのかを願書の意匠の説明の欄に書くこととなっているが、本件登録意匠に係る願書の意匠の欄には、正面図における該縦線について何らの記載もなされていない。しかし、願書添付図面を総合的に判断すれば、該縦線はハイライト線であると解釈することができ、意匠は特定しているものということができる。

4.無効理由(2)について(意匠法第3条第1項第3号違反)

請求人は、本件登録意匠に係る意匠登録の出願日は、甲第1号証で示された平成13年7月29日ではなく、その意匠登録出願の実際の出願日である平成14年12月26日であるので、本件登録意匠は、その意匠登録出願前である平成14年9月17日に頒布された引用意匠2に類似するので、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当する旨主張するので、この点について検討する。
甲第1号証(参考意匠1 別紙第2参照)の図7については、複数の瓦が重なっている状態であり、意匠法施行規則様式第6備考8に規定される正式な図法ではなく、かつ、本件登録意匠の意匠公報における平面図と甲第1号証の図を対比させるとフックの向きが左右逆になっており、本件登録意匠と甲第1号証に表された瓦は完全に一致するものではないが、合理的、総合的に判断をすると、本件登録意匠は甲第1号証に表された瓦にすでに開示されていたものを考えざるを得ない。したがって、本件登録意匠の出願日は、甲第1号証で示された平成13年7月29日とすることができ、引用意匠2(別紙第4参照)によって本件登録意匠の新規性が阻却されるものではない。

5.無効理由(3)について(意匠法第5条第3号違反)

請求人は、本件登録意匠は使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能を確保さるために不可欠な形状のみからなる部分意匠であるので、意匠法第5条第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである旨主張するので、この点について検討する。
瓦に関して使用時に他の瓦の一部を係止することを用途とするフックの機能を確保するための形状としては、平成8年特許出願公開第158542号の公開公報に掲載された意匠(引用意匠3 別紙第5参照)のように、本件登録意匠とは別の形状を取り得るものをあることから、本件登録意匠は物品の機能を確保するために必然的に定まる形状のみからなる意匠とは認められないことから、意匠法第5条第3項の規定に該当するものとはいえない。

6.無効理由(4)について(意匠法第3条第1項第3号違反)

請求人は、本件登録意匠は、引用意匠2と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により無効にすべき旨主張するので、この点について検討する。

(1)本件登録意匠
上記、第3、1を参照

(2)引用の意匠
上記、第3、2(2)を参照

(3)対比
両意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者が一致する。また、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分である係合凸部の機能については、使用時に他の瓦の一部を係止するためのものとなっており、他方、引用意匠2における本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分に対応するものとなっている爪状突起部の機能については、下段の瓦の上端突起部に引っかけて各瓦を連結するためのものとなっており、意匠登録を受けようとする部分の機能については異なるものとなっている。
その形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
すなわち、共通点としては、内側で他の突起部と係合できるように突起状になっているという点がある。一方、差異点として、(A)意匠登録を受けようとする部分の位置が、本件登録意匠は瓦の上端部であり、引用意匠2が瓦の略中央下部である点、(B)突起部の開口部について、本件登録意匠が瓦上端の正面視左から右へ開き、引用意匠2が瓦略中央下部の正面視上から下へ開いている点、(C)突起部の具体的な形状について、本願意匠が側面視において、凹円弧状の波型で、その先端を直裁するものとなっており、引用意匠2は側面視において、先端を尖らせたものとなっている点、がある。

(4)両意匠の類否判断
以上のように、意匠に係る物品は瓦であることから共通するものとなっているが、意匠登録を受けようとする部分の機能は異なるものとなっている。また、形態について、その共通点は機能の要素から導かれたものにすぎず、意匠の特徴を表すものとはいえず、意匠の共通点として評価することができない。他方、上記(A)(B)(C)の差異点があいまった効果を考慮すると、本件登録意匠が引用意匠2に類似するものであるということはできない。したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠には該当しないものである。

7.無効理由(5)について(意匠法第3条第2項違反)

請求人は、本件登録意匠は引用意匠2と引用意匠3に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により無効とすべき旨主張するので、この点について検討をする。

(1)本件登録意匠
上記、第3、1を参照

(2)引用の意匠
上記、第3、2(2)(3)を参照

(3)容易か否かの判断
本件登録意匠は、意匠に係る物品を平板瓦として、意匠登録を受けようとする部分である係合凸部の機能については、使用時に他の瓦の一部を係止するためのものとなっている。引用意匠3は、意匠に係る物品を平形瓦とし、本件登録意匠における意匠登録を受けようとする部分に対応する引用意匠3における尻係合覆部の機能は、使用時に瓦のめくり上げとずれを防止するためのものとなっている。この引用意匠3における尻係合覆部の形状を引用意匠2における爪状突起部の形状と置き換えた場合、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分の意匠全体における位置と、引用意匠2の爪状突起部の形状に置きかえられた場合の引用意匠3における尻係合覆部の位置は一致するものとなるものの、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分である係合凸部の形状と、尻係合覆部に置き換えられた爪状突起部の形状とは一致するものではなく、したがって、本件登録意匠は、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が引用意匠2及び引用意匠3に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。

8.無効理由(6)について(意匠法第3条第1項第3号違反)

請求人は、本件登録意匠は、引用意匠4に類似するので、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により無効とすべき旨主張するので、この点について検討する。

(1)本件登録意匠
上記、第3、1を参照

(2)引用の意匠
上記、第3、2(4)を参照

(3)対比
両意匠を対比すると、意匠に係る物品については、両者は一致する。また、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分である係合凸部の機能については、使用時に他の瓦の一部を係止するためのものとなっており、他方、引用意匠4における本件登録意匠に対応する部分となっている桟部支持部の機能については、瓦盤の葺き上げ後の緊結正を向上させると共に、経年変化による瓦盤の位置ずれを防止するためのものとなっており、意匠登録を受けようとする部分の機能は異なるものとなっている。
その形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
共通点としては、内側で他の瓦の一部を収納できるように突起状になっているという点がある。一方、差異点として、(A)意匠登録を受けようとする部分の位置が、本件登録意匠は瓦の上端部であるのに対し、引用意匠4が屋根瓦の表面中央部に配置されるものとなっている点、(B)突起部の開口部について、本件登録意匠が瓦上端の正面視左から右へ開き、引用意匠4が瓦裏面より斜め下部にむかって突出するものとなっている点、(C)突起部の具体的な形状について、本件登録意匠が側面視において、凹円弧状の波型とし、その先端を直裁して矩形の切断面となっており、他方、引用意匠4は瓦に向いている内側の面を瓦面と鈍角にし、外側の面を半円弧状にしながら盛り上げた円錐台状の突起部となっており、その先端を直裁して略円形の切断面となっている点、がある。

(4)両意匠の類否判断
以上のように、意匠に係る物品は瓦であることから共通するものとなっているが、意匠登録を受けようとする部分の機能は異なるものとなっている。また、形態について、その共通点は機能を発揮するための要素から導かれたものにすぎず、意匠の特徴を表すものとはいえず、意匠の共通点として高く評価することはできない。他方、上記(A)(B)(C)の差異点のあいまった効果がを考慮すると、本件登録意匠が引用意匠4に類似するものであるということはできない。したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠には該当しないものである。

9.無効理由(7)について(意匠法第3条第2項違反)

請求人は、本件登録意匠は、引用意匠3と引用意匠4に基づいて当業者が容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により無効とすべき旨主張するので、この点について検討をする。

(1)本件登録意匠
上記、第3、1を参照

(2)引用の意匠
上記、第3、2(4)(3)を参照

(3)容易か否かの判断
本件登録意匠は、意匠に係る物品を平板瓦として、意匠登録を受けようとする部分である係合凸部の機能については、使用時に他の瓦の一部を係止するためのものとなっている。引用意匠3は、意匠に係る物品を平板瓦とし、本件登録意匠における意匠登録を受けようとする部分に対応する引用意匠3における尻係合覆部の機能は、使用時に瓦のめくり上がりやずれを防止するためのものとなっている。この引用意匠3における尻係合覆部の形状を引用意匠4における桟部支持部の形状に置き換えた場合、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分の意匠全体における位置と、桟部支持部の形状と置き換えられた場合の引用意匠3における尻係合覆部の位置は一致するものとなるものの、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分である係合凸部の形状と、尻係合覆部に置き換えられた引用意匠4の桟部支持部の形状とは一致するものではなく、したがって、本件登録意匠は、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が引用意匠3及び引用意匠4に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものとはいえない。

10.結び

以上のとおりであって、請求人の提出した証拠及び主張によっては、意匠法第3条柱書、第3条第1項第3号第3条第2項、及び、第5条第3号の規定に違反して登録されたものとして、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2007-11-27 
結審通知日 2007-11-30 
審決日 2007-12-25 
出願番号 意願2002-36084(D2002-36084) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (L6)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 早川 治子渋谷 知子土屋 真理子3L案件管理書架D石坂 陽子伊藤 陽引地 麻由子大谷 純 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 木本 直美
岩井 芳紀
登録日 2003-04-04 
登録番号 意匠登録第1174461号(D1174461) 
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所 
代理人 松原 等 
代理人 磯貝 浩之 
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