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審決分類 審判    L6
管理番号 1179122 
審判番号 無効2007-880013
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-10-24 
確定日 2008-05-30 
意匠に係る物品 瓦 
事件の表示 上記当事者間の登録第1301902号「瓦」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1301902号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由
請求人は、登録第1301902号意匠(以下「本件登録意匠」という。)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、甲第1号証ないし甲第7号証までを提出した。

1.無効理由(1)
意匠法第3条第1項違反
本件登録意匠は、その出願前に頒布された広告リーフレット『防災瓦福太郎』の意匠に類似するものであり、意匠法第3条第1項の規定に違反し、意匠登録を受けることができないものである。

2.無効理由(2)
意匠法第3条第2項違反
本件登録意匠は、当該意匠の属する分野における通常の知識を有するものが公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり、意匠法第3条第2項の規定に違反し、意匠登録を受けることができないものである。
よって同法第48条第1項第1号の規定により、その登録は無効とするべきである。

第2 被請求人の答弁及び理由
被請求人は、答弁書において、要旨以下のとおり反論し、本件無効審判請求は成り立たない旨主張している。

1.本件意匠の無効理由について
本件登録意匠は、その出願前に公知の意匠に類似するものではなく、極めて斬新且つ創作性を有する意匠であることは、明らかである。よって、意匠法第3条第1項第3号及び第3条第2項には該当しないため、本件登録意匠に請求人主張のような無効理由は存在しない。以下、請求人主張理由に対し具体的に反論する。
(1)意匠法第3条第1項第3号の規定による主張について
(a)本件登録意匠の具体的態様
安定駒が跳び箱形状で、下端が平坦面であり(A’)、安定駒と削面の瓦の長さ方向の寸法比が1:1で頭側の頂点を安定駒の頭側端面に揃え(B’)、 瓦全体と削面の瓦の長さ方向の寸法比が約11:1であり(C’)、瓦全体と安定駒及び削面の瓦の幅方向の寸法比が約8:1であり(D’)、削面の斜辺が直線であり、瓦全体の幅と差込み端面から安定駒及び削面の境界までの距離の寸法比が約10:1であり、A’乃至F’の態様から成る部分を有する瓦である。
(b)差異点
安定駒の形状については、本件登録意匠が飛び箱形状で、下端が平坦面を有するものとなっているが、引用意匠は段付きの略三角形状で、下端が丸みを帯びるものとなっている。
安定駒と削面の瓦全体の長さ方向の寸法比については、本件登録意匠は1:1で安定駒と削り面が揃っており、一戸建ての家のような印象となっているが、引用意匠は約1:1.5となっており、削面が安定駒の2倍近く突出しており、二階建ての家のような印象となっている。
瓦全体と削面の瓦の長さ方向の寸法比については、本件登録意匠が約11:1であるのに対し、引用意匠は約10:1となっており寸法比が似ているが、共に安定駒と削面が連結し、常にワンセットとなっており、瓦を上からみると、本件登録意匠は略台形、引用意匠は、軒先付きド-ム形状の家の半分を倒したような形状となっている。
瓦全体と安定駒の瓦の長さ方向の寸法比については、本件登録意匠が約11:1であるのに対し、引用意匠は約14:1となっている。
瓦全体と安定駒及び削面の瓦の幅方向の寸法比については、本件登録意匠が約8:1となっており幅が太く、どっしりした印象を有しているが、引用意匠が約11:1となっており幅が細く、スマ-トな印象を有している。
削面の斜辺については、本件登録意匠の削面は、直線にすることで、削面が半裁ル-フ形状に、引用意匠の削面は、穏やかな曲線にすることで、削面が半裁ド-ム形状になっている。
瓦全体の幅と差込み端面から安定駒及び削面の境界までの距離の寸法比について、本件登録意匠は、約10:1であるが、引用意匠は約8:1となっており、本件登録意匠がより差込み端面側にあることで、広がりのある印象を与え、引用意匠は、差込み端面側から離れていることで、コンパクトにまとまった印象を与えるものとなっている。
(c)判断
以上のように、本件登録意匠と引用意匠とで、比較に対象となる構成要素が多数あり、且つ、それぞれ明確に相違している。よって、本件登録意匠は、引用意匠とは全く異なる美感を有し、全く異なる美的印象を看者に与え得る意匠である。したがって、本件登録意匠は、その出願前に公知の意匠に類似するものではなく、意匠法第3条第1項第3号の意匠には該当しない。
(2)意匠法第3状第2項の規定による主張について
(a)差異点
安定駒の形状については、本件登録意匠が飛び箱形状で、下端が平坦面を有するものとなっているが、引用意匠は段付きの略三角形状で、下端が丸みを帯びるものとなっている。
安定駒と削面の瓦全体の長さ方向の寸法比については、本件登録意匠は1:1で安定駒と削り面が揃っており、一戸建ての家のような印象となっているが、引用意匠は約1:1.5となっており、削面が安定駒の2倍近く突出しており、二階建ての家のような印象となっている。
瓦全体と削面の瓦の長さ方向の寸法比については、本件登録意匠が約11:1であるのに対し、引用意匠は約10:1となっており寸法比が似ているが、共に安定駒と削面が連結し、常にワンセットとなっており、瓦を上からみると、本件登録意匠は略台形、引用意匠は、軒先付きド-ム形状の家の半分を倒したような形状となっている。
瓦全体と安定駒の瓦の長さ方向の寸法比については、本件登録意匠が約11:1であるのに対し、引用意匠は約14:1となっている。
瓦全体と安定駒及び削面の瓦の幅方向の寸法比については、本件登録意匠が約8:1となっており幅が太く、どっしりした印象を有しているが、引用意匠が約11:1となっており幅が細く、スマ-トな印象を有している。
削面の斜辺については、本件登録意匠の削面は、直線にすることで、削面が半裁ル-フ形状に、引用意匠の削面は、穏やかな曲線にすることで、削面が半裁ド-ム形状になっている。
瓦全体の幅と差込み端面から安定駒及び削面の境界までの距離の寸法比について、本件登録意匠は、約10:1であるが、引用意匠は約8:1となっており、本件登録意匠がより差込み端面側にあることで、広がりのある印象を与え、引用意匠は、差込み端面側から離れていることで、コンパクトにまとまった印象を与えるものとなっている。
(b)判断
以上のように、本件登録意匠と引用意匠とで、比較に対象となる構成要素が多数あり、且つ、それぞれ明確に相違している。よって、本件登録意匠は、引用意匠とは全く異なる美感を有し、全く異なる美的印象を看者に与え得る意匠である。したがって、本件登録意匠は、極めて斬新且つ創作性を有する意匠であることは、明らかであり、意匠法第3条第2項に規定する意匠には該当しない。
(3)むすび
以上述べたように、請求人の主張はすべて否定されるべきであり、被請求人の主張のとおり、本件登録意匠は甲第2号証と非類似であることから意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠、かつ、意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当せず、答弁の趣旨のとおりの審決を求める次第である。

第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠に係る意匠登録出願は、平成18年5月9日に意匠登録出願された部分意匠に係る意匠登録出願である。本件登録意匠は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「瓦」とし、形態は願書の記載及び願書添付図面に現されたとおりであり、意匠登録を受けようとする部分を実線で表したものである。
すなわち、その形態は、いわゆる桟瓦における安定駒と削面の形状について意匠登録を受けようとするものであり、安定駒は底辺を縦長矩形とした跳び箱状の突出部となっており、削面は瓦の背面上端を垂直辺とし、底辺を安定駒の縦線と接するものとし、該底辺を最も深い切り込み部とした直角三角形状の切り込みとしている。

2.請求人が無効の理由として引用した意匠の形態
本件登録意匠は、その出願前に頒布された広告リーフレット『防災瓦福太郎』に掲載された意匠であり、その形態を別紙第2として示すとおりのものである。平成16年2月24日付で本件請求人が提出した判定請求書(判定2004-60018)および、本件被請求人が平成16年5月27日付で提出した判定答弁書を勘案し、総合的に判断すると、前記広告リ-フレット『防災瓦福太郎』に掲載された意匠は、本件登録意匠の出願前に公知であったとすることが相当である。
意匠に係る物品は「瓦」とし、その形態は全体を正面視略矩形状とし、正面視上部左端に矩形の切欠部を設け、該切欠部の右側を上下縦列の差込部とし、該切欠部の下側を左右横列の覆い部とし、また、正面視下部右端に矩形の切欠部と該切欠部の内側に矩形の爪部を設け、該切欠部の左側を上下縦列の覆い部とし、該切欠部の上側を差込部とし、正面視右側上端には矩形の凹部を設け、背面視上端には一体化した削面と安定駒、2つの三角状の突起部を配したものとなっている。

3.無効理由について
3.1 意匠法第3条第1項違反について
(1)対比
そこで、本件登録意匠と請求人が無効の理由として引用した意匠とを比較すると、意匠に係る物品については、両者が一致する。また、本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分である安全駒と削面の機能については、使用時に縦桟木を削面に組み込ませることにより瓦の安定性を向上するためのものとなっており、意匠登録を受けようとする部分の機能も共通するものとなっている。その形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
(a)共通点
すなわち、共通点として、(ア)意匠登録を受けようとする部分である削面と安定駒は瓦の裏面上端左側に位置し、意匠全体における意匠登録を受けようとする部分の位置が共通している点、(イ)意匠登録を受けようとする部分である削面と安定駒については、安定駒は底辺を縦長矩形とした飛び箱状の突出部となっており、削面は瓦の背面上端を垂直辺とし、底辺を安定駒の縦線と接するものとした略直角三角形状となっている点、がある。
(b)差異点
他方、差異点としては、(A)意匠登録を受けようとする部分である削面と安全駒が瓦全体に占める範囲について、本件登録意匠が1.2%となっているが、引用意匠が0.8%となっている点、(B)安定駒について、本件登録意匠は跳び箱状となっているが、引用意匠は段構成を有した四角錐台状となっている点、(C)削面について、本件登録意匠は正面視において底辺の長さが安全駒の縦と同じである直角三角形となっているが、引用意匠は底辺の長さが安全駒の縦より長くなっており、また、斜辺は外側に膨らみながら湾曲している略直角三角形となっている点、がある。
(2)両意匠の類否判断
以上の共通点及び差異点を総合して、両意匠の類否を意匠全体及び意匠登録を受けようとする部分全体として検討し、判断する。
(a)共通点の評価
意匠登録を受けようとする部分の機能と位置の共通性は、該部分意匠の特徴を示す重要な要素であり、かつ、部分意匠に係る類否判断の基礎となるものであることから高く評価されるべきであり、さらに、共通点に示す意匠登録を受けようとする部分の基本的構成は、両意匠の意匠登録を受けようとする部分に関してその骨格をなすものであり、両部分に共通の支配的基調が形成されていることが認められ、観察者は両部分の形態的共通性を強く認識するとともに、共通の美感を起こすものである。したがって、意匠登録を受けようとする部分の機能と位置の共通性及び該部分の形態的共通性が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわなければならない。
(b)差異点の評価
他方、前記の差異点について、(A)意匠登録を受けようとする部分である削面と安全駒が瓦全体に占める範囲の違いについては、本件登録意匠が1.2%で、引用意匠が0.8%であり、多少の違いがあるとしても全体から見れば僅かな差であると言えることから、意匠全体に及ぼす影響を考慮してもその差異は軽微なものであり、類否判断に及ぼす影響は僅かなものといえる。(B)(C)にの点については、いずれにしても部分的な差異に過ぎず、略縦長矩形を底面として台状に突出部を設け、該突出部と正面視略直角三角形状に斜辺部分から底辺部分にかけて斜めの切り込みをいれた削面とが一体化されている該部分の共通点の強い印象を超えるものではなく、両意匠の類否判断を左右するには至らないものと判断される。
(c)総合判断
以上のとおり、両意匠は意匠に係る物品及び意匠登録を受けようとする部分の機能が共通し、形態において、共通する構成態様が形成するまとまりが両意匠全体の共通する基調を決定づけているとともに、差異点は微弱なものであって類否判断を左右するには至らず、共通点が差異点を凌駕して類否判断を支配するというべきものであるから、本件登録意匠は引用意匠に類似することを免れない。

3.2 意匠法第3条第2項違反について
本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当することから、同条第2項かっこ書の規定より、同条第2項の規定には該当しない。

4.結び
したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同項の規定に違反して登録されたものと認められるので同法第48条第1項第1号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-03-28 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-04-17 
出願番号 意願2006-11758(D2006-11758) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久保田 大輔 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 岩井 芳紀
木本 直美
登録日 2007-04-20 
登録番号 意匠登録第1301902号(D1301902) 
代理人 西山 聞一 
代理人 竹中 一宣 
代理人 大矢 広文 

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